フォアグラ亭日乘2004年10月
フォア‐グラ【foie grasフランス】 特殊な飼育法によって肥大させた、鵞鳥(がちよう)あるいは鴨の肝臓。高級料理材料として珍重され、オードブルなどに用いる(『広辞苑』第五版・岩波書店)
フォアグラウンド【fore・ground】 ‖名‖[the 〜]
1 (風景・絵画の)前景(cf. background 1).
2 最前面, 表面, 最も目立つ位置.(『日英仏辞典』研究社)

■2004年10月22日:久しぶりにイベントに出演したの巻
 というわけで、細野くん主宰のイベントだ。
 トークショーは久しぶりなのでアガッたけど、まあ、1/3くらいは知り合いなので気が楽。最初は細野くん司会で、夏一葉さんと漫画規制談義。途中で砂くんが参加。みんな微妙に立ち位置が違うので面白い。
 オレはトークショーに出る前に一回、トークの内容をあたかもしゃべってるような感じでシミュレーションした文章を書くことにしている。しゃべり始めたら、ほとんど見ないんだけど、頭の整理には役立つ。
 例えば、こんな感じ。

■寛容と対話
 (略)じゃあ、知識人は何をやってたか。もうダメダメでしたね。それまでだったらロクに考えないまま「表現の自由は守らねば」と言ってれば良かったんだけど、一部の女性団体からの「エロ漫画は性を商品化し、女性を差別している」という意見に対して何も応えられなかった。このポルノに対するフェミニズムによる批判ていうのはそれまでにない新しい論点だったわけです。これに関して、アンチ・フェミみたいなのも生まれてくるわけですが、ここで整理しておくべきなのは、フェミニストの総てがアンチ・ポルノの立場を取るわけではないということ。批判が即ち規制強化運動とは結びつかないことですね。ところが有識者というのは実はあんまり勉強したり物考えてなくても、なれるわけです。世間と没交渉でもいい。だから「表現の自由と女性の権利」の間で股裂きになって何も言えなくなってしまった。本来、並置してどっちが大事と言える問題じゃないんですよ。どっちも大事です。これはちゃんと考えれば答えられます。ぼくの解答は「慌てるな焦るな」ということです。まず民主主義だということです。エロ漫画に差別表現があるとして批判するのも表現の自由です。そこから対話とか論争になればいい。でも対話も論争も勝ち負けを決めるためのものじゃないんですね。ここんところをはき違えてる人が多い。互いに自分とは違う意見があるということを認識し、新しい知見を得るためなんですね。だから、その後は作家個人の問題でしょう。批判に耳を傾ける、反論する、あるいは納得する。それを次の作品に活かせばいい。どう活かすか、あるいは活かさないかは作家の自由です。それが批判者の考えた通りの結果が得られないからと言って、法的規制を求めるのは単なるファッショです。批判し、対話し、論争し、その過程で、少しずつ変わって行くものがあるはずなんですよ。それを大事にする。例えばレイプの表現にしても、無自覚に「女は全員犯されたがっているんだ、レイプまんせー」って描いてた作家が、「それはちょっとリアルじゃないな」とか「みっともねーな」とか考えるようになるだけでもずいぶんちがってくるんですよ。でも、「理屈はともかくやっぱりレイプマンセー」という作家もいるでしょう。どう、説得しても動かないものもあるということです。だからといって「お巡りさ〜ん」ってなっちゃうのは間違ってます。小学校の学級員が先生に言いつけんと同じですね。自分で処理しきれないからといって権力に頼るって、少なくともカッコイイことではない。そうではなく互いに暴力や権力に頼らない対話を何十年も重ねていくべきなんです。民主主義というのはそういう風にめんどくさくて時間がかかって非効率なものです。だから互いに寛容に、焦らず、慌てずということです。
 まあ、当時の有識者というのはそんなことも考えられないバカ揃いだったんですね。
 言うに事欠いて「いい漫画と悪い漫画がある」と、サイテーな意見を吐いたり、某公立大学の教授に至っては「漫画雑誌で統計とったら平均してフェラチオシーンが何コマあって、性交シーンが何コマありました。これは問題でしょう」とか税金使ってバカなことをやる。(略)


 という感じで、ほとんどしゃべる速度でタイピングしてる。文章としてはロクなもんじゃないんだけど、まあ、後々の下書きにもなるわけだし。今回は客層が若い人中心という予定だったので、けっこう抑制的。もちろんこのまましゃべったわけじゃなくって、実際にはかなり違う。大筋は同じでも、あんまり民主主義は強調してないし、客層がそんなに若くもなかったので、言い回しも変えた。使ったのは全体の2/3くらいかな。後は、若い人向けの補足とか説教とか、「網状言論F改」後のジェンダー論のようなもの。

 出演者間の見解の差異も当然あるわけだけど、それぞれがどう考えているのかというのがおぼろげながら見えて来て興味深かった。そのへんはもうちょっと煮詰めて話したい。

 トークショーの後は日本一のガラス瓶博士、庄司太一先生によるライブとトーク。これが滅法界面白い。
 日本ではガラス瓶コレクターはメジャーではないが、アメリカだと切手蒐集などに次ぐ多数派だそうだ。鳩山郁子の漫画に碍子コレクターの話が出てきて「へえっ」と思ったもんだが、アメリカ人ってコレクトマニアが多いのか? 屋外トイレの跡を掘り返すと昔の酒瓶がゴロゴロ出土するというのも面白い。禁酒法時代、トイレでこっそり飲んで、証拠隠滅とばかりに便槽に捨てたという次第。それで、便槽が一杯になると埋めて、別の場所に屋外トイレを掘る。トイレの跡といっても数十年前のウンコは土に返って、瓶だけが残る。

 最後はオレも疲れてグダグダになってきたので、知り合いの漫画家さんたちと、軽く飲んで帰ろうということになったのだが、ウダウダしているうちにはぐれてしまい、泣きながら帰りました。
 帰り道、自販機で瓶の味わいコーヒー買って飲む時に、庄司博士の話を思い出して、しげしげとガラス瓶を眺めてしまった。現代の量産ガラス瓶だからコレクション的には価値がないのはわかっているが、これもまた破砕して原料になるわけで、遠い将来にはレアになるだろうな。百年後二百年後に、庄司博士の生まれ変わりみたいな人が、たまたま掘り出して、愛情こめて眺めるかもなと考える。
 今日は楽しかった。

■2004年10月15日:来週、久しぶりにイベントに出演する予定
MAD TEA PARTY vol.1 in Flying Teapot 10.22 @ 江古田
10月22日(金)17:00〜22:00
江古田 Flying Teapot
料金:学生=200円+1drink
   社会人=400円+1drink
   60歳以上=200円+1drink
*学生と60歳以上の方は、要身分証提示。(ない場合は、申し訳ありませんが、400円+1drinkになります)
出演者:永山薫(マンガ評論家)、夏一葉(id:natsu-k、サイボーグ・コスプレィ・フェミニスト)、砂(id:sandworks、マンガ家)山田タヒチ(マンガ家)、sachi(イベント・オーガナイザー、パフォーマー)、細野晴彦(本イベント企画主催)
内容:
永山薫さん、砂さん、夏一葉さんによる「アニメ・マンガ・ゲームと青少年に対する法規制について」トークショー
細野晴彦のDJ(テクノ、ニューウェーブ、パンク、ノイズ、アニメ、特撮etc)
THE BASIC CHAMPIONS(山田タヒチ、sachi、細野晴彦)の初ライブ。ゲストボーカルとして砂さんが参加!
メインターゲットは、サブカルチャー(OTAKU系含む)に触れ始めた学生で、サブカルチャーの魅力と、現在の表現規制、青少年の生活への規制の状況を紹介するのが目的のイベントです。
イベント会場が狭いため、予約を受け付けます。予約者には特典として、チャージを100円引きさせていただきます。件名を「イベント予約」とした上で、お名前(HN可)と年齢を本文に書いて、basic:champions.ai.to(:→@)までお送りください。
 当日、資料として小冊子を配布します。

■2004年10月14日:西崎まりのさん逝去
 浦嶋礼仁さんから「西崎まりのさんが亡くなった」と電話。
 14日がお通夜で15日が葬儀とのこと。
 面識こそなかったが、初期の『ホットミルク』にも執筆していたし、絵の上手い人だなあと思っていた。NURK TWINSの同人誌も何冊か持っている。
 身体を壊されたという話も薄々聞いてはいたのだが…。
 ご冥福をお祈りしたい。

■2004年10月03日:岩田読書会のような…
 週刊ペースの予定が滞ってますがな。
 こないだもダーティ・松本さんに「生きてるかどうか電話してみた」とか言われちゃいましたぜ。
 とはいえ、このところヘコみ気味なんだよな。まあ、しようがないでしょう今年は。仕事は減るわ、知人は続けて亡くなるわ、ヘコまない方がおかしい。
 ヘコみながらも、音楽生活はスゴイことになってて、月50枚ペースでCDを聴き、音楽ネタのブログを毎日書いたりしてる。デジカメによるスナップもほぼ連日やっている。
 逃避なのだが、そうした中から違う発想が出てきて面白い。正確には自分が何を面白いと感じるのかという自己分析に一本補助線が加わる感じだ。
 オレの書く評論は、自己観察、自己分析、自己解析がベースになっている。逃避のはずが気が付いたら仕事にも役だっていた。
 そんなワケでヤフオクでカネを作ってiPodを買った。

■9月終盤の日記に書かなかったことメモ
・ダー松先生に原作や企画を見てもらった。
・細野くんと会う。イベント出演依頼を受けたのと、あとはなんか面白い仕事をやろうという話。こちらも企画話。イベントは10月22日の予定。コミック規制がらみのトーク。といってもオレが規制反対運動の前面に立っているというわけではないので、もう少し幅のある話になるだろう。