foreign movie vol.17


Pina
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち new!!
Pina


監督 / ヴィム・ヴェンダース
製作 / ヴィム・ヴェンダース、ジャン=ピエロ・リンゲル
脚本 / ヴィム・ヴェンダース
撮影 / エレーヌ・ルヴァール
編集 / トニ・フロッシュハマー
振付 / ピナ・バウシュ
音楽 / トム・ハンライヒ
出演 / ピナ・バウシュ 他
2011年 / ドイツ、フランス、イギリス


2009年に他界した舞踊家ピナ・バウシュ。そのピナ・バウシュが芸術監督を務めた ヴッパタール舞踊団の「カフェ・ミュラー」「春の祭典」「フルムーン」「コンタ クトホーフ」の4つの舞台を軸に様々なロケーションでダンサーたちが踊ります。エ レベーター、小川、工場、高架の下、モノレールの中。大きな岩や大量の水、砂を 持ち込んだ舞台装置もおもしろい。"強くてはかない"ピナ・バウシュの踊りは痛々 しいくらい感情豊かで美しすぎて、この美しさを目の当たりにしていることに涙が 出ます。生の舞台にはかなわないだろうけど、3D映像でしか見られない角度やその 3Dとダンサーの踊りがかみ合ったときの臨場感や息遣いはすばらしく感動的。

コンテンポラリーダンスのおもしろさを十分に引き出している傑作かつ快作!


Potiche
しあわせの雨傘 new!!
Potiche


監督 / フランソワ・オゾン
製作 / エリック・アルトメイヤー、ニコラス・アルトメイヤー
原作 / ピエール・バリエ、ジャン=ピエール・グレディ
脚本 / フランソワ・オゾン
撮影 / ヨリック・ル・ソー
美術 / カーチャ・ヴィシュコフ
衣装 / パスカリーヌ・シャヴァンヌ
編集 / ロール・ガルデット
音楽 / フィリップ・ロンビ
出演 / カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ 他
2010年 / フランス


女性賛歌の痛快なコメディ。楽しい!カトリーヌ・トヌーブ主演の「雨傘」といったら当然「シェルブールの雨傘」へのオマージュなんだろうトヌーブけど、いまいち「シェルブールの雨傘」の全貌が思い出せない私……。しかしトヌーブの若々しさとお人形みたいな美しさは印象的。そんなドヌーブのオバサン体型はなんだかすごく愛らしいんだけど(これで70歳手前なんだから素敵!)、ジェラール・ドパルデューのまん丸体型にびっくり。コートのなかに何か仕込んでるのかと思った!いろんなものを内包したオゾンのコメディはアクが強くて惹かれる。

そうそう息子ローランの役の男の子が「クリミナル・ラヴァーズ」のジェレミー・レニエ。ダルデンヌ兄弟「ある子供」で子どもを売ったのもジェレミー・レニエ。なかなかの芸達者だわー。


Le temps qui reste
ぼくを葬る(おくる)
Le temps qui reste


監督 / フランソワ・オゾン
製作 / オリヴィエ・デルボス、マルク・ミソニエ
脚本 / フランソワ・オゾン
撮影 / ジャンヌ・ラポワリー
プロダクションデザイン / カーチャ・ヴィシュコフ
衣装デザイン / パスカリーヌ・シャヴァンヌ
編集 / モニカ・コールマン
出演 / メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュヴァル、マリー・リヴィエール、クリスチャン・センゲワルト 他
2005年 / フランス


メルヴィル・プポー主演。おばあちゃん役でジャンヌ・モローも出演しています。「生きるとは」ということにストレートに焦点を置いた、気持ちのいい余韻の残る作品。

余命3ヶ月。ゲイであるがゆえに授かることはなかった小さな命を偶然にもこの世に残し、フォトグラファーでありながらかたくなに撮れなかった姉と姉の子どもの光景を素直にカメラに残し、不器用で内気な主人公の最後の「生き方」。少年の頃の自分、姉の子ども、自分が不妊夫婦に授けた子、「死」と直面したときに生きることに純粋で前向きな"子ども"の存在が救いになる。『ふたりの5つの分かれ路』でも感じたような、ちいさなエピソードが重なって重なって胸に迫る、オゾンのいいところがよく出てる作品。


Ricky
Ricky リッキー
Ricky


監督 / フランソワ・オゾン
製作 / クローディー・オサー、クリス・ボルズリ
原作 / ローズ・トレメイン
脚本 / フランソワ・オゾン、エマニュエル・ベルンエイム
撮影 / ジャンヌ・ラポワリー
美術 / カーチャ・ヴィシュコフ
衣装 / パスカリーヌ・シャヴァンヌ
音楽 / フィリップ・ロンビ
出演 / アレクサンドラ・ラミー、セルジ・ロペス、メリュジーヌ・マヤンス、アルチュール・ペイレ、アンドレ・ウィルム 他
2009年 / フランス、イタリア


翼の生えた赤ちゃんが誕生した家族が翻弄しながら絆を深めるという、一見ハートフルなドラマ。フランソワ・オゾンを知らないと最初から最後までなんじゃこりゃ的な映画なんだと思うけど、しっかりオゾンテイストになったこの家族ドラマ、不思議でおもしろく浄化。オゾン自身がダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』を引き合いに出してるように、そういう雰囲気を彷彿とさせます。

たびたび娘のリザの視点で描かれる情景が痛々しかったり胸がしめつけらたり、このリアル感がたまらない。バイクで迎えに来る母親を夜になってもじっと待っているリザ。頼れるのは母親だけ。突然の母親の恋人。リッキーを守ろうとする姉らしさ。微妙な心の距離の描き方がとても上手。そんな巧みな心理描写を映し出しながら、空をぱたぱたうれしそうに飛ぶ赤ちゃんリッキーの姿の愛らしくも可笑しさ。「翼の生えた赤ちゃん=エンジェル」というオチのに少々釈然としない想いが残ったりするのだけどやっぱりオゾンはおもしろくて好き。単なるファンタジーではなく母親の強さや弱さ、けれどとんでもなく大きな母性を描いています。


SOMEWHERE
SOMEWHERE
SOMEWHERE


監督 / ソフィア・コッポラ
製作 / G・マック・ブラウン、ロマン・コッポラ、ソフィア・コッポラ
製作総指揮 / フランシス・フォード・コッポラ、ポール・ラッサム、フレッド・ルース
脚本 / ソフィア・コッポラ
撮影 / ハリス・サヴィデス
出演 / スティーヴン・ドーフ、エル・ファニング、クリス・ポンティアス、ララ・スロートマン、クリスティーナ・シャノン 他
2010年 / アメリカ


スティーヴン・ドーフもいいしエル・ファニングもいい。父親だったり娘だったり第三者になったりいろんな視点になってあらゆる場面で泣ける。父親と娘の間に存在する完全で永遠の愛情、娘と向き合うダメだけど愛おしい父親。空虚さや孤独さを示すジョニーのフェラーリ。ソフィア・コッポラ抜群のセンスで、エル・ファニングが最高にかわいい。はにかんだ笑顔も、泣いてくしゃくしゃになった顔も、ソフィア・コッポラの目で撮る女の子はものすごくかわいくなる。ものすごく趣味がいい。すがすがしくすばらしいラストにまた涙


Fanny och Alexander
ファニーとアレクサンデル
Fanny och Alexander


監督 / イングマール・ベルイマン
製作 / ヨルン・ドンナー
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / スヴェン・ニクヴィスト
音楽 / ダニエル・ベル
出演 / グン・ヴォールグレーン、エヴァ・フレーリング、アラン・エドワール、ハリエット・アンデルセン、アンナ・ベルイマン、レナ・オリン、クリスティナ・ショリン 他
1982年 / スウェーデン、フランス、西ドイツ


311分の大作。ブルジョワであるエクダール家の、1907年のクリスマスから2年間を描いた群像劇。ベルイマンであるけれど、分かりやすい構成とストーリーで娯楽色も強い。しかしぎりぎりの緊張感にもっていく力も感動的にベルイマン。ぞくぞくしてベルイマン5時間は楽しすぎます。生活の細部にわたる絢爛豪華な描写は美しく重厚で、ベルイマンの視線を通した「顔」アップの精神性人間性の圧倒的な強さは、素晴らしすぎて泣けます。ベルイマンが好きすぎてたぶんベルイマンの映画以上に好きな映画は今後ないんじゃないかと思うくらい、何度も書くけど素晴らしい作品。余韻も楽しい。


Rece do gory
手を挙げろ!
Rece do gory


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
撮影 / ヴィトルド・ソボチンスキ
出演 / イエジー・スコリモフスキ、ヨアンナ・シュチェルビツ、タデウシュ・ウォムニッキ、アダム・ハヌシュキェヴィッチ、ボグミウ・コビェラ 他
1967-1985年 / ポーランド


『身分証明書』『不戦勝』『バリエラ』と順番に見ていって一番イッちゃってる映画。1967年に公開禁止となり、1981年に新たに撮り足された映画。不条理というかカルト。断片的すぎてわざと無意味にしてるようなもはやスコリモフスキにしかわからない世界。抑圧された欲求不満をぶつけたようなヘンな政治批判映画。前の三作のほうが映画としてはまとまって完成度が高いと思うけどこちらはもうほとんどコラージュと幻想の世界。それはそれでおもしろいんだけど。


Barrier
バリエラ
Barrier


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
撮影 / ヤン・ラスコフスキ
音楽 / クシシュトフ・コメダ
出演 / ヨアンナ・シュチェルビツ、ヤン・ノヴィツキ、タデウシュ・ウォムニッキ、マリア・マリツカ、ズヂジワフ・マクラキェヴィチ 他
1966年 / ポーランド


モノクロのアヴァンギャルド映画。スコリモフスキの作品は1作品ごとにものすごい勢いで先をゆくので驚きと同時に意表をつかれておもしろい。ただ工夫に工夫を重ねてるのはわかるんだけど、凝らしすぎてて逆にカルトぽくなってかっこよさからは離れた感じ。60年代の映画『バリエラ(Barrier)』とは「障壁」という意味で、今の時代にあてはめてもおかしくない世代のギャップを描いた作品。アヴァンギャルドといえども恋愛とか世代のギャップとかどの時代も人は同じような普遍なことで悩んでるんだねー


Walkower
不戦勝
Walkower


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
音楽 / アンジェイ・トゥシャコフスキ
出演 / アレクサンドラ・ザビエルシャンカ、イエジー・スコリモフスキ、クシシュトフ・ハミュツ、エルジュビェタ・チジェフスカ、フランチェシカ・ピィエッカ、アンジェイ・ヘルデル 他
1965年 / ポーランド


『身分証明書』の続編。『身分証明書』よりも計算されて洗練されたカメラワークが印象的。荒削りだった『身分証明書』のほうがインパクトが強かったけど、本作のほうが細部まで細かく構成されて完成度が高いです。アンジェイとテレサが歩いてるシーンで「鶏を殺して」とお願いしにくる女、切り絵の押し売り等、別のシーンでは彼らの後ろで子どもたちが処刑ごっこをしているという、シュールな長回しのカットがおもしろい。再度見たくなる映画とはこういうスタンスの映画だなと思う。


Rysopis
身分証明書
Rysopis


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
撮影 / ヴィトルト・ミツキェヴィッチ
音楽 / クシシュトフ・サドフスキ
出演 / エルジュビェタ・チジェフスカ、イエジー・スコリモフスキ、アンジェイ・ジャルネツキ、タデウシュ・ミンツ 他
1964年 / ポーランド


スコリモフスキが映画学校の卒業制作として監督・脚本・主演をした長編デビュー作。荒い質感の映画で、曇ってるのか晴れてるのか分からないくらいの光の加減がおもしろいです。青年の浮遊感や不安定さ、それを示唆する会話のセレクトが上手。おもしろいな、ほんとヌーベルヴァーグみたいな映画。


Giulietta degli spiriti
魂のジュリエッタ
Giulietta degli spiriti


監督 / フェデリコ・フェリーニ
製作 / アルベルト・リッツォーリ
脚本 / エンニオ・フライアーノ、フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネッリ、ブルネッロ・ロンディ
撮影 / ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽 / ニーノ・ロータ
出演 / ジュリエッタ・マシーナ、サンドラ・ミーロ、マリオ・ピスー、シルヴァ・コシナ、ヴァレンティナ・コルテーゼ、カテリーナ・ボラット、フレデリック・レデブール 他
1964年 / イタリア、フランス


ジュリエッタ・マシーナ主演、フェリーニ初の長編カラー。ごく普通の主婦の垣間見る妖しく幻想的な、神々や神秘に対する思想の洪水の夢世界。いまとは感覚の違うカラー作品、カラーという効果を最大限に引き出した絶大なインパクトの強い色彩と豪華なセットに魅惑的な衣装にうっとり。ひさしぶりにフェリーニ見たけどフェリーニのこの妖艶さ豪華さ映画とはかくなるものという姿勢にくらくら。この堂々たる狂った感覚だいすき。

ジュリエッタ・マシーナを見るといつも田中絹代を思い出すんだけど、そんな美人ではなくかわいい系でスタンスが似ているせいかな。溝口映画の田中絹代、フェリーニ映画のジュリエッタ・マシーナ、みたく、どちらも監督とセットなせいかな。


Los abrazos rotos
抱擁のかけら
Los abrazos rotos


監督 / ペドロ・アルモドバル
製作 / エステル・ガルシア
製作総指揮 / アグスティン・アルモドバル
脚本 / ペドロ・アルモドバル
撮影 / ロドリゴ・プリエト
美術 / アンチョン・ゴメス
衣装 / ソニア・グランデ
編集 / ホセ・サルセド
音楽 / アルベルト・イグレシアス
出演 / ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ、ホセ・ルイス・ゴメス、ルーベン・オチャンディアーノ、タマル・ノバス ディエゴ、アンヘラ・モリーナ 他
2009年 / スペイン


アルモドバルの愛憎劇は深みがあって視覚的にも本当におもしろい。歳を重ねるにつれアルモドバルの映画がどんどんおもしろくなる。そしてアルモドバル映画のペネロペ・クルスは美しくてかわいくて大好き。この人すごい。ペネロペ・クルスを中心として、そのまわりの壊れたさまざまな愛を再構築していく様子。バラバラだったものがそれぞれの壁を乗り越えまとまっていく描写のうまさ。ラストの絶妙さ。見終わったときに自分でもよく分からない感情が溢れ出て不思議な感覚におそわれ涙が出そうだった。


Maradona by Kusturica
マラドーナ
Maradona by Kusturica


監督 / エミール・クストリッツァ
脚本 / エミール・クストリッツァ
出演 / ディエゴ・マラドーナ 他
2008年 / スペイン、フランス


サッカーはぜんぜん詳しくなくて、マラドーナは知っててもマラドーナのすごさなんて分かってない。でもクストリッツァの撮ったマラドーナのドキュメンタリーなんて聞いただけでわくわく。2005年から撮影されその間にマラドーナが死にそうになったりしてようやく2007年に完成した作品。Wカップでの世紀のゴールが繰り返し流され、身体には彫られたカストロやゲバラ、カストロのためなら死ねると言い、ブッシュを批判し、民衆からの熱狂的な支持、コカイン中毒になったり、アルゼンチンの英雄であり革命家でありひとりの人間として強さも弱さもある正直で愛すべき人物。

しかしマラドーナを神として崇拝するマラドーナ教の人々の様子も盲目的でおもしろい。結婚式までしちゃう!調べてみたら、マラドーナ教の洗礼は吊るされたサッカーボールを左手で叩くとか、マラドーナの誕生日の10月30日には「神の手」教会でクリスマスがあり、集まった人達は「メリー・マラドーナ!」と言い合うんだそう。

マラドーナのドキュメンタリーとしては後にも先にもきっとこれがナンバーワン。


That Lady in Ermine
あのアーミン毛皮の貴婦人
That Lady in Ermine


監督 / エルンスト・ルビッチ、オットー・プレミンジャー
製作 / エルンスト・ルビッチ
脚本 / サムソン・ラファエルソン
撮影 / レオン・シャムロイ
音楽 / アルフレッド・ニューマン
出演 / ベティ・グレイブル、ダグラス・フェアバンクス・ジュニア、シーザー・ロメロ、ウォルター・エイベル、レジナルド・ガーディナー 他
1948年 / アメリカ


エルンスト・ルビッチの作品だというのでチェックしてたものの、製作半ばで持病の心臓発作で倒れたルビッチを(後に『悲しみよこんにちは』(1957)を監督する)弟子のオットー・プレミンジャーが引き継いで大部分撮ってるほとんどオットー・プレミンジャーの作品。しかしこの色彩感覚に意気揚々としたミュージカル、美しくて楽しい映画は時代を経ても色褪せない。ちなみにアーミンは英語で"Ermine"、フランス語で"Hermine"。オコジョのこと。アーミンの毛皮は高級品。ほとんどルビッチの作品じゃないけど、こういう映画を見るともっともっと映画が好きになる。


Cztery noce z Anna
アンナと過ごした4日間
Cztery noce z Anna


監督 / イエジー・スコリモフスキ
製作 / イエジー・スコリモフスキ
製作総指揮 / エヴァ・ピャスコフスカ、フィリップ・レイ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ、エヴァ・ピャスコフスカ
撮影 / アダム・シコラ
音楽 / ミハウ・ロレンツ
出演 / アルトゥール・ステランコ、キンガ・プレイス、イエジー・フェドロヴィチ、バルバラ・コウォジェイスカ 他
2008年 / ポーランド、フランス


時間軸や男の性質がしばらくわからない。寒々として寂しげな街並み。牛の死体が流れてくる川。台詞は極力少ない。不器用でこんな愛情表現しかできないひとりの中年男の悲喜劇。夜な夜なアンナの部屋に忍び込み、とれかけたボタンを付け直したり塗りかけのペディキュアを塗ってあげようとしたり、完全に変質行為なのに必死で気の弱い男を見ていると不思議に切なく哀しい。そして当然のことだけど、この愛は成就しない。この愛情表現がもしかしたら刑務所にいたときの男の頭のなかのしあわせな体験(もしくは悪い夢?)だったのかもしれないとも思わせる不完全さがなんともいえない余韻。


Cristovao Colombo o Enigma
コロンブス 永遠の海
Cristovao Colombo o Enigma


監督 / マノエル・デ・オリヴェイラ
製作 / フランソワ・ダルテマール
製作総指揮 / ジャック・アレックス
原案 / マヌエル・ルシアーノ・ダ・シルヴァ、シルヴィア・ジョルジュ・ダ・シルヴァ
脚本 / マノエル・デ・オリヴェイラ
撮影 / サビーヌ・ランスラン
美術 / クリスティアン・マルティ
衣装 / アデライド・マリア・トレパ
編集 / ヴァレリー・ロワズルー
出演 / リカルド・トレパ、レオノール・バルダック、マノエル・デ・オリヴェイラ、マリア・イザベル・デ・オリヴェイラ、レオノール・シルヴェイラ、ルイス・ミゲル・シントラ 他
2007年 / ポルトガル、フランス


新大陸発見のコロンブスの出生の謎を解く旅。レオノール・シルヴェイラ、ルイス・ミゲル・シンドラをはじめとするおなじみのオリヴェイラメンバーと監督本人と妻のマリア・イザベルが出演。オリヴェイラ自身は今年102歳、撮影&出演当時98歳という驚くべきバイタリティ。現在活躍する監督の誰も太刀打ちできない驚くべき映像センス。海も空も街もオリヴェイラの映画は感動的に圧倒的。シルヴィアと結婚式をあげたポルトの教会のなんと美しいこと。「人生は難しい」という台詞はオリヴェイラの何かの映画にも出てきた気がするけど、オリヴェイラとマリア・イザベルふたりがほほえましく並んでいる姿を見ると幾多の人生の山を乗り越えてきた何物にも変えられない結びつきを感じる。しかし結婚70周年てすごい!