孤高最終受験マンガ「とどろけ! 一番」

一気に下まで行きたい

 「とどろけ! 一番」 のむらしんぼ(月刊コロコロコミック連載)

単行本第1巻(1980年、10月25日発行)
単行本第2巻(1980年、12月25日発行)
単行本第3巻(1981年、7月25日発行)
単行本第4巻(1981年、12月25日発行)
単行本第5巻(1982年、6月25日発行)
単行本第6巻(1982年、11月25日発行)
単行本第7巻(1983年、5月25日発行)
・ここから先はボクシング編!!

・これが四菱ハイユニの製造法だ!!(00年1月5日追加)


ギャグマンガ「つるピカハゲ丸」などでも有名な、のむらしんぼ氏の「受験格闘マンガ」
子供の一番キライなもの、それは試験、そして勉強。
それをあえて題材とし、描ききった宇宙感覚の物語は、当時「お受験」などという言葉もなく、私立中学受験者などクラスで多くて2、3人だったにも関わらず、「コロコロコミック」を読んでいた子供たちに強烈な印象を残して現在に至る。

「ゲーム」という文脈では「ゲームセンターあらし」が、「プラモ」という文脈では「プラモ狂四郎」が、常に話題になり復刻されたりしているのに対し、本作「とどろけ! 一番」は、再販の可能性も薄く、古書店でもきわめて入手困難な作品でもある(私も3冊しか持っていない!)
そこで、「一番」人気保持の一助とするために、ストーリーダイジェストをつくってみた。少しでも「一番」を知ってもらい、これがキッカケとなって復刊されないかなあ……ぜひされてほしい、というのが私のささやかな願いである。


それでは、
本作を読みたい者も走れ!! 国会図書館へ!!!
(99.0605、滑川)




単行本第1巻(1980年、10月25日発行) 月刊コロコロコミック1980年2月号〜7月号掲載

・オレは一番だい!
 代々世駅にある大日本進学塾では、日曜日も小学生たちが中学受験のために勉学に励んでいる。
ここに入ってきたのが、名門中学の難関突破を目指すエリートとはイメージのかけはなれた
破天荒な小学生・轟一番だ。
彼はガールフレンドの明日香とともに、開布中学を狙っている。
【敵】
「今まで百点しか取ったことがない男」、家は大金持ちの常仁勝。一番の 終生のライバルとなる。
【勝負方法】
 「主要五科目デスマッチ」。
それは明治三十四年、塾の創始者多田励無(はげむ)先生が「トップは常に一人でなければならない」という考えから始めた、どちらか一方が破られるまで戦う恐ろしい試験なのだ。
【敵の秘技】
 絶対に芯の折れないハイポリマー使用のシャーペン
「パーカーシャープペンシルローリングサンダー」
【一番の秘技】
 書いても書いてもすりへらないまぼろしの鉛筆「四菱ハイユニ 」と、それを利用した、問題文と設問を両方読み両手で解答を書くという「秘技、答案二枚返し」
【ポイント】
 秘技にて勝利する一番。「いったいあいつはなにものなんだ」といぶかる常仁 の前に、「ゲームセンターあらしじゃい」との声が。見ると、ゲームセンターでインベーダーに興じる一番の姿があったのだった。


・入試決戦
 二月に入り、いよいよ開布中学入試の日がせまっていた。
入試前に一番との決着を付けておきたかった常仁勝だったが、大日本進学塾のテストはすべて終了していた。しかも秘技・答案二枚返しを封じなければ、勝ち目はない。
 そしていよいよ入試の日がやってきた。
【敵】
 常仁勝。彼はどうするかというと、
「しっかし、このゴリポン君っておもしれえな」
 ・・・と試験前にコロコロを読みながらくつろぐ一番に対し一対一の勝負を申し込むのだった!
【勝負方法】
 ほかの受験者の試験が終わった後、開布中の屋上で勝負。
 「筆記用具は自由。入試五科目いっきょに全部できた方の勝ち」というスペイ シーなルールのもと、試合開始。
【敵の秘技】
 「常仁式速記法」で対抗する常仁だが、一番の二枚返しには勝てない・・・と思いきや! 屋上に吹く突風で答案が飛ばされ一番は二枚返しが使えないのだ! さらに常仁は「筆記用具が自由」だからといって、タイプライターを使うのだった!
【一番の秘技】
 「秘技パート2・消える魔しんゴッドハンド」
 あまりのスピードのために、手が消えたように見えるのだ。だが激しい秘技に、体力も限界に達する一番。しかも雪が降ってきた!
 手がかじかんで動かなくなる両者・・・。そこに明日香から投げられた手袋。
 愛のプレゼントで乗り切る一番。 「ジャンピングフィニッシュ!」
 こうして一番はまたも勝利するのだった。
 受験の合否はそっちのけで。
【ポイント】
 常仁勝のとぼけた申し出に「なにいってんだ寝ぼけるなバカ」といわんばかり の試験監督。そこへ、「やらせてあげなさい」としゃしゃり出てきた男があった。
 この男こそ、大日本進学塾塾長、多田元春(がんばる)。日本進学協会の影の総理と呼ばれた男だ。「影の総理」に言われちゃ従わざるをえない。屋上での勝負が決定するのだった。


・ショック! 合格発表
 開布中学合格発表の日。
 明日香は合格。常仁勝もとうぜん合格。しかし意外なことに一番の名前がない!
【敵】
 常仁勝
【勝負方法】
 今回は勝負はない。別のところに力点がある。
【敵の秘技】
 勝負もないので秘技はない。強いてあげれば常仁の狂気。
【一番の秘技】
 勝負がないから秘技はないんだってば。強いてあげれば一番の数奇でアバウトな運命。
【ポイント】
 「なぜ合格でないのか」と怒る一番に、校長は彼の答案を見せる。それは全問 正解、全部百点。ではなぜ不合格に・・・。「わたしが説明しよう」そこにまたしゃしゃり出てくる多田元春。
 なんと一番のお母さんが出生届けのミスをしていたため、一番は実は小学 五年生だったというのだ。「ゆるしておくれ、母ちゃんがバカだったよ」 ホントにバカだ
 でもまあ自分のミスで落ちたわけじゃなし、明るく気を取り直してもう一年や りなおそうとする一番であった。
 大日本進学塾に元気にやってくる一番。
 しかし、そこに「開布中入学許可証」を持って、常仁勝が現れるのだ。
「みせびらかせに来たのか?」くやしがる一番の眼前で、その許可証をビリビリに破り捨てる常仁!
 「おまえとの勝負はまだついていない!」
 「おまえをこの手で倒すまで、オレ一人このまま去るわけにはいかんのだっ!」

 小学生で浪人するのか?
 読者の疑問を置き去りにして、うおおーっと試験勉強にとりかかる常仁勝であ った。


・カンニングに負けるな
 一番に挑戦しに、ある男がやってきた・・・。
 受けて立つ一番。だが彼はめがねをかけて試験を始めるや否や、わずか十分で 問題を解いてしまったのだ。
 同じ百点だが解いた時間の早さで勝ちを主張する男。だが常仁勝は彼がカンニ ングの天才であることを喝破するのだった。 カンニングの秘密がめがねにある と主張したものの、そこにタネはなく、その男・虎野巻二郎は一番に再戦を申し 込むのだった。
【敵】
 自称「受験界の魔術師」虎野巻二郎。他称は「カンニングの天才」。
【勝負方法】
 普通のテストの早さと正確さを競うらしい。
【敵の秘技】
 なんと、巻二郎は試験前に一番と握手をして、手首の関節をキ メてしまう。
秘技が使えなくなった一番に、巻二郎のカンニングがせまる!
【一番の秘技】
「四菱ハイユニマグナムショット」(ただ鉛筆を投げる技)で、一番は巻二郎の耳についたイヤホンを引きちぎる! 巻二郎は、時計に仕込んだマイクロテープレコーダーから流れる解答を、極細のコードで耳から聞いていたのだ。手のケガなどものともせず、両手でやるゴッドハンド 「ジャンピングダブルゴッドハンド」で完全勝利をモノにする一番であった。
【ポイント】
 カンニング巻二郎のデータを採取しようと自宅の巨大コンピュータにアクセス する常仁。しかしコンピュータは「カイトウフノウ」を繰り返すばかりだ。
 やっとの思いで引き出した情報には、「カンセツワザヲトクイトスル」とある 。「試験における関節技などありうるのか・・・?」疑問に思う常仁。どう考え てもないと思うが、それは戦国時代となった受験界を理解していない凡人読者の 発想だ。


・なぐりこみ、スパルタ塾
 テレビで殴る・蹴るなどの暴力があまりにもひどいスパルタ塾「鬼瓦の門」を 見る一番と明日香。一番はこの塾に見学者として潜入、たまりかねて鬼瓦に挑戦 する。
【敵】
「鬼瓦の門」塾長・鬼瓦と、彼の教え子・百郎太
【勝負方法】
 マークシート方式。
【敵の秘技】
「百キログラム答案法」。百郎太の筆力が生む強力な横 ゆれで、相手が答案を書くのを妨げる技。劇的にインチキな技である。
「たてゆれメガトン答案法」。思いっきりジャンプしてたてゆれを起こし、敵の答案を書けなくする。奇蹟的にインチキな技である。
【一番の秘技】
 「スケボー横流れ二枚返し」。百郎太の横ゆれに スケボーで動きを合わせ、二枚返しを行う。「高層ビルが地震のときにゆれに合 わせて動く」ことをヒントにする。
 だが「たてゆれメガトン答案法」にはこの秘技は通用せず、ピンチのときにか けつけた常仁のヨーヨーに鉛筆を結び付けた「秘技・マークシ ートヨーヨー書き」で難を逃れる。
【ポイント】
 当時、私の記憶が確かなら、ヨーヨーブームはすでに終わっていたはず。


・血まみれ、日米決戦
 常仁勝の従兄弟で、アメリカ受験界でナンバー1の男が一番に挑戦する。
【敵】
 間久堂鳴人。アメリカかぶれの受験戦士。
【勝負方法】
 「魔の三百公式暗記試験」。東大生が睡眠不足と過労のため死んだというテスト。
【敵の秘技】
 催眠暗記テープ。眠っている間に三百の公式をすべて暗記できる。間久堂鳴人 はふだんから勉強に関する歌詞の入った歌を「ミュージック学習ウォークマン」 で聞いている科学万能主義者だ。しかしどんな歌だ? 少なくとも音楽的センス はギセイにしてるんだろうな、受験のために。
【一番の秘技】
「四菱ハイユニ 血染めクラッシュ」
徹夜で公式を暗記した一番が、睡魔を断ち切るためハイユニを両膝に突き立てた ! しかし鉛筆を抜くと血が吹き出してしまうため、答案が書けなくなってしま った一番は、自らの血で答案を書くのだった。
【ポイント】
 アメリカ=科学、合理性、日本=特攻精神という素晴らしい図式によって描か れた名勝負だ。


単行本第2巻(1980年、12月25日発行) 月刊コロコロコミック1980年8月号〜12月号掲載

・真夏の夜の夢
 夏休みだが、一番たちは今月もテストだ。
【敵】
 受験生なのをいいことに、わがまま放題している甘井太郎。妹をこきつかって靴をはかせたりしているとことんわがままなヤツ。
【勝負方法】
 サマーナイトテスト。お寺の本堂で行うという以外は、とくに変わりばえのし ないテスト。たぶん多田元春塾長の単なる遊び心であろう。
【敵の秘技】
 カネで不良を雇い、一番を試験に行かせまいとお化け屋敷に監禁する。
【一番の秘技】
 やっとの思いでお化け屋敷を抜け出した一番は、特別に「四菱ハイユニスタンプセット」を使うことを許可される。
テストがすべて記号選択式なので、1本1本の指にはめたAとかBとかのスタンプで、ピアノを弾くように記号を打ち込んでいく。
 甘井太郎はわがままで勉強以外すべて人任せにしていたため床に落として折っ てしまった鉛筆が削れず、負けてしまう。
【ポイント】
 一番にはふだんぜったい使うはずのない「スタンプセット」の使用は許可した くせに、鉛筆を折ってしまい「新しい鉛筆を貸してくれ」と願い出た甘井には「 受験憲法第十七条により、筆記用具は自分のものを使うべしとある・・・。すぐナイフで削りたまえ」と言って、貸してくれない多田元春塾長。
単なる意地悪野郎か、なんなのか、なんだかわからない。


・一番VS一番
 9月期模擬テスト順位発表。いつも2番の常仁が、今回は3番! そして一番は2番! そして1番にもう一人の一番が・・・。一番よりスゴイ技を使うコイツ、何者だ・・・?
【敵】
 もう一人の轟一番。本名は、轟二番
【勝負方法】
 暴風雨と雷の中での試験。
【敵の秘技】
 「五菱ハイユニ」、「秘技、答案三枚返し」、「トリプルゴッドハンド」。 すべて一番より少しずつうわまわる秘技を持っている。
【一番の秘技】
 暴風雨の中で答案が風に飛ばされるためゴッドハンドが使えない。そこで「四菱ハイユニダブルスマッシュ」(黒板に鉛筆で答案用紙を打ちつける)
そして次に、「反転、ダブルゴッドハンド」
雷によって停電が起こっても、稲妻の一瞬の光を利用して答案を書き上げる、「秘技・サンダーフラッシュハンド」。
【ポイント】
 明日香が交通事故にあってしまい、試験を棄権するかに見えた一番だが、彼女 の「早く試験に行って」という言葉で闘志爆発。四菱、五菱ハイユニに含まれた 特殊強化鋼に雷がおちる危険性に対し、もう一人の一番(二番)は試合放棄、だ が明日香との約束に命をはっている一番はみごと試験をやりとおすのであった。
もう一人の一番は、実は一番の従兄弟、轟二番であった。なんで一番が従兄弟を 最初見たときわからなかったのかは不明である。


・決戦! 1VS3
 全日本試験チャンピオン大会への出場が決まった一番だったが、野球をやっているときに右手を負傷してしまう。左手だけで、勝てるか一番!
【敵】
 テストにプロレス技を使うというおそろしい三つ子の兄弟・プロテス三兄弟
【勝負方法】
 全日本試験チャンピオン大会。別名、だれも百点を取ったことがない、「ま ぼろしの百点」。
【敵の秘技】
「エルボースマッシュ答案法」
 プロレスのひじ内からあみだした必殺技。ひじを支点にしてすさまじい遠心力で書く。
「トリプル答案がため」
最後の三択問題に解答がないため、三兄弟がそれぞれ違う記号にマークすればだれか一人は百点を取れる、というコソクな技。
【一番の秘技】
「エルボードロップ二枚返し」
 プロテス三兄弟の「エルボースマッシュ答案法」にヒントを得て、使えない右手側のひじに鉛筆をくくりつけて行う答案二枚返し。
「四菱ハイユニ時間差ミサイル」。 どうしても答えが出ない問題に、一度は運を天に任せて鉛筆を投げつけた一番だったが、「答えなしもまた答えなり」という格言を思い出し、一度飛ばした鉛筆に四倍のスピードで鉛筆を投げつけ、撃ち落とす技。
【ポイント】
 一番は解答を書かなかったにも係わらず、百点を取る。なぜかと言えば、最後 の問題には解答がなかったから、どの記号を選んでもすべてが間違いだったのだ 。
※本当の試験でも、数学で「解答がない」ことはありますが、「解なし」と書か ないと点にはなりません。


・ピンチ! 秘技しばり
 九月二十四日は一番の誕生日(のむらしんぼ先生と同じ日)である。誕生パーティの日、まっぷたつに折れた血まみれの鉛筆が送りつけられてくる。いったいだれが・・・?
【敵】
 大日本進学塾の新任教師、沖田総一。一番の秘技を封じるためにやってきた。
【勝負方法】
 秘技しばり試験。一番が秘技を使えないように、秘技しばりギブスを使わせて ジャンプできなくなる状況で試験を行う。
【敵の秘技】
 「秘技しばりギブス」なんてものをわざわざ開発した根性
  【一番の秘技】
 ジャンプできないという条件のため、時速百三十キロで向かってくる二つの球 に書かれた文字を読み取る特訓で完成させた「新二枚返し」
今までの二枚返しより、二分三十秒早く正確に読み取ることができるのだ。
 一番のはげしい動きと精神力がギブスに作用し、破壊。ジャンプ可能になった 一番は、「新秘技スーパー二枚返しボンバー」でフィニッシュをキメるのであった。
【ポイント】
 沖田総一が秘技しばりにこだわる理由は、自分が受験戦士だった頃、秘技を使 いすぎて右腕がボロボロになってしまったからなのだが、このリクツからすれば 一番は何をどうあがいても秘技はやめなければならない。だが多田元春塾長は言うのだ。

「一番はこれからどんなに秘技を使おうと、君のようになることはないだろう!」
「一番の受験精神はもはや肉体をこえているのじゃ!」

これで一件落着。

なお、今回四菱ハイユニの製造法も披露されている。

・これが四菱ハイユニの製造法だ!!

四菱ハイユニをつくるポイントは、特殊強化鋼と液体鉛の混合比にある。
56.2対43.7の調合。わずかのくるいもゆるされない。
それに特製ハナクソを加え、よくかきまぜ、
最後に約203度の火にあぶり、ゆっくりとひきのばしていく。
そうしてできた芯でマキワラを真っ二つにすることができれば、その強度が保証され、完成する!!


・女に負けるな!
 甘井太郎の妹美智子が、熱でうなされている。彼女は、最近通い始めた「尼僧根数(アマゾネス)学院」というところで五百問暗記というシゴキを受けてしまったのだ。
次にそのシゴキを受けるのは、美須ヒロ子というかわい子ちゃん(死語)だという。
一番は彼女を救うべく、男子禁制の学院へ乗り込むが・・・。
【敵】
 ミス・ヒーロー。美須ヒロ子ちゃんの正体。尼僧根数学院の女王、受験戦士女子ナンバー1。
【勝負方法】
 大音楽堂で、テスト用紙を百枚ずつ解いていく。
【敵の秘技】
 「ワンダースクラッシュ」。髪に結んだ鉛筆で答 案を書く。手と合わせて計4本。
 「試験秘技阿修羅観音書き」。手が何本にも見 える。だが実はテスト用紙に「男だけに幻覚を起こさせるというペルシャ伝来の 魔の香水、ジャネルの二千一番」がしみ込ませてある。
「あさりちゃん」の室山まゆみ先生も愛用しているという!

【一番の秘技】
 「新ウルトラ答案二枚返し」
 前回の特訓から「新」がついたのか?
「秘技ミラクルラブショット」 詳細は後述。
【ポイント】
 一番は香水の魔力でピンチにおちいり、目を閉じて幻覚を消す。だが目を閉じ ては答案が書けない。とつじょ明日香が、一番と二人でつくった愛の曲「がんば れ一番」をピアノで弾き始める。するとぐうぜんにも、ピアノか ら流れる音階を数式におきかえていくと、このテストの問題となっていたのだ。
明日香とのコンビネーションに「秘技ミラクルラブショット」と名付けてキメる 一番。愛の奇跡が勝ったのだ。

※「ぐうぜん」という点において、「一番」全作品中もっともヒドいオチだと思 う。おもしろいけど。


単行本第3巻(1981年、7月25日発行) 月刊コロコロコミック1981年新年号〜5月号掲載

・受験戦士総突撃!
吉良塾にかよっている浅野くんが、塾長にカッターで襲いかかるという傷害事件を起こした。おとなしい性格の彼がなぜ?いぶかる一番に、警察で「うらみをはらしてくれ〜!」と嘆願する浅野くんであった。実は吉良塾は、ビッグコンピ ュータで塾生がどんなにがんばっても百点が取れない問題をつくりだし解けないと法外な罰金(1点一万円)を取っていたのだった。
受験を不正な金もうけに利用していることを知り、怒る一番は「吉良塾を潰す」ことを決意する。
【敵】
 吉良塾の塾長吉良塾試験軍団
【勝負方法】
 吉良塾試験軍団との主要五科目千枚テスト、およびビッグコンピューターとの 対決。
【敵の秘技】
 問題が読めないほどのスピードで繰り出すビッグコンピューターの問題
【一番の秘技】
 問題を止めるために、コンピューターを止めなければならない。「四菱ハイユニ真芯ショット」でコンピューターにハイユニを 突き刺し、それにコードを接続して「四菱ハイユニマシン アニマル」(ただショートさせただけか? しかしそのわりには大爆 発が起こる)によってコンピューターを止め、問題を解く一番。「コンピュータ ーをぶっこわす」時点で反則だと思うが、そんなことは一番と鼻たらしてる小学 生読者(と私)には関係ないのだ。
【ポイント】
 一番を始め、常仁勝、明日香、甘井太郎、間久堂鳴人、百郎太、プロテス三兄 弟、カンニング巻二郎、ミス・ヒーロー、轟二番、と受験戦士が大集合。吉良塾 に討ち入りするのだ。それぞれの能力を使って戦って、カッコいい。


・ライバル決戦
 常仁勝は、父親から常仁財閥の名誉をかけて、一番を倒しトップになることを言い渡される。従業員十万五千人が、常仁がトップになることを望んでいるのだ。一番と常仁、再び激闘へ!
【敵】
 常仁勝
【勝負方法】
 大日本進学塾ベストチャンピオン決定戦。
【敵の秘技】
 アポロのシミュレーターの中でも答案が書けるように特訓し五十倍にスピード アップした、「ローリングアポロスマッシュ」。
【一番の秘技】
「四菱ハイユニ居合スパーク」。 何回も橋か ら河に飛び込む練習をして、空中でハイユニを抜いて水中に没するまでにまたお さめる素早さを習得した。
【ポイント】
 常仁の父親のさしがねで、常仁が負けそうになったためミスターアポロがアメ リカで開発されたレーザーガンで一番の手を直撃。勝負をジャマされた常仁は自 らの手を窓ガラスに突っ込んでハンデをなくす。たまりかねた父親が「塾長、お 願いだ、止めてくれ」と叫ぶが「それはできん!」

「これは男の勝負だ。もうだれも止められない」

 言い切る塾長であった。


・命をかけた受験
 ついに開布中学受験の日がせまる。一番の前にまた邪悪な受験戦士の影が・・・。
【敵】
 落内豪角(おちないごうかく)
【勝負方法】
 開布中学入学試験。トップ合格者を明確にするため、特別決勝試験を行う。こ れは1対1の勝負だ。
【敵の秘技】
 野球の技を取り入れた鉛筆攻撃、「消える鉛筆投げ」
視界から消えるほどの極端なカーブを描くため、一瞬消えてみえるのだ。この技 を使い、「手がすべった」と言って敵に鉛を投げつける。これで三ヶ月の重症を負わされたヤツもいる。
 「魔の金属バット」。敵に金属バットをふりおろすというダイレクトなワザ。
【一番の秘技】
「秘技、玉とおし」。ピッチングマシンから発射される五十円を、ハイユニで受ける特訓。
「ウルトラタイフーンゴッドハンド」風速 二百五十メートルのゴッドハンド。一番自身が台風の目になり、空気の流れを変 えたため、消えた鉛筆が再び姿を現した!
「四菱ハイユニきざみ受け」
 豪角の「魔の金属バット」も四菱ハイユニが受けたら折れてしまった。すごい ぜ一番!
【ポイント】
 一度は豪角の「消える鉛筆」が一番の心臓に突き刺さる! しかし明日香からの愛のお守りが守ってくれた! ここから一番の反撃が始まる!
 開布中学受験という一大イベントから、野球を試験技に取り入れるというすんバラシイキャラが登場し、本作がもっとも油が乗り切っていたころの作品と言える。


・合否のゆくえ
 開布中合格発表の日。なぜか掲示板には大きく「なし」の文字が・・・。校長宅にみんなで押しかけ、真相を聞き出そうとするがいきなり爆発が! 何者かの妨害だ。恐ろしくて口を割れない校長。謎のルービックキューブが事件を解くカギに。
【敵】
 PTA連合会会長・黒幕大造。彼は開布中入試問題をルービックキューブにして解説書とともにPTAに多額の金で配布、暴利をむさぼっていたのだ。
【勝負方法】
 明治三十六年、大日本帝国大学の試験。
 当初は大造の終生のライバルである多田元春が対決を申し出たが、大 造の「しびれ墨汁攻撃」であえなくリタイヤしてしまう。
【敵の秘技】
 「円月筆法まぼろし書き」。すごい勢いでしびれ 薬の入った墨汁を敵に飛ばす技。
【一番の秘技】
 「変形二枚返し」
 右手で墨を受け、左手で書く、これぞ答案二枚返しの応用技である。
「秘技、レインボーストーム」 いったん池にお ちて濡れた一番の激しい動きで水しぶきが舞い、周囲に虹が・・・それとともに、大造の答案もぐしょ濡れになってしまい、ゲームオーバー。
【ポイント】
 しびれ薬で池におちた一番がくずし字を水の流れとの一致で読み取ったり、多 田元春先生が現役復帰したり、入試問題が当時流行っていたルービックキューブ に仕込まれていたり、もりだくさんの内容である。
 最後に、「こんな不正をする中学には行きたくない」と全員合格証を破いてし まうが、
「私も開布中やめちゃおっと」
のひとことでやめてしまった明日香はキャラクター中もっとも度胸のある女の子ということになるであろう。


・アニマル仮面参上
 犬やネコなどの動物を勝手に捕まえてはヒドい実験に使う医学エリート塾の塾 生たち。怒った一番は、アニマル仮面に変身して動物たちを守る。
【敵】
 医学エリート塾
【勝負方法】
 五分以内にできない場合は特大注射が尻を直撃する試験。
【敵の秘技】
「解剖秘技、メスグラインダー」
「医学秘技、注射連続打ち」
【一番の秘技】
 「裸二枚返し」
 「ゴッドハンド」
「スーパーリコビタン二枚返し」麻酔薬を注射 したつもりが、スーパーリコビタンDという栄養剤を注射してしまったためパワ ーアップした一番が行ったワザ。
【ポイント】
 この回だけ受験とあまり関係なく、一番がアニマル仮面に変身する理由もほと んどない。内容もコメディタッチでふだんとぜんぜん違う。なぜかは謎。後のコ メディ・ギャグ路線転向への布石と言えないこともない。


単行本第4巻(1981年、12月25日発行) 月刊コロコロコミック1981年6号〜10月号掲載

・ミスターロデオの挑戦
【敵】
 ミスターロデオ。間久堂鳴人を破ったほどのアメリカの受験戦士。
【勝負方法】
 「日米親善テスト試合」として行われる、たし算マラソンテスト。次から次 へとぼう大な量の数を足していく試験。休むひまなどないマラソンランナーの ようなテスト。しかもハワイのワイキキビーチに十字架で縛りつけられ、潮が 満ちてくるピンチにも対処しなければならない。
【敵の秘技】
 「ロデオ二枚返し」。長い鉛筆の両はじが削られてい て、それを高速で回して書く。
【一番の秘技】
 「日本海海戦うず潮書き」
 どんどん水かさが増していき溺れそうになる一番。「自分が台風の目になれ ばいい!」十字架の後ろを鉛筆で持ち替え、回転させ水をかいて巨大なうず潮 をつくる秘技。
【ポイント】
 「撃たれた傷を早く直すのはおまえの勝利が一番だ・・・!」ロデオを励ま すローガン大統領。
 当時、射撃によるレーガン大統領の暗殺未遂事件があった。


・登竜門一族
 さいみん針をしかけてあるニセ「一番はちまき」を受験生にバラまく謎の男 たち。それをしめた子供たちはみな催眠状態になって、ムリに二枚返しを行う などして次々と倒れてしまう。これは試験で日本を支配しようとする巨大な闇 の組織、登竜門一族の仕業であった。一番は怒るが、明日香を人質に取られ、 試合場の「魔王山」へ向かっていく。
【敵】
 登竜門一族の頭領、六法禅書と主要四科目衆の一人「国語の鬼」
【勝負方法】
 登竜門一族のアジト? 魔王山での試験対決。
【敵の秘技】
 「秘技登竜落とし」。「一番」中秘技の中でももっと もスゴさがよくわからない。後期「リングにかけろ(車田正美)の「フィニッ シュブロー」に近い。
【一番の秘技】 「秘技スーパースクリュー二枚返し」
 明日香を助けるためにハイユニを投げつけ、残る鉛筆は1本しかない。そこ で、はじっこを歯で削り、一本で二本ぶん使って鉛筆を猛回転させて行う二枚 返し。
【ポイント】
 「影の組織」として今後もたくさん出てくるかと思われた「登竜門一族」、 次回の「サマータイムスーパーテスト」以来出てこなくなった。ちょっとしり すぼみではある。


・サマータイムスーパーテスト
 登竜門一族の手下・超博士とその息子が登場。一番を苦しめる。炎天下で行うテストの特訓のため、前日熱い風呂に入る一番は風邪を悪化させてしまうが ・・・。
【敵】
 超博士その息子・超特一
【勝負方法】
 サマータイムスーパーテスト。
 クーラーに慣れきって根性をなくしている受験生を叩きなおすため、塾長が 考案した炎天下の屋上でやるテスト。
【敵の秘技】
 「コブラボールレーザー」
 答案用紙に触れずにレーザーで字を書く。鉛筆をほとんど動かさずに書ける ので、二枚返しにも負けない。
【一番の秘技】
 「回転レシーブ書き」
 たいした意味はないようだ。さかさまになって書く。
【ポイント】
 超博士には登竜門一族のハードな教育についてゆけず、登竜の谷から身を投 げて自殺した息子がいた。彼をモデルにしてつくったロボットが超特一だった のだ。我を失った超博士は、自分の息子をモデルにしたロボットにもかかわら ず特一を暑い中酷使して回路を加熱させ、彼はバーストしてダウン。しかも間 違って外国語でプログラミングしていたので、解答がすべてラテン語、失格と なった。「親の見栄が子供を苦しめる」が今回の教訓。


・疑われた一番
 進学塾の模範解答が盗まれる。疑われ、三ヶ月の謹慎を申しつけられた一番 は、真犯人究明に乗り出す。
【敵】
 佐々木辻郎。勉強より剣道が得意で、汚いヤツ。
【勝負方法】
 幽気ケ原での決闘(試験ではなく、ホントの決闘)。相手は佐々木を始め三 十人の剣道部員。
【敵の秘技】
 真剣。つまり本物の日本刀。危ないゾ!
【一番の秘技】
「四菱ハイユニマグナムショット」
「一番流二人返し」。四菱ハイユニで敵を両断!(みねうちだけど)
「四菱ハイユニヘッドアタック」。四菱ハ イユニで頭突き。
【ポイント】
 問題の最後がミスプリントで、イ、ロ、ハ、を並べろと書いてあるが問題で はA、B、Cしかない。知らずに模範解答を書いた佐々木はカンニングがバレ 、御用。
 開き直った彼は一番に決闘を申し込むが、四菱ハイユニで武装し剣道部と戦 う一番の姿には試験戦士をうわまわる「夜中に見たナゾの深夜映画」のような 不思議空間が漂っていた。


・占い試験戦士
 大日本進学塾に入ってきたのは謎の転入生。・・・というかシリーズ中もっ ともわけのわからない男・判舎紋邪だ。
【敵】
 占い試験戦士・判舎紋邪(はんじゃもんじゃ)
【勝負方法】
 漢字読み取り千題試験。
【敵の秘技】
 「必ず0点を取る!」
 「5分以内に死ぬ!」
 「もし二枚返しを使えば失明する!」
 などと不吉なことを次々に言い、影で自分が実行して占いの恐ろしさを植えつけるというコズルイやり方。「失明する!」という予言は、判舎紋邪のはな った目潰しの粉が二枚返しの空気にすいよせられ、一番の目を直撃するという モノ。
【一番の秘技】
 目潰しの粉で目が見えなくなった一番。だが鉄骨事故で一番をかばってケガ をした常仁の遺影を持った甘井太郎を目撃。常仁は死んだのか? 自分をかば って・・・。悲しみの涙で目潰しの粉は洗い流された!
 「答案逆クロス二枚返し」
 これによって粉は判舎紋邪の方に逆流し、彼自身は目が見えなくなって、負 けてしまう。
 なお、常仁の遺影は甘井と明日香の仕組んだドッキリであった。
【ポイント】
 私がシリーズ中最高傑作のひとつにあげたい作品。まず判舎紋邪の異様な風体に圧倒される。全体的に非常にクエスチョンが沸き起こる話ではあるが、「予言をしてからそれを実行する」、「占い」というわけのわからないもので相手に恐怖を与える、「それじゃあ単なるサギかと思えば、占いの勉強のために古い中国の書物にしょっちゅう目を通している」など、占い師の中でもアヤシゲな方の典型キャラとなっており、案外オカルトの本質を付いているかもしれ ない。


単行本第5巻(1982年、6月25日発行) 月刊コロコロコミック1981年11月号〜82年3月号掲載

・闘魂! 病の一番
 盲腸になってしまう一番。過激な運動ができないため、二枚返しは使えない。
 敵の楽志手入郎は病院に忍び込み、一番のカルテを見て盲腸であることを知る。そして一番を無理やり風呂に入れ、ますます悪化させてしまう。
【敵】
 楽志手入郎(らくして・はいろう)。「これからのテストは競輪競馬といっし ょ、予想の時代!」というポリシーのもとに試験の問題予想を売りさばく男。努 力を重んじる一番は、そんな彼が許せない。
【勝負方法】
 日曜日の統一模試。
【敵の秘技】
 一番をムリヤリ風呂に入れるなどの、汚い手。
【一番の秘技】
 盲腸で二枚返しのできない一番がとっさに考えた技。
「秘技、答案二枚重ね」。同じ答えの解答らんを重ね合わせ、一度に二度ずつ解答していく。四菱ハイユニの鋭い芯だからできる技で ある。
【ポイント】
 「マイコンで過去十年間のデータを調べに調べあげた予想本」を売りさばくという楽志手入郎の方法は、実際に行われている。問題文を読まずに設問を解くことを教えている予備校教師もいた。私はむしろ「試験問題を解く」ということを違う角度から見ていて、面白いと思っていた。


・エリートの弱点
 ノーベル賞を取るために設立された塾・ノーベル塾のエリートが一番に挑戦す る。
【敵】
 湯川慎一郎。ノーベル塾の塾生。
【勝負方法】
 なんかの試験大会。詳細は忘れたから、たいした条件はなかったハズ。
【敵の秘技】
 「秘技、金ふぶき」。試験中に金をバラまいて、集中で きなくするという秘技というより気が狂ったとしか思えないワザ。
【一番の秘技】
 湯川にかつて侮辱されたエリート塾の少年が火炎びんを投げつけたため、答案 用紙に火がついてしまう。一番はおしっこをひっかけて消すがエリート意識の強い湯川にはそれができなかった。二枚返しの風圧で濡れた答案を乾かしながら書く技、それが「イエローウォーターフィニッシュ」
【ポイント】
 一番の「ばかになってりこうに勝つ」というセリフがキメ。まあサラリーマン にも通用しそうな人生訓ではある。
 常仁がかつてノーベル塾に入っていたような伏線があったが結局関係なかった 。


・最高のお年玉
 スペースシャトルの破片が日本に落ちてくる。シャトルを覆う特殊物質スーパ ーセラミックはアメリカが極秘に開発した素材であった。一番は冬山での座禅修 行中偶然これを拾ってしまい、新素材の鉛筆をつくる。CIAは表沙汰にせずこ れを取り返すため、刺客を日本に送り込んだ。
【敵】
 ミスターコスモスサンダー。アメリカ航空宇宙局パイロット養成塾ナンバー1。NASAの試験戦士ナンバー1なのだ。
【勝負方法】
 無重力状態のドーム内で、問題が書かれていくボールが打ち出されてくる。こ れをかわしながら問題を解いていく。
【敵の秘技】
「スカイラブミサイルアタック」
【一番の秘技】
 「一番流仁王立ち」自分の服をドームのカベにハイユニで止める。これならむかってくるボールに振り回されることはない。
「秘技、ニューパワースクリュー書き」
【ポイント】
 一番がセラミックを使用して新兵器の三段式アンテナペン(ネオ四菱ハイユニ)を開発したところが今回の見せ場。母ちゃんのダイヤの指輪を使ってセラミックを研磨し、加工するという荒技を見せた一番にコスモスサンダーは感激し、「すばらしい道具はすばらしい人間が持ってはじめて価値があるんだ」と去っていく。


・魔のバイオリン
 高級バイオリン・ガタリーニのニセモノすり替え疑惑。
 クラシックファンの常仁がバイオリンニスト・米渡勉の弾く音色を聞いている うちに、一番が音の変化に気づき、ニセモノにすり替えられていることに気づく 。トボけた米渡と一番は勝負へ。
【敵】
 米渡勉(べいとべん)。クラシックハイアカデミーの最優秀生。
【勝負方法】
 音楽試験の勝負。パノラマサウンドのスピーカーから出るさまざまな音のなか から、五線譜に交響曲のバイオリンの部分だけを書き出していく。
【敵の秘技】
 一番に負けそうになった米渡、ガタリーニを操作することによって一番も観客も深い眠りにいざなおうとする。
【一番の秘技】
「ネオ四菱弦楽四重アタック」 スーパーセラミ ックネオ四菱ハイユニをバイオリンの波長に合わせ、両耳に一本ずつ突っ込む。
するとセラミックが震えてバイオリンの音だけが聞こえるのだ。
【ポイント】
 一番「聞け〜っ、このはげしいベルの音!」「眠いときには目覚ましだ これ なら眠りに落ちることはない」
 ・・・というわけでピンチを切り抜ける一番。
「どんな名器でも それを奏でる人間の心が清くなければ汚れた音色となるのだ 」
※当時、ガダニーニというバイオリンのニセモノ疑惑が話題となっていた。


・熱闘! サバンナ
 動物園のプレゼントで、ケニア招待券が当たる一番たち。ケニアでも試験対決 だ。
【敵】
 ナムルシンバ。マサイ族の中でも、超人的な体力を誇る。野口英世に憧れ、彼 の写真をペンダントに入れている。ケニア医学塾塾生。日本へ留学して、医学を 勉強するのが夢だ。
【勝負方法】
 ケニア自然動物公園をかけるマラソンテスト。猛獣から身を守りながら戦う地 獄のテスト!
【敵の秘技】
 「回転ヤリ投げ書き」
「ジャンピングアフリカーナ回転書き」
 ヤリの先についた鉛筆で原稿を書く。
【一番の秘技】
「ワニを利用しての八そうとび」。ワニのい る河を渡るときの一番の秘技。
 毒蛇の襲来を、鉛筆を振り回す音でけちらすナムルシンバ。一番は、「ウルトラタイフーンゴッドハンド」の風圧でヘビを蹴散らす。
「秘技、ネオ四菱大車輪」
 いなごの大群の流れを大車輪のタテ回転でを変える自然界に挑戦するワザ。
【ポイント】
 「勝てなければ日本への留学はナシ!」と言われたナムルシンバが、バスから 落ちて毒蛇に噛まれた甘井太郎を助けるために試合そっちのけにするところに、 涙がキラリ。


単行本第6巻(1982年、11月25日発行) 月刊コロコロコミック1982年4月号〜9月号掲載

・赤いえんぴつの魔手
 強大な組織の力を使って国を動かそうとたくらむ集団「赤いえんぴつ」リーダ ーとの対決。
【敵】
 天下取郎。受験グループ「赤いえんぴつ」のリーダー。
【勝負方法】
 巻物試験。問題用紙がそのまま一本の巻物になっているという膨大な量の試験 。普通の紙と違うので二枚返しは使えない。 しかもこの答案には何も書かれて いないのだ!
【敵の秘技】
 実はあぶり出しの試験なのだ。
激しいヒジでのコスリによって、熱を加えて問題文をあぶりだす。
【一番の秘技】
 慣れていない一番は、天下のマネをしてもさっぱりラチがあかない! そこで 熱を持った蛍光灯に巻物を通し、次々にあぶり出されてくる問題を解きまくる。
「秘技、ローリングフィニッシュ二枚返し」。
【ポイント】
 巻物のふんどしを常仁からプレゼントされる。


・正義のカンニング
 横暴な講師に、一番たちはカンニングで対抗する。
【敵】
 超横暴教師、板目退造
【敵の秘技】
 暴力をふるい、日本にひとつしかない特製虎の巻から出題。それを持っていな いとぜったいわかるわけないのだが、百点が取れないと補修授業。重さ七十キロの特製百科辞典を机代わりに、サボテンのように無数の針が付いた鉛筆で特訓させるヒドいヤツ。
【一番の秘技】
 さまざまなカンニング。ほっぺたに付いたごはん粒にビッシリ答案を書くなど 。
「ウルトラタイフーンゴッドハンド」
 突風を起こし先生の裾がはだけて、ふんどしが丸見え! だがそのふんどし自 身に、模範解答がばっちり書いてあるのだ。 はち巻きに仕込んだ映写機で「 一番はち巻きスライドアタック!」
 先生が「わーまぶしい〜!」って・・・。
 何でこんなことするのかは、わからん。
【ポイント】
 受験戦士最大のタブー、カンニングをいくら正義のためとはいえ、やることを 決心する一番。自分を戒めるため、多田元春塾長に自分を何度も殴 らせるのだった。


・ここから先はボクシング編!!
 こっから先は問題の(?)「ボクシング編」です。なんと、「受験マンガ」であった「一番」は、とつじょ「ボクシングマンガ」へと路線変更してしまうのだ。あまりの変貌ぶりにリアルタイムで読んでいた人も、「忘れちゃった」とか「よく覚えていない」という人が多いんじゃなかな。

 わからない人のために説明すると、「受験編」が飽きられて人気が落ちてきたのか、本作はとつじょ途中から主人公の一番がボクシングをやる「ボクシング編」に突入してしまう。そして急速にわけがわからなくなり、終わってしまうのだ。

 正直、「ボクシング編」は一つひとつのエピソードは細かくどうこういうモン ではないので、全体を通してざっと見ていくとしましょう。

 まず「新たなる戦い」で、いつもどおり試験をしようとする一番に、例の多田元春塾長が「ボクシング試験」とかいう、数式が書かれたグローブのパンチをよけながら問題を解くというようなことをやらせる。この時点ではまだ一番は試験の特訓だと思っていたんだが、実はボクシングの特訓だったの だ。

 この回で、ボクシング界の名門「轟家」と「拳闘路家」が抗争を繰り広げており、一番は轟家の跡継ぎであることが明らかにされる。拳闘路家は轟家に火を放ち、一番の本当の両親を殺し、一番は今の母ちゃんに育てられる。実はこの母ちゃんの兄が多田元春塾長で(!)、拳闘路家をあざむくために試験戦士として一番を育てることを勧めたという。
 要は、「本当は野球選手にしたいのにピアニストとして育てられた」とでもいうような複雑な事情を知らずに生きてきたのが一番だったわけだが、試験戦士としての特訓がボクシングに生きていることをさんざん強調される。

 ここまでで、なぜボクシングという西洋のスポーツが剣術や中国拳法モノによくあるように血筋を問題にするのかとか、なぜ両家が暗殺戦などを繰り返さねばならないかの理由はまったく語られない。ひらたく言えばリングにかけろのマネ、で当時は説明ついたのかもしれない。

 次の「秘拳! 水月拳」では、轟家の切り札である「水月拳」の秘密が書かれてある古文書が燃やされてしまうが、多田元春塾長がその秘拳を打てることが発覚。一番は塾長の、ボクシングの弟子みたいになる。だがこ の「水月拳」というのも、「リングにかけろ」のフィニッシュブローに比べるとあまりにインパクトがヨワい。

 で、「運命の敵あらわる」の回で常仁勝が実は拳闘路家の人間であり、一番とボクシングで戦わなければならない宿命が明らかに。まあ展開としては、当然そうなるだろな。

単行本第7巻(1983年、5月25日発行) 月刊コロコロコミック1982年10月号〜83年3月号掲載

「一番VS常仁 最後の戦い!」で二人は対決。一番の水月拳に常仁は「火闘拳」で対抗。死闘の末、「もはや拳闘路もくそもねえ。生まれた家よりオレは友情をとる・・・」と常仁は拳闘路を裏切り、これで轟家と拳闘路家の血で血を洗う抗争はなしくずし的に終結。この後このドラマ「聖龍伝説」みたいな設定はいっさい出てこなくなる。

「頭脳ボクシング敗れたり」の回で、一番はなんと塾にボクシング部を設立、標巣太郎(しるべすたろう)という合理的なボクシングをやる男と戦ったり、

「白銀の刺客」の回でスキーのジャンパーからボクサーに転向しようとする空高翔(そらだかしょう)と対決したりと「いろんなスポーツをやるヤツとボクシングで対決」という、あまり意味のないシリーズが続く。

「一番 サッカーに挑戦」ではサッカーだし・・・。

「百人をうて! 正義のパンチ」では百人と戦う、ということだけがポイントの話だったしそうこうするうちに最終回に突入。

「一番よ永遠に!」では塾にボクシング部を設立したことにイチャモンを付ける教育評論家・出謝張代(でしゃばるよ)が出現、大日本進学塾乗っ取りを計画する。

 最終回は結局試験対決に戻るが、いまさらもとどおりにはできないし、一番は「ボクシングも、試験も」という思想のもとに試験をしなければならないという、さながら「ジョジョ第3部」のディオの「ザ・ワールド」の戦いで、スタンドと波紋双方で戦う承太郎とジョセフのようなとっちらかった状態になるが、あちらほどの整合性はなく、ものすごくヘンなカタチで終わってしまう。

 このような大胆な路線変更は、成功すれば「ダッシュ勝平」や「ジョジョ」のようにさほど気にならないが、人気を盛り返せず迷走を続けると結果的にものすごくヘンな印象を読者に与えるモノだ。

 って、迷走してからの話はどうでもいい。

 とにかく、一番は素晴らしい。小学生の私立中学受験者は、現在の方がずっと 増えていると思う。今の小学生も、もし「とどろけ! 一番」を読めば、少々オ ーバーな展開に苦笑しながらも、心では一番や常仁勝に声援を送るはずだ。

 私は、そう信じて疑わない。

 最後に、最終回の試験対決をデータ化して終わりとしたい。


・一番よ 永遠に!
 塾にボクシング部を設立したことにイチャモンを付ける教育評論家・出謝張代(でしゃばるよ)が出現、大日本進学塾乗っ取りを計画する。
【敵】
 出謝張代とその手下、主要五科目五人衆。国語担当「漢字強(つよし)」、社 会担当、「地理九和志(くわし)」、理科担当「有木目出須(あるき・めです)」、英語担当「愚土毛忍(ぐど・もうにん)」、そして算数担当、五人衆キャプテンの「方程志樹(ほうてい・しき)」
【勝負方法】
 MHKホールで主要五科目耐久試験。問題は、五科目特別参考書から出題される。
【敵の秘技】
 電卓つきのシャープペンシルを使う。汚ねえ。
【一番の秘技】
「必殺二枚返しダブルストレート書き」
ぶ厚い問題用紙を机の上に立て、ボクシングと試験技をミックスした一番だからこそできるスピード技! 風圧でページがめくれるそばから答案を書いていくのだ。
【ポイント】
 一番は塾のボクシング部維持も許され、ヒーローとして子供たちに慕われながら物語は幕を閉じるのであった。

ここがいちばん下です
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