SFおしかけ女房その2

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一気に下まで行きたい

・「タトゥーン★マスター」全3巻 矢也晶久(1994〜97、集英社)
・「弁天様には言わないで」(3)〜(4) 鶴田洋久(1999、集英社)
・「メイ奴家族」全1巻 ちば・じろう(2000、竹書房)
・「ぜんぜんKODOMO」全4巻 ふを留美(1996〜97、秋田書店)
・「ヴィジョナリイ」(3) 遊人(1994、シュベール出版)
・「魔ジカル姉妹(ツインズ)」(1) 前田俊夫(1991、スタジオ・シップ)
・「花右京メイド隊」(1) もりしげ(2000、秋田書店)
・「戦うメイドさん!」(3) 西野つぐみ(1999、ぶんか社)
・「藍より青し」(1)(2) 文月晃(1999、白泉社)
・「メイドロイド雪之丞」 井萩寿一(1999、実業之日本社)
・「全裸(はだか)の女王様」 かかし朝浩(1999、司書房)
・【ドラマ】「千年王国三銃士 ヴァニーナイツ」(最終回まで)(1999、4月〜9月、テレビ朝日)



・「タトゥーン★マスター」全3巻 矢也晶久(1994〜97、集英社)

「ヒビオォーっ!」
「だーっ もうっっ なつくんじゃねェっ!」
ベアーズクラブ、週刊ヤングジャンプ、ウルトラジャンプなどに掲載。
外界との接触を極力断ち、「ハイランド」という秘境で暮らしてきた謎の一族・紋様族(タトゥーンズ)。彼らは身体に施した紋様で自然界の力を制御し、自分のものとする紋様法術という秘術を使う。
美少女の族長・ニマも外界人とは係わらないという掟を守り通してきたが、一族を調査に訪れた民俗学者正枝教授の息子・火々雄の写真を見て一目惚れ、掟を破って日本にやってきてしまう。ニマからいきなり額に婚姻の証「つながりの紋様」をつけられてしまった火々雄は、おしかけ女房ができてしまって迷惑顔。
火々雄は腕っ節の強い硬派な不良だったが、美少女・ニマに振り回されて調子を狂わされる。
しかも、族長であるニマを追って紋様族が次々と現れ、何かとトラブルが。しかしそのゴタゴタの果てに、次第にニマを認めるようになる火々雄。そして彼は、「つながりの紋様」を通じて、自身も紋様法術を使えるようになっていった。

第1巻は典型的な「SFおしかけ女房モノ」であり、実際に「おしかけ女房」という言葉が使われている直球ストレートな展開。火々雄をヒソカに慕うめがねっ娘委員長・藤松や、紋様一族と外界人とのハーフであるがゆえに差別され続けてきた黒髪の美少女・ユニ、紋様を刻む役割を持つ「刻紋師」のレム(男)などがイイ味を出している。

第2巻では「おしかけ女房モノ」に定番の、次々といろんなタイプの女の子が出てきてハーレム状態になる話。
ニマが族長を放り出したため、次の族長候補者が火々雄の元に集まってくる。いずれも若い女の子(若くないと族長にはなれないんだそうだ)。ちょっと不良っぽい、山賊を生業とする一族ダークーのキカ、気が弱くてロリータ路線、遊牧民の一族「スタンタル」のネル
全員ひとつ屋根の下で暮らし、前出のニマと合わせてみんなで海に行ったりというナンパな展開も見られるが、族長候補の一人・マーラクのミナが現れてからお話は一気にシリアス路線へ。

第3巻では、ミナは族長の座以上の秘宝・「不死の甘露(アンムリト)」を狙っていたことが発覚。しかも、それはニマの幼なじみで彼女との「つながりの紋様」を持つ少年・セキの野望であった。
……というわけで「おしかけ女房」ニマの出番はめっきり減り、「つながりの紋様」から紋様法術を使える火々雄と、野望の少年・セキとの対決が盛り上がっていく。

ピュアすぎるゆえに他人の迷惑もかえりみず野望に身を焦がす少年と、「拳で語り合おう」って感じの硬派少年の戦い。その内面の描き方や戦い、戦いの果ての和解などの流れは、「だれかに似てる」って言い方は陳腐で失礼かも知れないが、「幽遊白書」的面白さを持っている。ジャンプ系出身ということもあるのか、ラブコメよりも刺客との戦いの方に重点が置かれていて、戦闘シーンのかけひきもそれなりに考えられている。このため、ドタバタ路線の1〜2巻も、シリアス路線の3巻もどちらも楽しめる(その代わり、お色気シーンはほとんどナシ)。

「紋様族」は、人のたどり着けない高地に住んでいるという設定から山岳民をモチーフにしたと思われるが、露出の多いニマの衣装デザインは気持ちベースにそういうのがある程度で「女神さまっ」的ではある。が、やはり物語としては「女神さまっ」直系と言うよりはジャンプ系アクションマンガの印象が強い。

なおアシスタントとして駕篭真太郎が参加しており、3巻では半ページイラストが入っている。
(00.0623、滑川)



・「弁天様には言わないで」(3)〜(4) 鶴田洋久(1999、集英社)

ビジネスジャンプ、エクストラビージャン連載。「色っぽい『ああっ 女神さまっ』」のような初期設定の作品。
第1巻から2巻の途中まで出ていた弁天と彼女のご主人様である桧川亮はまったく出てこなくなり、同級生のイジメに耐える少年・橘未稀(たちばな・みき)が、仙人・天門毘沙奈(あまと・ひさな、女)の力を借りながら凶暴なイジメっ子・坂口青司と柔道の決闘をするという展開になる。

毘沙奈は未稀の従姉妹と偽り彼の家に住み込み、教師となり、彼を見守る。が、「一人で戦いたい」という未稀は毘沙奈の神通力を拒否する(……と言いながらも結果的に使っちゃうんだけどね)。
毘沙奈は、「ファニーフェイスなんだけど大人の身体と魅力を持ち、カワイイ未稀クンを誘惑する」というキュートなキャラクター。こういうのは女神様系では珍しい造形だと思う。ステキ

反面、なんだかシャレにならないイヤなヤツも登場する。未稀と対決する坂口青司は、力も強いし意地も悪いという男だが、最後は戦って未稀と和解するのかなと思ったら、なんと彼の腕をヘシ折ってしまう。それにキレた毘沙奈は、未稀に乗り移って彼を殺意を持ってボコボコにする(救いようのない話……)。さらに彼の子分的存在の少年もものすごくイヤ〜な顔をしている(これ、モデルは長髪の頃の石野卓球? なんかすごく似てる)。

4巻から登場してくる未稀の幼なじみ・秋元仁美は、空手をやっていて小さい頃から未稀をいじめていたがヒソカに彼のことが好きで……というお約束キャラなのだが、「本当に未稀を憎んでいるのではないか」というくらい登場シーンからイヤなヤツ。
普通こういうお約束キャラはどこかに愛嬌があるものなのだが、それがまるでない。
未稀に告白するときもレイプまがいのことをしようとしたヒドいヤツだ。……なんだか小学校3年生並みの感想文だなオレの文章。だけど本心だからいいのだ。

未稀と毘沙奈と仁美の三角関係になり、ラストにはひさしぶりに弁天も登場。
(00.0525、00.0727、滑川)



・「メイ奴家族」全1巻 ちば・じろう(2000、竹書房)

ビタマン連載。成年コミック。亡くなった雄太の父が連れてきた義理の母の雪子、義姉の月乃、義妹の花倫(かりん)は、実はすべて雄太のセックスを含めた世話をするための「メイ奴」だった。彼が17歳の誕生日を迎えたとき、父の莫大な財産を相続し、同時に家族として過ごしてきた彼女たちはすべてメイ奴になるという……。
昨日までの家族が今日は自分に仕えるという事実にとまどいを隠せない雄太であった。

……ってなんかここのコーナーに最近メイドものが多いのは時代の流れだなあ。
「遺産の相続によって当主となり、メイドが仕える」というのは基本的には「花右京メイド隊」と同じなんだけど、ポイントは「今までヒソカに憧れていた義母、義姉、義妹がとつぜん性的に奉仕してくれる」というコトで、「オナニーしてるところを見られたからうんぬんかんぬん」とまどろっこしい近親相姦モノよりはマンガチックで面白い。このメイド3人は最初っから雄太のことが大好きで大好きで、徹底して展開が陽性なのもよい。

「おしかけ女房モノ」というよりは「おしかけメイドもの」とでも言うべき作品で、その妄想充足マンガ度合いは相当なものがある。ただし、途中から「ここまでメイドたちに奉仕される自分は何なんだ!?」と考え込んだ雄太が自立を目指す、というのはおしかけ女房モノとしては定番の展開。このテの作品が「俺の空」などの「女によって成長していく男の物語」をメロメロにマイルドにしたものだということを裏付けている。すなわちマッチョイズムと密接な関係があるのがこうしたマンガなのだね。

義妹の花倫が「雄太様」と呼ぶんだけどそれのルビに「おにいちゃん」って振ってあるのはスゴイよな。このコとのラブ話がいちおう横糸になっている。カワイイ。
(00.0517、滑川)



・「花右京メイド隊」(1) もりしげ(2000、秋田書店)

月刊少年チャンピオン連載。母親が死んで行くところのなくなった中学生・花右京太郎は、祖父の屋敷へ向かう。祖父はどこかに遊びに行ってしまって帰ってくる気はなく、大金持ちの花右京家の家督はすべて太郎に譲られる。

屋敷には太郎の世話をするべく大勢の(ものすごく大勢の)メイドたちが勤めており、太郎が惚れてしまう美少女・マリエルを筆頭に、クローン人間みたいな(「パタリロ」のタマネギ部隊みたいな?)同じ顔立ちの美少女軍団・花右京メイド隊お側御用大隊、メカ部門担当のちょっとドジなめがねっ娘・イクヨ、ロリロリにして二重人格者のシンシア、警備部門最高責任者コノエなどが入り乱れて騒動が起きる……という展開。

実のところ、「おしかけ女房モノ」に分類していいかどうか迷った。……おしかけられるはずが主人公が出向いていったからとかそういう意味ではなく、最近のこのテの美少女マンガにはギャルゲーを含むTVゲームの影響を感じ、旧来の「おしかけ女房モノ」とは少々テイストを異にするように思えるからである。

「ドジなメカ部門担当のめがねっ娘イクヨ」、「武道の達人で警備部門担当コノエ」といった割り振りも、たとえば「主人公と、彼が好きだがなかなか手が出せない女の子」という配置に「主人公を誘惑する小悪魔的な少女」というふうに恋愛関係を中心に徐々にセッティングされていくのではなく、チームとして存在している感じだ(「メイド隊」はまさしくチームだ)。
それが読者の嗜好の変化を物語っているのかどうかは、今後ベンキョウしたいです。

さて、そういったことも含めて、本作は「最終おしかけ女房モノ」と言えまいか。
「花右京メイド隊お側御用大隊」は、連載第1回目の冒頭から太郎にディープキスはするわ、風呂には入ってくれるわ添い寝はしてくれるわで、太郎には絶対服従、望むことは何でもしてくれるらしい。その彼女たちがクローン人間のように同じ顔に描かれているのは、今までの「おしかけ女房」パターンを物量的に戯画化しているのかもしれん。

その他の個性のあるメイドたちは、「チーム」のメンバーに近い。
太郎憧れのメイド・マリエルは、もちろん(太郎くらいの年頃の男の子が考える)理想の美少女だ。

そんな中、コノエは太郎に(マリエルを)「それほどお好きならお抱きになればよろしいのに……」と言う。花右京家のメイドは全員当主に抱かれてもいいと思っているらしい。だが太郎は「人の心ってそんなんじゃないよ」とアッサリ返す。
太郎は近頃のこのテのマンガの主人公としては意外なほどしっかりしている。「おしかけ女房モノ」で必ずネックとなる「なぜヤっちまわないか」は、この場合純粋に太郎の「人の心ってそんなんじゃない」という信念から来るのだ。

しかし、1巻ではマリエルとの仲はほとんど描かれないんだけどね。

これ以上ハチャメチャにすれば、もっと違うテイストのマンガになるだろうし、単に太郎とマリエルの関係が普通の少年少女として描かれれば、それは普通のラブコメである。

もうひとつ、「メイドもの」としてもひとつの極北であると言える。おそらく登場するメイドの数はメイドマンガの中でも日本一だろう。それに、それまでに登場した(エロ、同人誌問わず)「メイドもの」の要素はほとんど入っていると言っていいと思う。

そういうわけで少年マンガの嗜好の微妙な変化を感じとりつつ、いちおう「おしかけ女房モノ」に入れることにした。そんなジャンル分け、どうでもいいっちゃいいんだけどね。
(00.0227、滑川)



・「戦うメイドさん!」(3) 西野つぐみ(1999、ぶんか社)

「コミックまぁるまん」連載。モテないフリーライター・田辺晴親(ハルチカ)は、酔って冗談で「メイドロボット=メイドロイド」のモニターに応募した。すっかり忘れていたところに、2人のメイドロボ・葉月如月が登場。ここにハルチカの幼なじみ・有賀時子がからんで展開するちょっとHなラブコメ。
いやあ、3巻になってますますよい! 以下は各話解説。

・「あなたといる時間」、「イブの贈り物」、「恋のあしおと」
メイドロイドの如月には最初からハルチカを「好き」という感情がプログラムされているが、その感情を育てるのはハルチカ自身である。最初は同じレベルの「好き」であった葉月と如月の感情は、成長プロセスの違いによって変化しつつあった。
つまり、如月の気持ちの方が恋愛感情に近くなってきたのだ。……んでまあ「親しいからこそ」ハルチカの悪口を言う時子を、まっちょうじきに責めてしまったりする如月であった。

・「Wish」
いじめを苦に自殺しようとしたヒロを「メイドロイド3原則」にのっとって救出した葉月。ヒロはフィギュアマニアだったが、それをバカにされ続けてひねくれてしまっていた。
そんな彼をなぐさめようとする葉月は、ヤケになって彼が燃やそうとした自作のフィギュアを守ろうとして身体に火がつき、システム・ダウン。単なる人形になり果てた葉月を見てヒロは深く反省。100キロ近くある彼女をかついで研究所まで運んでいく。

通りすがりのいじめっ子たち:「やらしーっ とうとう実物大の人形かあ?」「ダッチワイフ?」
ヒロ:「うるさい 笑いたきゃ笑えっ!」「けど邪魔するな!」

いやあ泣けますな。
最後に「ロボット技術者になる」と決意するヒロ。個人的にはフィギュアの造形師をめざしてほしかったが……。まあ人形造形能力を活かすのはこの世界ではロボット技術者なのだろう。普通にメイドロイドがウロチョロするところらしいし……。

・「如月inアフター5:00」
リストラ寸前の初老サラリーマンが援助交際のつもりで如月とホテルへ。
「メイドロイドは必要なくなったらポイで自分と同じだ」と同情するが、如月を心配したハルチカたちがホテルへ押しかけてきてメチャクチャに。
みんなに愛されている如月を見て、「自分も大切なものを守るためにがんばろう」と決心するサラリーマンであった。

・「新▽ふるさと紀行【純情系】」(▽はハートマークの代用)
久しぶりに故郷に帰ったハルチカと時子。だがそこにはお手伝い用の男性型ロボット(サーバントロイド)睦月がいた。男性型召使いロボットもいるのだ。アシモフや「ロボット刑事」をちょっと思わせる話。

・「小さな来訪者」
突如2300年の未来から家出してきた少年、9637・ヒロ(前述のヒロとはまったく別人)。彼は未来ではメイドロイドが市販30年で中止になったこと、未来のロボットは効率的・機能的であるがゆえに人間性はないことをみんなに教える。
彼の「人間を自分の下僕として使いたいから人間型にしたんだ」という決めつけはヒヤリとさせられるね。ここに暗黒面の一端が……まあそれは掘り下げられずに、話は進む。
最初ひねくれていた少年は如月と遊んでいるうちに、ただのロボットである彼女にだんだん心を開いていく。

「でもパパは違うこと言うんだ」
「思いやる気持ちやいたわりの気持ちを持っていることが人間の条件なら その条件に満たない人は大勢いるって」
「ロボットは純粋なぶんそういう心を持ったらストレートに表現するって 人間のとってもいいパートナーになるって……」
「人もロボットももっと自由になるべきだって……」
「開発当初の理念のままに……」
「みんなパパのこと変人だって言ったよ でもぼくはパパが大好きなんだ」
「だってパパが笑うとドキドキしたから ぼくもパパみたいに笑いたかったけどどうしていいかわからなくて……だからここへきたんだ」
「笑う練習をしに……」
「ぼく葉月や如月みたいにロボットだったらよかったのに そしたら最初から上手に笑えたのに……」

ううう。「ロボットの方が人間より感情表現が豊か」っていう逆説が泣ける。SFとは言わないけどSF一歩手前のイイ話がここに。

・「天使のような風の吹く日」
如月たちのレディー・メイド社と競争してメイドロイドを開発しているサイバー・メガ社の宅麻は、老人介護をすべてメイドロイドに任せようとする社の計画に大激怒し、すべてのメイドロイドを破壊しようとする。
宅麻ってのは、「如月ラブラブの美少年」というギャグ的な設定のキャラクターだが、このときばかりは「メイドロイドは人間を人間的なことから隔離する」ことに問題意識を抱いて暴走するのだった。オチはやや強引な気もするけど、「人間と機械の共存」というヘビーなテーマがスルリと入ってきた話。

・「Two▽Heart」(▽はハートマークの代用)」
ゲーセンでのアクシデントで、ギャルゲーのデータが入り込んでしまった如月を「攻略」する話。軽い展開だけどなかなかラブコメしてます。
(00.0110、滑川)



・「藍より青し」(1)(2) 文月晃(1999、白泉社)

ヤングアニマル連載。突然、一人暮らしの大学生・花菱薫の元に現れた清楚な着物美少女・桜庭葵。彼女はかつての薫の許嫁であり、彼を18年間も思い続けていたのだ。
その気持ちはうれしいし、かわいいし、いつ結婚したっていいくらいなのだが、薫にはソレができない「家」の事情があった……というお話。

キックまがいの空手が多い中(意味不明)、いまどきめずらしいくらい直球な設定。 しかしSFではない。SFやファンタジー的設定をいっさい使わずに「女神さまっ」をやろうとするとこうなる、という感じか。少なくとも少年・青年マンガではかえって珍しいかもしれない。薫と葵が肉体的に結ばれないのも、「女神さまっ」ばりに薫の周囲に美女が集まってくるのも、すべて「家」の問題に収斂していくという設定が面白い。その中のメンバーの一人、ハウスキーパーの水無月妙子は「ドジで巨乳なメガネっ娘メイド」という究極的設定。だがマンガだと他の例が思い出せない……。近頃のギャルゲーでなんかあるのかもしれない? わかんないけど。

それにしても、薫の所属する写真部のメンバーにおじゃま虫的レスラーみたいな大男がいるが、「メイドロイド雪之丞」同様こういうところまで「女神さまっ」に倣うのはいかがなものか、とはちょっと思う。あと関係ないがトーンでの肌影の付け方がHでイイですな。

ちなみに、薫の行ってる「明立大学」は、2巻では完璧に私の行ってた大学がモデル。1巻ではどっかよその大学だけど。
(99.00.0109、0517、滑川)



  ・「メイドロイド雪之丞」 井萩寿一(1999、実業之日本社)

成年コミック。コミックテキーラ連載。一人暮らしの大学生・春之介の元に届けられたのは、7代先の子孫が送ってきたネコ耳メイドアンドロイド「メイドロイド」の雪之丞だった。
最初は「しょせんロボット」と思っていた春之介だが、雪之丞のあまりのかわいさと献身ぶりに、次第に人間として愛し始める。

今どき同人誌でもないようなお約束ネタだが、さすがプロって感じで読める。お約束をお約束のとおり描いて読ませるのってむずかしいものな。メイド服の描きこみもバッチリだし、雪之丞のマニュアルに「夜のお世話について」という項があり、そこがイカニモな文体だったりして細部も面白い。
第1話「届いた贈り物」のラストで、「どんな命令でも聞く」雪之丞をヤりたくなった春之介が、あまりに従順な雪之丞に罪悪感? をいだきやっぱりやめるところ、ここで「おしかけ女房モノ」的には成功を約束されたも同然。と思いましたが。
最終回で結ばれるのもナイス。フランシスコ・フィリョのハイキックのようにキレイにキマッてます。

一部のヒトには「こういうマンガが好きな読者はこーいう媚び方が好きなワケ? ふーん」とか思われるんでしょうな。それもまた真実として受け止めなきゃいかんよ(だれに言っているのか? ええ、自分に)。

雪之丞がなぜ未来から来たか、が最後まで明らかにならなかったのがちょっと不満ですかねい。「未来を守る」という意味があるらしいが、どういうことなのかまったく触れられていない(単にネコ耳だから「ドラえもん」の暗喩か?)。まあそれがこうしたマンガにとって致命的な問題ではないにせよ。

「おじゃまユーレイくん」のよしかわ進のマンガ「愛ど〜るパンチ」(82年、別冊コロコロコミック)では、アンドロイドのパンチちゃんが「おしかけてくる」話だが、どうやら将来パンチちゃんは壊れてしまい、パンチちゃんをつくるためにダメ少年の主人公が一念発起して科学者になり、そしてまたタイムマシンで過去の自分にパンチを贈り届ける、という伏線が第1話で張られていて、これはせつなくてナイスだと思った。
だって、雪之丞みたいなコと一緒にいたら、「未来を守る」どころかどんどんダメになっていくぞ男は。

あと主人公がバイク部だった、というのも「女神さまっ」を連想させてちょっとやりすぎのような気がしたが。全体的にキレイにまとまった作品。
(99.00.0109、滑川)



  ・「全裸(はだか)の女王様」 かかし朝浩(1999、司書房)

成年コミック。COMICラッツ掲載。浪人生の鉄太郎の家の隣に、世界一性の開放が進んでいる国・ゼンランド王国の第四王位継承者、ネヴリアーレ・マグワルドが家来とともに引っ越してくる。挨拶代わりにセックス、何かというとセックスしまくるネヴリアーレ(愛称ネヴィ)に、隣人の鉄太郎が翻弄されまくるという話。

……これおしかけ女房モノに入るのかなあ!? とかってしばし考えたんだけど(何を根本的なことを……)、ネヴィにはおしかけ女房もの一般にある「妻イメージ」みたいのもないみたいだし、お約束的ゴタゴタはあるけどもしもまともなカップルになったらもっとイマ風の関係になるんじゃないかな。
私のイメージでは、「おしかけ女房モノ」は案外旧来の(といっても戦前的なものではなく、なんつーかニューファミリーな感じ)男女関係を理想型としている印象があるので。
ネヴィには「理想の妻」になりたいという欲望はこれっぽっちもないから、「おしかけ女房」なプロットでありながら、即「また似たようなパターン……」って読んでいる方は思わないっつーか。

いちおう便宜的にココにカテゴライズしたけど、細かいツッコミはご容赦ください……。
「おしかけ女房モノ」の新しいカタチとでも考えとってください。

他にも読みきり作品が併録されているけど、この作者自身が、妄想力で現実にはできないことをマンガでやったる……というより、もっと開放されている感じ。お話はいい意味で飛躍しているものが多いんだけど、どこかカラッとしている。
巻末の悪友対談(作者本人はおらず友人2人の対談)で

「リイド社のH系マンガ雑誌で『ヘルス嬢が殺し屋』みたいのを描いてそう」

って書かれていたがまさにソレ。あ、絵はアニメ系なんだけど。
ネヴィもファックしているというよりなんだか「銃持って戦ってる」みたいな顔するしね。八重歯が牙みたいだし(カックイイ)。どっか作風が「太い感じ」がイイね。

「ネヴィ」と正反対のキャラクターとして「クリスチャンで、異様に身持ちの固い女の子」聖歌が出てくるけど、この子と鉄太郎がからむ話があってもよかったのでは。

それと一言だけなんか言うなら「クリスチャン=堅物」っていうステロタイプはさすがにどうにかした方がいいのではないかと思うが……。どんなもんスかね。
(99.1127、00.0103、滑川)



  ・「千年王国三銃士 ヴァニーナイツ」(完結、1999、4月〜9月、テレビ朝日)

監督/舞原賢三、脚本/前川 淳ほか、原案/畑澤和也、
劇中ゲームのキャラクター原案/美樹本晴彦、
制作/円谷映像
注:本作は映像作品である。マンガではない。

(あらすじ:以下ネタバレあり)
「アレストホルン」という伝説の王であるはずだった和幸は、「魔王」だった。
なんじゃかんじゃあるうちに、戦いに巻き込まれて妹が死んでしまい、最終回では虚構と現実の入り交じった状況の中、なんだか「アレストホルン」を守る三銃士の一人・ありすのインナースペースのようなニュアンスで終わる。が、わけわかんない。

(感想)
せっかく4月に初回を見て感想文を書いたので、最後まで見た感想を書きたい。
といっても、ビデオがブッ壊れて録画できず、最終回前の2話くらいを見逃しているのだが。

「SFおしかけ女房モノ」とは、ワンパターンに冠したネーミングである以上、このパターンの殻を破らないかぎり作品として傑作にはなりにくい。
だからパターンどおり始まっても、「いかにパターンを破るか」がネックになっているといっても過言ではない。
常道を守った「ヒネリ」といったものでもいいし、完全にブチ壊してもいい。
アニメ
「天使になるもんっ!」なんかも、最初からパターンを破ることへの意欲を感じた(すんません、これちゃんと見てません)。

さて本作。はっきり言って最終回はよくわからなかった。
ただ「和幸の成長物語」を回避したような結末ではあった。
ということで、やはり
「エヴァ」のことを考えてしまうのですよ。製作者が意図するしないに関わらず。
ラストシーン、和幸ありすふたりきりになってしまうのだって、「エヴァ」の映画版のラストを連想してしまうしね。

製作者側の「自由度」はいろいろ違うんだろうけど、考えていくと、受け手にしてみればこうしたオタク好みのSFアクションモノは、ほとんど数種類しか結末が用意されていないことがわかる。
それについて、「なぜそうした結末が落ち着きがよいのか」は検討の余地があるにせよ、口幅ったい言い方ではあるが、自暴自棄になってしまうようなオチはあまり歓迎したくない。

最低限、「ヴァニーナイツ」はスーパーヒロインである、ということだけは守ってほしかった。
そのパターンを破壊してまでのラストではなかったと、言わざるを得ない。(99.0921、滑川)



・「ぜんぜんKODOMO」全4巻 ふを留美(1996〜97、秋田書店)

ヤングチャンピオン連載。女性に触るとジンマシンが出るほど女嫌いの高校生・熊取慎吾の家に、事故で亡くなった伯父夫婦の娘(つまり慎吾の従姉妹)を預かることになった。それが東谷みちる。だれもが振り返るほどの美貌を持つセクシー系外観だが、実は小学六年生。しかも六年生のわりには無邪気で、少しもませたところがない。
「なついている」という意味で慎吾が大好きなみちるは、すぐ抱きついてきたりふざけてキスしようとしてきたりする。そのたびに慎吾にはジンマシンが起きて……というドタバタコメディ。

最初は、みちるが少しずつ大人になって慎吾を男性として意識しはじめるのかと思ったが(六年生といったらそんな年頃だし)、そういう展開はまったくなく、ひたすらに「セクシーなのに小学生(だから手が出せない)」という事実に慎吾をはじめ周囲が翻弄されまくるという話になっている。

初期設定が初期設定なだけに、お話がころがりだしてから登場するキャラクターのリアルさと突飛さの差が激しい。とくに慎吾が女嫌いになった原因のエピソードにからむ両親のキャラは、あまりにトンデモすぎてちょっとついていけなかった。全編通してあまり関係もないし……。しかし、逆に妙にリアルというかうまく描かれているキャラクターも多い。
慎吾の幼なじみでコギャルで援助交際をしている(慎吾のことが好き)河内あまみやその姉などのヤンキー系人間関係、みちると仲良しの野里吉見(小学生らしい小学生)、だれよりもませていて、みちるをライバル視しているがだれよりも背が小さい西中島みなみ、一見まじめ風だがゆきずりの女とヤっちゃったりしている(それが意外性というんじゃなくホントにそういうキャラの普通の男)北山先生等々。

エピソードも、小学生が集まってビデオを見ようと思ったら、間違えてHビデオが録画されており、全員いったんうろたえるがそのまま全部見てしまうとか、バツイチであることを隠して男(実は北山先生)とつき合おうとするあまみの姉とか、トンデモないギャグ話より、そういう何気ない話の方がうまいような気がする。なお妙にヤンキー関係のデティールが細かい。

「おしかけ女房モノ」としては、みちるは最後まで子供なので慎吾とは何の進展もない。慎吾と幼なじみの仲を超えられないままコギャル化してしまったあまみ(この設定は秀逸だと思うなぁ)とも進展はない。個人的な好みを言えばラストまでに慎吾に何らかの人間的成長が欲しかった気もするけど、とにかくナニゲな人間関係の面白さが光る作者だと思うので、突飛な初期設定は面白いけど後はぜんぶ普通の人間模様、みたいなのを描いてほしいなあ、と思ったりして。

最終巻の4巻には、本作の原型らしい短編「DO IT, BABY!」収録(これも北山先生がいい味出している)。
(00.0512、滑川)



  ・「ヴィジョナリイ」(3) 遊人(1994、シュベール出版)

スコラに連載された連作読みきり「ヴィジョナリイ」の中で、シリーズとして断続的に描かれた「ドレーモン」の出る回。この巻では「VISIONARY 抜かずの9発 もしも……になれたら」という話に出てくる。

弱虫のわりには打算的でスケベなうじ太くんの家に居候しているネコ美少女ロボット(作中では「レプリノイド」)「ドレーモン」は、うじ太とセックスすることによって不思議な生物が入っている卵を生み出す。あとはそれをスケベなことに使ったうじ太がヒドい目にあう、というパターンである。

「ドレーモン」は別に奴隷ってワケじゃなく、徹底してクールで半分うじ太のことなんかどうでもよさげ。うじ太とのセックスもホントに身体だけのつながり、って感じ。うじ太も同様。だいたいドレーモンとヤって、さらにアイテムを手に入れてまたヨソでスケベなことしようってんだから虫のいいヤツである。

「女ドラえもん」と悪口を言われる「おしかけ女房モノ」において、本当に「女ドラえもん」を描いた希有な例。
(00.0330、滑川)



・「魔ジカル姉妹(ツインズ)」(1) 前田俊夫(1991、スタジオ・シップ)

「うろつき童子」などの、妖魔が出てくるおどろ系Hマンガの前田俊夫の作品。
三流広告代理店社員の吉田道雄は、ひょんなことから幸運をもたらす聖子と不幸をもたらす魔子の物の怪姉妹に取り憑かれてしまった……という「前田版ああっ女神さまっ」のようなマンガ。聖子と魔子の二人とファックすることで幸福になったり不幸になったり忙しい道雄であった。

「Luck.7 いきなりアイドル−成功は性交から−」はいわゆる「アイドルもの」。道雄の遠い親戚である北岡由美が、聖子のラブジュースの付いた道雄のモノを体内に入れてしまったために幸運に見舞われアイドルになる。もともとヘタに深刻ぶらない脳天気なマンガだが、コレの呑気なオチには爆笑してしまった。人生こうありたいもんですな。

広告代理店やイベントコンパニオンなど、バブリーな道具立ても時代を感じさせてくれます。
(00.0311、滑川)

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