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・「まさみの気持ち」全2巻 (1995〜96、秋田書店)




・「まさみの気持ち」全2巻 (1995〜96、秋田書店) [amazon]

まさみの気持ち

・あらすじ
月刊少年チャンピオン連載。荒沢柾美は、サッカー部のモテモテ少年。だが、実は女性には興味がなく、親友の岩重哲也を愛していた。
ある日、クラスメートの姫川麻沙美に渡された岩重へのラブレターをカン違いして破いてしまったことから、彼女に岩重との橋渡しになってくれと頼まれる。姫川には自分を好きだとカン違いされ、岩重には姫川と付き合ってもらいたくない柾美は策をろうしつつも周囲の思惑にも翻弄される、いっぷう変わったラブコメ。

・感想
本作のミソは、何と言っても主人公の柾美が男の岩重を愛しているという点だろう。しかも、ホモ経験があるわけではないプラトニックな心情として描かれていて、「ひばりくん」みたいにギャグっぽくもなく、やおい文脈で描かれているわけでもない。 いわば、思春期の、女の子を受け入れたいけど拒みたいという心情をハイパー化したような感じだ。
で、この柾美の岩重への恋愛感情が「だれにも言えない」ために、勘違いが勘違いを呼んでお話が転がっていくというのが全体のトーンである。

2巻の前書きには「書きたいことの2割も書けなかった」とあり、確かにこのまま膨らませていくことができたとは思うが、全2巻できちんとまとまっている。
とくに、女の子に対する幻想が崩れているのにそれでもかわいさを見いだしてしまう柾美の心情とか、男の子をもてあそぶのがシュミの柾美の姉・真澄が岩重と付き合って捨ててからボンヤリしているところとか、そういうのが他のラブコメにはない点だ。
どのような意味でないかというと、たいてい異性に対しての幻想か、逆に幻想が破れた状態しか描かないのが凡百のラブコメだが、本作はきっちり、幻想の中には幻滅が、そして幻滅の中にも見いだすべき点があることを描いてるという点だ。

ちなみに、本作の高校は「雛子バリエーション!」(→感想)と同じところのようである。
(04.1205)

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