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やるせなく、くだらなく、どうしようもなく、だけどちょっと楽しい青春物語。 道を歩く女の子を眺めて主人公がせんずりをこく場面で始まるこの作品の舞台はかなり煮詰まった世界だ。 麻雀ばっかりやっている野球部の落ちこぼれコンビ、引野と矢沢は女の子にモテること、たいした努力せずにビッグになることを漠然ともくろみつつだらだらと日々を送っている。 矢沢などは甲斐性なしのオヤジのせいでかなりのド貧乏。かなり生活に困ってはいるのだが、そんなことお構いなしで強かに楽しい瞬間を経験している。 苦しい生活が待っているのがわかっても、いつも真っ暗な気分のわけじゃない。二日酔いになることがわかっていてももう一杯飲みたいときがある。今がすべて。先のことなど考えない。目的などない。「ためにする」ことなどなく、勢いだけで行動する彼等の姿は爽快だ。 やがて彼らも高校を卒業し、世知辛い社会にでていく。最終話でそのうだつの上がらないありさまが描かれる。ついに彼等はツケを払わされることになったということなのだが、そこから「アリとキリギリス」みたいな教訓を引き出したりするのは相当にかっこ悪い。なぜなら彼らはたしかにメチャクチャかっこよかったのだから。 望月峯太郎や大友克洋、江口寿史などの影響を受けたとおぼしき絵柄と、現在につながる劇画調が混在しているのが初期作品集らしい。絵柄の統一感こそないものの、デビュー作の第一話「残暑」からいきなり物凄くうまい。 サービス精神旺盛にこれでもか、と詰め込まれた細かいギャグ、濃密な背景には感嘆する。イチ押し。 講談社 シリーズ:アフタヌーンKCデラックス 判型:A5
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東京のサラリーマン生活が性に合わず、郷里に帰った「永ちゃん」こと昼川永春。 なにかでっかいことをやらねばと考える彼は、舌先三寸と卑怯な手段で金と人を集め、中古車販売会社・昼川オートを設立する。 押しの強さとユニークな戦略、そして幸運に恵まれて昼川オートはなかなかの繁盛。地方テレビ局で安手のCMを流すまでに成功する。 うさんくさくも妙にリアルに成り上がる永ちゃんのキャラクターが実にいい。 軽薄だけれど、説教好き。負けることなど考えない上昇志向。調子がよくてわがままでスケベ。 抽象的な悪と闘う正義の味方などよりも、自らのために状況を切り開いていく彼こそ、まさにヒーローと呼ぶにふさわしい。 落書調から松本零士、どおくまんにいたるまで幅広くサンプリングされた画体によるギャグも絶品。 講談社 シリーズ:アフタヌーンKC 判型:B6
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ゆえあってラグビーの名門校をやめ、三流高校で自堕落な生活を続けていた水井仁は元・天才スタンドオフ。 やけっぱちで挑んだ古巣との練習試合で、かつての仲間に投げかけられた言葉が彼を奮い立たせる……。 という物語の骨子はかなりどうでもよくて、注目は場面場面を盛り上げる描写。もろ劇画のシリアスな絵からまるっきりのポンチ絵まで自在に描きこなす技量が、過剰なほどの起伏を作品全体にもたらしている。 特に水井たちが暴力団・談社組のチーム相手に試合をする第5話「それならこっちにも考えがあるぜ」。激闘の果てにヘロヘロになり、ただ執念だけでゾンビのようにプレイする選手たちを引き連れて水井がトライを狙う見開きが最高。このあたり、すぎむらしんいちが好きな人ならば多分楽しめるのではないかと思う。 また、水井の仲間の陽気な不良少年たちが実に魅力的。スケベで下品で頭が悪くて、だけど侠気にあふれたノリノリの野郎ども。 チンピラ高校生はこうあってほしい。こんなふうにグレてくれ。 講談社 シリーズ:アフタヌーンKC 判型:B6
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本格ヤクザマンガの表題作、全編遊びまくりのギャグマンガ「任侠 ぶたれ豚」、身辺雑記みたいな作品など、およそ統一感のない作品集なのでコアなファン以外には薦められない。 しかし、その中にあってひときわ輝く「本音トーク」。 虚偽に満ちた街にすっ裸の天使が降臨し、何も解決しない。ひたすら意味を放棄した展開に、爽快な気持ちを味わえる。 ただし、これとてもかなり心の広い人向け。 文藝春秋 講談社 シリーズ:文春コミックス 判型:B6
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ホラー雑誌からビッグコミックスピリッツまで、さまざまな雑誌に掲載された短篇作品を収録。どうしても土田世紀をコンプリートしたい、という人向け……。
ぶんか社 シリーズ:ぶんか社コミックス 判型:A5
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マンガチックな画体を全面に押し出した脱力青春ギャンブルマンガ「せっかちピンちゃん」、ホモまじり相撲マンガ「晩年ダイナマイト」をはじめ、わりと力の抜けた作品ばかりが集められている。 注目は「パチンポ」。サンド(パチンコの玉の両替機みたいなもの)として生きる、すなわち口から銀玉を吐き出すことをなりわいにする、という異様な設定。そこになんのツッコミも入らないまま、なんの説明もないまま坦々とドラマが進行してしまうという短篇。 他に、『編集王』でおなじみ「マンボ好塚」名義で描かれた「知床番長」や大木凡人を主人公にしたメチャクチャな短篇「THE BON!!」も収録。これも、心の広い人だけに。 白夜書房 シリーズ:白夜コミックス 判型:B6
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空に浮かぶ月を指して伸ばした手は、いつしか迷って、水の中の月をつかもうとしていた。 いつもリーダー格のケンズへの反発や、劣悪な家庭環境のせいもあって、キヨスは弱い心を克服できないまま育つ。人に害をなすことで、相対的に浮かび上がろうとキヨスは空しくあがく。幼なじみのヨイヂを巻き込んで悪さをし、ヤクザにまでなり下がる。 そんな彼が回心をとげるまでの物語。 ケンズがあまりにもスーパーマンすぎるのと、ちょっと食い足りない分量が少々残念。 土田世紀が久々に放った、濃いいやつ。本格派の香りもちょっとは漂う。 講談社 シリーズ:アッパーズKC 判型:B6
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