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02/09/11(WED)
【単行本・小説】 うえお久光「悪魔のミカタ3 パーフェクトワールド・平日編」 電撃文庫 [bk1][amazon]
この本の中に書かれていること、ほとんど全ての意味がわからなかった。何ですか、これは?
魔法カメラ(→感想)、インヴィジブル・エア(→感想)の続きとなる「悪魔のミカタ」シリーズ第3弾。
起こること起こること全ての展開の意味がつながっていく気がしなくて、「これって、ぜんぜん脈略ないんじゃないのか――」みたいな疑問を脳内で渦巻かせながら読んでいた。冒頭の「サクラの舞」なんか、それっぽい雰囲気醸し出すためだけにある気がするしなあ…… 巻末、あとがき/なかがき? みたら、「サクラの舞」と「イハナの笛」が対になって「パーフェクトワールド」(前後編)が幕を閉じるみたいだけど、ちゃんと考えて構成してるのか――!? 少なくともこの巻の内容はぐでぐでですよ?
傍点、「」、『』、()、――、……、《》、あらゆる記号と、唐突に出てくる夢野久作っぽいカタカナ表記(例:「チュー学校です!」みたいな。これはちがうか……)を駆使しまくるうえお久光の文体はジャンクフードの味わいで、よく考えると嫌〜なことが書いてあるその内容も併せて、なんかもう、独特です。だいたい、「宇宙人にさらわれて」行方不明になってた娘が「外国で見つかって」しかも「記憶がなくなってる」なんて状況があって(実際にはそれは嘘なんだけど)、その娘と父親がスキヤキつついてるなんて状況、もう、本当にいたたまれない。失踪期間中、娘さんは外国で何してたんですか? しかも、そんな痛い痛い空気の中、偽者の娘(アトリ)の上役であるバルゼバブがまんま蝿の王様の格好で食卓訪問したり…… なんだこれ? まったく、何を考えているやら……
正直、この巻の内容に関してはまず間違いなく適当に書いた、としか思えないのですが、それにしてもなんだ嫌な雰囲気は…… 舞原妹の指令を受けたコウが舞原姉をデートに誘う、ただそれだけの内容で、ミステリーから離れたぶんだけドロドロとした異質な感触が際立ちます。展開の意味がぜんぜんわかんないよ…… もう1回。なにこれ?
【単行本・小説】 うえお久光「悪魔のミカタ4 パーフェクトワールド・休日編」 電撃文庫 [bk1][amazon]
と、いうわけでデート! デート! デート! やっと物語っぽくなって、よかったよかった。
舞原姉と休日デート。「和歌丘タワーワールド」へとやってきた堂島コウが、絶叫マシーンに乗ったり、死んだり、絶叫マシーンに乗ったり、死んだり、絶叫マシーンに乗ったり、死んだりする話。シュールで素晴らしい。
というか、「平日編」として独立させる意味は結局よくわからなかった。「平日編」の内容を半分くらいに凝縮して1冊にまとめてみてもまるで問題なかったような気がします。仮に、2ヶ月連続刊行がやりたかったのだとしても、もう少し意味が感じられる物語の山場を「平日編」に用意してみてもよかったんじゃないのかな。
「パーフェクトワールド」なる<知恵の実>が「休日編」にて、やっと登場。(サブタイなのに……)想像を絶するその能力によってめちゃめちゃシュールな状況が生まれるあたりは、西澤保彦のチョーモンインシリーズというよりはむしろ「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」最近のエピソードにおけるスタンド能力に近い気がします。それはまるで物語の中に頭が狂いそうなシーンを発現させるためだけに用意されたもののようで、単なる超能力のビジュアライズ・システムとして使われていたシリーズ序盤とは意味合いがちょっとずつずれてきてて……みたいな印象です。
しかし、これだけ(女)たらしたらし言われてる主人公の堂島コウが何を持ってそう呼ばれていたのかまるでわかんないところが面白いよな―― そういえば、1巻に出てきたあのシーンが日奈とのファーストキスだったのにも驚きだったけど(さんざヤッててもおかしくない印象である)、こんなに狂気に満ちてるのにヘンな操の立て方だけはするんだな、と不思議に感じました。ライトノベルだからかな…… いろんな意味でアンバランス。そういや、2巻に出てきたみークルTシャツのエピソードが「トレンチコート・マフィア」的発想だったのは絶妙にげんなり。あれ? そういえば、部長は?
やっぱ、なんだかんだいって大阪なんだよな…… せっかくハジケ回なのに神楽さんはいまいち地味。頬染めカットや泣き顔カットはええけど。「かんだ」、「もりあげ役」、「考えてなかった」、「みんなで走ります」、「一丸」の5話。
体育祭も3度目。ひどく詮無いこと申してみるならば、この短期間に3回リピートだと流石に飽きる―― リアルタイムで3年間連載と半年間に凝縮させてアニメ展開とではやっぱ印象がぜんぜんちがうね。またも今更な言説でございました。
「ぱん・くい・ちょー」 ぱんくいちょー ぱんくいちょー ぱんくいちょー ぱんくいちょー 水っぽいアンパンだな―― 怪鳥のポーズ。失敗は教訓。釣りの問題。餌。優勝したら、くれ。諭吉さんキャッチ&リリース。ハジけ神楽&とも。 「負けないぞ!」 「どーん! どーん! どーん!」 ……馬鹿コンビ。さあ、皆様。日焼け跡に引き続いての神楽さん見せ場ですよ! 食堂ネタがいきなり挿入されたな…… 閃光煌き、ブルマばんざーい! I like it You. 体育祭開催。動かない。火葬競争。よくそんな衣装あったな…… ゆうらりと立ち上がったよ…… 「なんやて――」 (悩み中) なんか大阪さん飛んでた。笑顔。チア@よみ。 「可愛いなあ」 ちがうよ。ガクラン。はげしくエロい。いくら男子がいないとはいえ……(います) クラス対抗全員リレー。きーん! んちゃ! 古。 ともって、シーザー(動物のお医者さん)みたい。 「俺はやるぜ、俺はやるぜ」 榊さんカコイー! なぜ、ゆかりんがいるんだ? いかん、アンカーが人間失格だった…… ばんざーい、な・し・よ。 − 終了 − よい感じに〆てはあげません。次週、何かがやってくるらしい!



02/09/12(THU)
【ANIME】 プリンセスチュチュ 1.AKT「アヒルと王子さま」 (→公式)
→第1話ストーリー
明るくおっちょこちょい、あひる声にて、がーがー喋る早とちり少女、その名も「あひる」が失われし王子様の心を取り戻す物語。
バレリーナを目指す少年少女たちの通う金冠学園が舞台なんだけど、バレエ教えてるのが猫の「猫先生」だったり、おとぎ話と現実の境界があいまいになっていて、微妙にシュールで楽しい。奇妙な世界が何の説明もないまま提示されたり、心をなくした王子様である物静かな「みゅうと」先輩といつも彼のそばにいる「ふぉきあ」先輩の関係がちょっとただならぬ雰囲気だったり、「あひる」に不思議な首飾りをわたす奇怪すぎる紳士(?)「ドロッセルマイヤー」氏の存在など、謎に満ちた世界の描き方は「少女革命ウテナ」にも近しいものがある気がするけれど、「ぐわ」「ぐわ」言いながら頑張る「あひる」の素直な性格が作品を(良くも悪くも)落ち着いたものにしている気がします。決して派手ではないけれど、志の高い作品。
そういえば、基本的に踊って解決するあたり(ウテナの決闘シーンだって、そんなようなものだ)の感覚も近しい気がするけど、J.A.シーザーの異様な合唱曲に彩られていたウテナと、有名バレエ曲に乗せておくるチュチュとの差はずいぶんあって、こちらは、あえて表現に抑制を効かせてる感じ。ハジけてる感じではないけど、ひょこひょこ元気に動き回るあひるの姿は見てて楽しいし、第1話ハイライト、チュチュに変身したあひるのターンとともに画面いっぱいに花弁が湧きたつラストシーンはなかなかかっこいいです。
たぶん、あひるをイメージしたのでしょう、垢抜けないEDテーマ「私の愛は小さいけれど」もしみじみよい。



【単行本・小説】 蘇部健一「木乃伊男」 講談社ノベルス [bk1][amazon]
おお、悪くない、というか、なかなかよい。素朴な田舎菓子の味わいがします。
布部家に伝わる木乃伊(ミイラ)男の伝説…… 5年前、密室状態になった鏡の迷路の中で兄は刺殺され、心臓の療養のため訪れた信州山奥の病院、ぼくの隣のベッドにやってきたのは顔面を包帯でぐるぐる巻きにした男。いったい、ミイラ男の正体は誰なのか……
前作「動かぬ証拠」と同じく、本文イラストによってミステリの種が明かされるという形式を採用した蘇部健一の最新作で、戯れにページをめくったりできないよう、本文が袋綴じになっている密室本で出したのは正解かもしれません。
そもそもこの、重要な展開をイラストを使って見せるという発想はなかなか悪くないと思っていて、特に、本文イラストを里中満智子(表4に書いてあるからネタバレにはあたらないと思うけど、一応消しておきます)が担当した今回の「木乃伊男」はそのミスマッチ感覚も相まってなかなかいい味に仕上がっていると感じます。
思うに、コンビ組む相手を作品ごと変更すればそれだけでバリエーションがつけられるし、下手すれば文章同じでイラストだけ違うバージョンなんかも出せたりして(全バージョン揃える人間がいるとは思えないが……)、この方式は可能性を秘めてるんじゃないのかな? と思いました。
それにしても、里中満智子絵に蘇部の文章…… 「ましてや、彼の病気が外聞を憚るような性病だと知ったいまとなっては……」 とかいきなり書いてあるし。イラストつけるとき、頭を抱えたんじゃないかな…… さすがは蘇部たん。 「そう、私こそは、オナニーをするためにこの世に生まれてきた男なのだ。」 と、いう素晴らしすぎるフレーズ(デビュー作「六枚のとんかつ」文庫版所収「オナニー連盟」より)(→感想)で、俺に多大な(負の)インパクトを与えた人間だけのことはあります。
でも、この作品は悪くない。伏線も丁寧に消化しているし(オチもよい)、近年見ない素朴な味わいのミステリに仕上がっています。需要はあるんじゃないかな?
02/09/13(FRI)
【単行本・小説】 倉知淳「猫丸先輩の推測」 講談社ノベルス [bk1][amazon]
小説現代別冊メフィストに掲載された猫丸先輩短編をまとめた1冊。なかなか楽しいです。
「夜届く」、「桜の森の七分咲きの下」、「失踪当時の肉球は」、「たわしと真夏とスパイ」、「カラスの動物園」、「クリスマスの猫丸」と古今東西の名作をもじったタイトルがつけられてますが、べつにパロディになっているわけではありません。
勘違いしてたんですが、「たわしと真夏とスパイ」の元ネタは天藤真「あたしと真夏とスパイ」だったんですね。てっきり「007/私の愛したスパイ」なのかと思ってた。しらべてみるものです。
猫丸先輩シリーズ、じつは「日曜の夜は出たくない」しか読んでなくて、「過ぎ行く風はみどり色」がそのシリーズ長編だということすらも知りませんでした。よく考えると倉知淳の作品自体ほとんど読んでなかった。
で、久方ぶりの猫丸先輩体験なんですが、あれ? こんな人でしたっけ…… なんだかひどくエキセントリックになっている。文体自体えらく変わっていて、なんだか落語聴いてるみたいです。
はじめは奇妙に感じられた事件が、猫丸先輩の一言により物事の視点を変えて眺めることによって、納得いく真相がたちまちあらわれる、というミステリ的な構造も落語っぽく感じられる理由のひとつかなあ。「真相究明」というよりは「オチ」なんですよね。扱ってるネタがまったく深刻になりえない日常ネタであるのも落語っぽいといえば落語っぽいし、挿画担当が唐沢なをきというのもちょっとそんな感じ。(いいがかりか?)軽く読めてとても楽しいです。
収録作品どれも粒揃いの内容なんですが、まるで身に覚えのない緊急電報(父危篤とか)が夜毎届くという小規模怪事件を扱った「夜歩く」の解決編がなかなかよかったかな。事件とアイドルコメントの絡ませかたがなかなか上手いと感じました。
ところで、「猫丸先輩の推測」というタイトル通り、猫丸先輩は不思議な出来事に対してあるひとつの解答を提示させてみせてるだけで、それが真相とは限らない、あくまで推測にすぎない、というところがいいと思うのですが、1作品だけ猫丸先輩と犯人と直接対峙してしまってるのが少しだけ惜しいかな、と思われました。全作品ただの推測で統一してみてもよかったかも。
ところで、どうも唐沢なをきの描く猫丸先輩は森博嗣っぽく見えて困ります。(→これとか) いま「赤緑黒白」読んでるからかなあ……
02/09/14(SAT)
「遠くの音を聞いた。大気を、遠のく音」
あれ? なんだかかっこいい回文だな…… 自分でも驚いた。
異形コレクション「キネマ・キネマ」買ってきた。平山夢明と乙一が書いてる段階で自分的には買い。/ 「本格ミステリ・クロニクル300」買ってきた。この内容で1,200円なら間違いなくお買い得。しかし帯外すと表紙下半分がらあきになってしまう装丁はいかがなものか。とりあげられている300冊のうち何冊読んでるかそのうちカウントしてみよう。/ テリル・ランクフォード「惨殺の月夜」読みはじめ。おもしれ―― / 森博嗣「赤緑黒白」もうすぐ読み終わり。正直、このシリーズどうでもよかったのかな。ひどく淡白なラスト。あ、紫子ちゃんは「犀」という漢字くらい読めたほうがいいと思われます。お馬鹿な子のまま終了、みたいで哀れである。/ ジョナサン・キャロルの短編集「黒いカクテル」ももうすぐ読み終わる。/ いくらなんでも同時並行に脈略なく読みすぎ。/ でも、法月綸太郎「密閉教室」、篠田節子「ゴサインタン」はとりあえず読みたい。/ 講談社ノベルスにうつつをぬかさなくてもよかった気もするな――― / 最近、漫画のこと書いてない。 / ヤンジャンの「ちさ×ポン」はあまり思い入れがない作品だったので助かった、気がする。/ 今日から「千年女優」公開か。/ あ、なんか忘れてると思ったら、TONO「カルバニア物語」新刊買ってない…… / 屈辱erも忘れてた…… この屈辱……/ 朝松健編のクトゥルーアンソロジー買ってない、買うのかな。
【単行本・ノンフィクション】 石丸元章「SPEED スピード」 文春文庫 [bk1][amazon]
ドラッグに興味を持っていた男がたまたまライターという職業についていたがゆえにそのままコカイン、大麻、覚醒剤、LSD、さまざまな薬物にハマり、中毒症状による幻覚・幻聴に苛まれ、精神と肉体の両方を蝕まれていく過程をそのまま綴った作品で、ノンフィクションと小説の違いはあっても、一番近いものは、アーヴィン・ウェルシュ「トレインスポッティング」(→感想)だと思います。
まあ、「トレインスポッティング」自体がパンク・ロックとドラッグにイカれながら青春時代をすごしたアーヴィン・ウェルシュの半自伝的作品だし、ドラッグによる幻覚で狂気と正気の間を彷徨う精神の形が実験的文体によって描かれている、とこれだけ共通点があるのだから、似ていても別に不思議ではないけれど。
ただ、レントンやスパッド、薬剤中毒でかつ犯罪者(窃盗など)でありながら、どこか内省的な部分のある人間を描いていた「トレインスポッティング」とはちがって、石丸元章はあらゆる意味で容赦なし、という感じがします。快楽のためには他人の生命も自らの生命も関係なく犠牲にしてそうだし、実際、してそう。しかし、いくら(一応)取材とはいえ、30近くの人間が今さらシンナーとか、するか――!? この段階でかなり終わってるといわざるを得ません。たぶんこの人、自覚あり/なしにかかわらず、なんらかの形で人を殺してる確率がひどく高いと思われます。たとえ、それが直接関与してないにしてもな―― (念のため書いておくならば、こう書いてる自分自身だってそういうのが全くないとはいいきれません。たとえば遅刻寸前、駅の構内を早足で通り過ぎた時、横で倒れてた人間がその後病院で死んだとか。それぐらいの想像力がないわけではありません)
ただ石丸元章の場合は、クラブにやってきた場違いリーマン軍団のドリンクにハルシオン砕いて飲ませたりしてるわけで…… あきらかな犯罪行為にもほどというものがあります。しかし10錠って、その後そいつはどうなったんでしょうか? そんなヤバげな行為+「コカインは中途半端で物足りない」、「やっぱりパキッとキマるのはシャブだ」みたいなあまりにも刹那的な言説、そして案の定訪れたフラッシュバックによる幻覚・妄想の果てにドラッグ関係からあっさり足を洗ってしまいそうな(実際、まだやってるのかどうかは知らない)人間性の欠落が凄まじいと思います。きっと衝撃をうけるからエピローグ読むのは最後までとっておいたほうがいいかも。
ご存知の方も多いかもしれませんが、その後石丸元章は覚醒剤取締法なんとかで逮捕、起訴されたわけで、そこらへんの顛末は続編「アフター・スピード」で書かれています。感想は書いてないけど、なぜかこちらを先に読んでしまった。
【単行本・エッセイ】 中島らも「アマニタ・パンセリナ」 集英社文庫 [bk1][amazon]
睡眠薬、シャブ、阿片、幻覚サボテン、ブロン(咳止めシロップ)、トルエン、LSD、大麻、毒キノコからアルコールまで、古今東西ありとあらゆるドラッグに関するエッセイを1冊にまとめたもの。
石丸元章と中島らものドラッグに対するスタンスはえらくちがって、快楽とともに地獄へと突っ走るような石丸元章とは対照的に、「細く長く」、そのようなものに依存しなくてはいられない自分自身を冷静に見つめつつ、「では、どうやって付き合っていけばいいのか」という回答を見出そうとしているのが中島らもという印象です。
「シャブは愚劣なドラッグである」、「シンナー・トルエンは死体願望の一種で、麻痺以外の何物でもない」という中島らもの発言あたりに両者のスタンスのちがいが見て取れるかも。
自身のアル中体験を描いた「今夜、すべてのバーで」(→感想)みたいな作品も発表してる中島らもなわけで、実際、さまざまな薬物を体験して、その中にはいくつか中毒の領域にまで達したものもあります。(前述のアルコール、睡眠薬、咳止めシロップ、中毒とはちと違うが抗鬱剤、坑精神薬など) あくまで穏やかな筆致で書かれてはいるものの、じつは石丸元章より業が深い人間のような気がしてなりません。
これは前にも書いたことですが、あの「今夜、すべてのバーで」の内容を書いた後にも、じつはガンガン飲んでいて、その5年後にアルコール中毒と躁病を併発して再入院した、みたいな記述を見るとうへえと思ってしまいます。そこらへんのところ、一体わかぎえふはどんなふうに感じていたのだろう…… 鬱病で自殺されるよりはましだと思っていたのでしょうか?
02/09/15(SUN)
【単行本・ブックガイド】 探偵小説研究会編著「本格ミステリ・クロニクル300」 原書房 [bk1][amazon]
そうか、綾辻行人「十角館の殺人」って、そんなに衝撃的だったのか……
3年くらい遅れての追体験だから、「こんなものなのか――」(面白かったけど)と思いながら読んでました。それなりにリアルタイムで読んだ(たしか)島田荘司「斜め屋敷の犯罪」のほうが子供心には衝撃だった気がします。「ここまでやるか!」みたいな感じで。
というわけで「本格ミステリ・クロニクル300」。綾辻行人がデビューした1987年、「新本格」誕生の年から、今年、2002年までに発表された本格ミステリのうち、シーンに影響を与えた名作だったり衝撃作だったり注目作だったり迷作だったりを300選んでレビュー、それに加え、前述の綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸、北村薫、山口雅也、麻耶雄嵩、西澤保彦、森博嗣らにデビュー当時の心境や本格ミステリに対する思いなどを書いてもらったスペシャルエッセイを収録した1冊であります。しかも、法月綸太郎「反リアリズムの揺籃期」、円道都司昭「反リアリズムの現代本格」、笠井潔「本格ミステリに地殻変動は起きているか?」の評論、レッドヘリング、後期クイーン問題など、意味がいまいちわかりにくいミステリ用語についてのコラムもついています。えらく内容が濃くってこれで1,200円なら相当なお買い得なんじゃないのか? と思いました。頑張ったな――、という印象です。
長くなりそうなので箇条書きにて。
・ 既読数。中段/下段でその年の分子/分母になってます。全体の1/3も読んでない…… 集計していて自分でもうんざりでした。多数の作品が取り上げられてる作家のうち、愛川晶、芦辺拓、今邑彩、笠井潔、北川歩実、近藤史恵、篠田真由美、島田荘司、二階堂黎人、貫井徳郎、山田正紀がその半分も読めていない作家です。多すぎ。愛川晶、今邑彩、北川歩実、近藤史恵、篠田真由美、山田正紀なんか1冊も読んでません。ひどすぎ。北川歩実と山田正紀の作品はどうも読まなければいけないような気がしてます。
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
計
2
1
9
6
8
4
4
5
5
11
3
8
7
6
12
3
94
4
11
14
19
18
13
15
15
15
20
19
32
22
30
36
17
300
・ 未読で「読まなければ!」という気分にさせられた作品。
法月綸太郎「密閉教室」(買ってある)、原寮「そして夜は甦る」(これに限らずハードボイルドはほとんど読んだことがない)、斎藤肇「思いどおりにエンドマーク」(入手可能なのだろうか)、奥田哲也「三重殺」、奥泉光「葦と百合」(これも積読)、有栖川有栖「双頭の悪魔」(積読)、今邑彩「金雀枝荘の殺人」、近藤史恵「凍える島」、倉知淳「過ぎ行く風はみどり色」「壷中の天国」、北川歩実「模造人格」「猿の証言」「金のゆりかご」(どれも面白そうだ)、山田正紀「妖鳥」「神曲法廷」、霞流一「オクトパスキラー8号」、恩田陸「象と耳鳴り」、飛鳥部勝則「砂漠の薔薇」、川崎草志「長い腕」、連城三紀彦「人間動物園」、黒崎緑「未熟の獣」。多すぎる!
・ 笠井潔の作品とか、山田正紀「ミステリ・オペラ」とか、いかにも大変そうなのにはいまいち食指が動かない。二階堂黎人の厚くて、何冊もあるやつとか。
・ 折原一を東京創元社に紹介したのが同じミステリサークル先輩であった北村薫だったというのは意外だった。
・ 《名探偵》という存在の必要性に関する二階堂黎人の発言(→ここに書いてあることと近い)は、この人の本格推理に関するスタンスを考慮すれば当然といえるも、なんだか、ちょっとひっかかる。二階堂蘭子にしても水乃サトルにしても渋柿信介にしても(これはいいか……)、この人の創造する探偵全ての存在はどうも無邪気にすぎる気がするんですよね……
・「若い者にはついていけない」ということがえんえんと書いてある巻末評論、笠井潔「本格ミステリに地殻変動は起きているか?」は、まあぶっちゃけた話、最近の講談社ノベルスにおける萌えミステリ、もしくはジャンクミステリ批判なんですが、「クビシメロマンチスト」の巫女子を評して「(最近の事例では「AIR」の観鈴タイプ)」とか書いてあって驚かされます。東浩紀に借りたのかな……
・ 探偵小説研究会の面々のプロフィールはあったほうがいいと思います。
【ANIME】 プリンセスチュチュ 2.AKT「心のかけら」 (→公式)
→第2話ストーリー
「わたくし、パートナーといっしょにパ・ド・ドゥを踊りますわ!」 なぜ、アリクイが……
男綾波みゅうと先輩に近づく謎の女子、アリクイ美@神田朱美が登場する今回のエピソード。また、物語のバックボーン説明回でもあります。とにかくシュールにすぎるストーリーで、パ・ド・ドゥ踊るアリクイの姿を見るのは、たぶん生涯最初で最後なんじゃないかな、と思いました。
あひるの正体が本当に鳥のアヒルだ、というのはけっこう驚きで、王子さま(みゅうと)の心を取り戻したのちもハッピーエンドが訪れなさそうなほのかな物悲しさが感じられていいです。物語と現実の境界があいまいになったこの世界を元に戻すために遣わされた存在があひるなわけで、クラスメイトのアリクイが(男綾波)みゅうとを巡り、るぅ@水樹奈々と恋のライバル関係になるみたいなシュールな展開にも、彼女だけがツッコミを入れることができる。
しかし、世界の傍観者であるがゆえにあひるがストーリーの中心に据わることはなくて、だから、あひるとアリクイ美がライバル関係になる、みたいな単純な図式に決してならない。みゅうとを巡って争うのはあひる以外の人間だ。そんな悲しい運命を背負いながらけなげに頑張るあひるはひどく可愛らしい。「ぐわ! ぐわ!」いう加藤奈々絵ボイスは素晴らしいね。あの制服はどこに消えて、いったいどこからあらわれるのだろう?
アリクイ美の描写もいいな――― 苛立ちのあまり、カギ爪で穴掘ってるし(w しかし、こんなに中途半端に心を取り戻していって、みゅうとの性格、歪んじゃうんじゃなかろうか……!?



【ANIME】 最終兵器彼女 第11話「2人だけの刻」 (→公式)
駆け落ち。滅び行く惑星の上での最後の逃避行。 「ここがいい。ここであたしは……」 生命の残量は少ない。
うーむ、やっぱ原作読み返したのはよくなかったかも…… ここいらの描写については漫画のほうが数倍痛々しいんだよね…… これはまあ全13話にまとめたがゆえの尺の問題で、たとえば、バイト先の港で「使えないやつ!」とばかりに苛められるシュウちゃんの描写とか(まあ、仕事慣れるにしたがってうちとけるのではあるが)、ちせたんバイト先のラーメン屋主人の足がないとことか、そこらへんは端折られてます。 「何してんの、アンタ殺すよ……」 追いかけてやってきたカワハラに対する殺害衝動必死で抑えようとするちせたんの姿は衝撃的。カワハラの家族がすでに戦争で亡くなってるくだりは入れてもよかった気がするが。 「ちびっと」 うひ―― 「ピクニック、楽しみだねえ」 目の前にある、わずかな希望も消えていく―― マサさん、いい人だ―― 「Love song」って、これなのか―― ちょっと萎え―― しかたないけど――― 「ていうか、歌って、なんですか?」 さて、だんだんシュールになっていきますよ…… ついに台詞の多重化はじまった。折笠富美子ががんばっていた。


【ANIME】 G-onらいだーす 第10話「ゲッチュー時代」 (→公式)
や、やす…… 心底、安アニメだなあ。しかし、この作品に関してはそれも問題ないかな…… 「UFOが消えた?」 宇宙人による侵略の危機を脱し平和になった地球はお祭り騒ぎさ! ということで、湖畔めざしてサイクリング? 気が早いな―― 作画悪いな―― 乙女回路発動によりあっという間にドジっ娘メイドに変貌したゼロが、もう、どーにもなんね―― 一朗くんは改造人間のわりには体力ないね―― なんだろう、この激安シチュエーションは…… 一朗くんはどうでもいいんで、さっさとコスモ番長に変身して暴れてくらさい、と思いました。いらない娘さんばかりが次々告白にくるギャルゲ・スカラストという感じのお話でありました。 「どこまでもご奉仕いたします……」 とか、ゼロが言ってるよ…… もう、ぐだぐだとしか表現しようのないストーリー。ところで、このサブタイトルが「熱中時代」のもじりだってこと、若人には、きっとわからない。最終決戦の時、迫る! みたいなヒキで終わり。

02/09/16(MON)
【ANIME】 円盤皇女ワるきゅーレ 第10話「通販で小惑星を買った話」 (→公式)
前後編。なんだかんだいって超安定な出来だと思うけど、やっぱり安――い。宇宙ネット通販をワるちゃんがいたずらしてるうちに辺境のカス惑星注文しちゃってえらいことに。たまたま不時着したライネの宇宙船乗っ取ってみんなでクーリングオフの直談判に行ったらお隣さんに宇宙海賊がいて!? という展開。(うわ、ほとんどそのまま書いてしまった) 「時乃湯売って清算しきゃいけないかも……」と悩む和人の姿見て精神状態が不安定に、身体は大人に戻ったものの精神はそのまんまなワルキューレが印象的かも。でも、そんなに意味はなかったような…… なんとく宇宙海賊と一戦交えてその後……!? という展開が、そして次回に続き―――
【ANIME】 円盤皇女ワるきゅーレ 第11話「時乃湯宇宙別館」 (→公式)
「なんだ!?」 そりゃ、こっちが言いたいよ…… 宇宙空間に虹が出てるよ――― サブタイ通り、カス物件だったはずの辺境惑星に温泉が湧いてなぜだか大繁盛、というお話。猫耳メイド部隊の皆さんもさっそく呼んだのか世! 宇宙なのにプレハブに住んでる…… というか、代金払う前に商売してるし…… 和人は羽衣町を離れることに抵抗を感じてる単純に2号店にすればいいんじゃないか!? と思った。けっこうすぐ着いたっぽいじゃん! あ、前回の伏線、さすがにひっぱってあった(注:リアルタイムで感想書いてます)。あたらしく湧いた温泉の効果によって、ちっちゃいワるちゃんがいなくなっちゃう!? みたいなワるちゃん、和人、ふたりの葛藤があって、また新たな問題が…… シナリオの出来は安定なんだよね。画面見るとかなり萎え――― でもまあ、面白い。王家の連中も連絡してからやってこいよ! 「和人さんの温泉は素晴らしい」 うわ、すごい解決! そして、クライマックスに向けて……という展開であります。そんな季節。
02/09/17(TUE)
「キセル、空き巣、空きある席」
新幹線の中は妙に読書がはかどる。山田正紀「阿弥陀(パズル)」、今日発売の近代麻雀、にざかな「B.B.Joker」4巻、坂本タクマ「屈辱er 大河原上」1巻、シェイマス・スミス「わが名はレッド」を半分くらい、まあ、これだけ読めた。さすがに分厚い朝松健編「秘神界」は読みきれなかった…… 昨日の夜、法月綸太郎「二の悲劇」も読了して、なぜ、「一の悲劇」からじゃないかといえば、そちらは母親に貸していたからだ。わりと読みやすいらしい。「こんなに本を出さないでこの人は作家としてやっていけるのか?」と変な心配をしていたのが面白かった。つまりは、1泊2日のとんぼ返り帰省してきたわけで、えーと、まあ、そんなところ。
実家に帰ったらリビングの机の上に見慣れない電気スタンドがあった。SuperDriveだかなんだか知らないものが内蔵されてて、DVDまで焼けたりするらしい。DVD-R、俺も持ってないのに…… DVDなんか、観ないくせに…… イジェクトボタンはどこなんだ? 小説はあっさりと飽きたらしくて、今度はIllustlatorに興味が移ったようだ。習作を見せてもらったが、なかなか出来がよかった。地元のケーブルTVで放映される番組に出演したようで、家庭用ビデオテープに落としたものを見せてもらった。地元のFMラジオの番組に週1でレギュラー出演してるらしいが、これはあんまり乗り気でないようだ。ほかの人間にまかせて、今日の放送はサボったらしい。
夕食がてら酒飲んでその勢いで親子の語らいしてみたりするけど、その話題といえば、このページのことだったりして、わはは、わはは、なんだか、だんだん慣れてきましたよ。
【単行本・小説】 西澤保彦「夢幻巡礼」 講談社ノベルス [bk1][amazon]
警察官という身の上ながら連続殺人鬼でもある能解匡緒の部下、奈蔵渉を主人公に、神麻嗣子らの最後の敵となる邪悪な存在がいかにして誕生したかを描いた物語。
レギュラーメンバーである神麻嗣子、保科匡緒、この両名は、今回のお話にはほとんど登場しません。
つまりこの作品の位置付けはシリーズ番外編といえるもので、主人公にサイコキラーを据えるあたりからもわかるように、受ける印象もいつものチョーモンインシリーズとは違います。扱っているテーマがほぼ同一なので、読後感が近いのは当たり前ともいえますが、匠千暁シリーズ長編である「依存」(→感想)の舞台を、超能力犯罪者が存在する世界に移した作品ではないかと感じました。
たとえば、possessive という英題がこの作品にはつけられていますが、これは「依存」の英題である、obsession と呼応するようにつけられたものでしょう。
西澤保彦、両親の妄執により歪められて成長する子供、という図式が本当に好きなんですね…… 無差別連続殺人鬼である奈蔵渉が、さほど異常人格者には思えないところがこの作品のポイントでしょう。
単体でこの本を読んだとしてもたぶん困惑するだけではないかと思いますが、シリーズの中でどのような位置付けにある作品なのかを了解した上で読むのならば悪い出来ではありません。背筋に戦慄走る事件の真相は、たしかに「超能力犯罪ミステリ」であり、「サイコ・ミステリ」にもなっていると感じました。
02/09/18(WED)
【単行本・小説】 山田正紀「阿弥陀(パズル)」 幻冬舎文庫 [bk1][amazon]
まだ文庫版のほうが入手しやすいと思うのですが、どうやらbk1にリンクが存在しないようなので、リンクはノベルス版のほうに張っておきます。Amazonのリンクは文庫版。
密室状況におけるOL消失事件を扱った論理パズラー長編で、新たに判明した事実によってひとつの仮定が覆りそして推理は出発点に戻って、という試行錯誤の過程が阿弥陀くじに例えられるような作品です。「阿弥陀」というタイトルに「パズル」とルビがふってあるのはそんな理由。
探偵役として登場するのは「本格推理ミステリ 02」(→感想)収録の「麺とスープと殺人と」にも登場した謎の女の子、風水火那子で、そのキャラクターと同じく、どこか飄々とした雰囲気の漂う作品になっています。最初は類型的な人物かと思われた登場人物たちの意外なパーソナリティが明らかになっていくくだりも楽しい。しかし、お茶にいかなくてもよいと思うのだが…… のんきだな――
人物消失のからくりは解き明かされて事件は完全解決をみるものの、登場人物たちについてきちんと語られることのないまま(たとえば風水火那子がどんな人間だったのか、とか)、あっさりと終わってしまうあたりの、どこか祭りの後のような物寂しい読後感演出もなかなかよいかな、と思います。
しかし、事件の真相よりもやはり「お茶でも飲まないか」のほうが衝撃的ではあった…… なんじゃこの展開は。
枚数少なくてもあずまんがはなんとかなる! 多少苦しくても大丈夫! だけど、もう終わりなんだよね―― そろそろ〆のエピソードなんでした。「進路」、「対決」、「はやく行こう」、「人望」、「マヤーと一緒」の5本。
進路希望アンケート。ずいぶんのんびり屋さんな学校だな、オイ…… そもそも、とっくの昔に理系文型クラス分けされてるはずなのだが…… ICPOとかほざいてるボンクラはほっといて。神楽の闇雲なプラス思考。身も蓋もない物言い。素敵――! ちよすけはアメリカに留学。まかりまちがってチャイルドポルノとかに出そうだ。ねこねこ襲来。長は噛みネコ〜 (ありえないけど)マヤー来た! うーん、上手いことアニメ化してますな…… 感心。マヤーくた〜 「雑種です。雑種、雑種、雑種」 必死の隠蔽工作。なんとなく微妙なカットは多い気がするが、まあ、なんとか…… ともの動きが最近好きだ。狩り。忠吉さんを食べちゃうぞ―― こたつと大阪のコンビネーションは最高だな…… 「ガッ!!」 やはり野生。 「バーカ」 「バーカ」 事実だけど、そりゃあんまり。 「つっくり(略)」 ちよすけが変な動きをした。榊嬢も回った。転がった。見つかった。 「たまにはともも怖い目にあったほうがいい」 友達甲斐のない主張である。いきなりお泊まりコースになってる…… なんかいい感じに〆はじめた。宴の終わりも近い。

【ANIME】 プリンセスチュチュ 3.AKT「プリンセスの誓い」 (→公式)
→第3話ストーリー
超安定。可愛――い。 「ぐえへへへへへ」 「ぐわっ!」 加藤奈々絵
ボイスは素晴らしい。ここぞとばかりにアンハッピーエンドがほのめかされてるんですけど、どうなんですかね。デートの最中にわざわざ「水くんで来い」とか命令するるぅの性格はよくわからん…… そんで入ったレストランにはサイコな女主人がいて、という展開は幾分無理矢理な気がしないし、汲んできた場所にもう1回行けばだけなんじゃないのか? と思ったりしますが、ばたばたじたばたするあひるが可愛らしいので気にはならない。
猫先生もいいけど、見習いクラス落ちしたあひるを玩具にして遊ぶ級友のぴけ@松本さち、りりえ@白鳥由里コンビはええな。
伊藤誠「兎 - 野生の闘牌 - 」。七夕祭り開幕。でもまあ、前回の山城麻雀よりは緊迫感ないような気もするけど。敗北→死じゃないからねえ。与那嶺さんが再登場してたのには驚いた。シャモアはいきなり雑魚っぽい扱いなのね、また…… と泣けた。 天獅子悦也(原案:安藤満)「むこうぶち」。秀さんがすごい迫力だ―― 麻雀してるだけなのにまるで魑魅魍魎を背負ってるよう……というのは、「アカギ」の悪影響だろうか? ウヒョ助が「区立麻雀小学校」という読み切りを描いています。 巻末、せきやてつじ(原案:青山広美)「ラスベガス・キング」。社員旅行でラスべガス来て迷子になった挙句財布パスポート盗まれた泣き虫眼鏡っ娘OLがギャンブルの熱狂やら自分自身に賭けるということを知るお話で、表情の描き方がすごくいい。やっぱ上手いなこの人。
02/09/19(THU)
「寝我(ネガ)眼鏡」
起き抜けの呆けた頭でごそごそ探して、伸びをして目を見開いたら、世界の右半分がおかしかった。
眼鏡のレンズ、片っぽないよ―― しかたないからコンタクト入れてるけど、連続装用できない性質だからちょっと不便なんだよな―― 部屋の中に落ちてるのは確定で、ほぼ間違いなく洗濯物の山の間に挟まっている。でも探すの面倒くさい。いっそのこと5,000円とか7,000円とかの安眼鏡買ってこようかな。見つかったら見つかったでいいし…… あ、でも、歩いてて「パキッ」とか音するの怖いから、やっぱ大人しく探そう。
【単行本・小説】 霞流一「首断ち六地蔵」 カッパ・ノベルス [bk1][amazon]
なんだか、すごい話。馬鹿トリックのつるべ打ちとでもいいましょうか……
悪質カルト教団取締りをその業務とする特殊法人「寺社捜査局(JSK)」に勤務する魚間岳士は、豪凡寺にある六地蔵の首が断たれ、持ち去られた事件を追っていた。あちこちで首は見つかるが、その首とともに奇怪な殺人事件が発生する。
豪凡寺の住職である風峰、所轄署の霧間警部とともに事件の真相を探る魚間だったが、やがて事件の背後には新興宗教「浄夢の和院」の影がひそんでいることがわかった。一連の残虐な殺人は教団脱退者に対する見せしめのために行われていたのだ……
あとがきにもあるように、アントニー・バークリー「毒入りチョコレート事件」に対するオマージュとして書かれた作品らしいのですが、こんなオマージュの捧げかたは霞流一しかしないだろうと思われます。実現性がきわめて乏しい、というか、そもそもそんなこと考えちゃダメ! しかし、そこがいい! という馬鹿トリック連発で、地蔵の首は六つあって、つまり全6話の連作短編1つ1つに偽りの解決が3つも4つも用意されていて、しかもその解決すべてが口に出すのも恥ずかしいお馬鹿なもの、というたいへん贅沢な仕上がりになっています。こんなのよく考えたよなあ…… 「TRICK」みたく、深夜枠でドラマ化すれば大爆笑できていいかもしれません。
桜の大樹の下に置かれた鰻の詰めこまれた割腹死体を扱った第3首「畜生は桜樹に散る」における馬鹿トリックは特筆ものだと思いました。いわゆる足跡のない殺人、雪密室的な状況なわけですが、こんな解決は流石にないだろ…… うどん屋の大釜で老婆が煮られていたという猟奇事件を扱った第2首「餓鬼の使いは帰らない」もなかなか素晴らしい。まさかこの話が論理パズラーになるとは。
よく考えてみると、「毒入りチョコレート事件」に対するオマージュのつもりでありながら、あまりに奇天烈なトリックであるがゆえパズラーとして成立せずに馬鹿トリック品評会みたいな状況になってしまっているあたりが逆にたいへん珍しい、といえなくもないのですが…… 霞流一らしいというかなんというか。
最終章である第無々首(だいななしゅ)における物語のオチのつけかたについては、同じく「毒入りチョコレート事件」に対するオマージュとして書かれた推理合戦ものである西澤保彦「聯愁殺」(→感想)と、発想としてどこか共通している部分があるように感じます。そこには霞流一、西澤保彦それぞれの作家性があらわれているようで、なかなか興味深く感じました。しかし、最後にいきなり主役をさらったあの人はいったい誰なんだろう?
02/09/20(FRI)
【単行本・屈辱】 坂本タクマ「屈辱er 大河原上」 1巻 新潮社BUNCHCOMICS [bk1][amazon]
・ 「屈辱er」と書いて、「クツジョッカー」と読む屈辱。
・ なぜだか皆さんお買いになっておられないような気がする屈辱。
・ なぜ買わない! といいつつも、発売日から10日以上もたってからレビュを書く屈辱。
・ そこらへんの本屋では売ってなかったり、大型書店行った時には忘れてる屈辱。
・ 人一倍屈辱を嫌う男、大河原上の日常を描いた屈辱。
・ 客である自分に腰をかがめるという屈辱的姿勢を強いる自動販売機の取り出し口の低さに苛立ちを隠せない大河原上がいかにして自販機に勝利するかを描いた屈辱、使用頻度がさほど高いわけでもなく必要なときには見つからないくせに、されど別のもので代替することができないホッチキスに対する屈辱、大家による家賃請求という不当行為(?)に対する精神的屈辱、金銭的屈辱など、心底くだらないストーリーを読まされる屈辱。
・ やはり、やたらに面白いと思うのだが、漫画家暦10年にもなってこれが2冊目の単行本だという屈辱。
・ しかも「ぶんぶんレジデンス」2巻はとうとう出なかった屈辱。
・ 「この作品がヒットすれば、もしや……」と一縷の期待を抱くも、そんなことはありえないということも同時に感じている屈辱。
・ とにかくデカい帯が邪魔なのだが、これはさすがに捨てられない屈辱。
・ 「坂本の屈辱」という欄外屈辱コラムも併録されていてたいへん嬉しい屈辱。
・ そんな坂本タクマがハードディスクレコーダーなどというものを買ったという実生活屈辱コラムも収録されていて、ひどく裏切られた思いの屈辱。(そんなハイテクであってほしくないと願う屈辱)
・ これも2巻出なかったらどうしよう……と思う屈辱。
・ だから買ってくれ! と懇願せねばならぬ屈辱。
・ 本人ページ「絶対ギガモト」もたいへん面白い屈辱。
【単行本・実用】 中条省平「小説の解剖学」 ちくま文庫 [bk1][amazon]
「小説家になる! 天才教師中条省平の新人賞を獲るための12講」というタイトルでメタローグから1995年に出版された本が、より普通にタイトルを変更した上で文庫に収録されたもの。「天才教師」とかそういうのはやめたほうがいいと個人的には思う。恥ずかしいし、そんなに安っぽい内容の本ではない。まあ、そもそもこれは担当編集者の判断によるものだろうという気はするが……
CWS創作学校の創作科における中条省平の講義の一部を抜粋して1冊にまとめたもので、驚くほどに内容が濃い。
「作家以前の方々へ」、「書き出しの基本的なパターン」、「構成に対する意識」、「物語の設定について」、「対象との距離を保つ」、「やってよいこと、やっていけないこと」、「書きたいテーマにあったジャンル」、「物語をどう展開させ構築するか」、「メリーゴーラウンド方式」、「弁証法を活用する」、「エッセーが小説になる瞬間」、「時間のパースペクティブについて」という12講を通じて、小説というものがどのように構築されているのかを明解に解説した本で、だから、「小説の解剖学」というタイトルがつけられているのだろう。
また、非常に実践的な内容でありながら同時に、例として挙げられている作品の良質なブックガイドになってるあたりもいいと思う。書きたくもなるし、読みたくもなる。
興味深く感じたポイントをいくつか挙げると、川端康成「伊豆の踊り子」書き出しにおけるダイナミックなアクション転換、村上春樹作品(「中国行きのスロウ・ボート」、「ノルウェイの森」など)におけるモチーフの語り方、レイモンド・カーヴァーの短編「大聖堂」における表現の削ぎ落とし方、サリンジャー作品(「バナナフィッシュにうってつけの日」)における会話の断片性、深沢七郎作品(「楢山節考」、「東京のプリンスたち」)における東洋的な「無」に近づいていくリアルな心理、丸山健二「アフリカの光」における時空間の制御、物語と文体の乖離、無動機設定など。
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