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03/12/02(TUE)
【単行本・小説】 ジェラルド・カーシュ(訳:西崎憲ほか)「廃墟の歌声」 晶文社ミステリ [bk1][amazon]
ジェラルド・カーシュ傑作選第2弾。京フェスの若島正・大森望対談で、「カーシュはほとんどが屑で、訳す価値があるのはだいたい単行本2冊ぶんくらい」 みたいなことを聞いたのでちょっと不安だったんですが、読んでみたら、どの短編も安定して楽しい。悪くないです。しかし、こと奇想という面においては、昨年出た第1弾「壜の中の手記」(→感想)をまず読むべきだと思って、ここに収められている作品は、たしかに奇妙な味ではあるけれど、前作のレベルからくらべると奇想というほどではないと思われます。
「廃墟の歌声」、「乞食の石」、「無学のシモンの書簡」、「一匙の偶然」、「盤上の悪魔」、「ミス・トリヴァーのおもてなし」、「飲酒の弊害」、「カームジンの銀行泥棒」、「カームジンの宝石泥棒」、「カームジンとあの世を信じない男」、「重ね着した名画」、「魚のお告げ」、「クックー伍長の身の上話」の全13篇を収録。
古代都市アンナンの廃墟に木霊する哀しい歌声「廃墟の歌声」、4世紀もの間戦場を渡り歩いてきた不死の男「クックー伍長の身の上話」の2篇が前作っぽい奇想譚。ハンガリー荒野にそびえ立ち乞食たちの憩いの場と化している巨石にまつわる秘密「乞食の石」、異教徒の土地に布教に出かけて酷い目にあった聖シモンを介抱した老人とは? 「無学のシモンの書簡」、ジーノの店常連客を巡る皮肉な運命の回想録「一匙の偶然」あたりが白々しかったりビターなテイストだったりするお話。「カームジンの銀行泥棒」、「カームジンの宝石泥棒」、「カームジンとあの世を信じない男」、「重ね着した名画」は自称「犯罪の天才」しかし現在は素寒貧な詐欺師カームジンが、かつて実行したという華麗な犯罪計画を語ってみせるという趣向のシリーズもので、「カームジンとあの世を信じない男」が展開にツイスト効いてていい感じ。贋作詐欺計画を扱った「重ね着した名画」はちょっとくどすぎかも。脱線しまくりだらだら語りが堪能できる「魚のお告げ」は言葉を喋る魔法の魚のお告げによりアーサー王の宝を目指した男の回想録で、冒頭付近の 「私はいらついていた。どうして七十人ぽっちの住人しかいない村の名前が二十三音節もある必要があるのだ。おかげで駅名の看板がプラットホームの長さの三倍になってしまうというのに」 みたいなセンスは大好き。
表紙装画含め、装丁のセンスがとてもよろしくて、ついつい買いたくなる1冊ではあります。しかしまあ、カーシュはじめて読まれるかたは「壜の中の手記」から入るのがいいと思います。そっちもかっこいいし。
【単行本・小説】 有栖川有栖「白い兎が逃げる」 光文社カッパ・ノベルス [bk1][amazon]
火村シリーズ中篇集。収録作品は「非在の証明」、「地下室の処刑」、「比類のない神々しいような瞬間」、「白い兎が逃げる」の4篇。どれもなかなか面白かったですね。
双子の片割れが殺されて、残ったほうに容疑がかかるという「非在の証明」はアリバイ崩しの変化球もの。「あ、そっちか!」という感じ。しかし、この人は双子だのドッペルゲンガーだの、そういうネタが好きなんだなあ。 地下室に監禁された森下刑事の眼前で拳銃による処刑が行われようとしていた。しかし……(趣きを削ぐのでこれ以上は書きません)という「地下室の処刑」はあとがきでも書かれているように法月綸太郎「死刑囚パズル」(「法月綸太郎の冒険」所収。感想書いていないことに今気づいた)をちょっとほうふつとさせるホワイダニットもの。なるほどな、とちょっと感心しました。シャングリラ十字軍は「暗い宿」(→感想)所収の「異形の客」にも登場。まあ、オウムなんでしょう。 「比類のない神々しいような瞬間」はダイイング・メッセージの連鎖劇にさらに捻りが加わった感じ。ネタがふんだんに使われていてなんとも贅沢であります。 看板女優を付け狙うストーカーに一杯食わせたはずの劇団員たちだったが、当のストーカーが死体で発見されて……という表題作「白い兎が逃げる」は兎尽くしの時刻表トリックもの。頻繁な視点切り替えによるサスペンス・タッチでぐいぐい読ませる作品。真相が判明したあとに、あー、なるほど! というベタなネーミングも悪くないと思います。
推理に必要となる情報の後出しや誰も知らないような豆知識を推理の根幹に据えてたりするので(いつものことです)「本格か?」と問われれば「うーん、惜しい」なんですが、読んでいてとても楽しいです。そこらへんの詰めの甘さがまたこの人らしいとも思えて、たとえば同じトリック、同じ構成で法月綸太郎あたりが書いたとして、どう仕上がるかを想像してみるとちょっと楽しいかもしれません。(「地下室の処刑」と前述の「死刑囚パズル」をくらべてみればいいか)
03/12/03(WED)
【単行本・小説】 ダン・シモンズ(訳:嶋田洋一)「夜更けのエントロピー」 河出書房新社奇想コレクション [bk1][amazon]
河出書房新社の新レーベル・奇想コレクションの第1弾。
「黄泉の川が逆流する」、「ベトナムランド優待券」、「ドラキュラの子供たち」、「夜更けのエントロピー」、「ケリー・ダールを探して」、「最後のクラス写真」、「バンコクに死す」、7作を収録した日本オリジナル短編集。
素晴らしい! 世界幻想文学賞、ローカス賞、ブラム・ストーカー賞など、名だたる賞を受賞した傑作短編を集めたものなので当然といえば当然なのですが、どの作品も外れなし、大傑作な1冊となってます。これはよいです。
社会問題をあつかいながらも、だんだんとねじれていって、いつしか物語は幻想の領域へと! CBSドキュメントがどろどろホラーに変貌していくさまを眺めているような気分になる作品が多く、なかでも、チャウシェスク政権崩壊後のルーマニアの悲惨な現状を淡々とレポートし、と思ったら、ラストで……な「ドラキュラの子供たち」、濃密で猥雑なバンコクの闇に潜む魔を描きながら、最後にそうきますか、な「バンコクに死す」の2篇が気に入りました。「ドラキュラの子供たち」が原型となったという長編「夜の子供たち」と、処女長編にして世界幻想文学大賞受賞の「カーリーの歌」(積読なのです)は読んでみるつもりです。
誰にも回避不能な「事故」という不測の事態をテーマにした「夜更けのエントロピー」の書き方は少々あざとすぎにも感じられますが、やはり巧い。感服しました。
元教師がかつての教え子との殺し合いの果てに……という「ケリー・ダールを探して」、ギース先生と教え子たちの奮闘劇「最後のクラス写真」2篇は前述の作品群とくらべるとちょっと作り物っぽすぎるかな、という気もしますが、面白い。「最後のクラス写真」をもし漫画化するとしたら、yama-gatさん的には小田扉だそうですが、自分的には伊藤潤二。「サイレンの村」みたいな過疎村を舞台にして、チキン・ナゲットの代わりに葬式饅頭を与えるのです。
退役軍人用リハビリ施設ツアー話「ベトナムランド優待券」は筒井康隆ならどう書いたかな? という感じ。デビュー短編である「黄泉の川が逆流する」は、切なくて、ちょっとしらじらしくて、人が悪そうな筆致がすでにあらわれてるのがわかってよござんした。
しかし、この装丁は可愛い。オススメです。
【単行本・小説】 京極夏彦「巷説百物語」 角川文庫 [bk1][amazon]
京極夏彦は上手いなあ…… 最近アニメ化もされてるらしい(→公式)連作短編集で、文庫化してすぐ買ってそのまま積読だったの手を出してらめちゃめちゃに面白くて一気読みしてしまったのでした。「小豆洗い」、「白蔵主」、「舞首」、「芝右衛門狸」、「塩の長司」、「柳女」、「帷子辻」の7篇を収録。
日本各地にある妖怪伝承をモチーフに、晴らせぬ恨みを金で解決する又市一味の活躍を描いた作品で、「妖怪出しさえすれば、『必殺』書いても文句ないだろ!」という京極夏彦の叫びが聞こえてきそうであります。ちょっとずつ「必殺」要素を忍び込ませていく過程が伺えて楽しいです。また、マニアならばにやりとするような展開も多く、「地獄に送れ狂った血」など、マニアックなところからネタを持ってくるのは流石。催眠術師も出すね! という感じで、てっきり最後、舞台で生き絶えるのかと……
「舞首」、「芝右衛門狸」、「塩の長司」の3作がお気に入り。「舞首」は伝承を生かした物語構成の美しさで、「芝右衛門狸」は仕掛けの無理矢理さに(よく信じたものだ)、と思ったらさらに無茶苦茶で仰天した「塩の長司」はまあ、なんともはや…… でもまあ、展開はものすごかったですが、謎解きについては美しいと思いました。
「そんな外道は地獄に送っちまえ!」みたいなところがなくて、仕置きの対象にも哀れみや共感の情すらよせているあたりは珍しいですね。これは勿論、意識的な選択なのでしょう。「認識の問題」をミステリに応用した京極堂シリーズに対して、「心の病」をあつかっているのがこのシリーズなのかもしれません。ただ、すべての謎が露にされてしまうあたりを明快でよいとするか、わかりやすすぎて興醒めとするかで評価はわかれそうであります。個人的にはライトノベル感覚で読めて楽しいかな、という感じ。
ただ、又市たちのあいだで金の話が出ないのはちょっと不満。もっとこせこせやってるほうが好みですね。
仕掛けから半年経っても事件の全貌を説明してもらえない百介くんの蚊帳の外っぷりには大爆笑しました。参加してるんだから、きちんと教えてもらいなさい!
03/12/04(THU)
【単行本・MOOK】 探偵小説研究会編・著「2004 本格ミステリ・ベスト10」 原書房 [bk1][amazon]
うーむ…… 多分に営業妨害だと思うのでベスト10タイトルを具体的に挙げるのはやめますが(それでも書いちゃう人は絶対いるから、ミステリサイト界隈なり某掲示板なり探せばすぐに見つかりそう)、2位にダブルスコアの得票数得てこの作品が本格ミステリトップなのか! と驚いてしまいました。吃驚できればいいってものでも…… まあ、例年と比較して2位以下の作品に小粒感が漂う本格不作の年だったにしても、仰天であります。個人的には「バカ小説の傑作」であり、1発ネタギャグみたいなものだと思ってたんですが、本格でいいのですか。
ところで、ベスト作に対する評論はともかく、息が詰まりそうなジャンル俯瞰記事、思いつきでネタ挙げたようなコラム記事など、いかにも垢抜けない作りはどうにかならないものかと毎年思います。持ち寄った記事集めて1冊にまとめてみました、みたいな印象。もっと、トータルディレクションを! 該当タイトル列挙してるだけの記事って何か意味があるのかしらん。そんなの表かなんかにすればいいのに。見せ方や文体変えてみるとか、とにかく工夫しようぜ―― 書きゃいいってものでもないっすよ―― などと厳しいことを思ってしまいます。(法月綸太郎など、作家業の方は流石に考えてるみたい) あと、探偵小説研究会の中に何名か文章が辛い人がおられるので……
100ページくらい読んでほったらかしてある、石持浅海「月の扉」、京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」、島田荘司「ネジ式ザゼツキー」あたりを今年中に片付けねばと思いました。小野不由美「くらのかみ」、ヘレン・マクロイ「歌うダイアモンド」、パーシヴァル・ワイルド「探偵術教えます」、サラ・ウォーターズ「半身」(これは積読)も読みたい。
鯨統一郎の近況報告全文引用:
「私はデビュー以来(現時点で)二十二冊の著書を上梓してきましたが、その中で完成までにいちばん時間がかかったのが『CANDY』です。脱稿したときには大きな満足感を覚え、その後、何度も読み返しています。しかしその作者の情熱が必ずしも読者に伝わるわけではないということも知りました。日々勉強です。」
けっこう意外ですね。
【ANIME】 ヤミと帽子と本の旅人 第9話「メイリン」 (→公式)
メイリンって、この大阪弁狐娘のことか! 不法侵入の挙句、なんとはなしに藤姫様の部屋まで押しかけてみる狐娘と変な帽子の人。(と鳥) 巨乳忍法分身の術〜 十兵衛どの(勝手なネーミング)も大苦戦〜 「イーッ!」 (いかにも雑魚戦闘員の掛け声) いきなり乱入、葉月たんのパンチラ剣法〜 眠り薬にて、「ぺこぽ〜ん」 あっさり後つけられて一刀両断にされて霧散する(なぜだ)仮面の巨乳忍者さんたち。 これが忍法ってヤツかい? 仮面も割れて、一輪の花、戦場に散る…… 「お、おん、大将っ」 そして、大ボス出現! 百合っ子女子校生が忍びの頭と互角以上に闘ってるよ! 「よくも我がしもべどもを」 「なんとっ」 「ええい ならば 必殺必中究極奥義」 「ははははははは」 「みたか この不知火烈堂の力を そのまま 灰となれ」 「なぜだ なぜ我が術が 貴様には通用しないのだ」 「む 無念 無念じゃあ〜」 す、素晴らしい〜 この脚本書いた人間は天才かッ!! 凄く適当に誤魔化してるメイリンたんとリリスたん。そして、また来た! 「よくわからないけれど……」 それで〆か――!! まさに天才の仕事! タランティーノに見習わせたい! そしてセイレンたんとガル様の登場! 奇怪なポージングにて櫛をねだる。 「がーん!」 畳み掛けるようなこの素晴らしさ! 「なんやねん」 そしてガル様の回想パートへと…… 第4話(→感想)の続き。ガル様がリリスたんと出会って現在の世界を作り出すまでのエピソード。発情中のリリスちゃんが媚薬エッセンスにて、い・け・な・い♥淫靡てーしょん、という感じ。世界を作り出すまでのガル様はまともだったのね…… 生贄の代償としてもらった世界が現在ガル様が暮らす地らしい。 「あんたなんか、利用するだけ利用して、ぽーい! なんだから!」 こっちも面白〜 今期最高の馬鹿アニメだと思います。こういう回があるからやめられない。
03/12/05(FRI)
【単行本・小説】 石持浅海「月の扉」 光文社カッパ・ノベルス [bk1][amazon]
これはかなり面白いですね。中盤以降ページを手繰る手が止められませんでした。
那覇空港でハイジャック事件が勃発する。犯人グループは、略取誘拐の容疑で現在拘留中のある人物を制限時間内に空港に「連れてくる」ことを要求した。緊迫した空気の流れる機内、そしてもうひとつの不可解な事件が勃発した。近づいた者が誰もいないはずの機内トイレの中から乗客のひとりが死体となって発見されたのだ。しかも、死体に残されていた外傷、状況は自殺とはとうてい考えられないものだった。いったい誰が? なぜこのタイミングで? 凶器のでどころは? 事件の解決はたまたま居合わせた「座間味くん」の手に委ねられた……
というお話。犯人グループによって監視され、そもそも凶器の持ちこみすら難しいはずの航空機機内という特殊なクローズド・サークルものミステリとハイジャック事件を扱ったサスペンスが融合されていて読ませます。殺人の解決のみならず、不可解な出来事すべてに説明を与えているあたりの律儀さ、犯人グループを単純なハイジャック犯にしないという設定の工夫、ハイジャック下という極限状況の中で推理合戦が火花を散らしてしまうあたり、論理的であろうとすることがシュールな状況を生んでしまうあたりの呼吸など(犯人グループの中から探偵役を出さなかったのも正解)、直球きわまる本格魂のようなものを感じました。
あえて言うならば、さまざまな要素詰め込んであるわりには枚数が足りず(2段組で300ページ弱)、読み終えたあとで若干物足りなさが残ってしまったこと、たとえば、しわ寄せを食うかたちでサスペンス部分の強度が弱くなってしまったこと、匂わせすぎてしまったせいか最後の最後で炸裂するはずの爆弾が微妙に不発に終わってしまったことあたりが挙げられますが、まあ、ささいなことでしょう。志が高そうなのが好印象でした。
今年同じく話題になった、マイケル・ギルバート「捕虜収容所の死」(未読)って、こんな感じなのかなあ。
【ANIME】 R.O.D. - THE TV - 第7話「藪の中」 (→公式) [amazon vol.01 / vol.02 / vol.03]
読仙社依頼で潜入した街で不可解な状況に巻き込まれる三姉妹のお話。こういう心理サスペンスに焦点を当てたような話にすると脚本の無理が目立つな…… 物語全編を覆う居心地の悪さは評価できますが、やはりわかったようなわからんような……なんでそんなことしてるんだ! と皆さん思うはず。不安感あおるだけの物語というか。(そもそも客はいなくていいのだろうか?)いかにも倉田脚本っぽい回でありました。
03/12/06(SAT)
【映画】 「ラピュタアニメーションフェスティバル2003」 (→公式)
ジャンル・時代を超えて古今東西のアニメ作品をランキング、世界のトップ943作品から43作品を選んで上映するという企画。A〜Nまでの9プログラムのうち、CプログラムとDプログラムを観てきました。
■Cプログラム
・久里洋二「殺人狂時代」[1963 日本 15分 モノクロ 133位]
さまざまな殺人の形式が登場するブラックユーモアショートショート集。センス的に「古いか?」と思ったが、意外に面白い。「チュッチュッチュッ」に笑い。
・ノーマン・マクラレン「線と色の即興詩(ブリンキティ・ブランク)」[1952 カナダ 5分 カラー 18位]
最初、光と色の洪水だけかと思ってたら、次第にストーリーがみえてきて、ラストでは感心。ポケモンショックみたいな点滅映像でこれ以上やったらこちらの視神経がもたないかもしれないので5分くらいがちょうどいいかも。
・ロン・チュニス「風」[1972 カナダ 9分 カラー 322位]
風とたわむれる少年の姿をサイケデリックに色を移り変えていく水彩画タッチでダイナミックに描いた作品。なかなか面白いがストーリー展開はありきたりなので、5分くらいにまとめてみてもよかったかも。
・大藤信郎「幽霊船」[1956 日本 11分 モノクロ 322位]
切絵/影絵アニメ。古いからセンス的にどうかな……と思ってたら存外面白くてビックリ。登場人物たちの独特な動きのタイミングがゆるやかなグルーヴを生み出して心地よい。
・ブジェチスラフ・ポヤル「ぼくらと遊ぼう 第1話 〜出会いの話」[1965 チェコスロヴァキア 14分 カラー 185位]
ぬいぐるみアニメのようでそうではない、半立体アニメーション。子グマ二匹のキャラが立っていて楽しい。しかし、ほのぼのアニメかと思ったら合体変形アニメだったのでビックリする。あと、紹介文読んで気づいたのだが、小さいほうは妹だったのか……
・ヤン・シュヴァンクマイエル「男のゲーム」[1988 チェコスロヴァキア 14分 カラー 105位]
いちおうこのプログラム目玉のはず。小汚い部屋のソファに腰かけて男が観戦するは、自分による自分のための自分だけの私的殺し合いワールドカップの一戦だった! というもの。ひげの男が何回も何人も登場して非業なる死を遂げる。間抜けな音楽と出鱈目な死の対比が楽しい。ビールのつまみにクッキーというのは衝撃。あと、可愛い子猫ちゃんを心配した。
・フレデリック・バック「クラック!」[1981 カナダ 15分 カラー 12位]
柔らかなタッチで描かれる、揺り椅子と人間たち、みたいなお話。予想していたラストとちがったのはちょっと吃驚でした。爺さんの意外な薄情ぶりに衝撃。(狙ってるものはちがうとはいえ)この作品とくらべると「風」はちょっと分が悪くなるかも。
■Dプログラム
Cプログラム昼の回を鑑賞後、Kプログラム「ナーザの大暴れ」の時間を使って昼ご飯。駅前のタイ料理屋ですませたけど、なんとなく入ったわりには当たりでした。微妙に時間が余ったので商店街などを流す。しかし、阿佐ヶ谷の町は物価が安い。とくに食料品と衣料についてはバカ安であります。でも新刊書店にでかいところがなかったような。そして再びラピュタ阿佐ヶ谷に戻ってDプロ。親子連れもちらほら目に入ったけれど、予想外に下ネタ作品が多いラインナップで「これはいいのかしらん」と心配していた。「おこんじょうるり」入ってるのにねえ。
・ズビグニュー・リプチンスキ「タンゴ」[1980 ポーランド 8分 カラー 115位]
ナンセンスな行動を繰り返す人間たちでどんどん部屋がごった返していくという作品。映像によるテクノミュージックみたいな感じで、叫びなど展開のアクセントになるものも用意されていてよい。やりたいことは瞬間で理解できるので、そのうち飽きるかと思ったんですが、映像のループが心地よくて最後まで引き込まれてしまいました。
・手塚治虫「ジャンピング」[1984 日本 6分 カラー 51位]
これは以前に観たことがあった。跳躍を繰り返す主人公視点の物語がしだいにエスカレートしていくという作品で、そういえば、昆虫がいっぱい出てきていた。
・ノーマン・マクラレン「隣人」[1952 カナダ 8分 カラー 110位]
敷地境界に咲いた可愛いタンポポを巡る争奪戦がいつしか悲惨な展開に…… 背景に家がある理由が判明した瞬間、戦慄が走りました。某筒井康隆作品みたい。
・岡本忠成「おこんじょうるり」[1982 日本 26分 カラー 28位]
年老いて神通力も失せた盲目のイタコと治癒効果のある浄瑠璃の謳える狐・おこんの交流を描いた物語。ベタベタのベタベタだけどやはり泣ける。声優の熱演も光る。
・大藤信郎「くじら」[1952 日本 10分 モノクロ 361位]
大爆笑作品。「幽霊船」もよかったが、こちらは素晴らしすぎる。あまりのアホ展開に場内も沸いた(w 海の男たちの状況を鑑みない肉棒欲望の爆発がすがすがしい。おまいら…… という感じ。
・ヤン・シュヴァンクマイエル「対話の可能性」[1982 チェコスロヴァキア 11分 カラー 21位]
闘争・性愛・言論による対話を描いたものらしい3部構成作。わりと理解しやすいところに落ちているので「男の戦い」のほうが好みかも。ただ、この人のアニメーションということならこちらが代表作になるのはまちがいない。しかし、撮影現場はグロそうであります。
・ラウル・セルヴェ「シレーヌ」[1968 ベルギー 9分 カラー 227位]
機械文明によって不思議が摘み取られていくことに対する風刺なのかしらん。
・ユーリ・ノルシュテイン「あおさぎと鶴」[1974 ソ連 11分 カラー 52位]
あおさぎと鶴の恋の駆け引き合戦。美しく洒落た絵柄がよい。
印象に残ったのは「男のゲーム」、「タンゴ」、「くじら」。川本喜八郎作品と、ユーリ・ノルシュテイン作品、政岡憲三「くもとちゅうりっぷ」、カレル・ゼマン「水玉の幻想」あたりはいつか観たいものであります。
03/12/07(SUN)
【単行本・小説】 ドナルド・E・ウエストレイク(訳:木村二郎)「鉤」 文春文庫 [bk1][amazon]
スランプに陥ってるベストセラー作家と、書いても売ってもらえず開店休業状態の中堅作家が20年ぶりに再会、そして互いの利益が一致した。印税は折半、中堅作家の原稿をベストセラー作家のネームバリュー使って売り出せば、ふたりとも万万歳じゃないか! やったー! 「ただし条件がひとつだけ。慰謝料として多額の金を奪っていく離婚調停中の妻を君に殺してもらいたいのだ」 とベストセラー作家は言った。
交換殺人を扱ったサスペンス物で、流石はベテラン、ウェストレイクらしくそれほど派手な展開がないにもかかわらず、全編スリリングでとても読ませます。一気読み確定、でしょうね。ところで、いちばん驚いたのは殺人を依頼される中堅作家・ウェインの奥さんであるスーザンの性格設定で、「俺に殺人ができるだろうか?」 と逡巡するウェインに対して、「とりあえずターゲットに会ってから考えれば?」 みたいなアドバイス即答してみせるところが素晴らしい。彼女自身有能なキャリアウーマンで、聡明でいかにも人の上に立つ人間なのに、けっこうドライなのね――と思いました。ターゲットであるベストセラー作家妻に接触して気が高ぶったウェインが帰宅後すぐにスーザンをベッドを誘うところはさりげなく爆笑ポイント。
ラストはもうちょっと長めに書いてみてもいいと感じましたが(今の倍くらい)、それは俺がトンプスン好きな人間だからかも。この唐突な幕引き自体は洒落ていて悪くないです。「鏡」、「影」などの単語が散見することからもわかりますが、作家という職業におけるふた通りの苦悩を描いた鏡像心理サスペンスというか。
木村仁良によるイニシャルトーク解説も面白い。しかし、まあいつも思うことですが、ニューヨークの街に関する知識がもっとあればさらに面白いんだろうな、とは感じて、そこがちょっと残念。
【単行本・小説】 伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」 新潮文庫 [bk1][amazon]
目が痛くてシステムエンジニアを辞めたぼくは心機一転、コンビニ強盗をして、あっさり捕まった。駆けつけた警官が元同級生の残虐人間だったので、生命の危険を感じて逃亡した。気がつくとぼくは見知らぬ島にいた。そこは150年前から鎖国しているという島で、未来を予言する案山子や、殺しのライセンスを持っている男、嘘しか口にしない画家など奇妙な人間ばかりが暮らしていた。島に泊まった翌日、何者かによってカカシが殺される。未来が見通せたはずの案山子がなぜ自分の死を阻止できなかったのか?
新潮ミステリー倶楽部賞受賞の伊坂幸太郎デビュー作。とても面白いけれど、この人の作品の常として多分にしゃらくさい。そこがよいのでしょう。微妙な比喩や同時並行で語られるエピソードがラストできれいに収斂する構成など、この人らしさはすでに出ているようで、伏線をきちんと回収しようとしているところも好印象。系統としては、森博嗣「女王の百年密室」、上遠野浩平「殺竜事件」、ピーター・ディキンスンの諸作品(「毒の神託」とか)あたりと同タイプですね。ミステリ部分の衝撃度はかなり控えめだと思います。
予言する案山子・優午の誕生を描いた江戸時代末期パートはもうちょっと分量あったほうがいいと思いますが、動機付けに無理がありすぎるだけになかなかむつかしかったのでしょうか。しかし、その現実味のなさまでがプラスに働いてる気がして、なんともずるい。けっこう面白いけれど、やっぱりしゃらくさい、という印象であります。
どうにも救いようがなかったハードカバー装丁がそれなりに改善されたのはよかったよかった。この人がブレイクしなかったのって、あの装丁のせいなんじゃ? とまで思ってしまっていたのです。
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