- text #03 -

さんま


目黒三吉

シュベール出版零式コミックス
    838円+税
 S

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 けっきょくのところ、目黒三吉は物語ることに関してほとんど執着がないのでは、と思う。初単行本であるこの『さんま』に収録されている作品たち、たとえば、釣りをしていた兄弟の前に琵琶湖の神様ソムチャーイびわこが唐突に現れる『びわこでチュッ!』シリーズ、トラックにはねられた青年がいきなり巨乳の国に飛ばされる『巨乳の国』、海王星人の侵略を受けた日本がかなりヤバいかんじになる『ミラクル宇宙パワー』、どれも設定されている世界観・キャラ造形ともに長編作品として成立するものばかりだ。それを目黒三吉は惜しげもなく独立した短編として切り捨てる。しかもどの作品も物語として成立する/しないのぎりぎりのラインのシュールな終わらせかたで、だ。

 個々の作品についてちょっと考察してみよう。この『さんま』に収録されている作品はだいたい2つのタイプに分類することができる。

1.なんとはない日常から始まるストーリーが唐突な展開によってムリヤリ非日常の世界を舞台としたストーリーに捻じ曲げられるお話。

 前述した『びわこでチュッ!』シリーズ、『巨乳の国』に加え、青年が助けた猫が人間の姿になってムリヤリ恩返しにやってくる『はぐれ猫グリグリ』などが挙げられる。このタイプの作品の特徴としてセンス良いけどくだらなすぎなダジャレ、ネタがめちゃめちゃに詰め込まれている、というのがある。
 なんでそんなにネタとかが詰め込まれているかっていうと物語をムリヤリにあさっての方向へ持っていくためだとか、エロな方向に持っていくためだとかのために必要なんだけど、そのネタ連発によって強引に捻じ曲げられたシュールなストーリー、くだらなすぎるネタの数々、流麗なタッチで描かれるエッチぃシーンとかが渾然一体となって絶妙に心地良い読後感を読者にもたらすことに成功している。

 コレはオタク的センスでチョイスされたガジェットを組み合わせて作られたものの中で最も素晴らしいものの中の一つだろう。たぶん。

2.シュールで淡々としたストーリー

 このタイプの作品には『ドライな彼女』、シュール連作『モイットレム・カ・ネルローズ』、『消えた22号』などがある。
 漫画としての構造自体に斬新な手法を取り入れているのもこのタイプの特徴で、たとえば前述した『ドライな彼女』は青年の部屋にあるTVの音声以外は効果音すら描かれない(ほとんど)サイレント作品であるし、『消えた22号』は全て横分割されたコマ割りによって描かれる。意図的にオノマトペが作品内から排除されている、というのも特徴の一つだ。
 そしてそんな手法で描かれる物語のストーリーはシュールに始まり、そのまま淡々と読者にほとんど何も説明されないままに終わる。比較的理解がたやすく思える『ドライな彼女』でさえも、汚れ→水洗い→乾燥といったシーケンスの繰り返しが視覚的にわかりやすいだけで結局何なんだ?と言われると答えることはできない。『消えた22号』の青年が最後に突然ラフレシアに変化する理由も不明なままに終わり、読者は宙ぶらりんのままに置いていかれる。

この1と2のパターンの作品、つまり動(1のパターン)と静(2のパターン)のリズムを持った作品が巧みに配置されることによってこの作品集は非常にバラエティに富んだものに仕上がっているのだ。

 ところで、このブン冒頭のギモン。物語ることに執着を持ってないだろうことが(つまり、ストーリー的な希求力は弱いということ)目黒三吉の弱点になるだろうか?ということだが個人的にはどっちとも言えないと思う。この人くらい達者な人だったらそりゃきちんとしたストーリー物やってもいいもの書けるのは間違いないだろうが、目黒三吉が今描いてるような傾向の作品描ける作家はほとんどいない、と思うからだ。ま、目黒自身がやりたくなればどうぞ、といった感じだ。(当たり前のことを言っている)

 もともとこの人の作品って構成がとてつもなく達者だったり、描線が流麗だったり、そんな線で描かれたエロが入ってたりするだけでやってること自体はながいけんが『チャッピーと愉快な仲間たち』で描いてたものの流れを汲んでるんだと思う。つまり労多くして…のイバラ道な訳で、ええと、頑張って下さい。

 蛇足かと思うし、野暮の極みかもしれないが『さんま』単行本中で使われているギャグの元ネタらしきものを下にまとめておいた。たとえば、「なんでこの単行本のタイトルって『さんま』なんだろう?」とか思ってる人は参考にして見ても良いかもしれない。無論全部のギャグについて網羅してる訳ではないし、めんどくさいから削ったのもある。わからないのもある。『モイットレム・カ・ネルドース』なんて絶対元ネタありそうなんだけどわからなかった。ガックシ。


encyclopedia    o f   "さんま"   
 『さんま』  落語『目黒のさんま』より。 「やっぱり秋刀魚は目黒に限る」ってか。
 『びわこでチュッ!』  TV東京『渋谷でチュッ!』ジャリズムって解散したんだっけ?→してました。
 名刺  藤島康介『ああっ女神様っ』
 ゴッド姉ちゃん  アッコさん。最近車をはねて負傷。
 ウーピー・ゴールドバーグ  『天使にラブ・ソングを…』
 p.24あーあんあ♪…  ウクレレ漫談の牧伸二。公式サイトがあったのは正直驚いた。しかもよくできてる。
 アダモステ  フジTV『オレたちひょうきん族』より。島崎俊郎氏演ずる南洋系の原住民キャラ。愛称・アダモちゃん。三味線のおばちゃんを引き連れ、「浪曲アダモちゃん」を披露する。そのときの名は「仇申亭北」。主なセリフは「ペーイ」。
 p.271コマ目  ヤッターマン:ビックリドッキリメカ発進シーン。
 『翼よあれがパリポリパー』  『翼よ!あれが巴里の灯だ』
 パリ  どうみても渋谷。
 カミングセンチュリー  カミセン(ComingCentury)+トニセン(20ht Century)=V6。
 p.77ジェントの衣装  アンナミラーズ制服(ありがち)。一回は行きたい。
 ミクロマンレディーS  ミクロマン+デビルマンレディー。
 さーわるものみな死んだのさ  『DRILL KING ANTTHOLOGY』収録ペダル踏弥『ツルっとフランス子守歌』より。この曲の歌詞はチェッカーズ『ギザギザハートの子守唄』の歌詞をフレーズごとにシャッフルしたもの。「さーわるものみな傷つけた」+「仲間がバイクで死んだのさ」
 カックラキン  『カックラキン大放送』 ラビット関根のカマキリ拳法とか野口五郎の刑事ゴロンボとか。あと、ナオコおばあちゃんの縁側日記。
 ラフレシア  茎も葉もなく、特有の腐肉のような悪臭のするラフレシア科の寄生植物。マレー半島とインドネシアに自生し、おもにブドウ科シッサス属のつるや根に寄生する。花は褐色の5弁花で、腐肉臭にむらがるハエによって受粉される。世界最大といわれている花は、直径約90cmになり、花弁は厚さ3cm、長さ50cm、重さ7kgにもなる。開花するまでには1カ月以上かかるが、開くと2〜3日でくさってしまう。Encartaって便利だなぁ。

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