- text #09 -

チキタ★GUGU


TONO
朝日ソノラマ眠れぬ夜の奇妙な話コミックス


 人里はなれた森の中チキタ・グーグーひとりすむラー・ラム・デラルじっとまつ おいしくなるのをじっとまつ…。
 
 物語は赤ん坊の時魔物に両親一族を殺されたチキタ・グーグーの元にラー・ラム・デラルなる謎の人物が尋ねてくるところから始まる。チキタが顔を合わせるたび女だったり男だったり鳥だったりヘビだったりするコイツは実はチキタの両親を食べた妖怪で今度はチキタを食べにやって来たのだ。で、なんでラー・ラム・デラルはチキタの両親食べた時にチキタも食べなかったのかっていうと、チキタはそりゃもうトンデモナイくらいにマズイ人間だというのがその理由。いま食べたら妖怪は食当たりで死んでしまう。だけど百年くらい経って熟成するとそれはもう、得も言われぬような美味に変わる。で、グルメなラー・ラム・デラルとしてはチキタが美味しくなるまで自分の手元で育てようと思った…というわけ。

 妖怪と少年の共同生活モノといえば『うしおととら』とか思い出す人多いと思うんだけど、この『チキタ★GUGU』がどうヘンかっていうとやっぱり主人公である妖怪ラー・ラム・デラルと少年チキタの微妙な関係。
 たとえばラー・ラム・デラルにとってチキタは単なるエサに過ぎない。今は不味くて食べられないけれど時間がたって熟成すればきっと舌が蕩けるくらい美味しくなるし、それならば勝手に死んだりしないようにキチンと飼育しなければ…とか思ってる。彼にとってチキタは軒先に吊るされて甘くなるのを待っている渋柿みたいなもんで(最初のうちね。そのうち彼はチキタに奇妙な愛情みたいなものを抱くようになる。でもそれって牧場の人が自分とこの牛とかに抱く感情に近い気がするけど)別に何か思うとこがあって一緒に暮らしてるわけじゃない。
 いっぽうチキタはといえば憶えてないとはいえ、ラー・ラム・デラルはリッパな親の仇な妖怪なわけで普通は一緒に暮らすなんて考えられないと思うんだけど自分が彼にはとてもかなわなくて、とりあえず彼が「百年間は」自分を食べないだろうことがわかるとわりかしあっさりと心を許してみたりする。ここらへんのいいかげんかつブラック、ある意味リアルな人間関係のスタンスの描き方がTONO作品の特徴な訳でここらへん、他の作家には描けないところであります。

 ほかにもほのぼのファンタジーのように見せかけておいてこっそり毒を混ぜるというのはTONOの得意とするところでありまして、たとえば、食い殺されたチキタの両親の頭蓋骨使って(埋葬しろよ)2人が「返せよ俺の親父」「そっちは母親、父親はこっち」とかやるトコとか、桃の木のお話で「なんだか今年は妙に美味しいと思ったら根本に死体が埋まってたんです…」みたいなことを相談しに来た男がその問題の桃をお土産に持ってくるトコとか(もりもり食べたチキタが「うげ〜」とかやってる)そういうブラックなギャグがてんこ盛りであります。『ダスク・ストーリー』からTONOに入った人は「うげ〜」って思うかも知れんですがこの人にはこういう部分多いよ。

 1巻後半からクリップなる人喰いがもう1人新キャラとして2人の共同生活に加わることになるのですがここでも相変わらずあっさりと事態を受け入れてしまうチキタ君でありました。本当にマヒしてるなぁ、この子は。

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