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幼い恋


橋本みつる

ソニーマガジンズきみとぼくCollection

橋本みつる『幼い恋』表題作ふくめ、『背中をどうにかしてくれ』『誘惑について』の3本+αが収録されている短編集。今まで単行本に収録できなかった作品を1冊にまとめたもののようで執筆時期も1995〜99年、初出誌も花とゆめの増刊からセリエミステリーとバラエティに富んでいる。

  やはりこの3本の中での白眉は表題作である『幼い恋』。通学中の電車で出会う男の子を好きになってしまったナツエ。父親の転勤でもう会えなくなるだろう最後の日、彼女は彼に告白することにした。声をかけようと思いきって彼に近づいたその瞬間、彼女の身体は不思議な光に包まれる…。この光は一体何だろう?混乱した彼女は声をかけようとした彼も振り切って逃げるようにその場を去ってしまう。
 あの光は何処から来たの? / ―――わからないけど /全身で好きって言ってる気がして / 裸になったみたいで /凄く怖かった
 ここで僕たちは驚かされる。いままで「キラキラと輝くような」といった言葉で表現されていた初恋感情をメタファーとしてではなく、そのまま描くなんて!好きでたまらない相手に近づいたとたん身体が発光しだす――自分の秘めた思いを見透かされたみたいでそれはきっと堪らない事だろう。

 ナツエは転校先の学校で再び彼と出会う。彼の名前は永波地球(ナミ)。彼は光るナツエに興味を示し、2人は夜に何回も何回も逢うようになっていく。夜の闇の中、ナツエは綺麗にぼーっと輝いて。

 そんな2人の逢瀬も永くは続かない。両親の反対、ナツエの怪我。ここで物語はとつぜんにSF的な展開を迎える。壮大かつスペクタクルな展開。実はナツエが輝いてるのではなくて。ナミは地球、ナツエは月。惑星と衛星の微妙な関係。
 だがそんなもの凄い展開すらもナツエのナミへの思いの前に敗れ去ってしまうのだ。
 「ナミは光る私ばっかり見たいのよ!!そんなのイヤ!」
 そして物語は続いていく。始まったばかりの恋は壮大なSF的設定も展開も全てを飲み込んだまま不器用に続いていくのだ。少女の持つ初めての恋愛感情という(全体から見れば)ミクロなものと惑星規模のマクロとをまったく同列に扱ってしまうアクロバティックなストーリーは美しい軌跡を描き、静かに着地する。僕はあまりの見事さに呆然としながらそれを見る。

『背中をどうにかしてくれ』
 自分の中の妹へのどうしようもない想いに苦しむ少年に興味を示すもう一人の少年。「俺が楽にしてやろうか」という言葉の意味。自分の中の感情がよく理解できないままにそれぞれの思いは交錯していく。この作品で見るべきはやはり最後の1pだろう。自分が一体何を求めていたのか、母親の何気ない一言とハッとしたようなその表情。まるで初めてそれに気づいたかのように。

『誘惑について』
 杏奈ちゃん可愛いね〜。

 結論:しかし、凄いねこれ。 (オワリ)

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