- text #12 -

ブラッド
倉阪鬼一郎
集英社ハードカバー


倉坂鬼一郎『ブラッド』

 人が死ぬのを見るの好き?僕はとってもだぁい好き。人が死んで死んで死んで死んで死にまくるようなお話が本当に大好きなんだ。でも、みんなも本当はそうなんじゃないの?

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 休日の昼下がり、ファミリーレストランで食事をとる平和な山崎家。たしかに生活は苦しいけど平和で穏やかな日常。お子様ハンバーグが来るのを楽しそうに待つ娘、舞ちゃんが可愛らしい。いくら倉阪作品とはいえまだまだ始まらないだろう…そうさ、きっとまだ大丈夫。そう思う読者の心はあっさり裏切られる。さぁみんな、惨劇の始まりだよ。

 ウェイトレスに食事用ナイフで(力まかせに)解体される舞ちゃん。ぴくぴくと痙攣する四肢と血のトマトソースに染まったその顔。壁に突き飛ばされた母親は妙な姿勢で横たわっている。そして章エンド。

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 山崎家に降りかかった災難はまるでなかったことのように次章がスタート。第2章を示す数字の下の値はなんだろう?
 この章で登場するのはモラトリアム大学生、山村。彼もファミレスで食事を取っている。そこのTVで報道されたファミレスウェイトレス無差別殺人を引き金に彼の思考は少しずつ歪んでいく。目の前で食事を摂っている女、あの女は魔女だ。ヤツがウェイトレスに指令を送って操ったのだ。今殺さなければこっちがやられる。魔女にふさわしい報いを!そして彼は彼女の眉間にフォークを突き刺した。
―――  章エンド ―――

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 ここで判明。下の数字は死んだ人間の数だ。そして次々と人が死ぬ。死んで死んで死にまくる。主人公は誰なのか?物語の中心は何なのか。そんな読者の疑問を意にも介さないようなスピードで物語は疾走し、暴走しまくっていく。虐殺、殺戮、ジェノサイド。まるでそれは終わり無き殺人フォークダンス。読者のパートナーになった登場人物たちはちょっとの間踊ってにっこり笑って死んでいく。生真面目がとりえだったはずの男は銃を乱射したあげくに自殺。女は男を誘ったあげくに縊り殺す。バックに流れるのは不気味な童謡。中心にそびえるのは大規模アミューズメントパーク、ファンタスティック・シティM。

 子猫を殺し / 子犬を殺す / 血潮はきれい / 死体はきれい / 刻んで食べた / お庭に埋めた / おまえは死んだ / おまえを殺す

 物語は悪霊話から日本の宗教家たちを巻き込んだ一大宗教バトル、局地的大規模災害にまで無尽蔵にスケールアップされていく。

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 最終章。これまでの全ての殺戮が人類的な規模、つまり極限まで拡大されていき、そしてラスト。忌まわしく、無残な殺戮の果てのはずのそれは奇妙に美しく、僕は奇妙な思いに包まれる。きっとみんなもそうだろう。きっとね。

 100  100  

(00/04/03)

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