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木持アート出版の素晴らしき世界
木持 隆司
木持アート出版


 いま自主制作漫画界でもっとも熱い団体、それが木持アート出版だ!(でも個人)ここでは木持アート出版がこの世に送り出した全作品を完全レビューしてみたい!(でも2作品)

 なお今回にかぎり、下のタイトル画像をクリックすることで大きめの画像が表示されるようにしておいた。なぜかって?それはこのスゲェ衝撃(ビジュアル・インパクト!)がほんの一部でもこのページを読んでる皆さんに届けばよいなぁと思ったから。

クリックで大き目の画像に木持隆司 『海のプリンセス エミちゃん』 <木持アート出版>

 木持アート出版、伝説の第1作(だと思う)。
 海底深く高度な文明を築いた海王国。その王国の美しきプリンセス、エミナ姫をめぐり、天界の王と海王国国王の間では親子喧嘩が絶えない。エミナ(つまり孫娘)にふさわしき男性を見つけ、天界の女王としたい天王、そのまま娘は海王国の女王になってもらいたい海王。娘に甘々な海王はエミナ姫が人間界に家出したことにしてほとぼりが冷めるのを待つことにした。そこに魔界からの刺客がエミナ暗殺の命を受けてやってきた…というストーリー。

 驚かされるのは作者である木持隆司先生の願望をあまりにそのまんま反映した設定の数々。人間界へとやってきたエミナ姫はとある家族に出会い、その家庭にお世話になるのだが、その家庭というのが父親は女子プロレス団体の主催者、長男がランジェリー会社勤務な家庭なのである。だから(?)エミちゃんは女子プロレスラーの格好やランジェリーにガーターベルトといった姿で食器を洗ってたりする。客観的に考えて相当にシドイ扱いな気がするけど、エミちゃん含めて誰もなんにも気にしてる様子はないので、まぁそういうものなのだろう。
 ほかにも、エミちゃんが最初に地上にやってきたときのこと、(当然)全裸で発見されるのだが、そこでの父親の「何!なんだと裸の女!」(猛ダッシュ) 「本当に生きてるのかさわってみないとわからんよ」(満面の笑みを浮かべながら)などナチュラル極まりない台詞も本当に素晴らしい。木持ワールドの住人には悩みとかそういったものが概念ごとまるまる欠落してそうなカンジがする。
 物語ラストは長女が座長をつとめる劇団の舞台でエミちゃんと魔界の姫魔利奈との一大キャットファイトが20pにわたって繰り広げられるのだが、全編パーンとかボーンとかビリビリ(服が破れる音)とか、まぁそんな感じである。で、物語ラストではエミちゃんを劇団スターにするか女子プロレスラーにするかランジェリーモデルにするかで取り合いになるのだ。ギャフン。

 天使リンクの「がってん!しょうちのすけ!」というセリフもなんか、いい感じ。


クリックで大き目の画像にクリックで大き目の画像に木持隆司 『タイムパトロール ユカちゃん(前編/後編)<木持アート出版>

 前後編あわせて200pにもわたって描かれた一大巨編ストーリー。『海のプリンセス エミちゃん』を遥かに凌ぐスパイシーでスペイシー(ある意味)なストーリー展開が魅力的な作品。
 舞台は美しい惑星、マリン星。ユカちゃんは宇宙の秩序を乱すものを取り締まる宇宙パトロールの隊員である。天才木持先生は「自分がこれだ!と思ったことのみを描く」という創作者としてもっとも大切な姿勢をさらに加速させたような感じで、ユカちゃん登場ののっけからランジェリー姿でお寝んねシャワーシーン制服着替え(ちなみに女性隊員全員制服はビキニ、男はバーバリアン風。→タイトル参照)という意味無し最強3段コンボをキメてくれる。これでよし!
 で、危機に陥っている地球を救いに行く…はずなのだがなぜかここでスギ(という男性隊員)が16pにわたってゴネはじめる。いわく「どうせ今度も命がけの任務ですぜ!!」「愚かな人類のためにどうしてあっしらがいのちをかけねばならねぇんですか」前作でも使われたなぜだか江戸っ子口調はここにも出てくるが、そこまで任務嫌がることもないだろう…という気がする。人類の持つ業みたいなものに関する議論をえんえん繰り広げた挙句、まだ任務に異を唱えつづけるスギを説得する手段が色仕掛け(しかもクネクネとかウインクとかそんな感じの。低レベル。)であり、スギはあっさりオッケー。「はっはい!ぼくちゃんがんばります!!」これだ!これが木持イズム!
 結局のところ、人類の危機というのはリサリンというマリン星稀代の悪女がコロンブスの愛人となってアメリカ大陸を自らのものにしようとしているというものでアメリカ大陸ってコロンブスのものになったことあったのかな?とか思ってしまうがそういうことは気にしてはダメなのだろう。
 前作でも見られた妙に説明的でシュールな描写も加速しまくっていて、たとえばパトロール隊員たちがポージングを(もちろん無意味に)キメながら

 「悪い、武器商人たちがお金の、力にものをいわせて横暴なことをするから戦争がなくならないのね 戦争は、人類最大の不幸にして悲劇だわ お金は、あって邪魔になるものではないし人間が生活してゆくのにとても、たいせつで必要なものだけどあまり、金銭欲や物欲に執着しすぎるとかえって人間を不幸にして しまうことがあるのね」
(原文ママ、ちなみに1コマのセリフ)

 「国際赤十字社とは1859年イタリアの独立戦争でけが人達のみじめなありさまを見て敵、味方の区別、差別なく救助活動をする必要を感じ1864年スイスの慈善事業家アンリ・デュナンによって設立されました しかし、こののち活動の範囲が広がり傷病兵はもとより災害の時の救助活動や病気の予防、献血などもおこなわれるようになりました 現在、赤十字社の本部はスイスのジュネーブに置かれ世界の国々が加盟しています」(これも1コマ)

 などと議論し続けるシーンはシュールを越えてどこか新しい地平に私たちを連れて行ってくれるような気がします。

 そして、そんなメッセージ性に満ち満ちた前編は後編における80pにわたるサンタ・マリア号を巻き込んだ一大キャットファイト(またか!)に続いていく。あっあっあっ ああ… あうう あふう… エイッ! ダダ―――ン!とかそんな感じ。
 なんせ最後はリサリンとユカちゃん、巨大化して戦ってるよ!木持先生のパッションはもはや通常サイズじゃ収まらなかったって感じだよネ!この感動を何といって伝えていいのか、もうわからないよ!!


 スギ「マリイがこんなに強いお姉さんだったとはもうオッパイもおしりもさわりません許してください」(なんて台詞!泣けてくる!)

 この作品を入手するためにはコミティアに足を運んで木持アート出版にて購入して戴く他はない。しかしその労力を払ってでも入手しなければならない何か、こう創作者にとって重要なもの、かつて私たちが持っていて、今はもう、なくしてしまった大切なものがこの作品にはたくさん詰まっているような気がしてならないのだ。

(00/05/09)

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