- daydream text #01-
メビウスとんちこばなし

#04 問題 a question


  
 僕は薄汚い親爺と東北地方を旅している。いっしょにいるのは親爺と3〜4人の幼い弟、妹たち。僕の現実世界での家族構成とはぜんぜん違うんで、きっと血は繋がっていない関係なんだろう。そういえば親爺の顔にもとんと見憶えない。なんで僕はこいつと旅してるんだ。そんな僕の苛立ちを傍らで心配そうに眺めているのは機嫌が悪かったり、電車内ではしゃいでいたりする弟妹たちを面倒みてる小母さん。もちろんこの人にも見憶えなし。

 電車に揺られながら、僕は1枚の問題用紙に目をやる。

 「問1主人公である青年にふさわしいと思われる性格を記しなさい (5分/15点)」

 この青年とは僕だ。「読者に好かれるためには幼い子供たちの世話も進んでできるような面倒見の良い性格であることが望ましい。」と書く。

 突然小母さんは消滅し、僕は薄汚い親爺と弟妹たちしかいない車両の中に置いていかれる。親爺は口元から涎を垂らしながら大鼾を立てて寝ている最中だし、結局は僕が弟妹たちの面倒を見る羽目になる。親爺を起こすのはさらに問題を増やすだけな結果に終わりそうなんで止めておく。それに話をするのが怖い種類のキャラクタである。

 電車内を走り回る弟、妹たちをなんとか捕まえて両脇に抱えながら第2問スタート。

 「問2この先物語をより面白くするためにはどうしたら良いか。具体的な例を30字以内で記しなさい (10分/20点)」

 問題に答えないうちに鼾をかいて寝ている親爺の姿が透明になって消滅していく。なるほど。

 そして電車は寂れた漁村の駅に到着。ここが終点らしいので嫌でも降りなければいけない。落ち着きがなくはしゃぎまくる弟や妹たちの手を両手で引きながらホームへと降りる。しかし、そこにホームはなく、いきなりの浅瀬。20pくらいの浅瀬にはブルーギルの全身に黒い刺を生やしたような奇怪な小魚や2mくらいもあるだろうリュウグウノツカイのような巨大な魚がゆっくりと泳ぎまわっている。漁村の人間らしい漁師たちも波打ち際に何人かいる。よくみると漁師たちは海に背を向けたまま海岸に作られている釣堀のような奇妙な建物に釣り糸をたらしている。「ギギ」不気味な声(?)で黒いトゲ魚が鳴く。弟妹たちは不気味な巨大魚を追いかけて浅瀬を走り回っている。いつのまにか僕の隣には気が良さそうな赤ら顔のオヤジがやってきている。漁村の人間だろうか。僕が話しかけるより前に僕の疑問について喋り始めた。

 「あ、この海で漁なんかする馬鹿おらんよ。」

 「だってこの海にいるのは」

 なぜ?

 「みんな毒魚じゃ」

 慌てて巨大魚とたわむれている妹、弟たちを引きずってくる。なんとか無事みたいだ。ほっと胸をなでおろして浅瀬に腰を浅瀬に降ろした僕の腰のあたりに奇妙な感触。

 「ああ、あのデッカイのなら問題ないよ。食べると下痢するだけじゃ。ここらで本当に問題なんはあの黒くてトゲいっぱいある黒いのだけじゃ、刺されると大の大人でも往生することあるからな。」

 腰の辺りに広がっていく焼け火箸で突かれたような鋭く熱い痛みと聞きたくはなかった鳴き声。

 「ギギ」

 薄れ行く意識の中で唯僕が考えていたことは用紙に書かれていた最後の問題のことだった。問題では主人公は最後に死ぬことは無かった筈だったのである。たしか…。

 「ギギ」

 

#03 バケツ a bucket


  
朝の光の中、3人の女の子に手を引かれながら歩いていく。何を見ても可笑しいかのようにきゃいきゃいと笑う彼女たちはまるでダンスのステップを踏むかのように僕の周りをくるくると廻る。風に翻るスカートがまるで蝶々の羽根の様。片手に持っている赤いバケツは何なんだろう?
 彼女たちはとある横断歩道の前で足を止める。「??」という表情を浮かべて彼女たちの顔を一瞥すると3人はちょっと微笑んで道路の向こうのほうを指差す。ゆっくりとその方向に視線を移す僕の目の前を轟音を立てて20トントラックが通過する。「危ないじゃないか!」今度は僕の後ろのほうを指差して微笑む彼女たち。振り返る僕の視界に大群となって押し寄せてくる幼稚園児たちの姿が映る。そうか、通園の時間なんだ…と思う僕、ハッと気づいて大声で園児たちを制止する。「まて、まだ赤信号なんだ!危ない!」そんな言葉も空しく園児たちは僕の脇をすりぬけて横断歩道の向こうにある幼稚園へと駆け出していく。道路の真ん中に響き渡る急ブレーキの音、衝突音、何かがはじけ散るような音。ぞっとするような光景、B級スプラッタ映画のような惨状を想像して思わず閉じた目を恐る恐る開ける。眼前には楽しそうに飛び散った園児たちのパーツを拾っている彼女たちの姿が。何か珍しい果実を摘んでるかのように赤いバケツに手や足、胴体,頭などを放り込んでいく。彼女たちは何だか楽しそうで、何だか僕にはわからない歌を歌っている。そうか、新しいアルバイトを見つけたっていうのはこのことだったのか。ひととおり集めると彼女たちは横断歩道の横にテーブルを広げて、さて組み立て開始。適当な胴体に手、足、頭をくっつけて、さぁおしまい。
 出来上がった園児たちは何事もなかったかのように横断歩道をちょこちょこと渡って幼稚園へと向かっていく。良かったね。次々と組み立てていく彼女たちだったが、ちょっと疲れたのかカモミール・ティーとミルフィーユ・パイでティーパーティー。シルクのテーブルクロスを広げて、さぁお茶をどうぞ。お菓子を食べたせいでちょっと眠くなってしまったのだろうか、お喋りがしたくなってしまったのか、彼女たちの仕事はあからさまにいい加減になっていく。右足と左足を逆に取り付けられた園児が奇妙な歩き方でよたよたと横断歩道を渡っていくのが見える。あの子の首は後ろを向いたままだ。
 「それはないんじゃない、仕事なんだから。もっとちゃんとやらないと。」
 とつぜん僕の真横に20トントラックが出現し、跳ね飛ばされた僕は四散する。ごろごろ転がっていく僕の頭、ありえないような角度で回転する僕の視界。横断歩道横の信号機にぶつかることでやっと停止。逆さに映る世界の中に見えるのは微笑を浮かべながら楽しそうに駆けよってくる彼女たち3人の姿と、3つの赤いバケツ。
 

 

#02 仙台 Sendai city


 急に仙台に転校することになった。転校する理由もさっぱり判らないが、どうやら1人で暮らす事になったらしい。父親と共に仙台に出かける。どうやら僕は高校生らしく、実家である愛知から仙台の距離を考えるとえらくかかりそうなものであるが20分くらいで到着した。しかも各駅停車みたいな電車で着いた仙台は無人駅だった。
 僕がこれから住む事になる家を父親に案内してもらう。家は2つあるからどちらでも好きな方を使うと良いと言われる。その家は田んぼの中にあるらしい。とてつもなく広大な田んぼの中に畦道が碁盤状に縦横無尽に走っていて、その畦道を2人で歩く。右へ曲がったり、左へ曲がったり、父親が進む方向を次々と変えるので、家の場所を把握するのが難しい。新しく通う事となる高校から家にきちんと帰ってこられるのだろうか。
 「ここだよ。」示された場所は畦道と畦道との交点にあたる場所でその地面を持ち上げると家への玄関が出現する。6畳間、8畳間、板の間など。荷物がまるで無いのでどうにも殺風景な雰囲気。でも、まぁ、1人暮しには過分な広さだし、文句言う事も無いかもと思う。家を出るともう夕方、似たような地形の繰り返しでやっぱり家の場所が覚えられそうも無い。2人で次の家へと歩いていると田辺が急に出現して「仙台へ転校するんだって?大変だね。」と話し掛けてくる。お前、ココが仙台だよ。とか思いつつ、自分が家の場所を憶えられないのを田辺のせいにして怒鳴りつけてみる。人が一生懸命憶えているところに話し掛けるなとかなんとか。いつも恐縮しているような田辺のパシリ面を見ているとどうにも自分の中の嗜虐心が頭をもたげてきてしまうのだ。
 結局2軒目は行かないまま高校に行く。 

 

#01 ワイン樽 a wine barrel


 渋谷センター街。ビルとビルの間で撮影隊を率いてフィルムを回している。撮っているのはビルとビルの間にあるコンクリのヒビ。撮影をしている最中に何回も若者の集団がフレームインしてくるので一向に撮影が進行しない。三脚の上に固定されている双眼鏡を覗きながらイライラする僕。始発が始まればこいつら家に帰るはずだからなんとかなるだろうと考えている。

 双眼鏡を覗いているとなぜか僕の意識は別人のものにスライド。

 なんだか奇妙な物体が立ち並ぶ山の中腹。なぜか僕はTVの女性リポーターの目を通して物を見ている。「ふるさとクイズ」収録中。ワインに関するクイズが市役所らしき建物の応接室の中で唐突に出題される。「第1問。次のうち葡萄を多く使うワインはどれ?」目の前には白葡萄と赤葡萄を単に潰した皮交じりの液体を洗濯用の桶に入れた物が5種類くらい並んでいる。色が濃いから葡萄を一杯使うだろうと赤ワイン(なのかこれ?)の入った桶を洗濯する女性レポーター。そんな訳無いだろうと心の中でツッコむ僕。「解答。正解は白ワイン。色が薄い分沢山葡萄を使います。」「ああ残念。」とか番組は進行しているが僕にはさっぱり納得がいかない。それでも番組は進行していく。良く考えてみると応接室はいつのまにかスタジオになっていてレポーターは解答者だ。正解VTRが流れ始める。カメラが引いて行くと山の斜面に立ち並ぶ奇妙な物体が葡萄潰し用の巨大な桶で白ワインの物が一番大きい事が判った。赤ワインのは直径・高さともに5mくらいだが白ワインのそれは優に30m以上は有るだろう。その中に山と積まれた葡萄のつぶつぶの上に立ち上がったその地方の若者らしき男がずぶずぶと埋没していく。そんな状況でもカメラに向かってのスマイルは絶やさない。その巨大な樽の底にはそんな若者がいっぱい沈んでいるのだろう。

 唐突に意識は自分のものに。人気が無くなったので撮影再開。(双眼鏡で)無事撮影完了。フィルム(というか奇妙な破片で覆われたポリゴンの塊)を持って帰途につく。帰り道、このポリゴンとこのポリゴンは1つにまとめられるな……とか色々と考える。

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