朝の光の中、3人の女の子に手を引かれながら歩いていく。何を見ても可笑しいかのようにきゃいきゃいと笑う彼女たちはまるでダンスのステップを踏むかのように僕の周りをくるくると廻る。風に翻るスカートがまるで蝶々の羽根の様。片手に持っている赤いバケツは何なんだろう?
彼女たちはとある横断歩道の前で足を止める。「??」という表情を浮かべて彼女たちの顔を一瞥すると3人はちょっと微笑んで道路の向こうのほうを指差す。ゆっくりとその方向に視線を移す僕の目の前を轟音を立てて20トントラックが通過する。「危ないじゃないか!」今度は僕の後ろのほうを指差して微笑む彼女たち。振り返る僕の視界に大群となって押し寄せてくる幼稚園児たちの姿が映る。そうか、通園の時間なんだ…と思う僕、ハッと気づいて大声で園児たちを制止する。「まて、まだ赤信号なんだ!危ない!」そんな言葉も空しく園児たちは僕の脇をすりぬけて横断歩道の向こうにある幼稚園へと駆け出していく。道路の真ん中に響き渡る急ブレーキの音、衝突音、何かがはじけ散るような音。ぞっとするような光景、B級スプラッタ映画のような惨状を想像して思わず閉じた目を恐る恐る開ける。眼前には楽しそうに飛び散った園児たちのパーツを拾っている彼女たちの姿が。何か珍しい果実を摘んでるかのように赤いバケツに手や足、胴体,頭などを放り込んでいく。彼女たちは何だか楽しそうで、何だか僕にはわからない歌を歌っている。そうか、新しいアルバイトを見つけたっていうのはこのことだったのか。ひととおり集めると彼女たちは横断歩道の横にテーブルを広げて、さて組み立て開始。適当な胴体に手、足、頭をくっつけて、さぁおしまい。
出来上がった園児たちは何事もなかったかのように横断歩道をちょこちょこと渡って幼稚園へと向かっていく。良かったね。次々と組み立てていく彼女たちだったが、ちょっと疲れたのかカモミール・ティーとミルフィーユ・パイでティーパーティー。シルクのテーブルクロスを広げて、さぁお茶をどうぞ。お菓子を食べたせいでちょっと眠くなってしまったのだろうか、お喋りがしたくなってしまったのか、彼女たちの仕事はあからさまにいい加減になっていく。右足と左足を逆に取り付けられた園児が奇妙な歩き方でよたよたと横断歩道を渡っていくのが見える。あの子の首は後ろを向いたままだ。
「それはないんじゃない、仕事なんだから。もっとちゃんとやらないと。」
とつぜん僕の真横に20トントラックが出現し、跳ね飛ばされた僕は四散する。ごろごろ転がっていく僕の頭、ありえないような角度で回転する僕の視界。横断歩道横の信号機にぶつかることでやっと停止。逆さに映る世界の中に見えるのは微笑を浮かべながら楽しそうに駆けよってくる彼女たち3人の姿と、3つの赤いバケツ。