白井薫範
Gunpan Shiroi

神を継ぐ者

全1巻 三和出版  SANWA COMICS No.80 判型:A5
ISBN4-914989-99-9 C9979 初版発行:97/09/10

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 最近、わりとまともな漫画の紹介が多かったので、たまには死ぬほどお下劣で濃い奴を。あらかじめいっておくけど、そういうのに弱い人にはまったくオススメしないのでそのつもりで。

 「神を継ぐ者」は割りきったSM描写が特徴の作品を多く掲載している「コミックフラミンゴ」で連載された作品だ。著者の白井薫範(しろい・ぐんぱん。たぶん「白いグンゼパンツ」という意味ではないかと俺は推測している)は、とにかくデカい乳、そしてデブで毛深い女性を描く漫画家である。その特殊な体型に対するこだわりは一種異様なものがある。

 「神を継ぐ者」の主人公・涼子は就職難にあえぐ女子大生。通称「ママ」と呼ばれている同級生に赤ちゃんプレイを仕込まれ、徹底的に調教されていた。いつまで経っても就職の決まらない涼子は、半ば強制的に保母をするという名目でママの故郷に連れていかれる。現地に着いた涼子は、薬の仕込まれた食事を与えられ、しだいに現実と幻覚の境目が分からなくなっていく。特殊な食事のおかげで身体もどんどん肥大していく。
 この肉体改造は実は、涼子を村の言い伝えにある民間宗教の神、「不多知痴神」(ぶたちちしん)を身体に宿らせるためのよりしろにするためのものだった。

 以上が簡単なあらすじ。
 登場する女性は美人ではないし、やっていることも「汚らわしい」というレベルだ。濃い陰毛、波打つ贅肉。これを実用に供することができる人はけっこう特殊な人だと思う。でも、話は面白いのだ。とにかく過剰で圧倒される。これでもかこれでもかとばかりに堕とされていく肉女。物語の終盤のほうでは乳が頭より大きくなってしまい、人間とは思えない。調教も容赦がない。
 人間の尊厳を徹底的に貶め、醜悪なまでに肥え太っていく主人公。主人公を調教するママの冷淡さにも慄然とする。また、主人公に「不多知痴神」を宿らせるための儀式の狂信的な盛り上がりも特筆もの。田舎ならではの、外の者が介入できない圧倒的な力をはらんだ風習の力が非常に恐ろしく、タダの濃いSM漫画では終わらない怖さもはらんでいる。

 とにかく死ぬほど凶悪で、普通の人には醜怪なまでのパワフルな描写が特徴のこの作品。「スゴイものを見たい」という人にはオススメだが、ヤワな人には決してオススメしない。正直なところ、わりとこういった作品には耐性のある俺でさえ、読んでいてゲップが出そうになるレベル。これには「負けた……」と思った。とにかくキツい。ただ、読む人をうならせるだけの過剰さは確実にある。「どんなものでも大丈夫」という人は一度チャレンジしてみるといいだろう。