山田章博
Akihiro Yamada

おぼろ探偵帖

全1巻 東京三世社
ISBN:ISBN4-88570-597-5 C0071 本体価格:1165円
初版発行:91/03/15 判型:A4 4色カラー含む

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「おぼろ探偵帖」の表紙  俺は基本的には「絵がうまいというだけではダメ」というタイプだ。というか漫画にとっての「うまい絵」というのは、「漫画をより面白く見せるために効果がある絵」のことだと思っている。だから、女の子が可愛く描けるってのも重要かもしれないが、物語を進めるうえで必要なもの、例えば老人だとか人間の微妙な表情だとかをきちんと描けるというのはもっと重要だと考えている。その点で吉田戦車なんて非常に絵がうまいと思うわけだ。

 しかし、そんな俺でも描画技術だけで圧倒されてしまうって人が何人かいる。その筆頭がこの山田章博だ。スッと迷いのない線、異様に美しい彩色。眺めているだけで幸せになれてしまう。ここで紹介する「おぼろ探偵帖」も表紙の圧倒的な美しさに惹かれて購入した本だ。そんなわけでいつもより画像サイズを大きく取り込んでいる。でも、やっぱり縮小すると本当の美しさは伝わらないのでぜひ現物を手にとってもらいたい。A4サイズで見るとホント素晴らしくてため息が出る。

 山田章博は作品ごとに画風を変えることがある。アートっぽい絵から漫画チックな絵まで作風はけっこう幅広い。その中でこの「おぼろ探偵帖」と「紅色魔術探偵団」(学研。ISBN4-05-103739-8 C0379。判型:A5。本体価格:951円)は、漫画向きの比較的丸っこい感じの絵になっている。俺は山田章博に関してはこっちの絵柄のほうが好きだ。

 山田章博は正直なところ漫画はヘタだと思う。キャラクターと背景が似たようなタッチで描かれていて読みにくいし、コマ割りがあまりうまくなくページ単位で見たときの画面構成は良くない。それでも一枚絵はやっぱり素晴らしい。だからパラパラと眺めるだけでもホレボレしてしまう。
 「おぼろ探偵帖」と「紅色魔術探偵団」は山田章博作品の中ではストーリー的にもまとまっているほうだと思う。ストーリーは、主人公の小悪魔が、ヘンな顔のおっさんとその助手の小娘と組んで探偵をするというもので、コミカルに話は展開し最後にきっちりオチをつけて終わっている。

 とにかくこの人の絵、とくにカラーのそれは現在の漫画家の中でもトップクラスだと思う。こういう人こそ画集、もしくはCD-ROMを出してくれるとすごくうれしいんだけど。山田章博の壁紙なんてすごく欲しいぞ。