「どきどき」 山崎浩
Hiroshi Yamazaki

どきどき

全2巻 集英社・ヤングジャンプコミックスBJ 判型:A5

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 スタジオジブリ系の絵柄の山崎浩が、ビジネスジャンプでシリーズ連載した作品。思春期に差しかかろうとする子供たちが日常生活の中でふと出会う、「どきどき」するシチュエーションを描いた短編集。山崎浩はモーニングで「ふしぎふしぎ」を描いていた人で、その作画力には定評がある。とくにカラー原稿は非常にうまい。
  この人の場合、いい話に見せようとするあざとさが目立つという点はある。「ふしぎふしぎ」もなんだかエコロジストっぽさが鼻につく部分がなきにしもあらずだったが、この「どきどき」ではさらにそのあざとさがさらに加速している。しかし、それがマイナスかというとさにあらず。これでもか、と攻めてくるノスタルジアと甘酸っぱさの嵐が非常に心地よかったりするのだ。

「どきどき」で俺がとくに気に入っているのが2巻収録の「雨やどり」。ある少年がいつも遊んでいる女の子の家で雨やどりをさせてもらおうとしたところ、女の子は留守。そのお姉さん(中学生くらいだろうと思う)しかいない。で、そのお姉さんが少年をからかうように誘惑する。薄手のサマードレスしか着ていない格好で外に出ていき、雨に濡れてサマードレスが水に透けて……。誘惑するといってもお姉さんは少年が目のやり場に困って真っ赤になっているのを楽しんでいるだけで、それは一時の戯れとして爽やかに終わる。一時の幻のようにすーっときれいに抜けていくんだけどかつ濃厚に甘酸っぱいという、読んでいて非常にくすぐったい作品。

 ちょっと背伸びした子供たちが出会う冒険と爽やかで甘酸っぱい「どきどき」。そして美しくノスタルジックな風景。こんな子供時代を送れていたらなあ、とつい思わずにはいられない気持ちを狙い撃ちするあざとさが抜群で、ここまでベタベタにやられると爽快ですらある。ちょっと底意地の悪い紹介になってしまったが、普通に読んでも面白いし、眺めているだけでも気持ちいい絵柄なのでぜひ読んでみてほしい。

巻数ISBNコード初版発行本体価格
1ISBN4-08-861868-8 C997994/10/24680円
2ISBN4-08-861869-6 C997996/02/24680円