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「こさめちゃん」

「こさめちゃん」表紙 ■著者名:小田 扉 (おだ・とびら)
■出版社:講談社
■シリーズ:KCデラックス1388
■ISBN4-06-334388-X C9979
■判型:A5
■作者Web:小田扉置き場
■オンライン書店bk1で購入する場合はこちら

 「出してくれてありがとう」。何度でもいっちゃうよ〜ん。というわけで待望、というかまさか本当に出るとは、な小田扉の初単行本。

 まず初めに小田扉について(といってもさほど詳しいわけじゃないんだけど)。この人は、創作系同人誌即売会「コミティア」などで、たいへんにイカした作品を主にコピー誌で発表し続けている漫画家さんだ(サークル名は「みりめとる」)。最近では商業誌でも、まれに見かけるようになってきている。で、この作品集なのだが、モーニング新マグナム増刊およびモーニング本誌で掲載された「話田家」、それからコミックビームに掲載された「スミ子の窓」以外はすべて商業誌未発表。つまり商業誌掲載作品は6話分しかない。残りはほとんどが同人誌作品なのだから、まったくよく単行本になったものである。だからこそ「出してくれてありがとう」なのだ。

 それにしてもこの人の作品は面白い。線はとてもシンプルで、ときにいい加減に引かれているようにさえ見える。でも、これがもう得も言われぬ味わいがある。力は抜けているのに、一枚絵だけで人を笑わせてしまう。いつも書くことだけど、こういった味を持った線を描ける人という意味では、吉田戦車以来の才能じゃないかとさえ思っている。

 で、お話がまたいい。例えば表題作の「こさめちゃん」なんかは、家庭環境が不幸で口のきけない、世間的に見ればたいへん恵まれない少女・こさめちゃんが主人公なんだけど、同級生の彼女に恋する少年の目を通すことによって複雑な苦い味もからませながらステキなファンタジーになっちゃっている。家族ドラマの「話田家」は、お気楽な雰囲気の中に、ときどき厳しい現実も垣間見えたりするのだが、あくまで肩は凝らせずしかも端々でサクッと笑わせてくれる。そして純粋にギャグ方面なこまごまとした作品については、絶妙の呼吸で放たれるナンセンスギャグがスポッとツボにハマってクツクツ笑わされる。そのヒット率は異様に高い。

 いや、それにしてもなんにしても、この人の作品を読むのはすーごく気持ちがいい。絵もそうだしお話もそう。実にサッパリとして、しかも後にじわーんと残るほのかな旨味。ネチネチといやったらしいところが、これだけまったくない作風というのも珍しい。これはもう天性のセンスといっちゃっていいんだろうなあ。絶品。

■収録作品
 「話田家」1〜6話
 (1〜4話:モーニング新マグナム増刊1999年7〜10号、5話:モーニング2000年7/13 No.13)
 「スミ子の窓」(コミックビーム2000年6月号)

 (以下商業誌未収録)
 「こさめちゃん」「としごろとしこ」「教育三十郎」「マスターシリーズ」
 「げんこつさん vs アフロ氏」「短縮野郎Z」「メランコリックスイートホーム」
 「大江戸君」「老エレジー」「頭脳計画」「とし子困る」「しょうがない人」