オス単:2005年11月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「サルぽんち」 鈴木マサカズ エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「無頼侍」1巻 鈴木マサカズ エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 ようやく鈴木マサカズの単行本が出ました。しかも2冊同時。「サルぽんち」はコミックビーム1999年12月号〜2001年4月号で連載された作品で、群れから抜け出して行くあてもなく旅を続けている2匹の猿のお話。最初はわりとお気楽なドタバタコメディとして進んでいくのだが、ラストの近辺はかなり深みのある内容に。2匹となんだかんだで行動を共にし続けた情けないおっさん猿が、最終話でもって、生きること・死ぬことのしんどさを見せつける。ラストの静かな展開は泣けるものがあるし、ズンと心に響く作品となった。サルのお話なんだけど、人生というものについて考えさせられる良作です。

 「無頼侍(ぶらざむらい)」は、現在コミックビームで連載中の作品。ぶらぶら何をするでもなくほっつき歩いていたヒマな侍・鈴森岩十郎が、ある日、100両の賞金首の侍・寛壱と出会い、そこから彼をつけ狙う旅を続けていく。けっこうハードボイルドな感じのするお話ではあるが、どこか飄々とトボけた風味もあって、なんだか味がある。タイトルどおり無頼なんだけど、ただぶらぶらしているっぽくもある不思議なテイスト。今後どのように作品が化けていくのかも楽しみにしてます。

【単行本】「夢の空地」 小田ひで次 飛鳥新社 A5 [bk1][Amzn]

 「クーの世界」の続編的ストーリー。日、仏、英、西、伊、蘭の6か国語で同時刊行ということだが、そのため単行本は左開きとなっている。セリフも横書き。お話のほうは「クーの世界」からだいぶ時間が進み、主人公の麗寧(れねい)は22歳となり、美大に通っているという設定。麗寧は美大の先生と不倫関係を続けており、ままならぬ自分の行いに悩み迷い続けている。そんな生活の中で、以前のつづき夢のこと、どちらも自殺した兄や友達の伽弥らに想いを馳せることが増え、だんだんとその精神が蝕まれていく。

 といったわけで、大人になった麗寧の視点で語られていく新しい物語は、だいへんダークな調子で展開する。まさかあの麗寧がこんな風になっちゃうとは……と驚かされるものがあった。夢と現実の間でゆらゆら揺れる幻想的な感覚は残しながらも、今回のお話はかなり現実側よりなので、ヘヴィでハードでドラッギー。小田ひで次独特の細かく描き込んだ画面作りは相変わらず独特で、作品世界に生々しい肌触りを与えている読んでいると息苦しくなるような緊迫感のある作品だけど、読みごたえがあって面白かった。

【単行本】「あいこら」1巻 井上和郎 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 「美鳥の日々」の井上和郎の最新作。「美鳥の日々」では「右手が恋人」というのをまんま漫画にして、なおかつ楽しくも爽やかな青春ラブコメに仕立てた井上和郎だけど、今回の作品も面白い。胸・脚・瞳・声と、女性のパーツ部分に極端にこだわるあまり、それまで恋もしてこなかった少年・前田ハチベエが主人公。彼が高校に進学し東京に出たところ、学校の女子寮には彼の好みにバッチリなパーツを持つ、3人の女生徒+1人の女教師がいて、なんだかパラダイス感あふれるドタバタ学園ライフが始まるのでした……といった設定。

 少年誌なのに「フェチ」を前面に押し出して、「こうくるかー」と思わせつつも、全体として見るとそんなにベタベタすることなく、快活なドタバタコメディに仕上げてある。このあたりの力加減が絶妙。趣味に走って暴走するところは暴走する、でも下品になったりはせず、バランスはしっかり取る。瞳担当のツンデレ娘、巨乳担当のめがねっ娘、声担当の不思議忍者娘、お色気&脚担当の女教師さんと、4人のヒロインもそれぞれかわいいし、まずは順調な滑り出しで面白い。今後の展開はツンデレ娘がラブコメ的には本命だろうけど、最初っから4人ヒロインがいる分、焦点がぼやけがちになる可能性もあるかな〜とは思うものの、まあ漫画はうまい人だしそこらへんはきっちりバランスを取ってくるでしょう。個人的には4人の中ではめがねっ娘の人がいいです。乳がデカいから(単純すぎ)。

【単行本】「スケルトンインザクローゼット」 岩本ナオ 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 最近出てきた少女漫画家の中ではかなり気に入っている作家さんの初単行本。素朴でスッキリした、初々しくもかわいらしい絵柄が特徴的で、暖かいお話作りにも好感が持てる有望株。少女漫画なので基本的には恋愛モノの作品が多いんだけど、軽やかで押しつけがましくなく、微笑ましい作品が揃っている。ほんのりした恋模様というか、すごく透明感があるんだけどほの暖かく、自然体な感じがとても好ましい。この単行本の中では、表題作の「スケルトンインザクローゼット」全3話もまあ楽しんで読めはするけど、個人的には6本収録されている短編作品のほうをオススメしたい。出てくる男の子女の子は、みな恋愛的に手慣れておらず不器用だけれども、まっすぐ前を向いている。最近の少女漫画には珍しいくらいの初々しさを感じさせる作風なんだけど、技術レベルも十分なものを持っている。このまますくすく伸びていってほしいです。


▼一般

【単行本】「おかえりピアニカ」 衿沢世衣子 イースト・プレス B6 [bk1][Amzn]

 現在ではアックスでときどき読切を描いている、衿沢世衣子の初単行本。この人はコミック.Hのころからけっこう気になっていたが、スッキリとシャレた絵柄で、なかなか気持ちの良いお話を描く。青春モノ好きな人はけっこう気に入りそうなタイプ。よしもとよしともがそのセンスに目をつけて原作を提供した、「ファミリー・アフェア」も収録されている。そのほかの収録作品は「Deer and Giraffes」「鳥瞰少女」「夏坂」「体が育つ」「明日の空に」「サッカリン」。この中では、大人になったことでタケコプターみたいな道具で空を飛ぶことができなくなった少女の、ちょっと切ない気持ちを描いた「鳥瞰少女」が好きかな。あまり派手なタイプではないけど、自然体な絵柄や構図取りなどにセンスを感じる人です。

【単行本】「幸福喫茶3丁目」1巻 松月滉 白泉社 新書判 [bk1][Amzn]

 最近の「花とゆめ」の中ではけっこう気に入っている作品。一人暮らしを始めたばかりの16歳女子・高村潤は、「誰かを幸せにしたい」という気持ちから、近所にあるおいしい喫茶店「カフェ・ボヌール」でバイトを始めることに。そこには無愛想だけど腕は抜群の菓子職人の進藤さん、バイトの先輩男子・一郎と、二人のイケメンがおりまして、彼らといっしょにほのぼのと喫茶店を営んでいくのでした……というお話。

 まあお話はそれだけといえばそれだけで、基本的に3人を中心とした楽しくほのぼのした生活が描かれていくだけなんだけど、明るくて爽やかで暖かい作風に好感を持っている。とくにこれは日記でも何度か触れているけど、主人公の潤の屈託のないピュアな笑顔がいい。ショートカットでボーイッシュで、パッと見カワイイ少年という感じでもあるのだが、彼女のパッと花がほころぶような笑顔には心癒されるものがある。単行本1巻の段階ではまだちょっとこなれてないかなーという気もするんだけど、連載のほうは回を重ねるごとに良くなっている印象を受けています。てなわけでこれからもすくすく伸びていって欲しいもんです。

【単行本】「カズン」1巻 いくえみ綾 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 面白いなー。高校を卒業してフリーター、彼氏とかそういう話も全然ない女の子が、ある日突然「このままじゃヤバイかも」と気づいてしまって、色気づいていく……という青春ストーリー。まあ普通の青春恋愛モノではあるんだけど、いくえみ綾の物語運びが抜群にうまい。スラスラ読めるし、読んでて気持ちがいい。あと主人公のつぼみちゃんがなんだかとてもチャーミングだと思う。ぽちゃぽちゃしたお人好しそうな顔つきとかは親しみやすいし、一生懸命で邪気がない点も好感が持てる。なんかたいへん初々しくて、これから恋ってものを発見していくんだーって感じがしてワクワクいたします。

【単行本】「SWWEEET」1巻 青山景 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 最近のIKKI掲載作品の中ではけっこう気に入っている作品。双子の兄弟ススムとツトム、そして二人の幼なじみである少女さくらは、子供のころはいつも一緒にいたが、10歳のある日、ツトムがどこへともなく消えてしまう。そして残された二人は中学生になるも、さくらは同級生のイジメに遭い、ススムもうじうじした内向的な少年になっていた。しかしそんな日々に終わりを告げるべく、ススムは大好きなさくらのために一念発起してイジメっ子たちに立ち向かうが、さくらの心はいまだツトムのほうを向いていたのだった……。

 といった感じで展開する青春恋愛ストーリー。線の細い、乾いた絵柄の作品が多いIKKIの中で、青山景のメリハリの効いた画風は目立つし、ラブストーリーをぐいぐい引っ張っていく作劇も勢いがある。今後は二人がツトムを探すなかで、自分たちを見つめ直していくような話になっていくのかな。今後の展開も気になるところ。


▼エロ漫画

【単行本】「のせわすれ」 師走の翁 ヒット出版社 A5 [Amzn]

 今回は短編集。「女教師中善寺綾乃の淫鬱なこれから」(2005年10〜11月号)、「巨根は商売なり!」(1999年4月号)、「捜査e係石原魅奈!!」(2003年11月号)、「ヨシモト!」(2003年1月号)、「しょほぅせん」(2001年5月号),「LOVERINTH(2000年2月号)、「PEACH家庭教師」(1999年11月号)を収録。初出誌はいずれも阿ウン。

 最近は続きモノの「シャイニング娘。」シリーズがずっと続いていたけど、短編のほうもしっかりエロい。とくに最新作の中善寺綾乃シリーズがイイ。キャラも立っててエロの内容もすこぶる濃い。お話のほうは、女生徒とラブラブレズカップル状態にある女教師の綾乃先生が、ちんこを生やす黒魔術があると聞きつけ、とある男子生徒に相談を持ちかける。しかしちんこを生やすためには、特殊な球根をアソコに埋め込み、100発の精液を吸収しなくちゃいけない。てなわけで綾乃先生は、恋人である女生徒に隠れて、その男子生徒と100発のエロ行為に挑むのでした……という内容。最初は強気でツンケンした感じもあった綾乃先生が、カノジョの誕生日までという短い間に100発をこなしていくうちに、だんだん頭がトロけていく様子がたいへんエッチ。エロシーンもいろいろ趣向が凝らされていて、コスプレしたり学校の教室やトイレ、屋上でしてみたり。綾乃先生のたいへんグラマラスなボディも実にエロっちいです。2話だけど、これだけで80ページくらいあるしボリュームもたっぷり。

 このほかの短編についても、発表時期がバラバラなんで絵にバラツキはあるものの、それぞれ楽しめる。師走の翁でいつも素晴らしいと思うのは、サービス精神にあふれていること。エロももりだくさんだし、お話や端々のギミックなどでもいろいろ読者を楽しませようとしている。あと作者自身も楽しんで描いているように見える。単行本でもガシガシ描き足しとかしてくるし、それが別に不具合修正とかじゃなくて、描きたいものがどんどん出てきちゃった結果であることが伝わってくる。エロエロでありエンターテインメントでもある。大したもんです。


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