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「BLOOMER 1999」 全1巻 ワニマガジン [bk1][Amzn]

「BLOOMER 1999」 出版社:ワニマガジン
シリーズ:ワニマガジンコミックススペシャル
初版発行:1999/10/01
ISBN:ISBN4-89829-457-X C0979
価格:本体857円+税
判型:A5

 ワニマガジンからは2冊めの単行本。「ブルマー1999」「ブリード」「ブルマー2001」「みんなのおにいさん」「玉突き女」は近年の作品で、残りはけっこう前のもの。というわけで絵柄もけっこう違う。

 この作品集で一番うれしかったのは、「スキーに行ったらね」が収録されたこと。不気味にひねくれた感じの男が運転手を務めるバスでスキー宿に向かった女の子。スキーと温泉と、地酒とフィリピンダンサー目当てだった彼女は、その宿でアヤシイ体験をする。布団ひきの女性はフィリピンからやってきたニホンジンカワダの現地妻。さらに客一人に対して一人付けられる外国人労働者。温泉に出没して女性を犯す虫のような姿のアメリカ人。実はSABEの作品を俺が初めて意識したのはこのあたりで、繰り広げられるあまりに異様な世界に圧倒された覚えがあった。今読み返してみてもかなりキレた作品である。

 近作もなかなかいい出来のものが揃っている。印象に残った作品を軽く紹介していこう。

 まずは表題作でもある「ブルマー1999」と「ブルマー2001」。ジャッキー・チェン、ブルース・リー似の兄弟の物語。舞台は1999年7月に壊滅的打撃を受けた地球。ブルース・リー似の兄は、女の子が全員ブルマーを着用した理想郷を日本に作り上げるべく奮闘し、いつしか「ら王」と呼ばれる支配者になっていた。兄弟ともにブルマー好きでありながら、兄はブルマーを来た女の子とヤるのが好きで、弟はブルマーを着てとんだり跳ねたりしている自然な姿の娘たちを愛する。このブルマーに異様な情熱を燃やしながら、主義の面でイマイチ噛み合わない兄弟の姿を、どうしようもなく下らないノリで描き出す。たいへんに馬鹿馬鹿しくて笑える。

「ブリード」はSABEには珍しく、シリアスな物語。将来に対する不安が遺伝にまで作用し、性的に不完全な人間しか産まれなくなった時代。この時代の人間は、成人になっても少年少女のようなやせっぽちな姿のまま。そんな中、一組のカップルが子供を作ろうと決心するが、その交配作業は男を完全に廃人化してしまうようなものであった。子供を作ることによって自分の生きる意味を確かめようとしたがために衰えていった彼の姿は、哀しくそしてどこか安らかでもある。作品の後味は寂寥感に満ちつつも、希望もわずかだけ残される。SABEはギャグだけでなく、こういう心に染みるセンシティブな作品も描くのだなあと感心した一作。

 SABEにしてはだいぶSEXシーンが多くエロチックな「みんなのお兄さん」や、そのほかの作品もキレたギャグが安心して読めるレベルで作用していて面白い。SABEファンだけでなく買って損のない一冊。

▼収録作品
「ブルマー1999」
「ブリード」
「ブルマー2001」
「みんなのお兄さん」
「玉突き女」
「田舎の体育祭」
「スキーに行ったらね」
「みんなのアイドルまゆ子ちゃん」
「カミソリの玲」
「寒い夏」