山田芳裕単行本リスト

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■作家名:山田芳裕(やまだ・よしひろ)
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「大正野郎」

「大正野郎」 ■出版社:講談社
■シリーズ:モーニングKC
■巻数:全2巻
■判型:B6

 山田芳裕のデビュー作。大正時代に憧れ、ライフスタイルをすべて大正色に染め上げているデモクラしい男、平徹が主人公。下宿も飯を作ってくれる木造のところを選び、文学は芥川龍之介、アナクロな自転車、切手集めと、大正的な渋さにこだわり続ける。髪型を芥川龍之介と同じようにして、「成った!」と喜んだりと、言動から何からその生活は徹底している。生活の細部にまでわたる細々としたこだわりが、ちょっと間が抜けていてホッとする味になっている。
 このころの山田芳裕の作品は「考える侍」などにも共通していることだが、枠線をすべて筆で、しかもフリーハンドで描いている。その独特の画面作りがすごく粋でかっこいいのだ。

 ストーリーも抜群。非常にストイックな平、下宿の一人娘・由貴ちゃんの心暖まる笑顔などキャラクターたちも実にいい。風呂上がりのフルーツ牛乳や懐中時計など、ノスタルジックなアイテムも詰め込んで端から端まで雰囲気作りが徹底している。最後に平が由貴ちゃんに告白するまでのもどかしい展開も最高。大正野郎ならではの男気と純情、はにかみと不器用さが非常に心地いい。
 一銭にもならないし、ときには間が抜けて見えることもあるけれども、自分の愛することへのこだわりは一本筋が通っていてすがすがしくさえある。現代人が失ってしまった何かを、粋に、かつ渋く、かっこよく、サラリと人情味たっぷりに描き出している。まぎれもなく傑作である。

巻数初版発行ISBNコード本体価格
188/11/22ISBN4-06-300047-8 C0379417
290/06/23ISBN4-06-300077-X C0379417

「大正野郎」文庫版 [bk1]

「大正野郎」文庫版 ■出版社:小学館
■シリーズ:小学館文庫
■巻数:全1巻
■ISBNコード:4-09-193321-1 C0179
■初版:2000/02/10

 長らく絶版になっていた「大正野郎」が漫画文庫で復活。判型が小さくなったため、いくぶん読みづらくなっているので、入手可能なら講談社版をオススメしたい。でも、こうやってこの傑作がまたしても容易に入手できるようになったというのは喜ばしい。小学館に感謝! 講談社版では全2巻だったが、漫画文庫では1冊にまとめられている。