映画秘宝・日常洋画劇場

洋泉社

本体1200円


 最近、人気番組が登場したせいか、またはアニメが好調であるせいか、テレビ東京の昼の映画は結構名の知れた作品になってきている。また、長尺の映画は前後編に分けるようになってきている。しかし、以前はそうではなかった。「どこから買ってきたんじゃい」と首をひねる…いや、あきれてしまうような、その実興味深く感じてしまうような物凄い映画や、何を意図して作られたか全く不明なテレフィーチャーをかけていた。また、名のちょっと知れた映画でも、時間枠にあわせるためにばっさりカットしてストーリーがさっぱり分からなくなってしまったようなバージョンをかけていた。

 数年前は確かにそうだった。例えば、推定制作費1万ドルのスペクタクルもの(例えば「殺人ブルドーザー」)、ヒット作のパチもの(例えば「シャーク!」)、確かメヒコのルチャ・ドールものさえやっていた。物憂い暇な午後にぴったりマッチした、まさに脳みそトロトロの映画時間であったのだ。また、深夜の映画もまた同様であった。しょーもないというレベルにさえ達していない大怪作(例えば「フランケンシュタイン対ドラキュラ」など)をまさにこれでもか、といった具合で流していたのだ。

 この本はそういった「全然ダミな映画」を取り上げたもの。私自身の「ダミであった頃」の記憶が蘇ったせいもあり、「これは!」と思って手に取ったのだった。

 で、内容はというと、これが妙に映画評論になってしまっているのだ。確かにしばしば「ダミな感じ」は感じることができる。しかし、ストーリー紹介が分量的に多くなっているため、「12チャン映画」のある種イデーとも言える、しょーもなさがスポイルされてしまっているのだ。文体がまじめすぎるため、サイテー映画が何だか面白そうな映画に見えてしまうのだ。

 ウェイン町山の損失は大きい。映画秘宝創刊の目的はもはや見失われつつある。しょーもないものを、そのものとして愛でる、人間のしょーもなさを肯定するあの視点が失われつつあるのだ。初心に帰れ!ツマランものを面白おかしく書き立てよ!

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