株式会社アスキー第二編集統括部
バカ記事大全

アスキー
本体2000円


 ヤマログ、バカチン市国、LSEye-Com、デジタルアイアンマンなど、アスキーの雑誌に載っていた「阿呆な」記事を一同に集めたもの。よくもまあここまで馬鹿な記事を載せつづけてきたものだと、呆れを通り越して本当に感服する。デジタルアイアンマンといったテックウィンの記事は担当がちょっとナニなのであまり面白くはないが、ログインの一連の記事はかなり面白い。「イヤなファミレスの入り方」なんて大爆笑だし、バカチン市国のべったら課長のシリーズも投げやりな感覚が面白い。東海林さだおの作劇がいかにいい加減か、って事も分かるし。ここからは「バカさ」に対する大いなる積極性が感じられる。「意図的にやる」「徹底的にやる」「照れずにやる」という三つの軸が微動だにせず存在するのだ。この点で実にすがすがしい。それにしても恐ろしいのは金井哲夫。伊藤ガビンも船田戦闘機もマッチー松本(宇宙戦士J)もかなり凄いのだが、かれの凄さ&面白さにはかなわない。全く持って物凄い人であることよ。

 こうした「バカさ」を、積極的に取り入れるところが、アスキーというコンピュータ出版社の大いなる徳目であり、ソフトバンクや朝日新聞社と決定的に異なるところである。トランスカルチュラル、というにはちょっと大げさかもしれないが、コンピュータ、という領域に閉じこもってしまわない、懐の広さがここには感じられる。唐沢なをきや永野のりこがスペースを持っていたことでもそれは感じられようし、「Asahiパソコン」と「Eye-Com」との面白さの違いに如実にそれは表れていたように思う。しかしどうしてこうアサパソとか「ぱそ」ってこうまでつまんないんだろう?いやいや。

 この本を読んでいくと、旧「週刊アスキー」が失敗したのは、アスキーという出版社が持つこの良い意味での「バカさ」が十分に発揮されなかったからではなかろうか、とさえ思えてくる。確かに「SPA!」よりもマニアックではあったことは良く分かったし、またこの「バカさ」ってのは対象を選ぶかもしれないのでそのまま出すにはリスキーすぎるってのは良く分かる。だが、これを出さなかったことにより、「アスキーらしさ」が失われ、他の出版社の雑誌と似たようなものになってしまったということは言えるだろう。そう考えると、Eye-Comを週刊化し、今までのノリのままに新・週刊アスキーとするのは妥当な考えだといえるだろう。

 この本の欠点は何より「完全収録ではない」ことである。「ゲロ大魔王」も「べったらホラガイさん」も「C++くん」も1本しか載ってないし、「知らなかったほうが良かった世界」*もまた同様。どうせやるなら完全収録して欲しかった。こんな本当分出ないのだから。

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*ところで294ページ「知らなかったほうがよかった世界」のイラストは永野のりこ先生じゃないか?