道徳戦士超獣ギーガー

漫☆画太郎
集英社

 

 …喜国雅彦かと思った。

 道徳を声高に説教する奴ほど胡散臭い奴はいない。背後に権力関係が潜んでいることに無自覚だからだ。で、この漫画はそうか、というと、漫☆画太郎である、そう簡単に料理しないのであった。内容としては読者からのお願いに対してギーガーが不道徳者を懲らしめる、というもの。

 ギャグにすることで、道徳が持つ胡散臭さをチクリと指摘していることにまず賞賛の念を送りたい。モラルはアプリオリなものでなく作られていくもの。固定化された視点に対してアンチを訴える姿勢には拍手。後半のいいかげんなデータもこの点で非常におもしろい。また、読者の勝手な道徳的お願いにはちゃんと報復を用意する。普通の人ならきっと後味の悪い思いをするのだろうが、私にしてみればこれこそ拍手喝采、爽快な気分。自分は正しい、自分の行動はモラルに従っている、あるいは自分が道徳だ、なんて思ってる奴でないとこんなお願いはすまい。そういう連中は皆、彼らが指摘する「道徳に外れた者」と共にギーガーに惨殺される。そこに潜む自らの行動の無自覚性、非道徳性に多くの人は気付いていないのだ。まさに「リベラリストに踏絵を」(ソウル・フラワー・ユニオン)である。ざまあみろ、だ。実に気分のいい一冊。

 だが、ギャグ漫画としては、「くそまん」ほどの爆発力はない。はっきり言ってあまり笑えない。そこが残念な作品集である。

 

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