青春マンガ列伝

夏目房之介

マガジンハウス
本体1500円


 夏目房之介のノスタルジーとリンクさせる形で漫画史を語るというエッセイ。正面からの漫画論を期待して買ったらエッセイだったのでちとがっかり。が、内容がつまらない、ということはなく、なかなかに楽しむことができる。

 この本は二つの方向から楽しむことができる。第一は、昔の漫画の紹介に、新たな視座を示しているという点である。今まで漫画史の話題に上らなかった(それは語るに及ばない何らかの理由があったためであろうが)本や作品も、ノスタルジアと絡めることによって、無理なく分析の俎上に挙げることができる。主観性で語ることを許されるのだ。ここで、歴史の中に埋もれつつあった漫画が、ノスタルジアによって再発見されている。もちろん、ここで取り上げられている漫画はほとんど今までの漫画史で正面きって取り上げられているものではあるが、そうでなかった漫画が取り上げられているのが重要なのであり、面白いのである。

 もう一つは、コッ恥ずかしさである。自己提示の仕方があまりに自伝的であり、あまりに赤裸々であるがために、読んでいるこっちも「若さゆえの恥ずかしさ」を感じるのである。このことは、取り上げられている漫画にあらぬイメージを付加するという悪い面もあるが、漫画についての文章を生き生きとさせるという効果も持っている。

 こうしたノスタルジーと絡めた漫画エッセイとも評論ともつかない文章は、かなり主観的要素が入り込むものの、新しい評論の視座を開いているという点で有効であると思われる。漫画批評はどうしてもその時代性と密接にリンクするし、読み手の精神的&社会的状況に依存するため、思い切って主観的に論じるという手もまたあるからだ。帯にあるように、「戦後マンガの歴史に新しい光をあてる」試みは、まあ成功しているといえよう。

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