猫とサボテン

まなべゆう

ワニマガジン社

 ありふれた日常の中の、恋愛に関わるちょっとイイ話を、かなり赤裸々に描いた短編集。Young Hipに連載されていたもの。

 作家としての系列は春菊→南Q太→安野モヨコの流れに属している、といってもよかろう。絵柄もQ太に似ている。使っている漫画的文法、表現様式が似ているし、描いている内容(女性の側から見た赤裸々かつセクシュアルな日常性)も共通するものがある。しかし、かといってまなべゆうは単なる彼女たちのフォロワではない。短編としての出来が非常に優れているのだ。

 春菊も、Q太も、特にモヨコに顕著だが、絵と展開の勢いで「読ませる」という側面を持っている。それは現在という時代性のひとつの現われであるため、そこに由来する面白さがある。「悪しきもの」、マイナス要因として考えるべきものではない。しかし、オハナシのまとまりを多少損なう要素となることもまた間違いないことだろう。
 一方で、まなべゆうの短編は、勢いを維持しながらも(もちろんモヨコのようなドライブ感、とまではいかないが)、ひとつの完結したオハナシとして、まとまりを持っている。青年向けエロ雑誌、という掲載誌の性格が大きく影響しているのだろうが、読み切りの掌編として、彼女の作品は非常に完成度の高いものとなっているのだ。ネームがよく練られているように見受けられるのだ。

 作品を描く際の視線の鋭さ、ごまかしの無さは、先行する人々に比べ劣るものではない。実際、ドキリとさせられるようなせりふをあちこちに見ることが出来、はっとさせられることがしばしばである。女流作家を読むときの楽しさは、男女の認識のずれを知るところにもあったりするのだが、その点でもこの作品集はよくできている。「男は風呂に入るたびにきれいな体に戻るんだ!」と訴える男に対して「女は生理がくるたびにきれいな体に戻るのよ」と切り返すところなど、ぞっとするものすら感じさせる。Young Hipの読者であろう若い男性はなんと思ったことやら。この手の台詞は言うは易く行うは難し、といった性質を持つが、まなべゆうの場合は浮いてはいない。現実に基づいた、地に足のついた表現として感じられるのだ。本当に彼女がそういう体験をしたかどうかは知らないが。

 ともあれ、こうしたかなりきついことを描き切ることができるのだから、かなりの実力を持った人であるといえるだろう。注目されてしかるべき実力者、である。

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上に挙げた三人のほかに、魚喃キリコなどという人が挙げられるだろう。いわゆる「シュークリーム系」。