アフタヌーンシーズン増刊2号(2000年2月発売)

女神調書

小原慎司
吉本 流石は小原。単なるルポ漫画に堕することなく、自らの世界に引き込んでいる。それも「女神さま」という癖のある題材を使いながら。これで季刊ペースというのは勿体無いことこの上ない。何故これほど力のある作家に本誌での連載を持たせないのだ? 
久遠 まったり感は相変わらず。たまりませんね。ところで、AICですか?ホントにぺしゃんこ。
SHADOW SKILL

岡田芽武
吉本 以前の角川での連載を知らないので、正直面食らうところ。漫画としては岡田の味が出ていて面白いとは思う。だが、もっと他に載せるべき作家がいるのではないかと思う。3月いっぺんという掲載形態にも疑問を感じるし。これが載るのは別に構わないのだが、四季賞作家のスペースが減るのはどうか、と思う。
久遠 どらごーん。かどかーわ。原稿紛失じゃなかったの?
Sprichworter Buch

駒井悠
吉本 故事成語の本をランダムに引いて使ってませんか。
久遠 いらない。ふよう。もう遠慮しときます。
涙のランチョン日記

竹易てあし
吉本 何が面白いかっていうと、だらだらと58Pも続くところ。ミニマルミュージックやテレタビーズの「イヤさ」がここにはあるのだ。しかも沙村はそれをきわめて自覚的に行っている。ギャグ作家としての沙村の実力はよーく分かった。次は更なるひとひねりを期待したい。
久遠 漫画太郎の「エスカレーション」を思い出しました。ってゆうか、これだけのページ数が有ること自体がギャグなんですね?
あいのよる

なつき。
吉本 浅い。救済がそんなに簡単に訪れるようでは世の中ナメて生きる奴が増えるではないか。善意はわかるのだが、背景/裏付けのない善意は迷惑にもなりうる。絵は良いのでオハナシですか。
久遠 湯たんぽは良いね。双子美少女も良いね。
柔らかい角

漆原友紀
吉本 こちらは快調。音を吸い込む蟲「吽」と、音を吐き出す蟲「阿」を上手く使い、ライトモティフとなっている自然のダイナミズムを非常に上手く描き出している。自然を支配しようなんておこがましいこと。そうではなく自然と同居しようとしている様が描かれているのが良いではないか。
久遠 フォロワは何処まで行きますか?自分の道を進みますか?進めますか?
GUN SMITH CATS

園田健一
吉本 3月いっぺんだとオハナシも進められないというのですか。それはそれとして無闇にチューンした銃ってのはじつにフェティッシュですなあ。車なんかも同じなのだろうが。
久遠 そうですか。
NOiSE

弐瓶勉
吉本 『BLAME!』と世界観を共有する物語。恐らくはそれより前の話。ネット世界から珪素生物を呼び出す邪教集団、それに対抗する刑事…。『BLAME!』の種明かしをここでしようというのですか。世界の広がりに惹かれる。
久遠 って、同じような話を描いて面白いんですか?気色の違うのが望みだったんだけどなあ。
おすすめのカワイイ

林実日子
吉本 ギャグ漫画はキャラクタ勝負の面を持っている。かわうそ然り、トキ課長然り。その点でナマケモノというキャラクタを得たこの人は上手く戦える可能性を持っている。
久遠 可愛いですね。
にゃにゃどやら

烏屋さと志
吉本 もう少し純粋な破壊力が欲しいところか。
久遠 犬を撫でたいです。
プチしろまた

いそやこんぶ
吉本 オタク的な図像と独り善がりな展開。ちょっとこれは。
久遠 友達が魚屋ではたらいているのですが、えらく生きのいい烏賊がいて、それを捌いたら・・・という話を聞きました。
だったり3

おまわりさんひろし
吉本 ラヂヲやタイム涼介のような「間」のギャグをやろうとしているのは分かる。だがも少し独自の方法論があっても良いような気がする。「ギフトマン」は面白いので次も読みたいところ。
久遠 次回はずーっとロケットの前?
ホラ吹き美人

森和則
吉本 絵は綺麗だが、やはり独自性が足りないか。
久遠 弁当なんて、食べてしまえば同じじゃないですか?
セブンティーン

わだみ せいろく
吉本 ガード下には若い女のトーン職人がいる。彼女は漫画原稿に「手打ち」のトーンを入れることを生業にしているのだ。そこに訪れる若い漫画家志望者。かれは彼女に疑問を抱く。何故君は漫画を描かないのか、と。いやあ、若いっていいですなあ。若さをぶつけること、それは若者にしかできないことである。もう私にはそれが出来なくなってしまっているので、羨望の念を感じる。だが、それは残念なことに、漫画としての出来とはほぼ全く関係しない。絶対値の高さは認めるが、それがあまりにもあけすけである分、文化度の低さが鼻についてしまうのだ。理解はできるが評価はしない。
久遠 百景!百景!もふー!
G組のG

真右衛門
吉本 一方でギャグ漫画で重要な役割を果たすのが「慣れ」。独自の「癖」に慣れさせるまで掲載しつづけられるかが重要なのだろうな、と思う。
久遠 是非、是非、田中02をお願いします!
ふにゃふにゃ

さかもと未明
吉本 漫画家のキャラクターに頼るのですか。もっと他に載せるべき人が…
久遠 あと、伝説のマヌカンも!
かいじゅう、どすン。

村上智彦
吉本 目的と手段の幸福な結婚。小学生という題材を描くために慎重に選択された絵柄。読者に不快感すら与えるであろう「子どもらしさ」。練りこまれた展開にはぐうの音も出ない。いかにもな児童文学的オハナシの進行は「そりゃ違うだろ」と思わなくもないが(特に四季賞というこの場では)、絶対値は高い。絵本作家としてならすぐに成功するんじゃないの?
久遠 文車の「モーニング」に載っていたカラー広告も載るんですかねえ?
INNOCENT

外薗昌也
吉本 上手く練りこまれたサイコ・サスペンス。短編の才能もある作家なのだなと最認識。いい作品です。だが全体的な完成度が高いその分、昔の穴だらけだった作品、『ヴォイス』などが懐かしく思えてしまうのは何故だろうか。
久遠 ま、とにもかくにも、5月は盛りだくさんですね。

<総評>

吉本 雑誌全体の方向性は極めてはっきりしている。『SHADOW SKILL』のような、他から拾ってきた作品を収容すること、連載作家の「リハビリ」、四季賞作品の掲載。残念なことに今回は前二者の要素が強く、四季賞作品の「発見」が弱い。アフタヌーンの一方の魅力であるところの四季賞作品を重視してほしいと願うばかりである。
久遠 前回のようなインパクトはないねえ。

<ベスト>

吉本 ベストを選ぶべき雑誌でもないので難しいところだが。ここは沙村『涙のランチョン日記』にしよう。似たような形式で別の系統の作品も読みたいところ。
久遠 「百景」以外に選べましょうや? 

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:51 JST