アフタヌーン 99年9月号

ヨコハマ買い出し紀行

芦奈野ひとし
吉本 サイレントであるということがこの作品独特の「絵柄のポエジー」を強調している。高い高い入道雲は暑い暑い夏のアイコン。
久遠    
音羽    
鉄道員(ぽっぽや)

浅田次郎/ながやす巧
吉本 「一杯のかけそば」風の「いい話」にすっかり感動できなくなっている自分に気づかされる。乙松の鉄道員としての職務への忠実さ=誇り高さには心動かされるが、いかにもな日本風「大人のおとぎ話」的展開には…。「社会的想像力」という言葉がどうしても想起されてしまう。ここは仕事に対する誇り高さ(無論ここにはながやす巧の姿勢も含まれる)を評価しよう。
久遠    
音羽    
ハトのおよめさん

ハグキ
吉本 残念ながら私には何にも面白くない。アタマが刺激されないような「ギャグ」はどうも肌にあわない。ただウケるのも分かるような気がする。深みがない、というところが。
久遠    
音羽    
ああっ女神さまっ

藤島康介
吉本 ドメスティックなオハナシに終始してしまうと読んでいてかなり辛い。次回のカタルシスを期待。「OSの下じゃなかろう」というツッコミが多数行われるのだろうなぁ…
久遠    
音羽    
宇宙家族カールビンソン

あさりよしとお
吉本 …早速「終わらない布陣」を敷いている。一話完結モノだと一人一人のキャラクタを造形に合わせて動かしてゆけば良い。後はネタ勝負。安心して読める構造ではあるが物足りなさも感じる。もっとアグレッシブにやって欲しいものだが。
久遠    
音羽    
無限の住人

沙村広明
吉本 久しぶりの卍登場によりオハナシが広がっている。卍と凶のコンビネーションも読んでいて微笑ましい。次の動きに期待。
久遠    
音羽    
砲神エグザクソン

園田健一
吉本 ヒーローものの難しいところはピンチと強さのバランス。ヒーローが強すぎても面白くないし、「ガガガ」のように毎回深刻なピンチに陥ってもストレスがたまる。この作品はやや自機が強すぎるように思う。敵の新型ロボットを出すなどパワープレイの面白さを出すべきではなかろうか。
久遠    
音羽    
セラフィック・フェザー

武田/うたたね
吉本 すべてのカギを握るのはケイである、と。今回もページ数があるので結構読める。このペースを維持して欲しいものだが。
久遠    
音羽    
そんな奴ァいねえ!!

駒井悠
吉本 この作品も「終わらない構造」。ひとつの構造に固執するのは賢明でないように思うのだが。
久遠    
音羽    
EDEN

遠藤浩輝
吉本 ケンジの華麗なマーシャルアーツと、ソフィアの世界へのつぶやき。今回はおいしいところが二つ。上手く時間軸をずらすという手法をマスターしたせいか、以前のような単調さがなくなっている。これ以上伸びようというのか、遠藤よ!
久遠    
音羽    
勇午

真刈/赤名
吉本 なぜヤらない。なぜセックスして汚れを自分に引き受けない。ここまで自分が汚れることを回避しようというのか。青年誌だからこそ妥協のない展開にしなければならないのではないのか。きれいごとは沢山だ。
久遠    
音羽    
幻蔵人形鬼話

高田裕三
吉本 義兄に対する幻蔵の裏腹な心持ちが現れているのは面白い。そこを上手く生かしてくれるといいのだが。
久遠    
音羽    
なるたる

鬼頭莫宏
吉本 自らためらいなく死を選ぼうとするアキラの姿に驚かされる。それだけ知らないところで状況は深刻化しているということなのか。さらっと描かれているその分緊張感が高い。面白いじゃないですか。
久遠    
音羽    
仮面天使

若菜将平
吉本 うむ、今度は先生の側からの描写か。生徒の評価に悩む先生という構造は良い。先生も人間。ただそうであるからこそ、加利奈の「超人性」が浮いて見えてしまう。超越的な存在に問題の解決を任せようというのは実に「電撃戦」的である。「そんな奴ァいねえ!!」なのであって、実際は簡単な解決はありえない。もっと地に足のついた表現を志向するべきではなかろうか。
久遠    
音羽    
地雷震

高橋ツトム
吉本 …ぷ。ぷはははは。前回のテンションが高かったので期待していたのだが、何、この展開?詰め込めるだけの時事ネタを徹底的に詰め込む、ってワケ?ぷはははは。底の浅さ大露呈!もう私はこの作品をギャグとしてしか見ないことにする。ここで予言しましょう。次回、または今後キチのハイジャック犯が登場することを!
久遠    
音羽    
G組のG

真右衛門
吉本 かかってこないケータイを観察するのは面白いので、今度はダメ人間を観察するというのはどうでしょう。
久遠    
音羽    
神・風

士貴智志
吉本 水の民・みさをを軸にオハナシを動かすのは良いのだが、全体的にちぐはぐに見えるのは何故?「魂」の非在?
久遠    
音羽    
風林火嶄

小川雅史
吉本 前回のような緊張感のある展開の続きなのだから、くだらないギャグはあまりすべきではないとおもうのだが。それにしても山県のバイク…。確かにまだこういう文化は生き残っているがヨオ!
久遠    
音羽    
スカタン天国

北道正幸
吉本 あっさりと、極めてあっさりと終わらせている。あまりにさりげないので最終回だということさえ分からない。トニーたけざきが「岸和田博士」をあっさり終わらせたことを思い出す。ギャグマンガに盛り上げは不要、という明確なポリシーを見ることができ、実に美しい。願わくばもっとギャグの構造を脱構築しまくったアヴァンギャルドな作品を見てみたかったものではあるが。
久遠    
音羽    
五年生

木尾士目
吉本 先月に続き、今月も全裸対決。赤裸々ですなぁ。ちと論理的すぎて小癪な部分もあるが、それも何だかキャラクタ造形に合っていて妙なリアルを醸し出す。そして最後の論理のブッ飛び!意地悪ですなぁ。
久遠    
音羽    
ニライカナイ

岡田芽武
吉本 とうとう「向こう側」に行くことを選択されたようで。おめでとうございます。建国200年あまりの美しい国は、沖縄の神を手に入れるために大戦を起こしたのですか。素晴らしいオハナシですね。徹底的にやってくれることを強く、強く希望します。
…いや実際本当のところ、徹底的にやったほうがこの場合オハナシが生きるだろう。無論荒唐無稽なのではあるが、そこでテレた瞬間この作品は堕落する。信じる「思想」があるならそれに殉じるのだ。力技でもいいからオハナシをまとめるのだ。そこに「迫力」が生じる。
久遠    
音羽    
なげやり

桜玉吉
吉本 エキセントリック、という言葉も懐かしいものになってしまったものですな。画面のそこかしこに潜む「潜在的テンションの低さ」に静かに恐怖。
久遠    
音羽    
ディスコミュニケーション

植芝理一
吉本 次回はやっぱりレジデンツですか?
と誰でも分かるようなことはおいといて。
やはりこの人の徳目は「日常性に潜む非日常性」を丹念に読み出してゆくところにある。平安時代の貴族たちと同じ方法論で、かれは日常の退屈さを面白さに転化してゆく。これぞ「終わりない日常」を乗り越える方法だ。その現代性に私は共感する。
久遠    
音羽    
犬神

外薗昌也
吉本 思えば「ラグナ戦記」はオハナシ的にきわめてゴーインであった。伏線の張り忘れ、唐突な展開。思えば「ヴォイス」はきわめてニューエイジ的で鼻につくオハナシであった。歌声が宇宙を救うという。だが両者ともゆがみをもっていた分、その分魅力的であった。
久遠    
音羽    
妖精事件

高河ゆん
吉本 10 …こうして少女の純粋愛は成就する。ここでの純粋愛とは決して相互理解ではないことに注目せよ。じゅりあはこの世界においてあらまほしきものとされる相互理解に一定の評価を下しつつも、最終的にそれを一顧だにせず、純粋に愛のためにだけ存在する愛を選択する。これぞ「真実の愛」!さらに注目すべきは捨てられるク・ホリンのほうもその純粋愛をもち続けていること。ああ!何とすばらしき世界。これを思い込みと過小評価する人間には鉄槌を下さねばならん!!(この項松明先生執筆)
久遠    
音羽    
よしえサン

須賀原洋行
吉本 楽な商売してますね。マスクマニアってのはちと面白いが。
久遠    
音羽    
CLOSET

森川未知留
吉本 視線の描き方が固く、ちょっと違和感があるように感じる。途中まで主人公は男の子だと思っていたし。だがそれは心を閉ざしているという心象の現れ。少しずつ視線が和らいでゆく描写には心底うならされる。そして男と女の二人だけでなく、もう一人主人公にホレる男(イイ奴)を描くことで、オハナシの重層性を付加することに成功している。漫画を読んでいて良かったなぁ、と強く感じさせる作品。ぜひ連載なりシリーズ連載なりを持たせるべきだ。
久遠    
音羽    
スズキ

安井雄一

吉本  
久遠    
音羽    

<総評>

吉本 「鉄道員」のような長いオハナシを載せるという方法論は悪くないと思う。オハナシの内容はともかく、大きなインパクトになるのだから。これからもタマにやったらいいのではなかろうか。
今回は四季賞の森川未知留が載っていたのが嬉しいところ。きちんと成長している様子が見えて頼もしいことこの上ない。このように四季賞中心のアプローチを取るべきではなかろうか。一方で「ウレ線」を投入するのもいいが。
久遠  
音羽  

<ベスト>

吉本 成長著しい森川未知留「CLOSET」にしよう。冬目景、やまむらはじめ、遠藤浩輝もそうだが、「視線で語らせる」という技法を身につけているのが頼もしい。次回作を一刻も早く!
久遠  
音羽  

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