ヤングアニマル 2000年5号

*今月から「Orange Empire with BERSERK」の福住明宏さんにレヴュを担当していただくことになりました。プロフィルはこちら

女刑事ペルソナ

出海/高橋
吉本 随分深刻なネタなのだが結構さらりとエロに流してしまうのは、技術の現れであろうか。こういうエロネタがなければ青年誌は始まらないからねぇ。その点でいい「つかみ」になっていると思う。
福住 囮捜査にもほどがあるちゅーねん、女体の描き方がで「下品」非常にセンイ的、狙い過ぎの感も。
VF

林崎文博
吉本 二人の熱い戦いに結末がつくというのか。迫力ある画面構成には引き込まれる。オハナシの全体的な筋などはちょっと引っかかるところもあるが、徹底しているので悪い印象は持たない。引っ張りますなあ。
福住 今号の見所はドラゴンスクリュー、4Pを使い大胆に描写している1話まるまるのバトルに作者のこだわりが感じられてその点を評価。
ももいろシスターズ

ももせたまみ
吉本 漫画自体は非常に面白いと思うのだが、こういうオタクネタで話を構成しようとすること自体なんだか思想的に敵なので、あまり評価したくない気分。同様の文脈に小本田絵舞などが挙げられる。
福住 アニマルの読者層のどこを狙っているのか自分には理解不能、ネタも中途半端で共感できるものがない。のろけネタが多いのも痛い。
ふたりエッチ

克・亜樹
吉本 女遊びをしまくっていた新入社員のオハナシ。今回も容赦なくくだらなくって良いです。
福住 相変わらずのテンション、マンネリも何も関係無い定番中の定番になりつつある。作中で用いられるデータに信憑性を感じないのは自分だけだろうか?
エアマスター

柴田ヨクサル
吉本 単にランカーとの戦いを繰り広げるだけでなく、更なる強敵を繰り出してくるとは。アクションの出来の良さもあいまって盛り上がっているといえよう。
福住 前作の「谷仮面」の頃より絵が柔らかくなったのはアクションにより重きを置く「エアマスター」において自然な事だったのだろう。金次郎の再登場で盛り上がってきそう。
戦え!アナウンサー

みずしな孝之
吉本 読者を完全に置いていっているハイテンション。よく続きますね…。
福住 そろそろキャンプも終盤オープン戦の始まるこの時期、非常にタイムリーな話題。ワクワクしてきますなぁ。
夢の掟

真刈/山本
吉本 理詰めで攻める真刈の良い面が現れている回、といえようか。一度安堵させてもう一度攻める、このプロフェッショナリズム。そしてそれを説得力ある形で描き出す山本の筆も強い。願わくばへっぽこ&中途半端で終わらない事を。
福住 山本信者の自分にはこの人の作品が読めるだけしあわせ、ストーリー的にはまだまだこれからってことでノータッチ。ところでエルフ17って完結しましたっけ?
愛人(Ai-Ren)

田中ユタカ
吉本 10 ハルカ先生を見舞うイクルとあい。そこには望まれずに生まれてきた子どもたちがいた。ハルカ先生はいう。「生とはこの世に逆らいつづけること」と。それは虚無に常に晒されながら生きなければならない、われわれ現代人の心に強く突き刺さる。永遠に対して牙をむきつづける、そこに人間の徳目があるのではないか。「でも、やるんだよ!」人間存在の根源を突き詰めようとする田中は、恐るべき作品を描きつつあるといえよう。
福住 切ないお話ですね、人間はこの世界、地球に巣食う寄生虫に過ぎず決して望まれて存在している訳ではない・・・あしばらい。
スポーツ道楽快道

ぷろとん
吉本 実は結構毎回楽しみにしている連載。今回は大学ラグビー。ゲロネタなのがちょっと残念。
福住 あのー減量罰ゲームはどうなったんでしょうか?
新鋼強かったですね。
ベルセルク

三浦建太郎
吉本 神の名を称するものがもっとも禍禍しいという逆説。ありがちなネタではあるものの、三浦の場合は画面の情報量が凄まじいので強い説得力を持っている。そしてキャスカを目の前にしながらも手が届かないもどかしさ。二重の意味で盛りあがっている。
福住 迫力ありますね、傷の癒えた全開ガッツの力強いアクションシーンは「ベルセルク」の醍醐味の1つでしょう。最近停滞気味だったお話も一気に加速しそう。
マウス

あかほり/板場
吉本 中途半端にうらやましい状況なのではなく、徹底的にうらやましい状況を作り上げているので、もはやねたましくはなくなる。そして女の子の中に一人は感情移入できる子を設定する。巧妙です。
福住 マウスの日ごろのグータラぶりが夜のお勤め?のせいだった、という設定に意表を突かれました。やることはやっているんですね。
藍より青し

文月晃
吉本 フェレットを買ってくるティナ…って、ファイナさん萌えなんですか??いやあ私も教団を形成し、嫉妬に燃えて葵を襲撃させるファイナさんは大好きですが。
福住 見ていてほのぼのしてくる、主人公たちの他には目もくれない純愛ぶりに共感しているのかも。フェレット飼いたくなってきたなぁ。
キルケーの豚

関崎俊三
吉本 ベクターとの連絡が取れなくなった貞村。ターゲットを抱えて夜の街をさまよう…という緊迫した展開がいいじゃないですか。そしてわずかに明かされる義手の謎。良く出来てます。
福住 逃げ場を失い絶体絶命のピンチ、なんだろうけどその緊張感が感じられず肩透かし感が。もう少し手に汗握らしてほしいものです、期待している作家なんで。
セスタス

技来静也
吉本 母の姿を見るセスタス。図らずも見る取り乱す皇太后の姿。無論拳奴がこんな厚遇を受けるはずはない、というツッコミは入れられようが、この作品の場合実在の人物を上手く配することによってオハナシに説得力を付与しているので、これでもいいように思う。厚いオハナシだ。
福住 セスタスも思春期の少年、色んな所に目が行きますよね健全です。
トバクチ

馬場民雄
吉本 「無放銃神話」にとうとう決着がつく。そしてオハナシを荘司と虎之介のバトルに収斂するとは。面白いじゃあないですか。漫画の構造としてはちょっと古さを感じなくもないが、これが「アニマル」に載っているところが興味深いところ。
福住 シリーズ連載も今号で結末、無難にまとめましたね
無放銃神話、あやかりたいです、また読みたいシリーズ。
コイズミ学習ブック

こいずみまり
吉本 「学習」の名のとおり勉強になりますなあ。10分以上は遅漏だったのですか。うげ。だがこのデータはどこから?まさか民明書房??
福住 とりあえず「標準」なんで遅漏、早漏の方の気持ちがいまいち理解できないです。

<総評>

吉本 「ハネムーンサラダ」が載ってなくてもこのテンション。全体的に読める作品が多く、それぞれの展開も上手。雑誌としてのバラエティに富んでいるのもよろしい。青年誌をちょっとオタク方向に向けるだけでこれほど面白くなるとは。かといってオタク寄りになりすぎてないのも好ましい。このバランスを維持して欲しいもの。
福住 自分がヤングアニマルを購読しだしてからはや6年、数多くの雑誌が出ては消え消えては出てを繰り返しきましたが、よくその荒波を乗り越えてきました。「ベルセルク」におんぶに抱っこでヒィヒィやってたころもありましたが、「ふたりエッチ」という新たな看板も生み出し、その他脇を固める作品もコンスタントに良作が掲載されてます、ただギャグ漫画が弱い点が気がかり、その辺りが強化されればもうひとステージ雑誌のレベルが上がると思うのだですが。

<ベスト>

吉本 『愛人』は永世ベストに認定。これを超える作品は漫画界全体を探してもそうはない。てことで今回は泣き落としにやられた『セスタス』にしよう。とりあえず脱がしとけ、ってことですか??
福住 今号は勢い、の差で「愛人(Ai-Ren)」です。「死」という終着駅へと続くこのレール、二人で愛し合い精一杯全力で日々生きて行けば行くほど二人を乗せた列車は加速していく・・・ほんとせつないですな。行き着く先が定まっているこのお話の決着をどうつけるのか?非常に興味深いです。

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:52 JST