ヤングアニマル 2000年6号

ハネムーンサラダ

二宮ひかる
吉本 転がり込んできたかつての憧れの人、遙子に翻弄される実。そしてかつて助けた女性に再会する…。実と遙子の間にセクシャルな緊張感があるのがもだえちまうところじゃないですか。男はヤル気を抑圧し、女はヤラれてもいい、むしろそれを望んでいたりする。この温度差!そして静かに展開して行くオハナシ。なんと我々をじらすのですか、ひかる先生!
福住 一話一話のクオリティーは高くハイテンションさせてくれるのだが如何せん休載が多くテンションが下がってきた頃ふらっと再開されるので暖気が面倒です、単行本向きだなこの人の作品は。
セスタス

技来静也
吉本 宮廷を抜け出し、旅の拳闘団に技を試されるセスタス。そこで再会したのは…。全体的には上手くオハナシが盛りあがっているのだが、そりゃちとご都合では?と感じてしまうのが惜しいところ。
福住 セスタス独り立ち武者修業編スタート、のはずが微妙に外しているなぁ。いきなり先生に巡り合うし。この後どう捻ってくるか興味深い。
ふたりエッチ

克・亜樹
吉本 今回のネタはクンニリングスです…まじめに打つと恥ずかしいですな。そしてそのネタをこう、懇切丁寧に図像として表示するのが面白いところ。相変わらずくだらなくって微笑ましいです。
福住 これほど「都合」のいい奥さんはこの世には存在せんでしょう。まぁ漫画の中のお話じゃないか、と言われればそれまでですが。もはやHowto物としても機能していない内容には問題ありだと思う。
ももいろシスターズ

ももせたまみ
吉本 今の登場人物ではそろそろやるべき事はやり尽くしたかな、という印象。別に今のままでも面白いとは思うが、ちょっと展開を変えてみてもいいのではなかろうか。
福住 時節ネタで無難にまとめる、予定調和なオチもそれもまたよし。この作品のファンなら安心して読めるでしょう。
エアマスター

柴田ヨクサル
吉本 やっぱり強かった深道。必殺技を考えるエアマスター。過不足のない展開。
福住 長戸のはったりの効いた体格の描写が違和感無くカッコイイ。あれだけの巨体で迫力のあるアクションをさせるところもまた凄い。読ませるなぁ。
女刑事ペルソナ

出海/高橋
吉本 「お色気担当」なので、オハナシの荒唐無稽さはどうでもいいでしょう。むしろ荒唐無稽な方がいいくらいですか??
福住 徳蔵さんのその行為はすでに痴漢の範疇を飛び越えているのでは?徒党を組んで組まないでの問題じゃないじゃん(笑)面白い。
マウス

あかほり/板場
吉本 適度にエロを挿入し、板場の特性を生かしたオハナシ作りをしているのは流石といえようか。ただ少々画面の「つながり」が悪く、すっきり読めないような気が。
福住 「マウスに盗めぬものはなし」でお宝とは別に美少女の大切なものも頂いていく怪盗ぶり、抜け目ないっすね。
復活

中村/笠原
吉本 脳腫瘍を克服しつつある(勝てるようになってからが本当の克服だと本人は言う)、もと横浜、現近鉄の盛田幸妃の物語。基本的にドキュメンタリーなので、盛田本人のパーソナリティ(「殺す気で投げる」)と、脳腫瘍という病気の恐ろしさがドラマトゥルギーを形成する。登場人物を美化しないのもよろしい。
福住 ヤングアニマルが定期的に掲載するスポーツドキュメントもの。今回は元横浜、現近鉄の盛田幸妃のお話(過去にはジャンプの舟木、巨人の上原などが登場)。脳腫瘍からの復活を描く、笠原のコクのある絵が盛田のふてぶてしさをうまく表現している。余談だが彼の切り札であるシュートはあの元巨人の落合を散々苦しめた、これでもか!!と「殺す気で」投げられる盛田の殺人シュートに激高してみせる場面も。(これも落合流のブラフだったのでしょうが盛田には通用しなかったんでしょうね、今号のインタビュー記事を見るに)
スポーツ道楽快道

ぷろとん
吉本 今回は全日。そんなにレスラーってでかいんですか?そういや生では見たことないなぁ…
福住 確かに全日の選手はごっついです、新日の選手と比べてもその差は歴然。特に小橋の体は凄いです(なんつーかぶ厚いんですよね全体的に)・・・あっ感想は見に行きたくなったです、プロレス。
夢の掟

真刈/山本
吉本 同情します、山本先生。
福住 暗殺を企むならばもっと効率の良い、リスクの無い方法はあるだろうに。もう少し手に汗を握らせるような展開を見せてほしい。この調子じゃこの先が心配、期待してるんで。
VF

林崎文博
吉本 ケンカした後は二人で月を見上げる…という安易な展開を避けているのが良い。でもやはり本当のケンカ(暴力によらなくても)は、互いの本音が出るために、良質なドラマトゥルギーを生み出す。現在でもまだそれは有効なのだ。
福住 余力を残すではなく、精根尽き果てるまで死力を尽くした闘いの後には勝者も敗者も無く・・・いいんじゃないですか、清涼感の残る清々しい決着。
戦え!アナウンサー

みずしな孝之
吉本 カリカチュアライズ、とは何なのかを考えさせられる作品。
福住 これまた時節ネタ、そろそろ番組改変の季節ですからタイムリーといえばタイムリー。でもただそれだけ。
愛人(Ai-Ren)

田中ユタカ
吉本 エンゾ、ちゅうかジャン・レノですか。オハナシを大きくする欲望は、是非とも押さえて欲しいものです。願わくば人類とか世界とかを救うようなオハナシにならないように…。
福住 世界観の周辺を補完する説明的なセリフが詰め込みすぎな感じでなにか窮屈、もう少しゆっくりでもよいのではないか?落ち着いて深呼吸深呼吸。
藍より青し

文月晃
吉本 みんなでお花見の支度。二人きりで出かける葵と薫…。恋のライバルが登場しない、というのが、最近の青年誌ラブコメの特徴なのかもしれない。
福住 日常ありふれたシュチュエーションで淡々と綴られる2人の世界。どろどろぐちゃくちゃのラヴに飽き飽きの方にオススメ、癒し系。
コイズミ学習ブック

こいずみまり
吉本 女性の側から見たオトコの落とし方は興味深いところ。ただ脚色はなるべく加えない方が、ナマナマしくっていいように思う。
福住 イマイチ興味が薄い話題でいかんとも、このようにネタによって上下しますね評価も。

<総評>

吉本 『ベルセルク』の不在を、完全に『ハネムーンサラダ』が補っている。主力がいくつもある雑誌は有利だ。一方でありきたりとも言えそうな青年向け漫画(『復活』など)を載せながらも、もう一方で全体的には王道からやや外れている。その編集方針は面白い。
福住 「ベルセルク」不在も盤石の布陣、安定しています。ただ全体的に前号より低調。。。前も言いましたがイキのいいギャグ漫画を載せるようになればそれを補う事が出来ると思うんですけど、「相撲遊戯」とか可能性のある人材もいますので積極的に登用してもらえたらなぁ、と。

<ベスト>

吉本 大ゴマの使い方に戦慄した『ハネムーンサラダ』にせざるを得まいて?恐らくは「永世ベスト」。
福住 「エアマスター」が一歩抜きんでていました、キャラも万遍なく立っていてどこからでも入っていける、万人にオススメの良作です。

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:52 JST