漫画の鬼アックス11号

黒寿司十八番

根本敬
吉本 実験を続けるのは良いのだが、やっぱりちゃんとした「漫画」を描いて欲しいところ。あと、昔のような「特集」はあまり好ましくないのだが。紹介以上の意図があるだろ?
久遠    
陽子ちゃんの奥歯

東陽片岡
吉本 この人はどこでも同じレベルの仕事をする。
久遠    
双子のオヤジ

しりあがり寿
吉本 相変わらず観念的なオハナシ。だが絵柄のヘロヘロ感でさらりと読ませるのはさすが。他が凄いのでここではこんなものでいいかも。
久遠    
歌の花道

S・オ〜
吉本 オヤジの悔恨の情を描こうとしているのは分かるのだ。そこにあるのは複雑で繊細なノスタルジー。だからそれ自体は理解できるのだが、どうにも我慢ならないのは線や登場要素が下品きわまりないこと。それもわざとやっているわけなのだが…。もうひとつ我慢ならないのは編集方針。オヤジ読者におもねるのは重層的に危険だぞ?
久遠    
マイフレンズ

小田桐宗
吉本 プチ×タイニー福満しげゆき、ってところですか。少数×少数って感じですね。
久遠    
ひとみしりさま

あらいあき
吉本 独特の作品世界を持っているのは分かるのだが、やはりこの人もどうにも我慢ならない。線の引き方やオハナシの作り方がどうにも、そして、意図的に旧ガロを引きずっているのだ。「アックスに載るからガロ風の絵柄」「旧ガロ的だからアックスに載せる」どちらも考えられるが、どちらも読者をなめきった考えである。新しいぶどう酒は新しい革袋に。
久遠    
絵の中の女

河井克夫
吉本 対してこちらはまったくわが道を行っているという感じ。周りの思惑にとらわれずに良い仕事をしている。ともすれば神経症的にさえ見えるダウナー系絵柄と展開に惹かれる。
久遠    
結婚式

西岡兄妹
吉本 相変わらず難儀な人達であることよ。…意外と実際の生活では幸せだったりしそうなので興味深いが。
久遠    
喫茶店の友

鷹羽正臣
吉本 もうダメか、と思っていたら意外と面白い作品。絵をもう少し洗練させる必要があるだろうが、あるいは別の方法論をもう少し取り入れる必要があると思うが、とりあえずの方向性は悪くない。じわじわ笑わせる無声映画的手法に惹かれる。
久遠    
銭解放

花輪和一
吉本 檻の中の経済状況が良く分かる内容…だけがこの作品の徳目ではない。「金を使う」ことをめぐる人々の様子と、それに対する花輪の屈折が面白いのだ。相変わらず人間曲がっててよい。
久遠    
PassageII・薔薇色の本

鳩山郁子
吉本 これだよ、これ。矢継ぎ早に展開されるめくるめくようなイメージ世界。暴かれずに残っている隠された「秘蹟」を常に見いだそうとする姿勢に共感する。袋とじを含みこんだフランス装という秘密。問答無用に教養を要求する姿勢もよし。シャーロット・リン!
久遠    
おむすびころころ

松井雪子
吉本 いつのまにおはげのはっちゃんに弟ができたのだろう?語りすぎて失敗している方の作品ではなかろうか。
久遠    
くるくるきいきい

キクチヒロノリ
吉本 「宮殿」ですか。それにしても独自に定義された「人間」の姿にはニヤリとさせられる。もう徹底的にやるしか!?
久遠    
ワイルドマウンテンライフ

本秀康
吉本 全然別のオハナシが語られるので面食らう。だが内容の「ダメさ」加減はいつもの通り。そして無情感あふれるオハナシ。馬鹿は死んでも直らない。
久遠    

<総評>

吉本 本格的に堕落度が深まっている。旧ガロに戻ろうとしている様子がアリアリでやれんことこの上なし。面白いことに二重に旧ガロ的である。第一はサブカルのオピニオンリーダーを目指すところ。第二に過去の遺産に依拠するところ。どちらも実に鼻につく。漫画以外の属性で勝負するのはやめて、漫画の面白さで勝負しろよな。次もこの調子なら、レヴュする価値はなくなるであろう。花輪くんが載る限り読みはするだろうが。
久遠  

<ベスト>

吉本 そんな中にも見るべき作品がある。鳩山郁子先生だ。孤軍奮闘、という感覚が否めないのが切ないが…。
久遠  

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