コミックビーム 2000年5月号
| レヴュ担当 | 吉本松明 |
| 久遠永遠 | |
| 音羽平八 |
| LAZREZ TKD／竹谷州史 |
吉本 | ７ | 待ってましたぜ。マーレイ師匠！ とにかく現在はすべてのリアルが仮想化され、絶対的なものは存在しないように見える.そのなかで作者は「本当にリアルなもの」を設定しようとする。その場でしか味わうことのできないアウラを存在させようとする。流石は学生運動的リアルの希求者よ。その考え自体には疑念を感じるが、それを表現しようとするのはいっこうに構わない。そしてそれが竹谷の力強い筆で描かれるのだから、なんの文句があろうか。徹底的に泥臭くやってほしいもの。二人とも応援してますぜ。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 敷居の住人 志村貴子 |
吉本 | ９ | すでに前回から「弄ばれる可愛い少年」という構図は明らかになっていたが、今回はちあきがそれに自覚的なのが可笑しい。加えて今回は作品全体を規定するようなモノローグがいくつも見られる。作品として完成された、という感触。問題はこれから先。どう展開させていくのか、どう終わらせるのか？ちあきは無限に苛まれつづけなくてはならない、という構造があるので、特に終わらせるのは難しかろう。「身の程知らずなの」とつぶやくくるみちゃんに超ラヴなのでプラス１点。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 東京カイシャイン タイム涼介 |
吉本 | ４ | ってことは結構人気なのですね。知名度の高い作家はそれだけで読まれるからねぇ。いちいち読者をつまづかせる、という方法は良いとは思うのだが、もうちょっとスマートにやってほしいと思う。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 砂ぼうず うすね正俊 |
吉本 | ７ | 新たなる追跡者の登場。砂ぼのピンチは変わらない。だが砂ぼは強力な煩悩を発揮して、あきらめることはない…。何があろうが砂ぼうずは砂ぼうず。決してイイ奴になったりすることはない。その悪辣さがこの作品全体を規定している。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| サルぽんち 鈴木マサカズ |
吉本 | ６ | ギャグの衣を被りながら、実は青春ものであったと。少年の自立の物語であったと。問題はもう一歩先にある。せっかく我々をケムに巻いたのだから、もういっぺん我々を吃驚させて欲しいもの。応援したい作品。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 橋無醫院 林光默 |
吉本 | ７ | 次第に明らかにされる主人公の謎。登場する強敵。アクション主体の内容なれど、きちんと漫画的に盛り上げているのが興味深い。なるほど、O村が惚れ込むわけだ。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 幽玄漫玉日記 桜玉吉 |
吉本 | ５ | ドロナワ漫画。たまにはこんなのもありでしょう。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| おさんぽ大王 須藤真澄 |
吉本 | ７ | ネタ合わせ漫画その１。こっちはこっちでちゃんと「おさんぽ大王」になっているのが面白い。ますび先生の驚きが伝わってくる。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 恋の門 羽生生純 |
吉本 | ７ | 実にさまざまなことがあった一夜が終わる。少しづつの嘘を秘めながら。結局もとのサヤかよ、という印象はあるが、それは当然次の難局への伏線となっている。正面からセックスを描くことで、「痛さ」がより増しているのも興味深い。単行本発売ですか。随分長く待ったような気がする。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 死霊狩り 平井／梁 |
吉本 | ６ | ゾンビーに変化する巨躯の男。窮地に陥るチャンプ…。俊夫がどう絡んでくるのかが楽しみなところ。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| オールナイトライブ 鈴木みそ |
吉本 | ６ | 今回のお題は「怒りメーター」。ネタとしては平凡だが、妙に気になるネタではある。何故かというと、私も車に乗ると怒りメーターのモードが変わるから。道路交通法を守らねえ奴は全員死刑！ |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 真･女神転生カーン 柳澤一明 |
吉本 | ６ | 遂に目覚め、一体になるカオス。意外な展開に驚く。二ヶ月休んで第四部ということらしい。注意深くメディアミックス色を拭い去ってきた現在のビームにこの作品が必要かどうかは微妙なところだが、漫画自体として悪くないと思う。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| てきぱきワーキン▽ラブ 竹本泉 |
吉本 | ６ | いったいどうしちゃったんですか？ここに来てラブですか？タイトルに冠されているものの、今までラブなんてカケラすら見えなかったのに？ひょっとしてFXのゲームがそうだったとか？相変わらずエダルトが翻弄されているのがよい。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 彼女とデート 有川祐 |
吉本 | ９ | 最後にどうまとめるか、と思いきや「おにいちゃん」の視点で語るとは。美奈代。すげこまくん。KENにいちゃん。イライザ。だがここで語られる「孤独」は、決して特殊なものではなく、現代社会に広範に見られるものである。だから痛いことこの上ない。最後まで一筋縄じゃ行かなかった作品。最初に出てくる歌詞を知らない人とはちょっとお話したくない感じであるが、ポリスの「見つめていたい」である。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 弥次喜多in DEEP しりあがり寿 |
吉本 | ７ | 瀕死の喜多さんとどんどん強くなっていく弥次さん。幻覚的世界を遍歴するというパターンは変わらないが、手を変え品を変え、しりあがりは読者に訴える。メメント・モリと。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| テルオとマサル 市橋俊介 |
吉本 | ８ | 変な自己啓発セミナー／宗教に勧誘されるマサル。いったん洗脳されたに見えたが…そうそうマサルは甘くない。アクのかたまりのようなマサルにシビれてますよ。それにマサルとマサルのママのイヤーな体型にまたシビれてますよ。すべてを飲み込むブラックホールのような作品。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| やさしい女は何処にいる 須田信太郎 |
吉本 | ８ | 離れに住むことになった主人公の前に現れる、死んだ職人の霊。主人呼応は逡巡しながらも、彼の遺志を継ぐことにする。そして現れる「街のざしきわらし」。それは昔別れた女の姿をしていた…。最低辺の暮らしのなかで（一億総中流って、誰が言った言葉だろう？）こそ現れるズルムケの人間の生。だからこそやさしさも現実のものとなる。現代のファンタジイの語り手。凄く伸びてるじゃないですか。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 期末試験前也 〜ときめき注意報〜 新谷明弘 |
吉本 | ８ | ぐるぐる眼鏡の女の子を戦略的に使うとは。随分「くすぐり」を覚えてきたな、という感じ。そして漫画の内容は非常に意欲的。カットアップ･メソッドじゃないですか。当然番号順に読むんですよ！！さらに面白いことに、番号順に読まなくてもそれはそれでオハナシが出来あがっているのがよい。理系的論理性が求められる漫画。これも単行本を！連載でもいいです！ |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 釣れんボーイ いましろたかし |
吉本 | ８ | 遂に行動に出るヒマシロ。ついでに金髪にする。なんだかすべての行動がまんまと空回りしているのが素晴らしい。徒労漫画の最高峰と言えましょうか。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| 夜は千の眼を持つ 上野顕太郎 |
吉本 | ７ | ネタ合わせ漫画その２。やっぱりうえけんって人間自体も面白い人だったのですね。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 | |||
| かねひらだもの 金平守人 |
吉本 | ７ | そのままの意味で神をも恐れない漫画。ま、死人には口がないからねぇ。「だもの」になってから、ひねりの強いギャグが増えてきたので、読み応えがある。もちろん普通のギャグ漫画を求める人にはイヤーな感じを与えるのであろうが、私はずいぶんすれっからしになってしまったので、こっちの方が好ましい。 |
| 久遠 | |||
| 音羽 |
＜総評＞
| 吉本 | いちいち強力なラインナップ。表紙だけでなく、中身も強烈な迫力を持って我々に訴える。ひとりの漫画読みとして、こういう雑誌が存在していることが嬉しくてたまらない。こういう表現の場に、リアルタイムで居合わせていることが嬉しいのだ。断言しよう、「ビーム」は、後に「ガロ」や「COM」と同様に語られるようになることを。 |
| 久遠 | |
| 音羽 |
＜ベスト＞
| 吉本 | 完結記念＆単行本発売記念で『彼女とデート』にしよう。恐らくは単行本は悶絶する内容になるはず。2000年発売の単行本の中で3本の指に入る大傑作になるはず。 |
| 久遠 | |
| 音羽 |
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:54 JST