コミックビーム 2000年7月号

レヴュ担当 吉本松明
久遠永遠
音羽平八

敷居の住人

志村貴子
吉本 10 ぶはあ。なんて恐るべき展開!またも未遂に終わるちあきの初体験、その背後にあるのがラブではなくて寂しさである切なさ。それにショックを受けて猫を飼い、バイトまではじめてしまううわの空の描写の上手さ。加えてそれにくるみちゃんを、多分の悪意をこめて絡めてくるとは。展開の絶妙さといいしょうもなさの微妙な導入といい思春期の描き方といい線の美しさといい、他に例を見ないほどテンションが高まっている。この作品を読むためだけでもビームを買え!
久遠    
音羽 ドツボにはまってるね〜。猫が家出とかして大騒ぎになったりするのかな?
東京カイシャイン

タイム涼介
吉本 この作品を読むと、「打順」の重要性を思い起こす。先頭打者が出塁し、二番打者が送り…
久遠    
音羽 どっからそんなデータを集めるんだか・・・
死霊狩り

平井/梁
吉本 ほぼ予想通りの展開。黒幕の登場により、オハナシに広がりが出ることを期待。
久遠    
音羽    
100万円ベガスくん

肉柱ミゲル
吉本 待望(?)のみげー君の連載は、以前の読みきりの続き。すべてを「100万円」が支配する世界、を設定しているのが以前との違いか。まだまだ吉田戦車のような一般性を獲得する段階にはないように思うが、吉田戦車もスコラでの下積みのころはずいぶんヒネた作品を描いていたはず。連載は好ましいところ。
久遠    
音羽 わざわざ格闘戦なんかしないで、初めから火炎放射器か何かで燃やせばいいのになぁ。
LAZREZ

TKD/竹谷
吉本 浮世離れしている人であっても、現世において収入を得なくてはならないのであって…アヴァンギャルドレコード屋でバイトするという描写が良い。そして登場するレコードも!漫画表現そのものが批評になっているのは非常に興味深い。そして竹谷の迫力のありまくる絵!強力なタッグである。
久遠    
音羽 またまた一癖も二癖もあるキャラが出てきたね。もっともっと混沌としてくるのかな。どんな話になっていくのか非常に楽しみだな。
非国民

ハーツ&マインズ
吉本 日常の中に忍び込む魔性。それをさもあたりまえのものであるかのように描いているのが面白い。確信犯ですなあ。
久遠    
音羽 この八百屋は・・・あんな格好してて捕まらないのか?
てきぱきワーキン▽ラブ

竹本泉
吉本 やっぱり「〜パラダイス」のSF的滅茶苦茶さ加減に比べるとテンションが低いのは否めないが、長く続いているその分ダルな「いい感じさ」が出ているように思う。酒乱のナーナさん、という表現がよろしい。
久遠    
音羽 結婚かぁ〜・・・縁のない言葉だなぁ・・・
幽玄漫玉日記

桜玉吉
吉本 …3ヶ月休載ですか。このところ最後の力を振り絞っている、という切迫感が常に感じられていたので(なげやり含む)、仕方の無いところではないか。調子のいいときは上手く自分の病気を「飼いならしている」印象があるが、最近は全然そうではなかったわけだから。
久遠    
音羽 相変わらずとはいえ、凄まじい日常だな〜。普通に生きてるだけで漫画のネタになるとは・・・どうやったらこんな日々になるんだか。
おさんぽ大王

須藤真澄
吉本 ラフティってのは美味しいものですなあ。そういえばこの作品で「行ってみたくなる」のは、ごく珍しいかもしれない。
久遠    
音羽 沖縄か〜・・・たまには旅行に行ってみるのもいいかもなぁ。
橋無醫院

林光默
吉本 相変わらず画面の静と動のコントラストは美しい。オハナシも動いてきたようで…
久遠    
音羽 少しずつキャラが見えてきたかな。絵柄や構成にもなれてきたかな。
BAMBi

カネコアツシ
吉本 このクライマックスで1回休載は惜しいところではあるが、映画も楽しみなところなので仕方ないといえようか。盛り上がり方は流石。
久遠    
音羽 まだまだバトルは続きそうだね。
夜は千の目を持つ

上野顕太郎
吉本 ゲームブックですか!懐かしい。テーブルトークRPGができる状態ではなかった人には必須のアイテムでしたなあ。私が好きだったのはスティーブ・ジャクソンの王道的なものではなく、J.H.ブレナンのモンティ・パイソンみたいなアーサー王ものでしたけど。それはともかく、最もしょうもない選択をすることがゴールにつながるという姿勢が素晴らしいではないですか。
久遠    
音羽 そうえば、昔、アドベンチャーゲームブックってのがあったなぁ。いろいろと買ったものだが・・・懐かしいな。
弥次喜多 in DEEP

しりあがり寿
吉本 続きもののパターンとして、どんどん本当の死に向かっていくふたり。面白いのは弥次さんが巨大化し、ひとならざるものに変わってきているところ。どうまとめてくれるのだろうか?
久遠    
音羽 ホントに死んじゃったのかな?
砂ぼうず

うすね正俊
吉本 神経をすり減らすような持久戦。実際の戦いはありがちなアクションだけではなく、こうしたつらい面があるわけで、それを描いているのがよろしい。それが「プロの仕事」であることをさりげなく強調しているわけだ。
久遠    
音羽 追い詰めれられてるね〜。どんな策に出るのかな。期待してるぞ〜。
ミズトカゲのいる沼

安井誠太郎
吉本 久々登場。線にも、展開にも、ためらいが感じられるのがなんだか切ない。かつてのような宮崎駿的描線から抜け出そうとして、今ひとつ十分に抜けきることができないでいる様子がうかがえるのだ。身についてしまった線をドラスティックに変えようとしているのだから、そこで直面する苦労/苦悩は相当なものがあろう。光るものがあるので、とにかくじゃんじゃん作品を描いてほしいもの。
久遠    
音羽 相変わらず意味不明だね〜。
恋の門

羽生生純
吉本 もはや見向きもされなくなった恋乃、加えて会社も倒産。心機一転を図るが…「荒らし」の描写が実に詳細なのがいいですなあ。「氏ね」とか。アスキーアートとか。ただ一つ気にかかるのは、このまま「切なさのインフレ」になるのではないかということ。つらい状況の次には、さらにつらい状況が待っているという。それだと無間地獄に陥ると思うので、二人の関係性に着目すると良いと思う。
久遠    
音羽 いいね〜。平和な日常が次々と崩れていくね〜。
サルぽんち

鈴木マサカズ
吉本 口先ばっかりで実行しない人はいるものである。それをギャグのオブラートに包んで提示するとは。ああ、自戒、自戒。
久遠    
音羽 猿に置き換えてるから笑えるけど・・・人に置き換えて考えると、なんだか・・・現実味がありすぎてイヤかも・・・
やさしい女は何処にいる

須田信太郎
吉本 心を入れ替えて(?)染物業に打ち込む4代目という描写になってきて、なんだか甘酸っぱい気分になる。仕事があるのだものね。染物で食っていけるのだからね。だがそれでもピンチは常にやってきて、街はそれを見守っている。いろんな点でやさしい作品といえよう。
久遠    
音羽 どんなことであれ、技を極めたプロってのはカッコいいものだよな〜。
テルオとマサル

市橋俊介
吉本 キャラクタの存在自体が高い破壊力を持っているのに、さらに「ひどい」オハナシを持ってくる。マサルの腹のふくよかな曲線が実に催眠的。雑誌の後ろにあっても強烈な存在感。素晴らしいとしか言いようが無いではないか。
久遠    
音羽 ビギナーズラックってやつかいな?
SAIGON DREAMS

深谷陽
吉本 サイゴンの町で、絵描き志望の女の子と出会う日本人。いっしょに食堂をやるのだが、彼女の心変わりに気づく。彼女は絵描きをあきらめて、主人公といっしょに食堂をやることを望むようになるのだ…と。深谷お得意のアジアをモチーフにした作品。作品のタッチやモチーフは、他のビーム作品とはやや違和感があるのだが、作品の存在感そのものはまさにビーム作品と共通するものがある。連載ということになるとやや違和感があるかもしれないが、このような長めの「読ませる」作品を載せるのは大賛成。この調子で4本描いて単行本ですよ。
久遠    
音羽 いいねぇ〜。なんだかホッとするねぇ。こんな生き方が出来ればと、何度思ったことやら・・・
釣れんボーイ

いましろたかし
吉本 「ハーツ&マインズ」の分だけさらにダウンしているような。一見意図がわからない妻の入浴シーンもダウン性を際立たせていて素晴らしい。この位置で固定ですよ。
久遠    
音羽 何をやっても不満・・・自分にもあてはまるな・・・ダメ人間にならないように気をつけねば・・・
笑う人たち

金平守人
吉本 …人を食ってますなあ。ネタの傾向はこれでいいと思う。
久遠    
音羽    

<総評>

吉本 連載陣が好調なのに加えて、実にビームらしい質の高い読みきりを載せる。アフタヌーンでもそうだが、時宜を得た読みきりは非常に雑誌の印象を高めるのに有効である。この調子で優れた読み切りを載せつづけてほしいところ。
久遠  
音羽 混沌としてるね〜。だが、パワーが足りないな〜。もっと熱くさせてくれるものが欲しいぞ!

<ベスト>

吉本 そりゃあもう「敷居の住人」しかないではないですか。
久遠  
音羽 「SAIGON DREAMS」かな〜。

Back

Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:54 JST