BIRZ 2000年4月号

Marieの奏でる音楽

古屋兎丸
吉本 成長したピピとカイ。争いのない技術の国。カイにはほんのわずかの音でも聴き分けることができる能力がある…。繊細さを体現したかのような線。センスオブワンダーにあふれた異世界。今後に期待の持てる伏線の張り方。「∀ガンダム」を思わせるようなのどかな描写。どれをとっても興味がもて、ぐいぐいと引きこまれる。初の月刊でのストーリーものの連載ということもあって、これを期待せずにいられようか、という感じ。
久遠    
音羽 始まりは日常から、そして、非日常の冒険の旅にでもなるのかな?どんな話になっていくのか楽しみだな。
羊のうた

冬目景
吉本 訪ねてくる夏子おばさん。彼女の養子にならないかという申し出を拒絶する千砂。予想された展開なれど、緊張感の高さは比類するものがない。今回はちょっと息抜きといった印象があるが、どんどん二人の世界に閉じて行く一砂と千砂の様には瞠目せざるを得ない。
久遠    
音羽 来たのは八重樫がと思ったら違ったね〜。伏線としてはっておいて、おいしいとこで出てくるわけだね。
しびとの剣

菊池/加倉井
吉本 しびとの前に現れる二人の僧。一人は吉法師と名乗る。実在の人物を登場させることによって大きくオハナシが動いている。ていうかもっと早くから出てきても良かったような。
久遠    
音羽 巨大な鬼もからくりか〜。中身どうなってるんだろ?
きりきり亭のぶら雲先生

きくち正太
吉本 ハタハタ寿司!キムチと塩辛のつまみ!うまそげすぎ!私は日本酒は基本的にあまり得意ではないのだが、最高の日本酒と最高の器、最高の肴であれば全然大丈夫のように思う。これこそ現代日本が忘れてきた「風流」であり、文化的繊細さである。面白い!
久遠    
音羽 夢の中で原稿の中身までできてればいいのにね〜。
退魔針

菊池/斎藤
吉本 復活したザグナス=グドに対して手も足も出ない赤虫。一方重慶は二人を改造してザグナスに対しようとするが…。原作のコメディ要素を斎藤が伸ばし、どこかほのぼのした味を出しているのが良いじゃないですか。いつのまにかいい伯父さんになっている重慶も良し。
久遠    
音羽 さて、都合よく出てきたのは誰かな〜?
スカートさん

吉田戦車
吉本 吉田節炸裂。今回は川上が今ひとつ弾けていなかったのが残念だが、流行りものをチェックしている鷹が良かった。いじましいこと!
久遠    
音羽 厚底くつしたってどうやって靴はくのかな・・・
コドク・エクスペリメント

星野之宣
吉本 レッサ−デロンガを量子的に分解するバグレス准将。一方逃走した船長は、イニシャルズとコドク実験の秘密を手に入れる…。ちょっと簡単に秘密が漏れすぎかな、という気がするが、ブラックホール兵器やイニシャルズの独自性が現れてきつつあるので興味を惹かれる。
久遠    
音羽 な〜んか滅茶苦茶だね〜。メカデザインや技術考証をなんとかしてくれないとね〜。
極楽丸

相川有
吉本 好評に応えてかの再登場。魂を救い出す役目を持つ極楽丸だが、今回は彼岸に行っても周囲を見ることができない。ピンチに陥る極楽丸…。極楽丸は代々受け継がれるものであり、ずっと「魂の救済者」がいるという設定が良いではないか。大きな世界観を小出しにする方法論は、読者からするともどかしいのだが、漫画的に正しいことだと思う。単行本は買いますよ。
久遠    
音羽 期待の続編だね〜。もっともっと続いてくれないかな?
SUZAKU

藤木/坂本
吉本 上海を救おうとする秘密結社の娘。彼女達の狙いは上海から阿片を追放すること。彼女は変わり者扱いされているが、同様に阿片中毒患者をなくそうとしている慈恵に出会い、惹かれていく…。実在の人物を登場させることによりオハナシに説得力を出そうという試みは良くあることであるが、ここでは成功している。多分こんな人じゃなかったのだろうが。一方で伝奇的要素は今回はやや後退している。バランスを取ることが必要であろう。
久遠    
音羽 なんだか、毎回雰囲気が変わるな〜。そのうちすべてが混ざってきて面白いカタチになるのかな?
いのち短し恋せよおとめ

新名あき
吉本 家を出て、薩摩に帰ることを提案する三人娘の母親。それを単に外部から「他者」として描くのではなく、彼女には彼女なりの捨てきれぬ思いがある、というふうに描いているのが、新名の良いところであり、骨抜きの原因である。「悪人なし」という構造は、骨抜きの大きな要素であろう。
久遠    
音羽 乱子さんでてこないね〜。次回は鷹男と勝負ってことで出てくるのかな〜?
夜刀の神つかい

奥瀬/志水
吉本 砌や菊理に出会う前の勇介のオハナシ。彼はヒカゲとともに暗殺を生業としていた、というもの。吸血鬼と化したヒカゲと勇介がどうつながってくるのかは興味深いところであったが、ちゃんとそれをやってくれるとは。ただこれが長引きすぎると本編の方のテンションが下がってしまうので、早めに片付けるべきだと思う。
久遠    
音羽 なるほどね、ミョーに戦い慣れしてると思ったら、殺し屋をやってたんだね・・・
BIRTH

山口譲司
吉本 麻央の内面に「ダイブ」する__。だが彼女は恐怖を感じて撤退。怒りを感じた彼女は、最強の生物兵器を発動する。すべての生物を殺すウイルスなんてのは存在し得ないのだが(ウイルスは生きるために宿主を必要とする)、その辺は漫画なのでまあいいでしょう。ポイントは強さのインフレにならずにどう強敵を登場させるか、ということなのだから。
久遠    
音羽 どこまで続くのだか・・・ちなみに、どうやって話をまとめるのかね〜。
愛をあげよう

ともち
吉本 二人きりの家で、ついに一線を超える正吾と弥生…ソレを描いてしまうともう終わりなのじゃ、なんて思うのだが、きっとともち先生のこと、唸ってしまうような展開を用意しているに違いない。期待していますぜ。そして実にシレっとセックスシーンを描いているのがたまんないじゃないですか。「愛、愛しかない…やった人から秘訣を聞きな」とうたうディランを思い出して切なくなってしまう事ですよ。
久遠    
音羽 案外さらっと流したな〜。
ツンドラ・パンチ!

中川いさみ
吉本 すっかり方法論を固めたようで、コンスタントに実力を発揮できるようになっている。爆発的に面白くはないが、じわじわと入り込む異形に笑える。
久遠    
音羽 なんであんな格好で固まってたんだ?
くじらの国のアリス

夢野龍之介
吉本 アリスと呼ばれる少女。彼女の夢にいつも登場するのは鯨の歌声。病弱で外に出ることを禁じられている彼女の楽しみは、ネットワークに接続して行う3Dチャット。だが次第に鯨のイメージが彼女を覆っていく…。懸案だった絵の固さが次第に解消され、「描きたいこと」と「描かれていること」のギャップが少なくなってきているように思う。もちろん鯨の神秘性をジョン・C・リリーを引いて表出しているオハナシは全然まだまだなのだが、随分と以前に比べると良くなったように思う。この調子で経験を積んで欲しいところ。
久遠    
音羽 いまいちピンとこないね〜。もっとサスペンス仕立てにでもすればよかったのでは?
テディ部屋

どり☆あすか
吉本 『金平劇場(仮)』とおんなじパターンですか?
久遠    
音羽 絵があっさりとしすぎて、面白みに欠けてるようなきがするな〜。
日の丸あげて

新谷かおる
吉本 先月の原稿落としは不幸のためらしいですな。仕方ないこと。今回はフルコンタクトの空戦のルールが説明され、日の丸たちが空戦に参加する…といった場面。もうちょい先を描いて欲しいという印象。それだけこの作品が少年漫画のフォーマットに従っているということなのであろう。
久遠    
音羽 あいかわらず何がなんだかわからないね〜。単に、レシプロな飛行機が描きたいだけ?
はち

大雪師走
吉本 ルビは恥ずかしいです。
久遠    
音羽 あんなので家計を支えられるのか?
Beast of East

山田章博
吉本 何だか随分久しぶりの掲載のような。今回はまわりの人々の素性が語られ、世界が広がっているように感じる。ただ、倍ページがあってもいいと思うのはいつもの通り。
久遠    
音羽 皆、わけあり連中なのだね。過去が生かされた話とかは・・・出てこないだろうなぁ。

<総評>

吉本 全体を通してみると、抜けや落ちが多い雑誌のように見える。だが、『Marieの奏でる音楽』『羊のうた』『極楽丸』などがきちんと要所を押さえているので、それほど全体のテンションが低いようには見えない。ビームのようにほとんどの作品が凄まじい出来、という雑誌はほとんど望めないのであるから、それを前提にしてメリハリのある編集方針を取っているのが好ましい。ところで雨宮智子は?来月載らないの?
久遠  
音羽 もりあがりに欠けるな〜。もっとパワーがあって個性的な読みきりが欲しいな。無難になりすぎてるのかな?

<ベスト>

吉本 『Marieの奏でる音楽』。説明は不用、という感じ。
久遠  
音羽 「羊のうた」かな〜。他がパワーなさすぎだしね〜。

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:57 JST