キューティーコミック2000年8月号

レヴュ担当 吉本松明
山田千里

そどむ

小野塚カホリ
吉本 やはりオハナシが錯綜してみえるのが少々つらいところか。展開の痛さは相変わらずなのだが。
山田    
至高!

KOMSOMIDA
吉本 桃吐&福未実なんでないの?と思ったら、後半はなんだかオトメチックでちょっと違う感じ。青年誌の代原を思わせる…。
山田    
フェイクファー

小野塚カホリ
吉本 これまたかなり緊急の代原。読んだことあるのでちょっと衝撃力は弱いように思う。
山田    
ガーリーハイパーズ

藤末さくら
吉本 安定はしていると思うのだが、ちょっと演出が弱いような…。痛い展開をもっと痛く描くことは可能なはず。
山田    
アノミー・カンガルー

海埜ゆうこ
吉本   久しぶりに会う二十歳のクラスメイトたち。主人公の女の子はずっと好きだった男の子に思いを伝えようとするが、彼は31の子持ちの主婦と付き合っているという。その主婦のことを好きだという彼を見て…。鋭いのは「二十歳になった」ということを主人公が強く意識しているところ。法的には大人になったわけだが、何が変わるというわけでもない。そうした宙ぶらりんな7.5気持ちを繊細に描いている。画面構成や表情の描き方も実に巧み。次回が非常に楽しみな作品。
山田    
地獄のサラミちゃん

朝倉世界一
吉本 またもオトメチックに…。もっと「ヒュードロドロ」とかくだらないところで攻めてほしいのだが。
山田    
最近どうよ?

上野顕太郎
吉本 全体的に「ひまあり」のネタに終始してしまったのが残念。女性向けということで緊張したか?うえけん?それにしてもメンツが凄すぎ。リレー漫画という形式も新鮮なのに、ここまで通好みの人選をするとは…そして次はよりにもよって榎本俊二ですか…
山田    
ユカとまーくん

大倉かおり
吉本 6.5 お馬鹿でスケベなカップルが騒動に巻き込まれる、という基本構造がしっかりしている分、騒動そのものをひねらないと平凡な印象がある作品だったように思う。しかし今回はいい感じ。タコ部屋だもの。スケベであることを忘れずにやっているのもいい感じ。もっとエロくても悪くはないと思いはするが。
山田    
01

小林ユミヲ
吉本 「CC」では初の登場か。一見雑に見えるが実は完成された線がいい雰囲気を出している。ただ全体に印象が薄いのは何故?オハナシに一工夫ほしいところ。
山田    
ハチミツとクローバー

羽海野チカ
吉本 7.5 俄然注目のこの作品。今回はメンバーの中でも一の奇人、森田さんをフィーチャー。個性的なところでモテるんだけど、あまりにも人の言うことを聞かないので結局イヤがられる…という描写に微笑む。こんな人いたんでしょうなあ。羽海野の良いところはギャグもきちんと描けること。才能を感じるばかり。はぐちゃんが活躍しないのはちょっと残念だが、やっぱり面白い。
山田    
アダルトファミリー

オーツカヒロキ
吉本 CGの本格導入で生産力が上がったのか、とにかく仕事量が多いこと。オハナシのくだらなさは相変わらず相当なものだが、「愛ラブ…」に比べてややインパクトが弱いように思うのも事実。マオに負けないキャラクタをどう作るか、が勝負となろう。
山田    
月とリンス

栗生つぶら
吉本 実に、実に可愛い絵ながらも、内容は深いところまで踏み込んでいる。「耳朶とワッフル」買わなくてはなりませぬか。
山田    
薔薇色のみっちゃん

大久保ニュー
吉本 やっぱりニューはお馬鹿な漫画が良く似合う。思い込みの激しい娘さんを描かせると天下一品ですなあ。前回のようなマジな漫画もいいものですが、こっちでもどんどん攻めてほしいもの。
山田    
ひめきみ

いわみえいこ
吉本 やっぱりなんだかよくわからない感じ。
山田    
肉じゃがやめろ!

黒田硫黄
吉本 …本当ですか?前回床に書いてあった「新連載」の一言がまさか事実だったとは。「CC」に硫黄とは、物凄く気になる取り合わせじゃないですか。内容は料理漫画。前回の「最近どうよ?」に連結したような、料理薀蓄漫画になってるのがなんだか好ましい。2pなのでやや物足りなくもあるが、この人の作品を載せるというだけでも画期的なこと。もっとやってくれ!
山田    
LOVE HOUSE

橋本ライカ
吉本 ライカの徳目はオハナシの暴走にあり。案の定どんどん暴走していき、収拾がつかなくなってきている展開に惹かれるところ。小さくまとまることなく、この調子でどんどん暴走していってほしいところ。
山田    
キキララ火山

かわかみじゅんこ
吉本 キキとララは双子のきょうだい。旅をして国中をまわり、ふたりはいつもいっしょに暮らす。ララはキキの言うことは常に聞いていた。だがあるとき、ララはキキの言葉を拒絶する。ララは恋をしたのだ…。いつものことながらアレゴリックなオハナシに感心。まずはララの恋は構造的に破綻を含んでいるのが興味深い。ララの出会った男はどう見てもララを大切にする様子はなく、居残るララは早晩捨てられるであろうことが読める。だがララは「だからこそ惹かれる」のである。引き止めるキキが万のような自閉的キャラクタ=コミュニケーションが取れない存在であることも面白い。「他者」としての男性像。それはララが解放に向かおうとする意志を強化するのだ。
多かれ少なかれ、ここでの構図は現在の恋愛一般に通用するものなのではないか。コミュニケーションのチャンスが大幅に拭い去られ、代わりに「直感」が支配するという。かわかみは常にその「直感」を重視するが、その背後には常に行き詰まりが含みこまれている。悲劇的な「ワレワレハ」を想起せよ。それは一方で共感を生むのだが、もう一方で現在の苛烈で深刻な状況を浮き彫りにする。
山田    
今夜もねむれない

かわごえさちこ
吉本 そういえば軽く読めるギャグ作品がこれしかないような?
山田    

<総評>

吉本 主戦力のモヨコの不在は、いっそうこの雑誌の独自性を浮き彫りにする。作家層の重なり、ターゲットにしている層の近似など、どうしても「フィールヤング」との類似性が語られてしまうこの雑誌であるが、よく見るとつとめて差別化を図ろうとしているのがわかる。黒田硫黄の登場と羽海野チカ、海埜ゆうこの有効な使い方にそれは現れている。ある意味作家のバリューに頼るきらいのある「FY」に比べ、どんどん広くは知られていなかった力ある作家を使っていこうとしているところにそれを見て取ることができる。また男性読者への気配りも増している。とても「最近どうよ?」を女性が楽しみにしているとは思えないし。いずれにせよアグレッシブな編集姿勢は高く評価したいところ。
山田  

<ベスト>

吉本 海埜/羽海野としたいところだが、ここはやはりかわかみじゅんこを挙げざるを得ない。まったくもって稀有な才能よ。
山田  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:15:59 JST