キューティーコミック99年12月号

そどむ

小野塚カホリ
吉本 里香子と葉二の関係は次第に近づいてくるものの、葉二に横恋慕する美容師柿崎のアプローチは次第に露骨になってくる。そして葉二を溺愛する母親が登場する…。最初は軽妙な他愛ないラブストーリーにするのかと思っていたが、こう来ましたか。なんだか小野塚が背後に背負っている「業」を感じてしまう。そこまで登場人物を追い込まなくても…なんて思ってしまうのだ。その点でこの人は萩尾望都御大のスピリットを忠実に受け継いでいる。
久遠    
地獄のサラミちゃん

朝倉世界一
吉本 そうすか。
久遠    
バッファロー5人娘

安野モヨコ
吉本 ようやく4人目の登場。フリーの娼婦で保身のためなら平気で恩人を売る、しかしかつて失った恋人のことを今でも忘れられない…という人物設定。簡単にジェンダースタディの罠にはまりそうと思うでしょ?ところがどっこい。モヨコは頑として単純な読みときを拒否する作劇を行う。食えねえ作家だこと!
久遠    
ラブリー!

桜沢エリカ
吉本 幸せの絶頂にある人に、辛いオハナシを求める方がヤボ、ちゅうものでしょう。実に微笑ましいオハナシです。
久遠    
女地球人リンコ

吉本蜂矢
吉本 高熱を出して寝込むまーくん、看病するリンコ。キスして欲しいまーくん、まーくんの「生死」が気になるリンコ。全くふたりの思惑はかみ合わない。冷静に見ると恐るべきディスコミュニケーションがここにはあるのだが、うまくエンターテイメントにしているところが面白い。大塚ぽてと先生の大名作「ウェルカムメルヘンワールド」に通じる面白さがここにある。この調子!
久遠    
一発ヤったら俺の女

内田春菊
吉本 前一度セックスした男。今度は男の家でセックスすることになる…というオハナシ。ていうかほとんどオハナシらしいものはなく、「よく知らない男とセックスすることになった女の心の動き」が描かれている。スゲエやらしくて良い。…このくらい春菊には軽いことなのかもしれないが。それに離婚を目の前にしながらこのオハナシ!食えねえ作家だこと!
久遠    
ガーリーハイパーズ

藤末さくら
吉本 「青春を謳歌したい!」と悶々とする高校三年生のオナゴ。昔から好きだった河合君に告白しようとするが、彼は「現実逃避」しようと誘う…。高校生活を生き急ぐ若者の姿はうまく描けていると思う。しかしちょっと登場人物が多すぎて整理されていない感じ。子持ちのお姉さんの不倫なんてどうでもいいじゃん。まずは主人公の焦燥感をうまく描くことに集中したらどうか。
久遠    
わたがしひとつ

いわみえいこ
吉本 「伸ばしたい何か」を持っている人なのは分かるのだが、イマイチ伸びていないような。まずは絵の訓練を積むべきでは、なんて思ってしまう。
久遠    
夢の温度

南Q太
吉本 やっとオハナシが作品世界における「今」に戻ってきた。今回は「戻ってきた」ことを示すオハナシで、それほど展開に動きはないが、次回は先生とあきの関係がもの凄いことになりそうな予感。楽しみ楽しみ。まだ線が本調子ではないように見えもするが。
久遠    
日曜日にカゼをひく

魚喃キリコ
吉本 カゼをひく主人公、看病しに来てくれるオトコ。オトコは主人公のことを好きなのだが、主人公が好きなのは別のオンナ。ぜんぜんかみ合わないふたり。砂を噛むような絶望感とやりきれなさ。たった3話の集中連載でも痛いこと痛いこと。…逆に、長編よりもこうした掌編の方がキリコの良さは生きるのかもしれない。
久遠    
ホモとサピエンス。

室田朋美
吉本 暗いオハナシにする必要は本当になかったと思う。いいじゃん馬鹿で。
久遠    

<総評>

吉本 吉本蜂矢が好調。オーツカヒロキ(=ピロンタン)もそうだが、男性向けであった作家を積極的に取り込む志向は面白い。なんとなればそれがマンガにおけるジェンダー差を無力化してゆくのであろうから。
ところで全体的にテンションはやや低まっている。作者近況で気が滅入ってしまうので尚更か。ライカとかわかみで梃子入れを!
久遠  

<ベスト>

吉本 一見簡単なウーマンリブものと見せかけておいて、実はすごく複雑な構造を持っている「バッファロー5人娘」にしよう。5人目はどんなアバズレ?
久遠  

Back