マンガ・エロティクス3号(99年10月発売)

菓蝕の典

町田ひらく
吉本 「菓」はあなかんむりに「果」。ひらくらしい真性ロリのオハナシ。親が死のうが祖母がボケようが、少女たちが成長してゆくのが悲しいなんて。そして破滅的なラスト。久々にひらくの本領発揮といったところか。ここにこそ現在の文芸がある。ただ、前二つのような実験をして欲しかったような気もする。
久遠    
ブライトン

やまだないと
吉本 やまだの思考形態はどんどん抽象化され、作品もきわめて抽象化している。それを評価するかしないかは微妙なところ。なぜならば、作品が半ば「解脱」してしまっているから。ついていけない人も多いのだろうな…
久遠    
うろしま物語

福山庸治
吉本 セクシャルな妄想は広がるが、それが実に「妄想然」としたものなので、なんかやれん感じがする。練れてないんですなぁ。
久遠    
BOXES


吉本 頑としてセックスを拒否する男。だが周りの女は乳を丸出しにし、短パンを履いて男を誘惑する。電車の中でも、電話ボックスの中でも、逃げ込んだ家でも。最後に男が出会うのは勤務時間外の娼婦。もうセックスから解放されると安心する男だが…。そうした観念的なオハナシと平行して、例の「下品帳」的な絵的世界が展開する。前者がちょっと小癪な感じなのに対して、後者は実に好もしい感じ。そのギャップはおそらく砂自身によって計算されたもの。こうした「脳を刺激する」マンガもいいですな。ヨガリポインツ!
久遠    
胡瓜

重松ススム
吉本 何にも面白くありません。
久遠    
大試練

駕籠真太郎
吉本 無人島で「試練」にあう人々。単なるサバイバルではなく、勃起すると爆死するのだ。性の試練に耐える人々…と書くとカッコ良いが、オハナシは確信犯的にくだらない。ゴン助登場のくだりは爆笑。変わった性癖を持った人は大変ですなぁ。祝!単行本「喜劇 駅前虐殺」発売!
久遠    
奇跡▽

町野変丸
吉本 今回はゆみこちゃんは遅刻しません。後は同じ。以上。
久遠    
天使の肛門

村崎百郎/森園みるく
吉本 一見お堅いOLの主人公。しかし「ゴミ」を趣味にしている。つきあっているのはプー太郎で自称ミュージシャンのロクデナシ。ふたりはゴミをネタにして下品きわまりないセックスに燃える…というオハナシ。下品さに正直なのは村崎らしいところ。
久遠    
紫とともに去りぬ

フレデリック・ボワレ
吉本 おフランス人らしいポエミカリリィなオハナシ。日本人の黒髪はヨーロッパ人にとっては神秘だというが。パンツを脱がすシーケンスはドキドキして良いざんす。単行本が高くて買えないのは何とかして欲しいところ。
久遠    
雨おんな

ナミルチモ
吉本 線はもろ古屋兎丸@「エミちゃん」のマネ。オハナシはくだらないのだが、どうにも「練り」が足りない感じ。人を食うのか文芸的にやるのかがはっきりしないのだ。中途半端は良くないざます。
久遠    
ゴミの日

あめかすり
吉本 「人間的」に壊れてしまい、さらなる悲しみと痛みを求める父親。そんな父親の元で育てられた哲。全てを捨てる父親だが、哲を失う悲しみは耐えきれない。何とも痛いオハナシ。あめかすりらしい「説明を省いた」構成が心地よい。だが、だからこそ今ひとつパンチ力不足になっているところがあるように思う。
久遠    


雁須磨子
吉本 若年性糖尿病を患っている主人公。入院していたときに、看護婦にオモチャにされていた過去を持つ。クラスメイトの女の子とセックスした後、昔の「調教」を思い出す主人公…。「大人のエロ」と「若々しいエロ」の二本立てが楽しめるのはよい。だがその分「重点形成」が弱くなっているような。今ひとつカリスマ先生の味が出ていないのだ。ちと残念。
久遠    
愛の新世界

久我山リカコ
吉本 金春みはるは二十歳の女子大生、今日も高校生の男の子の家庭教師のバイト。当然ソッチの方も教えます。…リカコ先生(男)、いつもながら下品ですなぁ。陰毛の描写のねちっこいところなんてタマリマセヌわ。この確信犯的行為!だがあくまで「いつもの久我山」。もう一つ抜けたところが欲しいところ。
久遠    
実録企画モノ

卯月妙子
吉本 実話に基づいたオハナシなので、それだけで面白い。知らない世界を知る喜び、とでも言いましょうか。
久遠    

<総評>

吉本 何故?あめかすり、カリスマと、手堅くレベルを上げてくれそうな作家を取りそろえておきながら、何故にこうテンションが低いのか?恐らくは新人がハズしたことと、編集方針がブレているためであろう。作品の順序ももう少し考える必要があるだろうし。次回に期待ですか。
久遠  

<ベスト>

吉本 ずいぶんと手の込んでいた駕籠「大試練」にしよう。「コットン」なんかの連載よりエネルギーを投入しているようだが!?
久遠  

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