コミックフラッパー 9月号

レヴュ担当 吉本松明
WestRiver

トランジスタにヴィーナス

竹本泉
吉本 今までエロに対して距離を置いていた泉先生。しかしここではモロこそ描かないものの、登場人物が皆すけべえ。上品なのだが根エロ度の高さはたいしたもの。泉先生、やってくれます。 
W.R.    
超少女明日香

和田慎二
吉本 やっぱり違和感を禁じえない。しっかりと少年漫画のフォーマットには従っているのだが(そしてそれに由来する面白さはあるのだが)、どうもこの雑誌が目指していると思しき「斬新さ」とズレてしまっているように思える。もう一工夫欲しいと思うのだが。
W.R.    
グイン・サーガ

栗本/柳澤
吉本 確かに過不足なくグイン・サーガの世界を描いているとは思う。それにまだ始まったばかりなので、どうこう言うには早いとは思う。だが、もう少し「何か」が欲しいようにも思う。柳澤ならではの「何か」が。
W.R.    
パラノイアストリート

駕籠真太郎
吉本 ギャグの街とは…。ある意味最後にたどり着くべき街ではなかろうか。駕籠が関西ギャグに傾倒していることは周知のことであるわけだから。それをこの段階でもってくると、今後の展開が厳しくなるのではなかろうか。ちょっと心配。
W.R.    
刀神妖緋伝

新谷かおる
吉本 アイパッチの女の子に番長タイプの男。ため息が出てしまうようなキャラクタではあるが、和田と違って新谷は現代性にしがみつこうとしているさまが伺える。「ヒカ碁」もどきの設定、背後にエロを含みこんだ展開…。重要なのはその姿勢。
W.R.    
ブルー・レスキュー

菊地/高山
吉本 次第に明らかになる背景。ちょっと展開が極端か、と思わなくもないが、方法論そのものは端正。その細やかさに好感を覚える。
W.R.    
炎のラビリンス

此路あゆみ
吉本 実に位置付けが中途半端。OVAの紹介の役割を果たしているわけでなし、かといってキャラクタに魅力があるわけでなし。OVAは限りなくくだらなさそうで面白そうなのだが、漫画からそれが感じられるわけでなし。よくわかんないです。
W.R.    
そして船は行く

雑君保プ
吉本 やはりノリがいいのがいい感じ。二人が追い求めるものについての伏線もきちんと張られている。ご都合主義的な展開をうまーくカバーして、漫画的に面白くしているのが良い。
W.R.    
牛乳時代

福島鉄平
吉本 実にタイムリーなネタ。学校の先生をシニカルに描く描写の方法がいい。子どものヒネた視線に対して意識的なのも注目できるところ。確か四季賞出身だったと思うが、上手く伸びてくれるといいのだが。
W.R.    
串やきP

SABE
吉本 「チンチロリーン」という擬音…。「ズキュウウウウン」(荒木)に匹敵する擬音ではなかろうか?
W.R.    
スカルマン

島本和彦
吉本 当然マリアも飛岡も復活してくるのであるが(断定)、堂々と二人の死を描いているところが流石。この瞬間では二人は死ななくてはならないのだ。コマ送りを思わせる静謐な表現も美しい。なんたる石ノ森テイスト!
W.R.    
魔法のエンジェルグルグリビューティー

和六里ハル
吉本 師匠のるるる先生に比べて、ややエロがエロになっているところが微笑ましい。そして狙い澄ましきったキャラクタ。破天荒な展開が予想されてニヤニヤしてしまう。ある意味、るるる先生よりも「純粋」なのではないか…と思っているもので。
W.R.    
ひっち&GO!!

永野のりこ
吉本 「モテモテ!?」に爆笑。それにベタフラでショックを受ける、という描写は切ないのではあるが、ヘタれきっているアンジローには妙にハマっている。面白い!「ひきこもり」をネタにしてこういう展開だから…やはりのりこ先生は凄えや。
W.R.    
韃靼タイフーン

安彦良和
吉本 ロシア革命の記憶を持っているらしいアナスタシア、ロシア海軍の強力な対艦ミサイル、動き出す味方の軍艦…。敵は強力だが、味方も秘密兵器を持っているところがいいじゃないですか。少年漫画的にワクワクする。この調子で徹底的にエンターテイメントで攻めて欲しい。
W.R.    
かみちゃまの電堂

たけだみりこ
吉本 暑くなると動かなくなるOSってどういうことなのですか?ユダヤの陰謀なのではないですか?
W.R.    
アタゴオルは猫の森

ますむら・ひろし
吉本 何がどうあろうと絶対に思い通りに動かないヒデヨシ。そうした存在が「こちら側」に属し、あまつさえ中心として描かれている。方法論的には破格なのだが、だからこそ詩的存在であるテンプラや周りの趣味人たちが生きてくる。危うい構造ではあるが、それを上手くコントロールしているのだから興味深い。
W.R.    
太陽革命! 夏のお嬢さん

宇夢和実
吉本 10 おお、おおおお!ブリュンヒルド(眼鏡Ver.)可愛すぎ!!!!
転生ものもジェンダー入れ替えものも、比較的ありきたりなネタとして漫画界に存在してきた。しかしここでは、着目点が異なっていて実に新鮮に見える。体の性と心の性が異なってしまっているブリュンヒルドの苦しみが、実に丁寧に描かれているのが良いのだ。そしてそれに能天気だが素直な太陽の好意と、前世恋人同士だったという設定がからんでくる。ブリュンヒルドは様々な要素が原因で屈折しているが、少しづつそれが解消していくさまが見えるのだ。その過程の好ましいこと。そして絵の可愛さがさらに魅力を付与している。とにかく素晴らしい出来。この作品を連載せずして、メイン戦力として扱わずして、どうするというのだろう?
W.R.    
刑事DX

きのまさふみ
吉本 ちょっとコテコテに過ぎるような気もするが、全体的に悪くないギャグだと思う。次の作品に期待。
W.R.    
PHANTASMAGORIA DAYS

たむらしげる
吉本 やはり徹底的にファンタスティック。スターイーターを倒すためには最高の宝石が必要というシチュエーションにポエジイを感じる。
W.R.    

<総評>

吉本 連載の主力として設定しようとしている作品にやや元気がないように感じられるが、脇を固める作品に魅力があるので、結果として全体的にまとまって見える。ただ、これは良い状況ではないので、テコ入れが必要だと思う。ベテラン作家の扱いも含めて、ちょっと見直しが必要かもしれない。
W.R.  

<ベスト>

吉本 だから絶対連載しなくっちゃダメだってばさ。「太陽革命」
W.R.

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:05 JST