ガロ 2000年3月号

ねこぢるうどん

ねこぢるy
吉本 ころぺた号そっちのけで、殺伐とした避難生活が描かれているのが良い。大災害の避難生活などこんなものなのだろうな。ナマの人間のエゴがぶつかり合っているのがいいじゃないですか。
久遠    
大阪ダンジョン

川崎ゆきお
吉本 現実と遊離してしまっていることに自覚的な猟奇王。猟奇王に分からないようにその生活を支える忍者。そして忍者の店子の、これまた生活力が絶無であろう謎の青年。今まで存在がわからなかった地下のダンジョンの登場によって、猟奇王世界が広がっているじゃあないですか。MSUIゴシックを無造作に使ったタイトルがまた川崎先生らしいじゃないですか。これだよ、こういう作品を待っていたのだよ。
久遠    
伍右衛門屋敷

大越孝太郎
吉本 手打ちそばが出来あがるまでの時間をつぶすために、見世物屋敷であるところの伍右衛門屋敷に入るカップル。そこで繰り広げられる、大越風にソフィスティケートされた見世物小屋の世界。いみりのように猥雑でもなく、丸尾のように土着的でもない。混沌の力を生かしながらも、多くの人にウケるように、上手く毒抜きをしている。「フィギッシュ」掲載作品のように、一般青年誌やビームのようなマニア誌でもまれたのが吉と出ているように思う。
久遠    
招く猫

やまだ紫
吉本 単発では破壊力が弱いのは相変わらず。この人の作品はやはり単行本で連続して読みたいもの。生活の中に着目するという視点は素晴らしいのだが。単行本が出ないわけがないので安心してはいる。
久遠    
ヨーチA

Q.B.B
吉本 今度は街に出るヨーチA。目の前にしているヨーチAを漫画にしようとする漫画…という複雑な重層構造(別名オシシ仮面パターンともいう)を持っているのが微笑ましいじゃないですか。
久遠    
俺は大丈夫

蛭子能収
吉本 あれ?妙に力が入っているじゃないですか。昔のイヤーなタイプの蛭子作品を彷彿とさせる論理性の欠如にクラクラくる。意図的に論理性の欠如を使っている様が見えるところに好感が持てる。面白いじゃないですか。
久遠    
産院ミドリゴ

キクチヒロノリ
吉本 今までちょっと抑えた展開だったが、なりふり構わず(?)いつものキクチっぽくなっている。まがまがしい呪術的要素の導入も心地よい。"All along the watch TOWER records"だものなあ。登場人物も問答無用で変な人ばっかりなのが面白い。
久遠    
テロル3 解剖室

三本美治
吉本 うーん!これは残念。唐沢俊一/ソルボンヌ景子の漫画そのまんまじゃないですか。恐らくは自分で見に行ったのであろうが、すでにおんなじ主題の漫画が存在するので(しかも同じサブカル系の文脈で)インパクトが弱くなってしまっている。もっと生の躍動を!
久遠    
いぬちゃんの20世紀

加藤賢崇
吉本 格段にグレードアップしたことが分かる画面。以前のジャギーバリバリの画面も悪くはないのだが。こっちもいいじゃないですか。もひとつ、この作品を味わうにはやはり「ビーストウォーズ・メタルス」も一緒に見ることが必須であることが分かる。
久遠    
ペンギンペン太ペンペン日記

カモノハシ悠二郎
吉本 鴨沢。単行本が出るそうですね。
久遠    
ちゃらいぜ!吉田くん

スージー甘金
吉本 この辺のタイニーな作品三連発は、上手く箸休めとして機能しているので好き。
久遠    
父のいなか

みぎわパン
吉本 シリーズ化されているせいか、みぎわが持っている一種の「呪力」が強く発揮されているように思う。好き嫌いは大きく分かれるのだろうが、絶対値は高い。
久遠    
恐怖博士の花嫁

逆柱いみり
吉本 10 今月も魅力炸裂。しょーもない特攻兵器(伏竜)の解説が、上手くオハナシに取りこまれているところなぞ、背筋の寒くなるような感覚がする。そして花嫁が繰り出すイヤーな気分になるような恐怖、というより嫌がらせ。大ガマとなめくじ猫…。目くるめくような感覚は、決して他の人の作品では味わうことができない。オンリーワンの作家。
久遠    
漂流教師

パルコ木下
吉本 教師=サービス業ということは、それに携わっている人なら当然分かっていることで(分かってない人もいるが)、あったりまえのことである。塾の先生なども含む世の教師たちは、あえてそれを言わないようにする。なぜなら言ったところで何も変わるわけではないし、言うことによって簡単に言い訳になるからだ。それを前面に出す、その段階で底が知れてしまうのだ。パルコはこの作品で多くの人には知られていないであろう教師=サービス業という視角を示し、オハナシを形作ろうとするが、いかんせん底が限りなく浅いので説得力を持たないものになっている。またそれくらいの誤魔化しで少女が改心するという展開も安易この上ない。まあ小学生だから可能性はなくはないが、そんなに簡単にヒネた心は解きほぐせるものではない。世の中をナメて生きてるのじゃないの?この人。教員経験があることをかさに着すぎているんじゃないの?そんな経験ひけらかしたってなんの特権も得られないと思うのだが。恐らくはパルコの作品が皆おしなべてヒドいものであることもこのことに関連するであろう。勘違いしたニセモノめ!
久遠    

<総評>

吉本  今回は掲載作品のテンションが高かったので楽しめた。ガロは生え抜きの作家だけでも強力なラインナップになるので、どんどん出身者を集めて描かせるべきだと思う。現在では女性らしい繊細さを持った作品がやまだ紫のものしかないので、そちらを強化すべきだとは思うが。
 ただ、やはりサブカルを主導しようという意図が前面に立っているのが気になるところ。写真特集に加えてガロカメラ。登場する写真家もいかにもな人選。山中潤まで登場ですか。70年代に由来するサブカルや90年代のサブカルを保存し、その牙城になるという選択はアリだとは思う。ただそれに固執するあまり、かつてのサブカル至上主義になっては危険だと思う。サブカルとて時代によって変遷するもの。時代と切り結んだ前衛性を探求して欲しいものである。
久遠  

<ベスト>

吉本 いみりに並び川崎ゆきおも私にとって無条件でベスト。そこで別の作家を選ぼう。随分練れた感じがする大越にしよう。一般性と特殊性の幸福な結婚。
久遠  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:05 JST