ホットミルク98年8月号

<総評> 

●吉本 ひとつひとつの漫画は結構読めるのだが、全体を通してみると散漫この上ない。飛び抜けて読める漫画もないし。その辺の理由は「雑誌時評」最終回に書かれているとおりで、編集方針の二転三転にある。これじゃあ駄目だよ。苦戦するのもさもありなん。…ということで、ホットミルクは今回で見限ることに大決定。見るべきものがないんじゃ取り上げても仕方ない。
●久遠 もうダメだね。乗る船を間違えたね。次の乗り換えを考えなくちゃね。

 

    吉本松明 久遠永遠
カラテカ

おおしまひろゆき

「人生はつまらない」とため息をつく少年の前に、「そんなときは空手を習え!」と破廉恥な格好をした女が現れる。人呼んでおぱい子… 7 と、キャラクタの造形、ストーリーともに実に大馬鹿でよろしい。こういう作品を描くのでは、と期待していたら全くその通りの作品を描いてきたので嬉しくなる。ただ、逆に言えば「こうした作品しか描けない」ということなのかも知れない。抽象化の流れに完全に乗っているところ、やや不安ではある。 7 よいっ。このノリが続けば、と思ったのだけどねえ。
わんわんわん

たかしたたかし

えみ子はお金持ちの真葉の家に遊びに行く。そこには4頭の犬が。犬と仲良くなりたいえみ子だが、なかなか難しい。そんなとき真葉は「この薬を飲んでごらん」と薦める。 6 内容は結構ハードな獣姦&メンタルSMもの。内容と絵柄のアンバランスさには確信犯を感じる。 6 俺様ちゃんも、友達のアザラシのぬいぐるみに「にょーへ」と「ルクレツィオンヌ」という名前を付けてあげたのに、その名前を呼んでくれません。どうしてでしょう。
JUDGEMENT ROAD

智沢渚優

冒険者のパーティーの目的地は実は地獄への入り口だった。前世で冒険者達に犯された少女が復讐するために彼らを呼び寄せたのだ。唯一前世で彼女の兄だった戦士だけは生き残るが… 4 流石職人。やってくれます。内容は先月期待していた通りのへっぽこオチ。ダークな世界を志向する傾向はいいのだが、それを上手く表現できず、ありきたりのカタを使って表現しているのが分かる。もどかしいのだろうなぁ。 2 ファンタジィやっても、何やっても同じですねえ。
万物同サイズの法則

茅薙隆裕

学校の先生が年端もいかない女の子と愛のあるセックスをする、というお話。私は怒らないがザッパファンが怒るかも知れない、そんな内容。 3 ロリを取り上げることや画面構成は悪くないが、全体の構成はお世辞にも良くできているとはいえない。尻切れトンボだあね。 3 最低だねえ。こんなん描いてないで、鉛の飛行船つくれっ。
Sollen

山文京伝

完全に性の奴隷と化した摂子は、かつての敵であった政治家にも従順に従う。一方、警察は調教施設の捜索にはいる。 5 エロの描写は流石といえ、漫画的「引き」も良くできている。いかんせん私のセクシュアリティに合致しないので点数は高くないが、悪い漫画ではない。 6 こんなあからさまな「爺や」を使っている政治家いや、金持ちとかもだが、今時いるのだろうか。
新世界より

あさぎ龍

主人公の男の目の前に、いきなり町の守護女神であるデメテルが現れる。「今私とセックスしないと、おまえの彼女は死ぬぞ」と。 3 とまあそれだけの作品。エロ漫画はエロ描写だけで抜くにあらず。 4 新世界っていうのは、アメリカのことだろうがっ。何故アメリカで、ギリシャ神話なんだよっ。
ニルヴァーナ原則

河内讃良

愛のない相手の子供を身籠もってしまったOL。妊娠を知った途端彼女の前に一人の女の子が現れる。「ヒトゴロシ」と。 8 エロの描写は細密で良くできている。そして追いつめられるOLの心理、人間の狡さ、冷たさが非常に上手い構成によって描かれている。減点材料があるとすればタイトルのみか。こういう実力のある新人を登用するところは良いのだが、雑誌全体における位置づけは非常に曖昧である。 4 快楽原則ニルヴァーナ原則死の必然性すなわち光生きてはいずに動いている生命の象。
Hitch Hiker

蒼色えれじ

アキは二日前に「俺」が拾ったヒッチハイカー。彼女は名前以外何も話さないが、実に魅力的な目をしている。二日目に彼女は一言いう。「セックスしようか」と。 6 魅力的な瞳は実に良く描けている。それだけで良いといえばよいのだが、それだけといえばそれだけ。エロ描写は良い。もっとオハナシを練った次回作に期待。 3 なんなんだこのマンガは、一体。
ビビッド!プライマリーナイツ

きみづか葵

魔女っ子3人組がみかんを異界に誘おうとした理由は、異界で起こった戦争の調停をさせるためだった。一方、こちらの世界に異界における戦争相手、機械化集団の手先がやってくる。 5 と、今回はシリアス寄りの展開のため馬鹿馬鹿しさは弱い。 7 陸上用スパイクの裏側が、あんなののわけないだろっ。そんなところにスパイクついていたら走れないぜよ。
あめのちはれ

宇佐見渉

主人公・望は雨が大嫌い。雨の日のつまらない学校の帰り、傘も差さずに空を見上げる少女に出会う。 5 それまで幼児体型だった女の子が、エロシーンになると途端に頭身が増えるのが面白い。この人は雰囲気の作家だといえる。絵やオハナシに独特の雰囲気があるがため。またやや骨抜き系入っている。ただ、この雰囲気になじめない人もいよう。 4 雨って良いじゃないか。アンニュイな気分にひたっているという自分に浸れて。
Happy Present

路杏るう

主人公・きりんはお兄ちゃんのことが大好き。誕生日の今日もお兄ちゃんのことを思ってオナニー三昧。その最中にお兄ちゃんがプレゼントを持ってやってくる。それは可愛い男の子だった。「たまには本物を」 5.5 絵柄に独特の癖があり、良い意味で引っかかる作品。絵は今風であるが、良い方向に洗練されている。オチが読めるという欠点はあるが、全体に「読める」作品。 4 うむ、まあ、お約束というヤツだね。
ぷちプチトラブルヘルパー!

A'sまりあ

検定料にも事欠く魔女っ子姉妹は、小遣い稼ぎのためにバーチャル・リアリティを使ったオンラインゲームに挑む。ラスボスまで進むふたり。ところがメイン戦力のナスカはチーカの作った薬を飲んで眠ってしまう… 5 ちゃーんとギャグになっているのは良い。結構面白い作家ではないですか。下手にエロをやっちゃあいけない例。滅茶苦茶面白くはないが悪くもない。 4 クリス・クロスだねえ。
I Love I

KICO

蒼は弟、青は姉。ふたりは二卵性の双子だが全く同じ顔。ふたりはセックスにいそしむがそれには訳があった。 7 さすがに漫画賞の佳作作品だけあって、ナルシズムを上手く描いたオハナシは良くできている。絵柄も洗練されて、読んでいて心地よい。エロ漫画はエロ描写のみにて抜くにあらず。この作品はその点でアタマに効く。観念的エロの深い境地に達しているところは全く侮れない。ただ、エロを描くには絵柄が洗練されすぎているように思う。次回作に期待。 5 絵が弱い。男と女って10%しか違わないのか?
魔王の子供達

舞井武依

一家のところに特報レポーターが特ダネを求めてやってくる。 3 何も言うことはありません。 4 うーん、アレだね。エロマンガの巻末カラー(エロなし)の中では、阿吽のレディリンクスが一番だね。

<ベスト>

●吉本 「ニルバナ原則」と「I Love I」はどちらも良い漫画である。ひとつ選ぶとなると…私はナルシストなので後者かな。
●久遠 今回は、カラテカ以外にないでしょ。それにしても、エロ度の低いこと。

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