快楽天 2000年3月号

Miss CLOSET

陽気婢
吉本 陽気婢という作家は非常に微妙な作家である。一方で『フレックスキッド1』のような危険きわまりない作品を描くと思えば、もう一方で読者を唖然とさせるような作品も描く。今回の作品はいじめられっ子と、かれが「飼って」いる猫娘を中心に描かれているのだが、モノローグを基調とした説明的な語り口と、一方で説明不足/問答無用のご都合的展開が特徴となっている。いきなり怪しいことこの上ない。すでに描かなくても食っていけそうな塩梅なので、すべてに目を配った作品製作は出来なくなっているのかもしれないが。もしこの調子で続けるのなら、逆の意味で期待できる作品かもしれない。
久遠 ミルククローゼット?ナルニアへの扉?っちゅうか、よーきひの命中率って、20パー位じゃない?
そこにいた男

朔ユキ蔵
吉本 飛び降り自殺の名所で、少女は突然現れた男に犯される。母の名前を呼ぶ男に。ここで描かれるのはきわめて男性的な煩悶。欲望と思いこみにしたがって行動してしまった男が自分で自分を裁く姿。朔はお馬鹿な作品も良いのだが、こうした人間存在に対する問いかけも非常に深いものを持っている。理性や知性という言葉は人間の一面をあらわしているに過ぎないということが良くわかる。
久遠 あー、学校の先生って、最低だね。教育実習辞めようかな。(逃避)
阿佐ヶ谷腐れ酢学園

SABE
吉本 フード女。くせのあるキャラクタが上手く動いている。実は今一番面白い作品じゃないの?頑張れ!
久遠 あ、なんか、スラムダンク思い出した。描きやすい!ってやつ。
夢の中のキス

かるま龍狼
吉本 実のお母さん(巨乳)に思いを寄せる息子さん…まあ、たまにはこういう普通のオハナシもいいでしょう。次はくだらなく/フェティッシュに攻めてくれますよね?
久遠 あれ?ゴローダイナマイ!って、何時のまに終わったの?ってゆうか、ママ本はどうなったんだー!
スクール

OKAMA
吉本 今までのしっぺ返しを一気に食らう孝幸。セックスなしにはこころの安定をはかることができず、ついには…。いやあ、いいですなあ。実に実にビターな展開。セックスのし過ぎで脳が溶けてしまったかのような迫力があるじゃあないですか。女たちの吊るし上げを食らうグイドを彷彿とさせるところも良い。打ち上げ台まであと少し!
久遠 なんか、仕事の手を伸ばしてますねえ。でも何故に富士見の挿し絵?
天国のレシピ

月野定規
吉本 友達の家で食事をご馳走になる主人公。美しいお母さんにメロメロになる。あとはお母さんもご馳走になる、という猫度の高ーい展開。それはそれでいいのだが、やっぱりおーい!という感じ。たまには息抜きも必要ということだろうか。
久遠 きっと、リトルラバーズ(糞)がいなくなったのが響いているんだよ。リトルラバーズなんてやっていたら・・・(トラウマ)
天界公路

琴吹かづき
吉本 スケールの大きなオハナシに逃げずに取り組んでいる点、登場するオナゴが皆タイニーなメンタリティを持っている点、それでいてカラダが濃密に育っているというアンバランスが良い。もうすぐ終わりなのですね?
久遠 あ、死んだ。こいつ。
ただ秘めよ

神寺千寿
吉本 神寺の恐るべきところは、ハイエンディカリリィなぷに絵でビターなオハナシ、それも完成度の高いオハナシをやるところにある。今回のオハナシは一見男の子に見える女の子を配することによって、オハナシの切なさを増すことに成功している。男でも女でもないように努めているのだが、でもやはり最後の瞬間で女になってしまうという劇的な転回に打たれる。やべえ!
久遠 あー、痛いですねえ。少年のような少女っちゅうのも、良いですねえ。半分少女?
温かな日

夏蜜柑
吉本 夏蜜柑のヤバいところは、病を得ている女の子を実に効果的に使うことである。以前の『プログラムイド』もそうであったが。病、という表象は不可避の別れを想像させるために最初の段階から切なさを呼び起こす。ここではその別れを海に結びつけることで、透明でかつ深い悲しみを強く引き起こしている(津野裕子『喜見城』参照)。直接的なセックス描写がないという禁欲的な描写も静かに人をうつ(やまむらはじめ『肩幅の未来』参照)。限りない悲しみを秘めながらも、『温かい日』というタイトルをつけることができるところも戦慄する。隔月ペースで良いから確実に作品を発表して欲しいところ。
久遠 今までの傾向を見ると、絶対「同級生2」では「桜子」だった人だよ。(古い)バモラ!(古い)
お兄ちゃんズ▽

町野変丸

吉本 5人のお兄ちゃんが登場します。以上。という感じなのがいいですな。最後の人を食ったオチが最近冴えているのもいいじゃないですか。
久遠 ミニマルまんが?
Paranaoid

華沢れな

吉本 ついに犯人登場。しかしそれも一筋縄じゃいかないのがグットくる。快楽殺人の魅力!
久遠 そうですか。なんか、ソフ倫を脱退したエロゲーでこんなん有ったねえ。

<総評>

吉本 快楽点という雑誌がどこに向かうべきか、ということが良くわかる内容。朔、神寺、夏蜜柑がきわめて重要な役割を果たしている。一方でハード系へ向かう方向も忘れてはならないと思うが(これはエロ漫画全体に言える事でもある)、人間の持つ「エロ魂」を刺激することを突き詰める方向も重要だと思う。ぜひこの調子で。
久遠 いぎにゃーん、なんか久しぶりに「快楽天」っていう感じになったねえ。

<ベスト>

吉本 今回は佳作ぞろいなので難しい。中立を狙ってSABEにしようか、とも思うが、ここはやはり夏蜜柑『温かい日』にしよう。喪失は古臭いドラマトゥルギーの契機であるが、今でもそのアクチュアリテは高い。
久遠 あー、えー、ただ秘めよ、に。でも手塚足首は禁止。

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