ヤングキングアワーズ98年10月号

<総評>

●吉本 連載陣が安定しているのに加えて、やまむらはじめ、大石まさるなどの素晴らしい読みきり。よい漫画が少ないとお嘆きの方、この漫画雑誌はお勧めですよ。
●久遠 ホントに面白いなあ。読めるマンガの比率では、ナンバーワンかもしれん。

 

    吉本松明 久遠永遠
トライガン・マキシマム

内藤泰弘

約束を破り再びヴァッシュを襲おうとする雷泥・ザ・ブレード。だがヴァッシュの連れのウルフウッドはそれをためらいなく射殺する。 7.5 それはそれで予想しうる最良の解決の一つなのかもしれない。ヴァッシュのような「誰も殺さない」方法は、本当に強くないと不可能なのだから。二つの方法論を対立させているのが好もしい。 7 おいおい、ここはやっぱりお約束のミルクだろー?そうすりゃあ俺様のミルクを・・・てそりゃあ徳間の第一話でんがな。
HELLSING

平野耕太

HELLSING本部に侵入したグール軍団。状況は圧倒的に不利だが執事のウォルターは余裕しゃくしゃく。 7 この辺はお決まりのパタンだが見せ方はさすがに上手。ページ数が短いのはやや減点だが… 8 9月24日には間に合わないでしょ。ねえ?
ツベルクリン戦線

島田英作

5ページのギャグもの。あからさまなヘルシングの代原。 3 内容的には…絵的にもオハナシ的にも…つらい。まあしょうがないが。 2 だってげんに5ページ落としているし。
エクセル・サーガ

六道神士

車に轢かれて記憶を失ってしまったエクセル。「私は誰?わかりません!ここはどこ?さっぱりです!」 7.5 一方でシリアスな展開になっているところが実に侮れない。いろいろ伏線はあったがこういう形で生かされてくるとは。ノリ的にもオハナシ的にもかなり盛り上がってきていて目が離せない。「いい作品です」。 9 8月号の先端恐怖症というのは、伏線だったのかっ。しかし謎の薬物中毒というのも、タイムリーでやばいネタだなあ。
コミックマスターJ

田畑由秋/余湖裕輝

人気漫画の登場人物を神のごとく操る漫画原作者・釈迦丸。彼は信奉者たちの一喜一憂を見るために人気キャラクターを牛に変えてみたり、避けられぬ死を宣告したりする。あまりのストーリーの激動に熱狂的なファンは飛び降り自殺をはかる。それに対抗するJ。 7 現実にはここまでのことはなかろうが、漫画はかくも強い影響力を持ちうる。加えて今回のポイントは、釈迦丸がJを乗り越えるところ。そこにあるのは脚本の田畑のプライドか?いや、愛であろう。やや尻切れとんぼながらそこが一貫しているところがよい。 9 いいなあ。熱いなあ。この頃男度の高いマンガが少なくなっているから、こういうの貴重だからなあ。 いいなあ、火山弾。
うさぎちゃんでCue!

佐野タカシ

今回はフリーマーケットのオハナシ。買ってくれた人には尻尾をナデナデさせる、という作戦は大人気を博すが、コワモテの兄ちゃんがすべてを買い占めてしまう。 9 いや、確かにどういう構造になっているかわからない(スカートの上から生えている)ウサギ人間・ミミカの尻尾はナデナデしてみたいよなぁ。こういうお馬鹿なオハナシを臆面もなくやれるところはさすがである。楽しそうにしているところもポイントが高い。文句なし。 8 何も考えないで描いてそうだなあ。でも、クワガタを2年越冬させるっていうのもすげえなあ。
ブルヴァール

日生かおる

晴子は自転車で山を飛び降りたという「伝説の女」を捜しているという男、片山に出会う。実はそれは晴子のことなのだが、それを口に出すことはできない。そして少しづつ心が動いてゆく… 4 オハナシそれ自体は悪くないとは思う。が、ここにも「理系男性の願望」によって作られた世界があって、やや鼻についてしまう。ちょっと閉じてるのだよなあ。 4 そういやあ、大分前のジオブリーダーズに出てたなあ。
絶対音感調律師

高港基資

万引きを見つかってむしゃくしゃしている女の子。腹いせにピアノを弾いてみるがそれは収まらない。ところが玄関をたたく人が。「お宅のピアノは調律が狂っている。ぜひ私に調律させてほしい」と。 6 なかなかよくできたサスペンスである。ただ調律師の造型がややありきたりで(カリカチュアライズされすぎていて)いかにも、という感じ。もっと普通の人だったらもっと怖かったであろうに。 4 いまはやりの絶対音感か。にしても、あんまり怖くないぞ?
Kazan

宮尾岳

砂漠の町にたどり着いたカザン。そこで砥ぎ師の老人と出会う。カザンは剣を砥いでもらい、岩をも両断する鋭さにしてもらう。がカザンは言う。元に戻してくれ、と。 5 絵によって構築された世界が感じられる。少年漫画の、徳間的な少年漫画のテイストが感じられてよい。オコサマが知ったような口を利くのはややいただけないが。 5 どーしてあれしかない刃であんなに攻撃力が強いンだっ。なんか納得いかん。
だいらんど

がぁさん

"お昼の国"のスローテンポにキレたチンピラの正は、自分をこの世界に呼んだという"夜の国"の王に会いに行くことを決意する。ぬいぐるみの姫と道化を従えて…。 8 毎回毎回繰り広げられる逆悪夢のごとき世界。それを意地でも描いてやるというがぁさんの強い意志が感じられる。いったいそこにはどんな心理が潜んでいるやら。底知れぬ闇のようなものが感じられて…それはホワイト・アウトした「白い闇」かも知れぬが…背筋が寒くなる。これも見逃せぬ連載。完結してくれよ! 6 凄いなあ、どういう脳の構造がこういう話を作り出すんだろう。一度見てみたい物だ。
最後の夏Second Take

やまむらはじめ

主人公・工藤が焦がれているのは友人の彼女だった水無港。彼は海で黒服を着た彼女に再会する。 10 構図のとり方、コマの割り方が絶妙!で、揺らぐ心が切ないほど伝わってくる。漫画はネームだけによって語られるものではない。漫画もまた、当然のことであるが、解釈するものである。それを再認識させてくれる挑戦的な作品。内容も心に染み入る傑作。ありきたりなオハナシも描き方によってここまで素晴らしいものになりうる。まだ漫画は大丈夫。こういう作品を生み出す意欲的な人がいる限り。 8 うーん、いいなあ。俺様ちゃんの知っている漫画家の中で、暗い瞳を描く漫画家ベスト3にはいるね。それにしても、独特の瞳、そして話と、良い読み切りを描く人だなあ。
DIARY

大石まさる

末期ガンに冒された主人公の女の子は、自らの生を確かめるためか、病院を抜け出し昔住んでいた山里へ向かう。河原でキャンプする主人公。そして彼女は「彼」に再会する。 7 徹底的なモノローグで語られているのはある種の閉鎖性の現れだが、伸びやかな絵がそれをカバーしている。ややオハナシに合致していないところはあるが、空気やさわやかなにおい、音−音楽を感じさせる絵だと思う。よい。 7 何故にこの人は毎回読み切りなのだろうか。連載、というか、長編で載っても良いと思うんだけどなあ。
夜の燈火と日向のにおい

鬼魔あづさ

夜になり、幽霊たちと再び遊びに出る主人公たち。 5 すんません、絵はいいと思うのですが、オハナシはぜんぜんわかりません。以前からこの人はこうだが… 5 途中から読んだので知らなかったが、こいつら幽霊だったのか。そうか。
ジオブリーダーズ予告編

伊藤明弘

OVAの予告編。 - この人の偉いところは映画をたくさん見ていること。ちゃんと映画的な予告編になっていてこちらもニヤリとする。見なくちゃならんか、OVA。 - うーん、田波君と成沢には過去があると思っていたんだけどなあ?

<ベスト>

●吉本 コマとコマの間隔が実に雄弁に心理を語っているやまむらはじめの「最後の夏・2」にしなくてはならない。
●久遠 今月は、ホラーじゃない読み切り二つに後ろ髪引かれつつコミックマスターJに決めちゃいましょう。

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