2000年3月下旬

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2000年3月26日(日)

プチフラワー 5月号   小学館 <漫画・雑誌> 467円

 随分表紙の印象が変わってますが、中身は一緒なので安心です。今回は吉野朔実『グールドを聴きながら』が印象深い作品になってます。誰から見ても美人のクラスメイトに惹かれる地味な子、クラスメイトに愛憎相半ばした感情を抱く…というオハナシなのですが、独特な線と小道具の使い方…グレン・グールド…の使い方が良いのですね。心に残ります。後、圧巻なのは佐藤史生『魔術師さがし』。そうなんじゃないかな、と思っていたオチでしたが、それに至るシーケンスがしっかりしていたのでちっとも気にならないのですね。強度の名作です。『心臓のない巨人』も凄いものでしたが、これも相当なものです。読み切りのワタナベエミや遠藤佳世も読める出来。相変わらずの質の高さには感服です。読め!買え!

きみとぼく 5月号   ソニー・マガジンズ <漫画・雑誌> 467円

 すっかりこっちの世界にも馴染んで、「良いわ…」とデレデレしていますよ。今月は『お前が世界をこわしたいなら』が最終回を迎えてます。ペン入れされてないコマもありますが、繊細にオハナシをまとめていると思います。これを機に単行本を揃えようと思ってます。後、目立つのはやはり紺野キタ先生。前回の続きで、若い義父と女子高生の主人公、幼い妹をめぐる物語なのですが…これがまさに身悶えするような出来。私の昔の彼女が「忍ぶ恋だからこそ美しいんじゃないの」といっていましたが、まさにその通りだ(そうでない恋もありますが)と思います。ところで紺野キタ先生のページによると、5回くらいの掲載予定が2回で終わることになったとのこと。噂されている休刊でしょうか。気になるところです。テンション高いですよ。

アフタヌーン 5月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

 四季賞出身の真鍋昌平『スマグラー』の連載が始まってます。ひぐちアサ『家族のそれから』は最終回。…上二冊がテンション高いので、相対的にこっちを語る気力が萎えてしまうのですね。四季賞の読み切りもありませんし。悪くはないのですが…詳しくはクロスレヴュを。

マガジンZ 5月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

 「ネーヤのコスプレに無反応な者など 所詮は一般人(パンピー) わがアニ研には不要」と言い切るおたく先生の美しいこと!ちゃーんとこの人アニメを見ているのですね、しかも正当(?)に。あと、気になるのが『フリクリ』です。アニメもこんな調子だったらどうしよう、と気になってます。

ホビージャパン 5月号   ホビージャパン <立体・雑誌> 743円

 特集は当然PG Zガンダム。表紙の知恵理原型のカミーユ・ビダンがヤバすぎます。この人、最近ファーストガンダムを中心に恐るべきフィギュアを作っていますが、カミーユも凄いです。安彦良和の線をここまで立体化できる人は他にはいないでしょう。桂正和の「I's BOX」もこの人の作ったフィギュアが入っていたので、買おうかと思ったくらいですよ。
 あと、気になるのは「ガンダム・インテグラル」という連載が始まっていること。20年の歳月を経て、錯綜を極めているガンダムの設定のスタンダードを作ろうという試みなのですね。はっきり言って私はこの試みに深ーい憂慮を抱きます。自由な妄想のはばたきがあったからこそ面白かった「オラザク」が萎縮してしまうじゃないですか。またおたく先生が頻繁に行っている妄想も、枷をはめられてしまうおそれがあります。勝手に妄想すりゃ良いんですが、「ホビージャパン」という権威ある場でやっているのですから、影響力は大きいでしょう。もっと自覚的になるべきじゃないでしょうか?最終的には自らの首を絞めることになると思うのですがね。

コミック雑誌なんかいらない! 別冊宝島500号 宝島社 <漫画・ムック> 857円

 …えー、まんが好きの皆さん。コミック雑誌は要ります。単行本で追うだけじゃ駄目です。雑誌を買って、雑誌を応援することが、良い短編の掲載や新人発掘につながるのですから。みんなで積極的に雑誌を買いましょう。
 だいたい何?このタイトル。よくもまあ無神経に頭脳警察など引用できるものです。漫画を読みもしないくせに雑誌を要らないと吐かす。的確な「読み」さえ出来ないのに、その場限りの薄っぺらな言説しかできないくせに、キャッチーなことを書き立てる。PANTAがうたに込めた意味すら分からずに、言葉面だけで使う。あきれ果てたものです。
 えー、まんが読みの皆さん、この本を買っちゃ駄目です。この程度で満足していちゃ駄目です。漫画文化の堕落に手を貸す必要はありません。

Garden 古屋兎丸  イースト・プレス <漫画・単行本> 1111円

 待ちに待ってた兎丸の単行本。「コミックキュー」に載ってた作品を中心に、『裸体の起源』『月の書』『海から来た機械』などが収録されてます。注目すべきは「ガロ」に掲載され、長いこと書き下ろしの噂があった『エミちゃん』が、フランス綴じ風の袋とじで掲載されていることです。自分で切って読まなくてはならないという単行本は、漫画ではきわめて珍しいのではないでしょうか。まだそこは読んでいないので評価は保留しますが、文化的洗練度を高めようとする姿勢は良いと思います。

ノウノウハウ V.A.  ノウハウ企画 <漫画・雑誌?> 305円

 ヴィレッジ・ヴァンガードやパルコブックセンターだけで売っている、漫画雑誌というのかムックというのか同人誌というのかミニコミというのか。とにかく漫画がいっぱい載ったB6の本です。若手クリエイター(アート系)が、コンピュータを使って作った作品が載ってます。絵としてもオハナシとしても、ほとんどピンと来ないのが残念なところです。ティアなんかでよく見るビダイセーの作品集とでもいった趣なのですね。もちろん漫画とアートは高い親和性を持っていますが、「くふう」無しには面白いものにはなり得ないと思います。

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2000年3月24日(金)

無限のリヴァイアス 1   バンダイビジュアル <DVD> 5000円

 まともに見れないけど買うんです。買うったら買うんです。いや、買わねばならんのです。この作品は。ここで描かれている物語は、いま、ここにいる我々の物語でもあります。「現代/現在」に積極的に取り組もうとしているきわめて意欲的なアニメ。その衝撃度は実はエヴァよりも強いのではないか、と思います。TV東京系が見れない人、今まで見てこなかった人に宣言しましょう。*絶対に*このアニメは見なくちゃダメです。アニメが好きなら、アニメについて考えるなら、避けて通っちゃダメです。

コミック・ファン 8号   雑草社 <漫画・雑誌> 705円

 目玉は三つ。「インターネットで変わるまんが生活」「このまんがで笑え!!」「斉藤環×榎本ナリコ対談」です。まんがというメディアは今や社会に位置づけられるのを待っています。この雑誌は、その動きの活字版といえるでしょう。ちなみにWeb版はこのサイトとか「OHP」とかで、漫画家側からの訴えかけは砂や駕籠の作品だといえましょう。まさに過渡期なので、方向性が定まらないのは致し方ないところなのですが、試みそのものは続けられなければならないと思っています。…やっぱりもう少しまんが作品についての読みがいのあるレヴュが欲しいところだと思いますが。
 ちなみに私の書いた文章が載ってますのでチェックしてくださいね。よろしくお願いします。

キューティーコミック 5月号   宝島社 <漫画・雑誌> 476円

 産休の南Q太を除き、モヨコ、カホリ、春菊、キリコ、ないと、かわかみじゅんこと、オールスター戦の様相を呈しています。今までページ数が足りなかったがために載らなかった有力な作家を、惜しげもなく載せている感じです。すげえパワフルじゃないですか。あと、来月から編集がシュークリームから宝島社に変わるとのこと。どう出るか…、という感じです。詳しくはクロスレヴュをご覧下さい。

ステンシル 2000年春号   エニックス <漫画・雑誌> 476円

 「オトコノコにも読んでほしい、新少女漫画宣言!!」の文字がまぶしいステンシルも4号目。今回も意欲的な編集をしています。巻頭の天野こずえ『オセロゲーム』、時狩秘都『ラビッシュ!』など、ゴリゴリの少女漫画スタイルながらも、オトコノコにも訴える要素を持った作品(どこか男の子ゴコロを刺激する)もあれば、『ファイヤーエムブレム』『ドラゴンクエスト』などの、十分男の子向けとしても通用する作品を載せる。加えて、こがわみさき『リベンジ』、袴田めら『明日からは夢を見る』などの、少女漫画とか少年漫画とかといったカテゴリ分けをまったく無意味にするような激しい傑作も載せる。意欲的です。こがわにしても、袴田にしても、本当に恐るべき完成度を持っています。犬上すくねとか紺野キタとか好きな人は読まねばなりません。好きとか嫌いとかといった、少女漫画の基本的な構造を越えて、「成長するとはどういうことか」という人間の根源に向かっていくのですね。しかもそれに少女漫画の「皮」をかぶせて。背筋の寒くなるような作品といえましょう。
 なお、この雑誌も「少女誌」を目指してリニューアルするとのこと。どう出るか一面不安でもあり、楽しみでもありといったところです。

星界の紋章 作画:小野敏広 メディアワークス <漫画・単行本> 640円

 どんな仕事でもきれいに線を引く小野先生には感服します。ですが、本当に好きな仕事を、ノリノリでやって欲しいと思います。…まあ、こうした仕事があるために、『飲尿女神』や『アナル・ジャスティス』が圧倒的な迫力を持つのでしょうが。

クリスタルボーイ   エポック社 <アクションフィギュア> 特価2384円

 駄目です、駄目です!こんな完成度の高いフィギュアを作っちゃ!映画『コブラ』の、テレビ『スペースコブラ』の、あの男気にあふれたクリスタルボーイの姿がフラッシュバックしまくってしまうではないですか!!出来に関しては必然的に合わせ目があったりしますが、それを我慢すればもう恐ろしいほどの程度に達しています。

HGUC ゴッグ   バンダイ <立体・インジェクション> 特価560円

 渋いです。ズゴッグに続いてゴッグ、というラインナップも渋すぎます。特価560円というのも渋いです。

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2000年3月23日(木)

カルバニア物語 1〜4 TONO 徳間書店 <漫画・単行本> 各533円

 昨日の約束(?)通り。カルバニア初めての女王タニア、美貌の公爵候補で、活発さではそんじょそこらの男に負けないエキュー、長い赤い髪の公爵ライアン、やり手のバスク領領主タキオなどなどが繰り広げる王室コメディ(カバーより)。コメディとしてきちんと成立しているだけでなく、三つの徳目があるのが良いです。第一は登場人物の造形が非常にしっかりしていること。内に深い悲しみを秘めたライアンなんかはグッと感情移入してしまいます。二つ目はジェンダー論に踏み込んでいるところ。徹底的にペチャパイ(懐かしい表現)で、ドレスなどすぐに破いてしまい、乗馬も腕っ節もたいていの男より勝っているエキュー。ですが単にオスカルの様に与えられたジェンダーに反抗するのではなく、胸にパッドを入れてドレスを着たりもする。柔軟な姿勢が心地よいではないですか。そして第三にエロが上品に含意されていること。美少年フラン、同性愛者ライアン、性的なことに興味を示すタニア女王…もうのめりっこみぱなしですよ!

万事快調 駕籠真太郎 B.S.P <漫画・単行本> 1300円

 予定表にも載っていなかったいきなりの刊行。うれしい誤算です。内容は95年頃の「コットンコミック」に載ったものです。へえ、随分昔から連載していたのですね。内容はきわめて難解で、読者に対して挑戦しているさまがアリアリと分かります。今の作品と比べて、真っ正面から読者に謎を掛けているように思います。読解に教養がもの凄く必要なので、この作品にきちんとついてこれる人は本当に少数でしょう。まあ、ここでの習作があったからこそ、現在の優れた作品があるのだと思います。

ハッピーニュース 井ノ本リカ子 松文館 <漫画・単行本> 571円

 ホモエロ本です。井ノ本といい、タカハシマコといい、最近男性向け女性向けを問わずエロ漫画で活躍している人に注目しています。ちょっとエロがたどたどしいところがあるように思いますが、やっぱり「ホモエロは良いねぇ…」と思います。

なぁゲームをやろうじゃないか! 桜玉吉 講談社 <漫画・単行本> 714円

 おなじみ玉吉先生の「アフタヌーン」連載作品です。面白い点としては、毎月プレゼントがあった部分に、玉吉が書き下ろしを加えているところ。酔っぱらいながらライブで書いているのですが、途中ヒロポンが登場したりしてスリリングです。再婚してないことも明かされて「ありゃりゃ」という感じ。ゲームと関係ないネタを展開していたのはこの単行本化のためだったのですね。そこまで考えておられたとは!

リーマンギャンブラーマウス 1 高橋のぼる 講談社 <漫画・単行本> 505円

 「モーニング」連載のギャンブル漫画…というのでしょうか。とりあえず扱っているのはギャンブルですわな。ですが「なにか」が違うのですね。是非とも読んでその「なにか」を感じてもらえればと思います。

ヤングアニマル 7号   白泉社 <漫画・雑誌> 248円

 『ベルセルク』『キルケーの豚』の連載が再開しています。代わりに「愛人」が休み。注目すべきはたくまる圭『一七歳』。町で出会ったソープ嬢に惚れ込む高校生。かれは本気でソープ嬢のことを愛してしまう。だが徹底的に力が足りない。「早く大人になりたい」とねがう…というオハナシで、青春の苛立ちがうまーく表現されています。詳しくはクロスレヴュをご覧下さい。

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2000年3月22日(水)

チキタ☆GUGU 1 TONO 朝日ソノラマ <漫画・単行本> 760円

 「ネムキ」に連載中の作品です。妖しつかいの家のチキタは、七変化の妖怪ラー・ラム・デラルに「飼育」されている。かれは人食いの妖怪にとっては死ぬほどマズイ(美味しくない)存在なのだが、100年生きるとこの上ない美味になると思われているのだ。ラーとともに不思議な出来事や妖怪たちに出会うチキタ…というのが基本的なスジです。TONOの他の作品に比べると、腐乱死体とか逆吊り死体とか鳥の死体とか腐乱した魚とか出てきて「ぐげ」となりそうですが、いつしか互いがかけがえのない存在になっていくチキタとラー、トリックスター的な存在のクリップ、人間を「食料」としてしか見ていない妖怪の存在、次第に明らかになる大きなストーリーと、どれをとっても魅力的です。残酷すぎるくらいが逆にいい感じといえましょうか。次第に意図的に美少年になるチキタもまた可愛くて良いのです。今までこの作家に気づいていなかったのを残念に思います。早速明日「カルバニア」を買ってこなくっちゃ。

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:47 JST