2000年9月中旬

戻る


2000年9月27日(水)

放送禁止歌 森達也 解放出版社 <一般> 1800円

 かつて、放送禁止とされた歌がありました。三上寛「夢は夜ひらく」。なぎら健壱「悲惨な戦い」。つぼイノリオ「金太の大冒険」。赤い鳥「竹田の子守歌」。その中でも極めつけとされていたのが、岡林信康の「手紙」でした。部落差別を扱ったために特Aランクの禁止歌とされ、今でもメディアに登場することがない曲です。この本は、そうした放送禁止とされた歌についてのドキュメンタリーを撮ったディレクターによるものです。
 取材を進めているうちに、放送禁止とする制度はあるにはあったが、それはすでに88年には効果を失っていたこと、そして実は放送禁止歌と考えられてきた歌の多くが、制度的に指定されていなかったことが明らかになります。もちろん「手紙」も。そしてそうした歌の多くが、部落差別と関係を持ち、下手に放送すれば解放同盟の糾弾を受けるかもしれないから、という理由で、自主的に放送されてこなかったということが明らかになります。部落解放同盟の糾弾を受けないように、部落に関係するもの、またはしそうなものには、とにかくフタをしようというメディアの姿勢があったわけです。つまり、放送禁止歌とは、一部は制度的に決められたものはあったものの、多くはメディアの送り手が解放同盟とのつながりを持ちたくないために、非・制度的に作られていったものだったのです。
 このことは実に深刻な問題を提起します。メディア、特にテレビの送り手の多くが、社会的争点に関しては単純に不可視なものとして扱っていること、そのことに対して多くが判断停止の状態にあることです。具体的には、「解放同盟と関わり合いになると面倒だから」、部落に関係したことを機械的に排除してしまっていることです。こうした姿勢では、部落に関する差別意識は永遠に消えないでしょう。なぜなら「なぜ放送しないのか」が明示されないからです。また、理由を明示しないことによって、部落解放同盟が不気味な存在に感じられるようになり、いっそう部落に関するタブーが大きくなっていく、というものもあります。また、こうした構造がある限り、メディアの過剰な自主規制は続いていくでしょう。それは歌に限らず、様々な表現がメディアに現れなくなる可能性があるということです。何らかの圧力団体がメディアに圧力をかけることによって、理由が明示されることなく表現が「自主規制」されてしまう可能性があるということです。由々しき自体ことです。

 本の内容が、後半は完全に差別問題にシフトしていくこと、そして解放出版社という出版社自体が持つ何らかの影響力から、胡散臭く見てしまう人もいるでしょう。ですが内容は現在のメディアに対する実に辛辣な批判となっています。メディア論やメディア・リテラシーを語る上では、実に示唆深い本といえましょう。もうひとつ、我々はそうした胡散臭さを感じてしまうこと自体に注意深くなる必要があるでしょう。そこで判断停止をすることは、現状の判断停止状態にあるメディアと同じこと、ひいては様々な表現を圧殺する姿勢と同じ要素を持っているからです。

 大切なのは、目をつぶることではなく、知ること。これは私が解放同盟の人から直接聞いた言葉ですが、まさにその通りだと思います。

カルチュラル・スタディーズ入門 上野俊哉/毛利嘉孝 ちくま新書 <一般> 660円
カルチュラル・スタディーズ 吉見俊哉 岩波書店 <一般> 1200円

 カルチュラル・スタディーズの入門書2冊。どちらも「カルスタとは日常生活における政治性を読み解き、理論を現実に節合(アーティキュレート)していく実践的な試みである」という点で一致しています。ただ、吉見が海外におけるカルスタの流れを概観することに重点を置いているのに比べ、上野/毛利の本は日本におけるプロト・カルスタとでもいうべき流れ(鶴見俊介や江藤文夫など)に注目したり、アニメや漫画、レイヴなどのサブカルチャーにも多くのページを割いています。ですからより実践的なのは前者の新書といえましょう。もちろん吉見や水越伸といった東大社情研の人々が鶴見に注目していないわけではなく、みんな一緒に仕事しているので、ケンカした結果2冊の本になった訳ではないと思います。

ジェンダー/セクシュアリティ 田崎英明 岩波書店 <一般> 1200円

 ボーイズラブ論を書くためには必要でしょう。

ソードフィッシュII   バンダイ <立体> 1800円
HGUCグフ エクストラフィニッシュバージョン   バンダイ <立体> 1170

 「カウボーイビバップ」も模型になる時代なんですねえ…。もちろんまだ組んでいませんが、なかなか出来はいい様子。これこそきちんと塗装してやりたいものです。グフの方はつや消しメタリック仕上げ。グフのキットは非常にお気に入りで、いくつか買い足そうと思っていたので、バージョン違いは好都合。またメタリック仕上げもぴったりくると思っていたので、ともかくもゲットした次第です。次は「黒のリヴァイアス」だ!

いちばん上


2000年9月26日(火)

ハード・コア 上下 狩撫麻礼&いましろたかし エンターブレイン <漫画・単行本> 各1800円

 カリブ・マーレイにいましろたかしがサイン会をするというではないですか。これに行かずに何に行けというのですか。ということで高円寺文庫センターで買ってきました。整理券番号は11番。サイン会が終わってから読むつもりなのでコメントは読んでから。

コミックバウンド 創刊号   エニックス <漫画・雑誌> 248円

 噂されていたエニックスの青年向け雑誌。全体的にごちゃごちゃした面は否めませんが、それぞれの漫画には光るものがあります。まずは土田世紀「吉祥寺モホ面」。吉祥寺でアカ抜けてるのですか?先生??ということで面白いです。それからピエール瀧&漫☆F画太郎の「虐殺!ハートフルカンパニー」。やっぱ画太郎は面白いや。案の定コピーを使いまくっていて爽快です。すがすがしいです。そして山上たつひこ&泉晴紀の「バッキンガム」。何ですか?このタッグ?ギャグを期待していた人にはがっかりものでしょうが、内容は実に文芸的。先が楽しみです。このほかに南智子&きょんというフェティッシュな作家や、日高トモキチなども期待できるところです。もろ「アニマル」対抗なのが面白いところですね。いいところを真似て欲しいものだと思います。

プチフラワー 11月号   小学館 <漫画・雑誌> 467円

 軸になる作品は手堅いのですが、今回はぐっと目を惹く作品がない、という印象です。波津彬子も神坂智子もいいのですが、今ひとつ地味な印象が。また西炯子の読み切りも悪くはないのですが、以前のものに比べるとちょっと。ここはビビドな読み切りを上手く取り入れて欲しいなあ、と思います。

いちばん上


2000年9月25日(月)

アフタヌーン 11月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

 何たって黒田硫黄「茄子」でしょう。古巣に戻っての連載、それがまた実に独特の時間が流れていていいのですね。ハラに一物持っていそうなオヤジの様子も硫黄らしいですなあ。あとは「ミルククローゼット」と「なげやり」ですかね。

マガジンZ 11月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

 やっぱり「ヴァルナス」でしょう。少年漫画の王道を行くような展開は、現在だからこそ有効です。あとは天辰睦紀「スカイアー」がいい感じですね。絵の魅力が。こうした人を登用するところがあなどれんところです。…それにしても「煌羅万象」と「がんばれミルキー☆スクエア」のアホくさいところといったら…もちろんそれがいいんです!

少年エースA 11月号   角川書店 <漫画・雑誌> 419円

 …「エヴァ」ですか。苛烈ですなあ。使徒が少なくなった分オハナシが濃密になっているように思います。切ない!あとは「エンジェリックレイヤー」、メチャクチャなオハナシが楽しかった「たのしい甲子園」、ようやく単行本発売の「Alice」といったところでしょうか。木崎ひろすけの単行本は久しぶりなので楽しみ。

いちばん上


2000年9月23日(土)

バカとゴッホ and other stories 1&2 加藤伸吉 講談社 <漫画・単行本> 各533円

 「マグナム増刊」の良心ともいうべき作品の単行本化。表題作の「バカとゴッホ」以外に、「イサムダイアリー」「My Mhz」「L & P」「夜ゲラ」の4本の短編が収められています。まだ読んでないので感想は後ほど。

ムーミン・コミックス3 ムーミン、海へいく トーベ&ラルス・ヤンソン 筑摩書房 <漫画・単行本> 1200円

 ますます快調のこのシリーズ、今回の収録作は「ムーミン、海へいく」「ジャングルになったムーミン谷」「心を入れ替えたスニフ」の3本。どれもまあ面白いです。表題作は、「暇だからいっちょ冒険でもしてみるか」と、船を建造して船旅に出る一家。そこで出くわすヘンテコな詩人、昔なじみの海賊、靴が大好きな海棲齧歯目…というもの。一方で現代的な諧謔精神が見られますが、助けておいた白い雲を帆にして嵐を脱出する、というファンタジックな描写もあって感心します。二本目は異常気象の結果、ムーミン谷がジャングルになってしまうというもの。わずか一日でジャングルになってしまう、という描写が何ともオリエンタリズムでいい感じ。とにかくムーミン一家の魅力が非常にビビッドに伝わってきますし、かれらが持つ徳目、すなわちあくせくしないでのんびり生活し、夢や冒険を忘れないで生きるということが、ある種痛いメッセージとして伝わってくるのですね。川崎ゆきおや水木しげる作品にも似た魅力が、このシリーズにはあると思います。

けしからぬ話 TONO×うぐいすみつる 朝日ソノラマ <漫画・単行本> 古書価350円
ピンクのお部屋 (仮)うぐいすみつる 朝日ソノラマ <漫画・単行本> 676円

 前者は古書、後者は新刊。実質的に続き物なので一緒に。TONOとうぐいすの姉妹が出会ったちびっとエッチなオハナシをまとめたものです。前者は同人誌に、前者の後半と後者に収録されている「ピンクのお部屋」は、「ほんとにあった笑っちゃう話」に掲載されたものです。なんだかナマナマしい告白があっていい感じです。気に入ったのは、TONO先生がまだバージンだったにも関わらず、子宮ガン検診を受けてひどい目に遭った話(子宮ガンはセックスによるウイルス感染によってできるんだそうで)など。自分がバージンだった、なんてさらっと描いてしまうのが何とも。そうしたカラッとした感じが、「カルバニア」などにつながってくるのですね。あともう一つ重要なのは、性欲を抑圧したりしないところだと思いますが。「ピンクのお部屋」は、うぐいすみつるの周囲の人から取材したエロネタと、読者投稿から成り立ってるのですが、これがまた微笑ましくも生々しくて。皆さんにご忠告申し上げますが、ふたりして自転車でラブホに行くのは避けましょう。なんかもの悲しいですから。

ナバナバパラダイス 犬童医院繁盛記 TONO 朝日ソノラマ <漫画・単行本> 古書価400円
ナバナバパラダイズ 博士の魚たち TONO 朝日ソノラマ <漫画・単行本> 古書価500円

 えーっと、残りの単行本も全部買ってきます。短編の完成度の高さは驚くほど。あとは「犬童医院」のシリーズでしょうか。みんなおんなじ顔の看護婦さんが不気味な一方可愛らしくていい感じ。

コミッククリムゾン 11月号   創美社 <漫画・雑誌> 457円

 TONO先生連発。今回で「ダスク ストーリィ」は終わり。残念ですがこれだけレベルの高い作品を読ませてくれたのです。拍手を送りたいと思います。あと驚いたのは高河ゆん。こういう雑誌に載っていると上手さが引き立つのですね。まだまだ修行が足りないな、と反省した次第です。樹なつみもそうなんでしょうね。

キューティーコミック 11月号   宝島社 <漫画・雑誌> 476

 元気のいい内容。シュークリームと違い、全体的にギャグ寄りになっているのが興味深いです。大久保ニュー、ピロンタン、大倉かおりがいい感じなのですね。加えて羽海野もギャグとして機能してますし。それにしても今回の「ハチミツとクローバー」の面白さたるや!ベルサイユっすよ、ベルサイユ!(何のこっちゃ)。ちょっと画面が荒れている感もありますが、大増ページの29ページも嬉しい限りです。この調子で頑張ってほしいところです。

HGUC バウ   バンダイ <立体> 1080円

 …なかなか凄いですね。144分の1というサイズでこれをやってしまうのですから。アクシズ連発!

いちばん上


2000年9月22日(金)

アワーズライト 11月号   少年画報社 <漫画・雑誌> 305円

 「2ちゃん」などでは随分と叩かれてるんですねえ。まあ確かに内容にぶれが感じられなくもないですが、やや強烈なパンチ力が欠けている感はありますが、それぞれの漫画は良くできており、方向性も悪くないと思うんですがねえ。今回注目すべきはオオシマヒロユキ/猪原大介の「はす向かいの真琴ちゃん」。オオシマと猪原の役割分担がどの程度かわからないのですが、オオシマの絵柄の系統できちんとした(?)まんがが描かれているのが興味深いです。そしたら編集協力に更科修一郎の名が。本人はサイトで「もう出番はない」と仰ってますが、まだまだけりを付けなければならないトピックはいくらもあると思うのですが。あるいはオオシマヒロユキのような絵柄を広める必要はまだあると思うのですが。場所をこっちに移して少年誌の仕事をしてもいいのではないかと思うのですが。詳しくはクロスレヴュをご覧ください。

サンデーGX 10月号   小学館 <漫画・雑誌> 410円

 キテますね、細野不二彦。いったい何が先生をこうさせているのでしょう?いろんな点で疑問が尽きません。初登場は能田達規、梁慶一、えのあきら。梁慶一の登場はやや驚きですが、小学館の方が「ビーム」より先だったようですね。えのあきらはおそらく大好きであろうヴィンテージバイクネタ。ちびっこい娘さんがバイク好き、という構図はちとナニですが、その娘さんを魅力的に描いているのが流石です。

ウルトラジャンプ 10月号   集英社 <漫画・雑誌> 410円

 新連載は熊谷カズヒロ「サムライガン 月光」。舞台を明治政府成立後、西南戦争時に移し、分裂したサムライガン組織どうしの抗争を描いています。随分と先取りしたのですね…。もともとの「サムライガン」がどうなるのかちょっと不安ではありますが、エロさを上手く交えた描写は流石。「バキバキバキバキ!」。ちなみにイントナルモーリとはイタリア未来派が作り出した雑音を発生する楽器のこと。よお知ってますなあ、そんな知識。まさかビダイセー?あとは特別読み切りのよしのひろみち「ここがウィネトカなら君はジュディ」、堀池さだひろ「ラザフォード」が目立ちます。前者は「はるかリフレイン」を思わせるタイムトリップ(?)もの。ベタベタですが視線はまっすぐ。それならそれで良し!と思います。後者はビームで「ジ・ガレガレ」を連載していた人です。内容も全くそのまんまですが、ふわりとした風のような印象は健在。いい漫画です。

ホビージャパン 10月号   ホビージャパン <立体・雑誌> 743円

 特集はJAF・CONのコンテスト。金賞はパール塗装のシャアザクなど。MAX塗り一辺倒の模型界に一石を投じてくれれば、と思います。まあ、HJ自体MAX塗り以外の塗り方も模索しているようなので、それほど心配はしていませんが。それにしても最近のバンダイは凄いですね。次はMGグフ、Ez-8、HGUCではゲルググマリーネにドム・トローペンですから。最近特に簡単に組み立てられるHGUCがお気に入りで、HGUCのラインナップがじゃんじゃん増えるのが嬉しいのですね。「カウボーイビバップ」のソードフィッシュも出ますし。模型には手をつけといて良かった、と思っています。

能瀬くんは大迷惑! 1〜5 辻よしみ 徳間書店 <漫画・単行本> 古書価各350円

 ふふふふふ、手に入れましたよ。まんだらけなら容易に入手できるのですね。能瀬発彦くんのかわゆらしさにすっかり拙者参りまくっております。この作品を読めば読むほど「神の恩寵」という言葉が思い出されます。もう一つは人間は生まれながらにしてきわめて不公平な存在である、ということを。かわいい少年少女であればだいたいのことはオッケー。同じことでも不細工な少年少女ならだいたいダメ。で、ほとんどの少年少女は、松本充代風にいうなら「野菜」なのでありまして。だからこそかわいい少年少女は貴重なものとして保護されねばならんのです。皆さん、私と「絶対少年/少女保護同盟」を作りませんか?ああ、さらに萌えさかるボーイズ魂!
 …まあそれはともかく。まんがとしては、エスカレーター式の金持ち学園という閉ざされた世界を舞台に、群衆劇の様式を取っているのが面白いです。それぞれのキャラクタが、割り振られた役割を果たし、みなでお飾りである能瀬くんを魅力的にしていく。ある種「ビューティフル・ドリーマー」にも似た構造があるのですね。それに注意深いところに好感が持てます。

MG ランバ・ラル専用旧ザク   バンダイ <立体> 2250円
HGUC ザクIII   バンダイ <立体> 1050円

 そういやこれも買っていたのでした。ラルザクがこの時期出る、ということは、MGザクのVer.1.5は先の話なのですね。

いちばん上


ザ・掲示板へ

戻る

Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:49 JST