2000年12月下旬

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2000年12月27日(水)

快楽天 2月号   ワニマガジン社 <漫画・雑誌> 314円

 久しぶりのYUG登場。もうエロなんていりません。むしろない方がいいかも知れません。あまりに可愛い絵柄にふにゃふにゃです。今回は他の作品もハイテンション。ゴージャスな絵柄が好もしい鹿島田しき、ハードな展開とのギャップがよい神寺千寿、大馬鹿な展開が心温まる月野定規(一刻も早く単行本出せやゴルァ)など。

ホットミルク 2月号   コアマガジン <漫画・雑誌> 838円

 いま気づいたのですが、エロ漫画としてはそれほどウリがないのですね。ま、目当ては「ジャンキーズ」なのでそれほど問題はないのですが、深刻な事態に陥らなければいいのですが。その「ジャンキーズ」の今回のインタビューは影崎由那。

ガム 2月号   ワニブックス <漫画・雑誌> 590円

 やっぱり「エンブリヲンロード」でしょう。おなじくオーリオールに魅せられたものとして、必然的に戦わざるを得なくなるルキオラとアスタルテ。セイが急速にルキオラに惹かれていくという描写は、やや性急な感が強いものでしたが、イタイ展開のためには必要なものだったのですね。拡散気味であった展開も一気に「聖地」へと収斂していき、役者も揃いつつあります。テンションの高い作品といえましょう。他の作品がふぬけ度の高いものである一方、こうした硬派な作品を交える編集の妙もいいところですか。他には「まほろ」「月詠」がいい感じです。

マガジンZ 2月号   講談社  <漫画・雑誌> 457円

 「ザクレロ量産」って、どっかのWebページにあったネタですよね。それをもって「パクリだ」と言うのは簡単ですが、そこはさすがにアジテーター・徳光。うまい漫画的ヒキで何となく納得させられてしまいます。あとは「ヴァルナス」。ママのオパーイが…。

カルチュラル・アイデンティティの諸問題 スチュアート・ホール&ポール・ドゥ・ゲイ 大村書店 <一般> 2600円
イデオロギーとしての技術と科学 ユルゲン・ハーバマス 平凡社 <一般> 880円

 

大正天皇  原武史  朝日新聞社  <一般> 1300円

 大正天皇といえば、国会開会の時手元にあった勅状を丸め、望遠鏡のようにして議場全体を眺め渡したという「遠眼鏡事件」で知られていますね。性質病弱にして晩年は「御脳」を患い、皇太子裕仁が摂政として政務を執らざるを得なかったという。ぶっちゃけた言葉で言えば「大正天皇=アレな人」という印象が強かったわけですね。近親婚を繰り返した結果の血の濃さの悪弊であるとか。ところがこの本ではそうした一般的な思いこみを覆すような記述がなされます。大正天皇はとにかく気さくで、考えたことを言わずにはおれない人だったようなのですね。とにかく質問魔だったようなのですね。そして視察に出かけた先では勝手に人力車の行き先を変更してしまう、狩猟に出かけたときにはわざとお供のものからはぐれ、市井のものにお茶漬けをごちそうになる(未遂)…。そして心身共に健康であった時期もあったことも描かれます。それは昭和天皇、三笠宮、秩父宮を見れば明らかでもあるのですが。ともかく大正天皇は特に皇太子時代、昭和天皇に劣らないほど人間性を発露していたことが明かされるのです。この辺微笑ましい記述が多く、何とも心が温まるのですね。そして筆者は、そうした過剰ともいえる人間性の発露の反動が、昭和時代の天皇の神格化であったとしていきます。実に刺激的な考え!大正天皇という「忘れられた天皇」を通じて、現在の天皇制の成立を描き出すのですから。現代の天皇制を考える上でも示唆深い本といえましょう。

アウトサイダー・アート   求龍堂  <美術> 2900円

 精神がチャレンジドな人々が描いた「美術」作品を集めたものです。スキゾイド、パラノイア、引きこもり、チャネラー…。こうした作品は、根本敬や山野一の作品がしばしばそうであるように、読者の卓越性を確認するために使われる側面を持っています。「こいつらキチガイじゃん」として、相手を低い位置に置くという。これだからサブカル至上主義者ってのは気に食わないのですな。ともかくこの本にしても、そもそもこうした「アート」一般を表す言葉である「アール・ブリュ(生の芸術)」にしても、そうした見世物小屋的要素を強く持っているのは間違いありません。また、モダンの中に野蛮さを見いだす「モダン・プリミティブ」と同じ文脈で取り上げられていることも間違いないでしょう。現在の文明が持つ「理性」や「合理性」が、いかに薄っぺらなものであるかを如実に示すものとして使われるという。
 もちろんこうした認識を打破するために、この芸術の側からはこのような批判が行われています。曰く、こうした芸術にこそ、商業主義に毒されない本当の人間の表現力や想像力の発露があると。根元的な芸術があると。
 私はどちらも不十分なのではないかと思います。確かにこうした芸術を見て「凄いなー」とは思いますが、同時に「キてるなー」とも思うものですから。重要なのは、こうした2つの見方…見せ物的見方と純粋芸術的見方…が混在しているところなのだと思います。この混合があることで、われわれはわれわれ自身が潜在的に持つ狂気を知るのではないでしょうか。そこに生じる「めまい」の感覚に、われわれはえもいわれぬ心の動きを覚えるのではないでしょうか。逆に、どちらかに寄せた形でこうした作品を見ることは危険なのだと思います。差別や逆差別を簡単に生み出しますから。

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で ジョン・マクレガー 作品社  <美術> 6500円

 …で、そうした「アール・ブリュ」「アウトサイダー・アート」の筆頭として挙げられるのが、このヘンリー・ダーガーです。かれは死ぬまで独身で、引きこもって暮らしました。ですがかれの死後、とんでもないものが発見されたのです。十数冊のノートにびっちりと記された、少女の世界と薄汚れた大人の世界との戦争の物語が。大人の世界は汚い手を使い、少女の世界を侵略しようとします。ですが少女の世界は負けることはありません。少女たちの切り札、最強にして知略に富んだ少女たち、ヴィヴィアン・ガールスがいるのですから。ダーガーはかれの物語に挿し絵をつけていました。それをまとめたのがこの本です。
 テレビなどでも何度も取り上げられたので、知っている人も多いでしょう。残酷な殺戮を繰り返す大人の世界。血が、内蔵が飛び散るなかで、ヴィヴィアン・ガールスは実に無垢な存在として描かれます。そしてなにより注目されるのは、裸に剥かれたヴィヴィアン・ガールスには、ペニスが描かれているところです。テレビなどでは「ペニス」という表現がなされていましたが、私は違うと思いますね。ダーガーが本物の女性器を直視したことがなかったのは間違いないと思いますが、かれは実に正確に、むき出しになったはらわたや骨格を描いていますから。解剖学的知識が皆無であったとは思えないのですね。それはともかく。たったひとりで、実際の少女に触れることなく、メディアを通じて間接的に得た「抽象化された少女性」を描き続けるという行為そのものに戦慄を禁じ得ません。

いちばん上


2000年12月26日(火)

一騎当千 1 塩崎雄二  ワニブックス  <漫画・単行本> 古書価300円

 「ガム」連載の格闘漫画。古代中国、三国時代の英雄の魂を封じた勾玉が、人知れず日本に漂着。長い時を経て、高い格闘能力を持った英雄たちが現在の日本に蘇る。主人公は巨乳女子高生の孫策。自分の力に目覚めた彼女は、「天下を取る」ために上京し、より強い闘士たちと戦う…というオハナシです。いきなり女子高生が孫策と名乗っているのですからステキです。「孫策って男じゃないの?」という疑問はヤボというもの。なにせこの作品世界では三国志の武将の名前を持った高校生がごろごろいるのですから。男子高生や女子高生たちが「公僅」「伯符」と呼び合うのが当たり前になっているのです。もちろん男女は関係ありません。ナスカ人の魂が何故か日本に転生して抗争を繰り広げるという怪作「時空転抄ナスカ」も真っ青です(アニメの質としては悪くないとは思いましたがね)。勾玉が伝来しただけで名前まで同じになってしまう。読み進めていくうちに、なんだか変な気分になってしまいます。それからもう一つ特筆すべきはその描写です。敵の攻撃でブラウスの前が破れてしまいますよ?なにかというと破れますよ?ミニスカートでもハイキックは当然ですよ?でもちくびは見せませんよ?
 …とまあ、実にアタマの悪い作品なのですね。オコサマやオタクにとってある程度知られ、親しまれている三国志をモチーフにすること。それが現代に蘇ってハードな格闘合戦を繰り広げること。主人公はキャッチーな巨乳美少女(乳揺れ満点)であること。みーんな安易すぎて、単体ではげんなりしてしまうような要素です。ですがこの作品は、単に出来の悪い寄せ集めではありません。アタマの悪い要素をとにかく力ワザでつなぎ合わせることによって、「際だってアタマの悪い作品」になっているのですね。「凄いもの」とは、とにかくなにかを突き詰めたもの。その意味でこの作品は「もの凄いもの」になっているのです。もう一つ、作者がこのアタマの悪さに、実に積極的かつ主体的に取り組んでいるところを評価したいと思います。物事を知らないで、こうしたキャッチーな要素をつなぎ合わせれば、できあがるものは多くが無様なものになってしまうでしょう(そこがいい、という場合もあるのですが)。ですが作者塩崎は、さまざまな方法を通過した上で、こうしたお馬鹿な方法を主体的に選択しているように見受けられます。ですからこの作品からは、厨房的知ったかぶりやイタさが感じられません。オトナの余裕さえ感じられるものになっていると思います。とにかくいろんな意味で興味深い作品だと思います。あなた!下乳にニヤニヤしている場合ではありませんよ!

Silly Action  しもがやぴくす&みらい戻 芳文社 <漫画・単行本> 古書価300円

 「美少女漫画」ではユナイト双子として知られているユニットのボーイズもの。主人公の高校生はバクチで作った借金を返すために、ホモ写真のモデルのバイトに手を染めてしまう。それをネタに強請られ、犯されそうになる少年。しかしそこに助けに現れるカメラマン。かれはいつもはホモ写真の撮影で糊口をしのいでいるが、大きな夢と才能を持っているのだ。いつしか惹かれあうふたり…というオハナシになっています。いつもの美少女まんがの馬鹿馬鹿しいノリを期待していたのですが、なんとも正統派のボーイズじゃないすか。この人たちのふところの広さ、引き出しの多さに舌を巻くところです。まあ、こうした作劇方法はやおい系パロでは一般的なものなので、お手のものなのかもしれないですが。

5時から9時まで JUN  ソニー・マガジンズ <漫画・単行本> 古書価300円

 

いちばん上


2000年12月25日(月)

アフタヌーン 2月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

  トニーの復活とかいろいろありますが、特に目を引くのは平田弘史の「拙者ばんぺいくんでござる」だけでしょうか。ネームを切った園田、あさりには「ご苦労さまでした」とは言いたいと思いますが。なんだか昔のようには熱を持って読めないのですよね。内容が内容ですから。

丸 2月号   潮書房 <軍事・雑誌> 952円

 普段は絶対に買わないんですが、別冊ふろくとして「世界の一流兵器」ってのがついてたもので。「大戦略」以来、現在の兵器がどうなっているか知らなかったので、知識を得るという点ではなかなか重宝します。吃驚したのはフランスのフリゲイト、ラ・ファイエット級。こんなところに21世紀が!

いちばん上


2000年12月22日(金)

LAZREZ 1 TKD&竹谷州史 エンターブレイン  <漫画・単行本> 880円

 世の中には背後から音楽が聞こえてくる作品というものがしばしば存在します。たとえば「麻雀放浪記」には演歌が、「蒲田行進曲」には映画音楽が。映画には音楽がついているって?そういう実体的なもののことを言っているのではありません。作品そのものがひとつの「音楽」になっているものがあるのです。それは漫画でも同様で、たとえば根本敬の作品からは業の深い廃盤音楽が聞こえてきますし、よしもとよしともの音楽からはあの懐かしいフリッパーズ・ギターの音楽が聞こえてきます。ではこの作品からは?聞こえてくるのは間違いなくロックです。ロックが一番熱かったあの頃の音楽が。ジャニスが、ジミヘンが、ドアーズが。
 ロックはすっかり歌謡曲にからめとられ、その衝撃力を失ってしまったように思われています。サブカルチャーの旗手であったロックさえも骨抜きにしてしまう晩期資本主義社会。しかし表現の場では、クリティカルな闘争が今、現在行われている場では、ロックはまさに対立する要素のきしみとして現れてきます。ロックはまだまだ死んではいないのです。
 作者であるTKDは、そして絵を描く竹谷は、そのさまを描き出そうとします。黒々とした画面と勢いのある線によって、そして「いま、まさにロックがある」局面を描くことによって。高層マンションに巣くう闇、少女小説家の心に巣くう闇。そして、人々がかつてのように簡単に生きられなくなったいまだからこそ存在するロックのアクチュアリティを探求します。アナクロといえばアナクロなのですが、実に心動かされるものがあります。

恋の門 2 羽生生純  エンターブレイン  <漫画・単行本> 880円

 

Cutie Comic 2月号   宝島社  <漫画・雑誌> 476円

 今回も羽海野を筆頭に、オーツカ、大久保、ライカがまとめるという構造になっていますね。一方の目玉のはずの小野塚がちょっとかすんで見えるほど。それだけ軽くて親しみやすいグルーヴがこの雑誌にはあるといえましょう。最近重たい漫画が増えてきた(あとは育児漫画!)「フィールヤング」といい対照をなしているといえましょう。このままうまく棲み分けてくれるといいのですが。あとは羽海野に並ぶような、有能な新人を早急に発掘する必要があるとは思います。

Chara 2月号   徳間書店  <漫画・雑誌> 552円

 ガーン!能瀬くんが男の子に戻ってしまうとは!宿命的に背負っている屈折と、そうでありながら外見は非常に可愛いという設定を生かして、もっともっと周りの(馬鹿な)男どもを振り回してくれると思っていたのに!ついでに私も!…まあそれはさておき。あとは言うまでもなく「カルバニア」。新しいシリーズである、タニアのお母さんのオハナシが始まっています。そういえばずっと前からの懸案でしたよね。タニアのお母さんは、考えたことや感じたことを何でも実行に移さざるを得ないという身勝手な性格として描かれています。しかも金髪ですし。それがどう現在のタニアに結びついてくるのか。必然的に予想される痛めの展開が非常に楽しみです。

アックス 18号   青林工藝社  <漫画・雑誌> 933円

 特集は友沢ミミヨ。…って新作漫画が載ってないじゃあないですか。新しい単行本はどうしようかなあ…。

きみとぼく Vol.03   ソニー・マガジンズ <漫画・雑誌> 552円

 季刊ペースになっての第三号。これまで手を出しかねていたのですが、今回は買わないわけにはいかない事情が。紺野キタ「人魚の骨」が載っているのですね。波の高い北の海ぞいの町。とおるはかつて海で溺れた経験を持つが、不思議な存在に助けられている。冬、高校生になったとおるの家に「冬の間だけ」という約束で、親戚の女性がやってくる。彼女は名乗る。田中人魚と…。紺野が描く冬の海は、日差しに輝く静かな太平洋ではなく、波の高い鉛色の日本海です。まずはそこに強いイメージ喚起力があるではないですか。「赤いろうそくと人魚」が持つ切なさを感じるではないですか。北の海はあまりにも切なく、苛烈です。だからこそ陸に上がってぬくもりを得ようとする人魚のオハナシが痛く心を打つのです。そして描かれるキャラクタの魅力。人魚は明らかにとおるより年上なのですが(推定年齢24歳)、なんともイノセントな存在なのですね。それは紺野作品に共通したことではあるのですが、そのために素直に「愛」を求める存在として生きてくるのですね。吐血しそうになるほど感動したことですよ。次回作!次回作!!!!!!!

ホビージャパン 2月号   ホビージャパン  <立体・雑誌> 742円

 特集はPG。新作に乏しい時期なので仕方ないところですが。

HG G-Savior   バンダイ  <立体> 1200円

 出来は非常にいいみたいですね。「2ちゃん」情報によるとGP01に匹敵するといいますし。腰の大型スラスター、フレームむき出しの腿、ビームシールドとケレン味にあふれた構成になっているのも見逃せません。いつ作れるかな…。

いちばん上


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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:50 JST