2000年5月上旬

戻る


2001年5月10日(木)

バキ 8 板垣恵介 秋田書店 <漫画・単行本> 390円

 ドリアン先生萌え!

ヤングアニマル No.10   白泉社 <漫画・雑誌> 248円

 山口貴由「蛮勇引力」がいいですなあ。妙な萌えキャラを出す一方、オハナシはごくマッチョ。悪の首領は妙に巨大ですし、石原都知事は主人公の正雪とタイマン勝負を挑みます。ムダにアツイですなあ。それから嬉しいのは二宮ひかる「ハネムーンサラダ」の再開。よりいっそう複雑さを増す三人の思いですが、夢を実現しつつある遙子と上り調子にあるみのり、という状況が、その状況をうまくまとめているところが興味深いです。…もちろんだからこそ不安定なのでしょうが。あと注目しているのが森恒二「HOLYLAND」。昏く、うごめく魂がいいんです。「癒しなんか、もういいよ」という作者コメントも、これまた。

エースネクスト 6月号   角川書店 <漫画・雑誌> 619円

 表紙は岩原祐二「地球美紗樹」ですか!本編の方はちょっとミステリ寄りの展開になっているようですが、ニオ君が可愛いので問題なし!モウマンタイ!それから巣田祐里子「ハイパーハーフ&ハーフ」渡瀬のぞみ「ヘルメス」が載っているのが興味深いですね。かたや「OUT」、かたや「FR」…。そこで活躍した人が今でもバリバリ現役で、しかも若い人の感性を満足させる作品を描いている。感慨深いものがあります。あとはマジモンで時間ぎりぎりという感じの田丸浩史「今月のヒロシ。」と、大注目作品森田屋すひろ「プリプリプリン」でしょうか。後者のいかにもとってつけたような薄っぺらな感動シーンに心底感動じゃあ!
 加えて今回は石田敦子さまのピンナップが付いてます。色の塗り方が下手?そんなこという人は嫌いです。

コミックビーム 6月号   エンターブレイン <漫画・雑誌> 467円

 今回ももう「カンベンしてください」と言いたくなるようなハイテンション。基本的にハズレはないのですが、特にグッときたものを順番に行ってみましょう。
 TKD/竹谷州史「LAZREZ」
。初っぱなからハードなトリップ描写で読者の心を鷲掴みにします。闇に憑かれたヤマザキと、闇に溺れる冥。そして何も出来ない万尊。まさにセックス・ドラッグ・ロックンロールを地でいった展開。これは*真の*ロック漫画といえましょう。もちろん過去にもロックの魂を持った作品はいくつもありましたが、ここまで正面からロックに戦いを挑んだ作品はついぞなかったように思います。
 志村貴子「敷居の住人」。ここでキクチナナコさんですか?予想されていた展開とはいえここでこう来るとは。そろそろまとめに入って来ているようですが、まだまだ一波乱ありそうなので期待大です。先月から引き続きの「ぬいぐるみに語らせる」手法もイジワルでナイス。
 竹本泉「よみきり▽もの」。これはびっくりノンノンジー!!!!そう、あの「ヤングアニマル」で連載され、落としたために連載を切られたあのノンノンジーがビームで復活するとは。これが許されたことによって竹本先生は無限のネタを手に入れたといえましょう。ネタに詰まったらノンノンジーとか苺太とか猫たちとか出してくればいいんですから。ついでに言いますとちゃーんとかつてのパターンは踏襲してます。ええ、このままノンノンジーを再開してもらっても全然構いません。
 仲能健児「西蔵童話」。お得意のアジアネタで久しぶりの登場です。寿命を迎え愛された動物のように「死」を迎えるボロボロのバス。チベット、という場所もあいまって、実に良質のファンタジーになっています。シリーズ連載のようですので毎回は載らないようですが、次が非常に楽しみです。ひまわり!
 小林哲也「hug」。ゲスト読み切りですね。非常にざっくりとした線で、ファッション系専学生(?)ふたりの、ダルで、ちょっとやりきれない日常を描いています。ちょっと分かりづらくはあるのですが、無限に近く、だからこそ無限に遠い関係を描き出しているところがビシビシ来ます。…この人、何者でしょうか。
 しりあがり寿「弥次喜多inDEEP」。以前出てきた鳥男により、偶像として崇拝される弥次さんと喜多さん。町にはヤジキタをかたどったアイコンがあふれ、人々はそれに熱狂していく…。映画「エル・トポ」からの引用なんでしょうね。そこで描かれたまがまがしさをうまく受け継ぎながら、通奏低音である「リアル」を描き出そうとしているようです。当の弥次さん喜多さんは登場せず、以前かれらに関わったキャラ…唐牛と毛のない子ども…を通じてかれらの姿を描き出そうとしているところも見逃せません。
 そして最後に金平守人「カネヒラデスカ?」。タイトルが変わった、妙に萌え指向だ、などといろいろあるのですが、次回、表紙&巻頭カラーですか?いったいどうなってるんですか?
 他にもいろいろ誉めたいものはあります。吉田戦車、うすね正俊、カネコアツシ、泉レッドマン、羽生生…。キリがないのでやめておきますが、まさに一分の隙もない充実したラインナップといえましょう。たまんねえっす、ホント。

NOIR 第6話 招き猫   ビクター・エンターテイメント <アニメ>

 こっぺりあ・の・ひっつっぎっ、ときたもんです。美少女殺し屋?一人は三石で一人はダウナー系美少女?美少女の方は記憶喪失?馬っ鹿じゃねえの?いまどきそれくらいの構図でしかオハナシが作れないの?とはなっから心底馬鹿にして見ていたのですね。ところがすごい面白いじゃあねえですか。もちろん基本構図の想像力の欠如は目を覆いたくなるものがあります。「女の子」が実は非常に強い力を持っており、迷いなく人を打ち倒すという構図は、「アップルシード」で集大成される80年代オタクの夢。「逮捕しちゃうぞ」と同様の白々しさ。当然リアルなんぞそこにはないわけです。ですがアニメでは演出とフレーミングが非常に練られ、視聴者を問答無用で引き込む力を持っているのですね。映像作品はどこか一カ所ピンとくるフレームがあればそれで十分(例…「ロビンソンの庭」「桜桃の味」)、と私は思っているのですが、この作品は非常によく「見せる」ことを考えており、ビシビシ来るのですね。音楽との「あわせ」も綿密に行われているところも好感が持てます。
 監督は真下耕一。音響監督も兼任してます。「ゴールドライタン」や「ウラシマン」での冴え渡る演出を思い出すところですが、ここで気合いの入った仕事をしていたとは。やっぱりアニメは熱心に見ないとダメですね。最初から馬鹿にしてちゃダメですね。作品に接するときには先入観を排除し、謙虚になる必要がある、という鉄則を忘れるところでした。DVDが出たらチェックしてみようかと思ってます。

いちばん上へ 


2001年5月9日(水)

病院行け! かかし朝浩 ワニマガジン社 <漫画・単行本> 505円

 いきなり装丁からしてふるってます。神様のパクリとは!まさに天に唾する行為。内容は東京湾に浮かぶ超巨大病院(山とか谷とかまである)を舞台に、マッドな女医と彼女に改造されたおかしなナース、そしてもう嫌になっちゃうくらいメチャクチャなお医者さんたちが続々登場して複数プレイを繰り広げる、というものです。妙に萌えキャラの飲尿療法専門医、いつもイっちゃってる麻酔専門医…などなど。そしていつもの通り、主人公の女医・孔雀は豪快きわまりない性格のため、ヤローだろうがなんだろうがバンバンヤッてしまうわけです。漂うのはかかし一流のドライな雰囲気。諧謔精神にあふれたギャグが全編を覆い尽くすことになります。いやー、面白いわ。もちろんエロもばっちり。ギャグが基調なので抜くにはちょっと大変かもしれませんが、ねちこーい挿入シーンとかがいいです。まだオハナシは続いている様子ですので、次の巻を待ちたいと思います。

みみチャンネル 松本耳子 ワニマガジン社 <漫画・単行本> 505円

 「快楽天」での連載をまとめたものです。とにかくイマドキの女の子らしさがあふれていて、決定的に他の男性向けエロ漫画と異なっていますね。エロのロジックも女性のもの。ですから男性読者などはとまどってしまうのだと思います。最近の作品では妹とヤっちゃう、といういかにもなオハナシもあったりはしますが。ですがまさにここにこそこの人の特徴があるわけです。ガーリィな男性向けエロ漫画なんて、全く今まで存在しなかったわけですから。もちろん女性のエロ漫画作家は今までもいましたが、彼女らは基本的に男性的ロジックに従うことが多かったわけです。また「エルティーンコミック」などではガーリィなエロ漫画が載っていましたが、こうした作品は男性の目にはほとんど触れてこなかったわけですし。そうした状況のなかで、曲がりなりにも受け入れられ、単行本まで出るというのは…それだけ時代が変化してきた、ということなのだと思います。まあトランスジェンダーが急速に進み、女性読者も多い「快楽天」だからこそ可能であった、といえるかもしれませんが。
 この人の徳目はもう一つあります。馬鹿なオハナシが得意なんですね。大阪人らしい彼女、ノリにもスピード感があってええ感じです。「エロティクス」でも活躍を始めたことからも分かるように、光るものを持った作家だと思います。今後とも期待。

瓦礫の楽園(エデン) 吉川博尉 ラポート <漫画・単行本> 505円

 吉川2冊目の単行本で、「ファンロード」に載ったものをまとめたものです。やっぱり絵の魅力が強いですね。神経質そうなまなざしと、細くて肉の付いていない手足。チャイナな衣服がその特質をうまく強化しています。高屋美央や三原ミツカズなどとは違った、オリエンタルなゴシック主義がここにあるんですね。なんちゅう独特な!
 その一方で、今や一番大切な能力かもしれない、「可愛い女の子を描く」力を持っているところも見逃せないところだと思います。…まあ、その美少女が、脳改造され見た目だけ少女になったおっさんだったりするので侮れないですが。

ヤングヒップ 6月号   ワニマガジン社 <漫画・雑誌> 362円

 独特の編集方針も軌道に乗ってきたようで。草津てるにょ「ムーちゃんが来たよ」とか、マーシーラビット「ラブ・バイブレーション」のようなむっちむち系をそろえる一方、山本賢治、武林武士、井荻寿一、MEEといったベテラン実力派できちんと読ませ、かかし朝浩や水田恐竜でギャグも押さえる。盤石の布陣。安心感のある雑誌です。加えて今回は西川魯介「ラブ装填(コメ)☆電動ファイター」が載ってます。「ラブコメ増量」とありますが、なるほどその通り。準に見つめられて真っ赤になり、ほっぺにチュッとキスされて身も心も骨抜きにされてしまうまことの可愛らしさよ!確信犯的な制服の着用!さすがはロスケ先生、その辺わかってらっしゃる。掲載に間が空くのが残念。これは是非毎月読みたいものです。それから真打ちとも言うべきもっちー「プリティー美沙」。今回は美沙がご主人の浮気(?)を暴くために、ゆっさゆっさとお乳を揺らし、お尻を丸出しにして諜報活動を行いますよ?妙に腑抜けたオハナシがかえって狂気度を高めていますよ?すっかりお腹いっぱいです。

アワーズライト No.3   少年画報社 <漫画・雑誌> 362円

 今回から無線とじに版型を変更してます。ボリュームが増しているのがとにかくいい感じですね。今回の登場作家は順に今市子、犬上すくね、藤原薫、小石川ふに、篠原烏童、おがきちか、呪みちる、佐々木久美子、水野純子、逆柱いみり、芳崎せいむ。…なんちゅう見事なラインナップ。作品も見事に私の心の琴線をかき乱しまくっています。特に凄いのはまずは犬上すくね「Love experience」。メガネでお堅い感じのお姉さんがついとんでもないことを口走ってしまう、というネタなんですが、それがずっと秘めたラヴュに由来するというのですからぐーっと来ます。そして結局はアイデンティティの問題になっていくのですね。素直になれない自分と素直になりたい自分との葛藤、という。犬上には珍しい(?)、ビターな終わり方が作品を深めているのも見逃せないところです。次には藤原薫「ADULTHALF」。自分のなかに潜む「何か」が発現しないように、いつも息を潜め、目立たないようにして生きる異形の一族のひとり・園田。しかしそんな生活も、彼女を好いてくれる存在が現れることによって揺らいでいく、というオハナシです。まさに静謐、という形容がふさわしい画面と、それにふさわしからぬ情熱的な心の動き。加えてそれを無理に抑圧せねばならないという設定の妙。緊張感の高い作品です。それから芳崎せいむ「金魚屋古書店出納帳」。川原由美子の代原でしょうか、2話載っているのがいいですね。内容も実に本に対する愛が感じられてニヤリとしてしまいます。オールカラーで真四角の少女漫画の本?エーリクがユーリに渡した本?ある意味非常にペダンティックで、それがちょっと足を引っ張ってるかな、と感じなくも無いですが、それもまたまんがに対する愛。特にまんがをこの上なく愛するメガネの女の子が登場する2話目はかなり萌えたことですよ。こういう人と結婚したいですなあ!あと凄いのは逆柱いみり「海賊はいやなものだと思う」。タイトルからして人を食ってます。内容もこれがもう。前回でカッパの海賊の賄い婦になったアンヌですが、給料は血なまぐさい「わけまえ」であり、船長のために新鮮な「しりこだま」(人間の肛門から抜いた魂)を料理することを求められます。なんだかドキドキするじゃあないですか。悩むアンヌに海賊の船長は、虐げられたカッパ族の話をするのですが、これがまた不幸きわまりなくていいのですね。平和にのんびり暮らしていたカッパ族のもとに突然文明人がやってきて、奴隷として連れ去られる、というのですから。もちろん実際の黒人奴隷に基づいた悲惨きわまりないオハナシなんですが、いみりの筆にかかるとどこか違った、幻覚的な効果を持つようになるのですね。いみり世界においてはカッパはつねに悲惨である、という「ルール」を知ってるせいかもしれませんが。とにかく最近のいみり作品のなかでも際だって優れたアシッディーな出来。笑いが全く止まりません。全体的に女性向けの内容なのに、いみりのページだけブラックホールのような異様な雰囲気を放っているのも見逃せないところです。
 そんなわけで二重に楽しめる雑誌ですね。この調子で次の号もお願いしたいものです。

鳩よ! 5月号   マガジンハウス <一般・雑誌> 476円

 特集は町田康。町田康の写真と、かれの詞を使った写真作品が中心になってます。町田康の場合は詞そのものに力があるのであって、それ以上の装飾は全く必要がないように思うのですが…?。それから「町田康への100の質問」とありますが、「好きな食べ物はなんですか」「もっとも盛り上がることはなんですか」という質問に対して、「特にありません」と答えるばかり。もちろんこれもひとつのネタなんだとは思いますが、もしマジだったら…ものすごく寒いな、と思います。「町田康全歌詞集」もかなり寒い出来だったので、幻滅きわまりないですな。
 ただ私の狙いは実はそこにはなく、特集にあわせて描かれた逆柱いみりの絵。なんと6ページも載ってます。内容的にちゃーんと町田康の作品を踏まえています。脳とか、鮒とか。いみりにしては珍しいタイプの仕事であるという点と、いみりの町田康に対するリスペクトが感じられて、かなり心動かすものになっていると思います。

いちばん上


2001年5月8日(火)

本土決戦 土門周平他 光人社 <一般> 552円

 太平洋戦争末期の日本が本土決戦をどう考え、どのような計画をたて、どのような準備がなされていたかを簡潔に示した本です。陸軍、海軍の準備状況とアメリカ軍の計画、それから実際に従軍した人の手記が掲載されています。日本軍はアメリカ軍の侵攻計画をほぼ完全に察知し、志布志湾を中心とする上陸地点までも割り出していました。まあ軍事的には必然なんでしょうが。ところがそこに充当されていた兵力は第86師団の1個師団で、砲兵は大小あわせてわずかに70門。しかも日露戦争時の28センチ砲も含めています。加えて師団の定足数や砲弾の集積数はお寒い限りで、1個師団あたりの戦力は控えめに見てもアメリカ軍の10分の1だった、と記してあります。鬱だ…。加えて沖縄よりもひどく民間人が戦闘に巻き込まれるわけです。沖縄の時より積極的・制度的に民間人を戦場に投入することが決まっていたのですから。極・鬱だ…。九十九里に配属された部隊には本当に武器が無く、樫の木の棍棒でブン殴る訓練ばかりしていたといいます。極・極・極・鬱だ…。結局戦争は昭和天皇の「ご聖断」で終戦に決まった、ということはよく知られていることですが、これがなければ本当にヒドいことになったであろうと知り、天皇に対する評価を心情的に改めた次第ですよ。

フィールヤング 6月号   祥伝社 <漫画・雑誌> 505円

 初っぱなから三原ミツカズ「DOLL」が見せてくれます。この人お得意の母親に由来するトラウマのオハナシ。それをドールが癒す、というのもいつものパターンではありますが、擬似的な心しか持たないからこそ逆に心に響く癒しを与えることができるドール、という逆説が皮肉でいい感じです。それから南Q太「夢の温度」。今回はライバル(?)の田中香をフィーチャーしてます。どんくさくて不細工でふてぶてしい田中のオンパレード。悪意が感じられてニヤニヤしてしまいます。もちろんコマとコマの間にあるQ太ならではの「流れ」にうたれながら、ですが。それからこれは本当に戦慄もののかわかみじゅんこ「亜木子」。野球部所属のコータローは、このごろ急に大人びてきたおとなりの亜木子が気になって仕方がない…というなんと言うことはないオハナシなんですが、「間」が。すごい。ん。ですよ。例によって例のごとくかみ合わない視線もたまんないっす。「団!」「掟!」というわけでこの人のものすごさを再認識した次第です。
 エッセイ&育児漫画のヘタレっぷり、「こりゃどうしたの?」とびっくりした魚喃、こいずみまり「CUT×OUT」の終了、次回はやまじえびね「LOVE MY LIFE」と安野モヨコ「ハッピーマニア」が最終回と、ちょっと(どころじゃないな)不安な/不穏な空気が漂っておりますが、いい作品を載せる、という路線は放棄してほしくないな、と思います。

いちばん上


2001年5月7日(月)

カルバニア物語 6 TONO 徳間書店 <漫画・単行本> 505円

 サイン本です。やっぱり「森」。どうせ出すなら発売日にサイン本を出してくれー!!!。今回はサインもこぢんまりしたものでちょっと残念。まあ好きな作家のサイン本なら間違いなく買うんですが。

夢見る少年の昼と夜 松山花子 ソニー・マガジンズ <漫画・単行本> 520円

 最近注目の作家。「業界人注目!アーティストズアーティスト」と銘打ってあるところが目を引きます。内容は96年頃のちょっと古い作品に、最近の4コマを加えたものなのですが…これが吃驚。現在注目している理由は、「どうしたんだ?」と思えるくらいすっかすかでデッサン崩れた絵でありながら、意地悪なオハナシをやってるところにありました。ところがこの頃の作品は、非常に絵が上手くて豪華なんですね。確かにデッサンが微妙に崩れているところは変わらないんですが、描線は繊細ですし、背景はきちんと書き込まれてますし、なによりトーンがいっぱい貼ってあります。まるで別人。もちろん売れっ子になった現在より時間をたっぷりかけることができたのでしょうから、ある意味当然ではあるのですが。
 一方オハナシもいい感じです。壁の中から寂しい人を見守る「壁男」を描いた「壁の中」。世間からはじき出された鬼の子と、ひとりでは何もできない武士一族の生き残りの交歓を描いた「鬼の生まれる国」。今と違った繊細な描線がいいオハナシを強化しています。
 ああ、もともとこういうところから伸びてきたんだ、と納得し、不明を恥じた次第ですよ。昔の方が良かった、と思う気持ちもなくはないのですが、いっそう好きになりましたね。

いちばん上


2001年5月6日(日)

Boysピアス 6月号   マガジン・マガジン <漫画・雑誌> 714円

 すっかり(ヒドい)ボーイズ雑誌を買うのも慣れてしまいましたなあ。なんか人間として大切な「なにか」を失っているような気もしてなりませんが。今回は爆発的にすごい(=とんでもない)作品はありませんでしたが、河井英杞「同窓会」高尾ふゆ希「五月の恋(やまい)」がいい感じ。いずれもざっくりとした線が違和感無くハードやおいを読ませるのですね。また前者はショタの風味が、後者は痩せた肉体の風味が読者を引き込みます。ふうん…という感じです。

drap vol.12   コアマガジン  <漫画・雑誌> 752円

 生嶋美弥「白龍道中記」がまずは引っかかるところです。この人がものすごく大好きであろう、長髪・長身の山伏と、お調子者の二人連れが、道中かわいい少年を助けたところからオハナシが始まる…というものです。やっぱこの人の描く少年はええですなあ。むしゃぶりつきたくなりますわい。それから逢坂みや「DOGHOUSEスクランブル」が目に留まりますね。携帯電話を破壊するというサイバーテロが頻発する近未来、対策本部の深海(切れ者だが見た目はコドモ・25歳)とおつきの巡査・新城が真相に迫る…というものです。25歳にしてカワイヤンチャ系の深海がいいキャラなんですね。ちょっと冷静に見るとフリークスなんですが。緊張の連続のために新城に泣きついたりするものの(これが可愛いんだ)、イザというときにはしゃきっと謎解きに当たる。変なまんがですがなんか面白いです。
 なんといっても取っつきやすいのがいいですね、この雑誌。それから前後編構成になっている作品が多く、長編よりは飛び込みやすく、読み切りよりは深みがある作品を増やすことに成功しています。うまい編集方針ですね。

コミックフラッパー 6月号   メディアファクトリー <漫画・雑誌> 429円

 安彦良和「韃靼タイフーン」の連載が再開してます。これまたサービスを…。いや、実はそういうのが大好きなのは、以前から知っているのですが。それから連載二回目の新居さとし「女神の鉄槌」もいいスピード感があって好ましいところです。コミティアで買っとけばよかった、と後悔してます。志水アキ「雲のグラデュアーレ」、駕籠真太郎「パラノイアストリート」といいものが続くのですが、とにかくひっくり返ったのが竹本泉「トランジスタにヴィーナス」。いやあ、泉先生本気です。トリハダの立つようなくだらなさ!

陰陽師特別号 白泉社

いちばん上


2001年5月4日(金)

スーパーレディーレナちゃん予告編 木持隆司 木持アート出版
けだもののようにII-9 渋蔵 ぐんたまカンパニー
楠ノ瀬古書店 本井広海 METAL ZIGZAG
ラブドッグ Saru Piccoro ピッコロ工房
Double Bind2 Saru Piccoro ピッコロ工房
緑虫地獄 小田扉/古梅屋 みりめとる
AV学園 放課後まで待てない まんだ林檎 林檎堂
Happy Baby Come まんだ林檎 林檎堂
PADRE オノ・ナツメ Kennedy U.S.M
RAIN HAS GONE 富井戸松子 iron
とのきゅう2 TONO+うぐいすみつる うぐいす姉妹
すとれいとトラッシュ マツシマ愛コ 星林檎
南簑荷 弘岳粟高 あわたけ(だぶり)
アニマルインデックス 赤美潤一郎 骰子
ノスフェラトゥの涙1,2 袁藤沖人 70年式悠久機関
trance princess 今村陽子 国立少年
ルーシーの恋人 流星ひかる いちご未満
総天然色の日々。 キクヅキカナコ クラウド・クラウン
ノット ア サウンド ワズ ヒアド 上倉旧 ロボ音
シアワセ行進曲 山川直人 山川直人
<タイトル不詳> 堀池さだひろ
歌うてづるもづる 三五千波 つくりもの
白い恋人 柴田五十鈴 地球極楽同盟
プラットホーム ちゃい 印度茶

BITTER CAKES きづきあきら
Abaddon瀧元駱駝 GRAIL
ぼく、メイド。 男マン デジタル ボウイズ


2001年5月1日 (火)

生きる 増強版 根本敬  青林工藝社  <漫画・単行本> 1980円

  かつて出ていた「生きる」上下巻に、河出書房から出ていた作品を加え、単行本未収録作品を加えて一冊の本にしたものです。基本的に「平凡パンチ」に掲載されていた作品という点では変わりないのですが。
 それにしてもいろんな意味で感じ入るところがありますね。第一に過去の名作がちゃんとした形で現在に蘇っているという点で。「生きる」の旧版はかなり入手困難で、河出書房版はさらに入手しづらいものでしたが、それがこのように入手できるようになっているのですから。それは非常に好ましいことと思います。そして第二に内容の点で。とにかく村田籐吉とその家族は延々と責めを受け続けます。ちょっと気を回せばすぐに解決しそうな問題でも、彼らが共通して持つ気の弱さのために、結果は常に悪い方に向かいます。また村田一家になんの過失がなくても、まわりの人間の身勝手な行動のために、村田一家は切ない状況に陥ります。その責めの多くは論理的根拠を持たず、必然的なものとして襲いかかります。
 ですがそれは非常に納得のいくものなのですね。エネルギーレベルの高い人がいれば、その人のとばっちりを受けるのはエネルギーレベルの弱い人に決まっています。親の因果が隣の子に報う場合、報いがくるのは必ず弱く、おとなしい存在に決まっています。この感覚は、現在では間違いなく「いじめ」なのですが、実際は生命の基本的論理だったりします。弱肉強食。それがこの作品では非常に顕著に現れているのですね。ですから村田とその一家はかわいそうではあるのですが、それほど悲惨ではありません。なんといっても、彼らは弱い草食動物と同様なのですから。草食動物が肉食動物に補食されるのは当然のこと。それとまったく同様に、村田一家を襲う災厄は、ごくごく当然のこととして読者の目に映るわけです。そして読者はなんだか宇宙的境地にまで誘われます。ああ、この世は無常だなあ…と。
 もうひとつ特徴を挙げるなら、絵が比較的整理されており、オハナシも具体的なものが多いこと。根本敬の入門作品としても適しているのですね。もし読んだことがなければ是非読んで欲しい本だと思います。

ANGE〜地雷原の天使〜 もんでんあきこ 白泉社 <漫画・単行本> 505円

  「ヤングアニマル」に掲載された作品です。二つの作品が収録されているのですが、どちらも現在進行形の紛争を描いたものです。カンボジア(をモデルとした国)で、ゲリラ(ポル・ポト派)に拉致された女医を描く「ANGE」。コソボを舞台に、セルビア人にレイプされた女性とコソボ解放軍のリーダーを描く「KOSOVO」。共通するのは「いま・ここで」起こっている現代的な戦いを正面から描いているところです。もちろん闘争の構図は現在も過去も変わりはないのでしょう。ですが現在の戦争はよりメディアにより媒介された戦争であり、いっそう効果的に相手の精神にダメージを与えることができるわけです。その分痛切さが増すというわけです。

ヒカルの碁 12 ほったゆみ&小畑健 集英社 <漫画・単行本> 390円

 プロ試験に合格し、プロとしての一歩を踏み出したヒカル。今回の目玉は、自らの存在をアピールしようと、塔矢名人との一戦に「打たせてくれ」と頼む佐為というところでしょうか。ヒカルが強くなればなるほど、佐為は必要な存在ではなくなります。そこに切ないオハナシが生まれるわけですね。全体としてはかなり展開がたるんでいますが、次の盛り上がりに至る息抜きなのだと思います。

いちばん上


ザ・掲示板へ

戻る

Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:51 JST