2000年5月下旬

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2001年5月31日(木)

EATER Vol.8   テレグラフ・ファクトリー/星雲社 <サブカル> 800円

 実質ひとりで出版してるインタビュー誌。前にも買ったことがあったように思いますが…。今回取り上げられているのは山本精一、戸川純、江戸アケミなど。江戸アケミというのがいいじゃないですか。20世紀中に江戸アケミの残した言葉をまとめておきたい、という気持ちからこの号は作られたんだそうですね。内容はまあ思潮社の詩集にもあるとおりなのでそれほど衝撃的ではないのですが、それでも80年代に江戸アケミが何を考えていたか知ることができ、考えさせられるものがあります。他には根本敬、三上寛などが登場しています。こうした「絵に描いたようなサブカル」からも遠ざかってしまいましたなぁ…。

増補 シミュレーショニズム 椹木野衣  ちくま学芸文庫  <一般・文庫> 1300円

 

墜落遺体  飯塚訓  講談社+α文庫 <一般・文庫> 562円

 未だ記憶に新しい85年の日航機事故。生存者4人、死者520人。高速で山肌に激突し、四散・炎上した遺体を、どのようなプロセスで確認していったかを描いたノンフィクションものです。ゲンブン先生が遺体を回収した自衛隊員のオハナシを描いたというので、関係あるかなと思い購入しました。
 …まあこれがなかなか強烈な内容。五体満足な遺体は20%程度(生存者がいたとは信じがたいですな…激突地点から250メートルも飛ばされているのですから)、あとは黒こげに炭化した遺体か、何なのかよく分からない肉塊だったというのですから。それでも蛆と熱気と戦い、その肉塊を丹念に引き延ばし、徹底的な歯牙の検証作業を行って、ほとんどすべての遺体を確認した警察官たちの執念と熱意には、正直打たれるところです。あとは図らずも現れる日本人/アジア人の死生観が興味深いですね。欧米人やキリスト教徒の韓国人の場合は、神の国に召されたことは明らかなので遺体確認の必要はない、という反応が大多数を占めたのに対し、日本人遺族の多くは指一本でも、歯一本でもいいから死者の体が欲しい、と言ったのだというのですから。いまでもそういう考えが多数を占めるのか分かりませんし、私だったら欧米人のようなドライな対応を間違いなく取るので、なんともいえないところがあるのですが、臓器移植に対する根強い反対の根っこが、ここにあるように思ったことですね。
 個人的にはこの事故で散った「ファンロード」の常連投稿者・緋本こりんのことを思い出して、懐かしくなったり鬱になったりしたことですよ。ああ、それにしても眠いです。肩が重いです。ひょっとしたら「降りて」きてるのかもしれませんね…。

いちばん上


2001年5月30日(水)

水温む 山田ユギ 芳文社 <漫画・単行本> 562円
シトラス学園 山本ルンルン 宝島社  <漫画・単行本> 762円
独身者の科學 まぐろ帝國 シュベール出版 <漫画・単行本> 952円
快楽天 7月号   ワニマガジン社 <漫画・雑誌> 314円

いちばん上


2001年5月29日(火)

ライノ  雨宮智子  ソニー・マガジンズ  <漫画・単行本> 520円
地球美紗樹 1 岩原裕二  角川書店  <漫画・単行本> 540円
1ねん3くみ桃ちゃん先生。 ひな。 角川書店  <漫画・単行本> 560円
コミックマスターJ 7 余湖裕輝&田畑由秋 少年画報社  <漫画・単行本> 495円

 

ベルセルク 21 三浦建太郎  白泉社  <漫画・単行本> 505円

グリフィス、出てこねえじゃないですか。

B-Street Vol.7   ソニー・マガジンズ <漫画・アンソロ> 900円


コミックバンチ No.3   コアミックス/新潮社 <漫画・雑誌> 210円

 待望の梅川和美「がうがうわー太」が始まっています。主人公は貧乏獣医の息子。父親は動物の言葉が分かるのですが、動物相手の治療ばかり行っているために家計は火の車。そんなおりひとりの女の子が老犬の予防接種にやってくる。その犬は忠実に女の子を守ろうとする昔気質の犬だったが、アパートで飼っているのがバレてしまい、処分を迫られている。ひょんなきっかけでその犬、わー太の言葉が分かるようになった主人公は、女の子を助けるために一肌脱ぐ…というものです。他の作家と絵柄も年齢も異なるので大丈夫かな、と思っていたのですが、全然そんなことないじゃないですか。まずはオハナシがごくしっかりしているので、他の作品に比べて迫力負けしていないところが目を引きます。そして今までのバンチに決定的に欠落していた「可愛さ」を導入しているところも注目されるところです。たしかにジャンプ黄金期だった頃の読者だけを相手に商売すれば、そこそこビジネスとして成功するでしょう。過去の栄光を頼りにし、その貯金を食いつぶしていけば、何年かはもうけを得ることができるでしょう。ですが新しいものを作り出していかなければ、いつかは貯金はなくなってしまいます。この作品は、若い作家を登用して、新しい漫画を作ろうとしている試みのように見えるのですね。現在の、そしてこれからの読者にも訴える「可愛さ」を武器にして。同人くさいとか、「萌え」はいらないなどという意見をネット上で聞きますが、愚かな意見だと思います。
 ただ一方で、過去の遺産に頼ろうとしている面があるのも事実のように思います。北条司「Angel Heart」とか、こせきこうじ「山下たろーくん」ですね。両者とも扱いを間違えば、かなり危険な爆弾になるように思います。過去の作品を単にリバイバルするだけじゃ、貯金の食いつぶしになってしまうわけですから。新しいキャラクタで、読者の予想もつかなかった展開をしていけばいいのですが…。
 まあ、「蒼天の拳」、「眠狂四郎」と、強烈に面白い作品があるから、いくつかそういった作品があってもいいとは思いますが。ながいのりあきの新連載も、オヤジ的には悪くない(オヤジ受けはいい)作品だと思いますし。

ヤングキングアワーズ 7月号    少年画報社  <漫画・雑誌> 324円

 まずは吃驚することが。平野耕太「ヘルシング」が今月も載っていることです。オハナシ自体は前回からそれほど進んではいないのですが(インビンシブル級軽空母が「最後の大隊」に乗っ取られるという)、ノリノリでやっているところがいいんですね。まさにオハナシの方が描かれにきているという印象です。それから最近ちょっと落ち込んでいたように見えた六道神士「エクセル・サーガ」も、今回は面白かったですね。六道ならではのギャグが戻ってきた、という感じですから。そして幸田朋弘「ドキドキ・ロコモーション」。久しぶりの登場なんですが…なんじゃこりゃー!なんちゅうハレンチなー!!テコイレミエミエの展開ですが、だからこそ言いましょう。食い込みはいい、と。
 ですが全体的にはなんだか魂が離れてしまいましたね…。それは読み切りの低迷や、作品の傾向が、私の好みと離れてきてしまったことがあると思います。どれも大作志向で、地に足のついていないネタになってしまっていますから。文芸的作品が「ライト」にごっそり移ってしまったために、仕方ないことなんですがね。

いちばん上


2001年5月28日(月)

EVE ★少女のたまご★ やぶうち優 小学館  <漫画・単行本> 486円

 「小学5年生」に連載された作品です。介護用ロボットの試作機として作られたイブ。生まれたばかりで赤ちゃんのような存在だが、同居する聖夜と一緒に小学校に通っているうちに、自然と人間としての心に目覚めていく。そして…というオハナシです。
 やぶうち先生には珍しく(?)、ちょっとエッチなサービスシーンがあるのが微笑ましいですね。いきなり初登場シーンが裸エプロンですから。おっきなお友達対策ですか?他にも何かと露出度が高かったりするのが面白いです。ですがこうした事柄というのは、無節操に使われているのではなく、実に良心的に使われています。単に劣情をそそるタイプのエロではなくて、節度ある、いい意味で「教育的」なものなのですから。それからオハナシが「心ってなに?好きになるってなに?」というところに収斂しているところもいい感じです。イブは学習を重ねることによって、人間の心の動きを身につけていきます。そしてもっとも人間らしい、説明のつかない気持ち…人を「好き」になること…を知っていきます。可愛い外見の裏に骨太なテーマがあることが、やぶうち作品の魅力であるわけですが、それはこの作品でもよく現れています。成長していくこと、アイデンティティを手に入れていくこと、そして人を思いやり、好きになることを描いているのですから。
 やぶうち先生って真面目な人なんだなぁ、とつくづく思います。何を描いたら小学5年生に訴えるのか。大人として小学5年生に伝えたいことは何か。それを常に考えながら作品を描いているのですから。そうした姿勢は容易に凡庸な道徳ドラマに堕してしまう(おジャ魔女どれみがいい例ですね)のですが、ここではそんなこともありません。物事を直接描かないからこそ生まれる、間接アプローチの魅力。おっきなお友達にもお勧めできる作品といえましょう。

どきどき姉弟ライフ 1 後藤羽矢子  竹書房  <漫画・単行本> 590円

 主人公あゆこは血のつながらない弟くまおに超ラブ。くまおの上京にあわせ同居することになり、思いっきり盛り上がり、甘えまくるあゆこ。友達の弟とつきあってみたりするものの、やっぱりブラコンの域を超えたくまおへのラブを断ち切ることができない…というオハナシを、微笑ましく描いています。
 非・エロでははじめての単行本になりますか。まず気づかされるのは、4コマという様式と後藤の漫画制作の姿勢が、非常にマッチしているということです。後藤といえば可愛くカリカチュアライズされた絵柄が特徴ですが、エロのコマ漫画ではいまいち違和感がありました。ですが4コマでは実に「ちょうどいい」ものになっているのですね。また微笑ましく、ちょっとエッチな要素も含んだオハナシも、4コマ向きのものといえましょう。本人もあとがきで「4コマ好き」と告白していますが、ようやく自分の実力を発揮できる場を得た、という印象なのです。ですからここで描かれる作品が面白くないはずがありません。馬鹿みたいにくまおにべったべたのあゆこ!
 ですがこの作品のいいところはこれだけにとどまりません。自分の本当の気持ちに最初から気づいているあゆこは、一方で弟を男として好きである、という自分の気持ちを認めながらも、それについてためらい、考えます。好きな男であるくまおと一緒にいることができる今の状態に幸せを感じながらも、将来の二人の関係を考えるのですね。このままでいいのだろうか、告白したらどうなるのか…などと。読者は笑いながらも、そこにある切ない展開に心動かされるわけです。ギャグを基本としながらも、背後でしっかりとオハナシを進めていますので、これまでの4コマ作品とは一線を画したものになっているといえましょう。非常に丁寧に作っているよなあ、という印象を強く受けます。
 可愛い絵柄にふさわしい微笑ましい展開の一方、可愛い絵柄らしからぬ骨太なオハナシの動き。期待の新星と帯にはありますが、そうした形容にふさわしい内容であるのは間違いないでしょう。これはブレイクの予感。

いちばん上


2001年5月27日(日)

プチフラワー 7月号   小学館 <漫画・雑誌> 467円

 今回はとうとう、そうとうとう、あの大河巨編「残酷な神が支配する」が最終回を迎えています。長い、長い、長ーーーーーーいジェルミの回復期もようやく終わりの時を迎え、イアンとジェルミは新たな一歩を踏み出していきます。私がこの作品に接してから4年くらい経ちますが、それでもかなり感慨深い終わり方。最初から接してきた人の感慨はいかほどのものでしょうか。ついつい正座して読んでしまったことですよ。お疲れさまでした、と言いたくなるというものです。ただ、年齢的にも創作意欲的にも、まだまだ枯れてしまってはいないでしょう、萩尾先生は。ですから新作を(できればSFを)期待したいと思います。
 あとは神坂智子「べんがら格子の家」がいいですね。その人生においては交わることがなかったふたりの生涯。しかし思いは子どもに引き継がれる…ということをにおわせる展開になっています。アクの強いキャラクタを動かすだけでかなりのものだと思っていたのですが、非常に大きな物語を持ってくるとは。吃驚すると同時に期待が持てるというものです。
 ただ、他の作品はちょっと考えさせられるものになっていますね。女性向けビッグゴールド(古い)とでも言いましょうか。様式的で古くさい作家が大半を占めるとなると、今後ちょっと辛いのではと思ってしまいます。明石路代、さいとうちほ(感性は若いんですが様式的すぎて)、名香智子(もちろん素晴らしいんですが)…。対象とする読者の年齢層が高いと思われるので、仕方のないところだとは思いますが、もっとビビッドな新人を多用してもいいのでは、と思ってしまいます。いのまたゆう子とかいるじゃないですか。下村富美とか塩川桐子とかいるじゃないですか。

いちばん上


2001年5月25日(金)

エンブリヲン・ロード 4 やまむらはじめ ワニブックス <漫画・単行本> 900円

 仲間とはぐれ、お世辞にもいい状況にあるとはいえないセイのもとに現れる謎少女・ルキオラ。どうしようもなく惹かれあう二人をよそに、すべての要素が一カ所に…セフィロトの根元に集まり始める。なんともスリリングな展開が続きます。もちろんルキオラとセイのからみは安易なのでは?と思わせるところはありますが、その不自然さも含めて伏線になっているのが侮れません。なんといってもやまむらが自分で選び取った戦場で、自分の方法論でオハナシを描ききっているのがいいじゃないですか。長編SF少年漫画、という。連載がめちゃめちゃ盛り上がっているところも含めて応援していきたいと思います。

天からトルテ! 12 近藤るるる エンターブレイン <漫画・単行本> 560円

 もう完全に「不敗の体勢」を作り上げていますね。キャラクタとその「立ち位置」が固まりきっているので、思いついたネタをひとつ放り込むとオハナシが出来上がってしまうわけです。ここにあるオートマティズムがなんともかぐわしいではないですか。今回秀逸なのは「透明スプレー」のオハナシ。トルテたちが開発した透明になるスプレーを使い、ウニくんに迫ろうとする佐倉だが、スプレーが足りず体のある部分(もちろん佐倉ですからあそこですよ)だけが消え残ってしまう、というものです。あまりに阿呆くさいオハナシに気を失いそうになってしまったことですよ。
ところで、グラニテちゃんが集めていたピングーのチョコ玉子って存在するんでしょうかね?100円のちっこいやつなら知ってるんですが。

宇宙の法則世界の基本 太田虎一郎 コアマガジン  <漫画・単行本> 838円

 これは待望の一冊。95年から「ばんがいち」に連載されている4コマ作品をまとめたものです。秋葉凪樹、小石川ふに、ナヲコ、ユナイト双子といったゲストや、小石川ふにによる目を引く装丁もいいのですが、なんといっても内容が優れているのですね。「第**回ドキドキ対決 先手オレ なぎなた持って通学する女の子」「第**回ドキドキ対決 先手オレ かばんをたすきがけにしている女の子の胸の部分」ですから。ドキドキしません?
 オタク文化はまさにこうしたドキドキを描き出すことに眼目があるわけでして、それを描き出せば描き出すほど受けるわけです。そこでドキドキを整理・分類し、濃度を高めたキャラクタを登場させることになります。まさにここにこそ現在の「萌え」があるのですが、オタク文化において表象されている萌えは「濃縮」されているために(あるいは異なった萌え要素が無節操に同居しているために)、オタク文化に縁のないものにとっては不気味と形容するのがふさわしい状況に達しています。でじこの例を挙げるまでもなく。ですがもともと萌え要素というものは我々の実際の生活に由来するものであり、もっと身近にあるもののはずです。太田はそこに注目しているのがいいのですね。我々が普段見逃してしまっている、日常の中にあるささやかな萌えを発掘し、日常の方へ…普段我々が強い刺激によって「眩まされて」しまっている日常の方へ…目を向けさせます。ドキドキ対決的視点をモノにすれば、毎日が楽しくてしょうがなくなるではないですか。
 このように画期的な(?)本なのですが、一つ残念なことが。完全収録とはほど遠いのですね。太田といえば当然前田姉妹なのですが、前田姉妹関係のネタは見事なくらいばっさりと削除されています。肖像権などの問題がありますから仕方ないことなんでしょうが。他にもキャプテンアミーゴ=ナスビマン、うさぎ星人といった、シリーズを通じて共通性のある部分が重視されているその分だけ、些末な、だからこそ面白いネタが未収録なのが惜しまれます。ドキドキ対決はもっともっとあったはず。出版形態からして2巻の発売はかなり疑問ですが、未収録の部分も是非とも出版して欲しいものです。

アフタヌーン 7月号    講談社  <漫画・雑誌> 457円

 相変わらず絶望的な状況ですね。読める作品といえばひぐちアサ「ヤサシイワタシ」と芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」ぐらい。ただそうした状況の中でもたまーにもの凄い作品を載せるから侮れないのですね。それが高野文子の新作「二ノ二ノ六」。前作「黄色い本」に比べると、ホームヘルパーと珍しく早く帰ってくるその家の主人、という随分取っつきやすいネタになっています。「チボー家の人々」を読む必要もないですしね。ですが内容はもうなんだか凄いものになっています。肩の力が抜けた、という表現さえふさわしくないふにゃふにゃの線。コマの配置とカキモジから聞こえてくる「昭和枯れすすき」。上を目指そう、人より上手くなろうという欲望をすべて排したところに生じる他の誰にも描けないような画面空間。「女神さまっ」などを目当てにアフタを読む人はさぞや面食らうことでしょう。ですがもちろん、だからいいんです。まだまだアフタも捨てたものじゃないと思ったりしますね。この作品についてはまた「読む」を書こうかな、と思っています。

CUTiE comic 7月号   宝島社  <漫画・雑誌> 590円

 以前から噂されていたとおり、今月号で休刊です。これは残念。目玉であったところの羽海野チカ「ハチミツとクローバー」が、やや中途半端な状態で終わっているのですから。真山と山田の関係も、竹本とはぐちゃんの関係も、森田とその兄(?)の関係も、結局最後まで語られずに終わっています(頑張って終わらせているとは思いますが)。私がチェックしている作品の中で間違いなくトップに位置する作品だったので、切なさもひとしおというわけです。他にもシュークリームと決別したあとの編集方針が結構好きだった、ということもありますし。シュークリームだったら切るような「泥臭いけど味がある」作家、橋本ライカや大久保ニューやいわみえいこ、ちょっと違いますが松山花子、新人では小林ユミヲやモり田マリ太などを積極的に載せていたところです。もちろん「コジャレてない」「同人くさい」という批判を生んだわけですが、鋭さを失ったベテランに依存する傾向があるシュークリームより将来性があると見ていたのですがねぇ。ともあれ、ここで輝いていた作家たちが、他でも活躍することを期待するばかりです。

少年エース 7月号   角川書店 <漫画・雑誌> 419円



  

マガジンZ 7月号    講談社  <漫画・雑誌> 457円

 いやあ、少年漫画のアツいこと!とにかく無限に盛り上がる長谷川裕一「クロノアイズ」と島崎譲「征神記ヴァルナス」!昔の少年漫画ノリは、「萌え」の前にすっかり影を潜めてしまったと思われてきましたが、まだまだそんなことはないことを如実に示していますね。同様の意味で永井豪「機神」も。まあこれはかつての少年漫画を知っている私だから、ということかもしれませんが。
 その一方で「濃爆おたく先生」でオタクの心をがっちりつかんでいるところも見逃せません。「ザク、ジャブローに立つ」とはねぇ…。オタクの徳目とはここで描かれるような「ダメなんだけどカッコいい」ところにあるのかな、なんて思ってしまいますねぇ。

コミックガム 7月号   ワニブックス  <漫画・単行本> 590円

 杉崎ゆきる「女神候補生」再開か…と思わせておいて、今回は予告編のみ。忙しいのは分かりますが、もっと編集も考慮すべきじゃないのか、なんて思います。噂によると編集と作家の間に問題が続出している、ということですが、そうでないことを願いたいものです。
 ただ連載は好調。ぢたま某「まほろまてぃっく」といい、有馬啓太郎「月詠」といい、やまむらはじめ「エンブリヲンロード」といい、もちろん塩崎雄二「一騎当千」といい、みな自分の漫画を描いている、という印象が強く、読んでいて好もしい気分になります。面白いんじゃないでしょうかね。

ヤングアニマル No.11   白泉社  <漫画・雑誌> 248円

 再開された田中ユタカ「愛人」がやはりいいですね。いよいよ死が避けられなくなった二人。死んだら二人は分子レベルまで分解されることになっている。しかしそれに反比例するように、二人の距離はより密接になる。一緒にお風呂に入り、互いの体を触りあい、存在を確認する二人…。今まで描かれてこなかったセクシャルな快感を描くようになって、オハナシの落ち着くところが見えてきたように思います。ですがそうであるにしても、やはりここで描かれるオハナシは強い衝撃力を持っていますね。この人が一貫して問い続けてきた「ラブってなに?」「他人をいとおしいと思うってなに?」という問いが、ここに来てさらに強く我々に突きつけられるのですから。前から予想してきたように、旧世紀から新世紀にかけての、漫画の金字塔になることは間違いないでしょう。まったく目が離せません。

Boysピアス 7月号   マガジン・マガジン <漫画・雑誌> 714円

 今回はヒドい作品がなかったのでパス、といったところでしょうか。普通に読める作品ばかりじゃつまらないというものです。それにしても「絵物語」(絵の上にヒドい内容の掌編を載せたもの)のかぐわしいことといったら。

ステンシル 7月号   エニックス <漫画・雑誌> 476円

 早売りゲット。狙いはもちろん天野こずえ「AQUA」こがわみさき「ふたりなみだ」。今回は完全にこの二本だけで大満足です。
 今回の「AQUA」は、依頼を受けた灯里が、アリシアさんと一緒に、町はずれの岡までゴンドラを漕いでいく、というものです。オハナシ自体はなんの変哲もないものなんですが、状況描写がもの凄く綿密なので、自然と読者は引き込まれていくのですね。今回の見物は閘門の描写。船で高いところに行くための仕組み(狭い閉鎖空間を作り、水位を上げ下げすることで地形の高低差をカバーする)なんですが、そこに流れるゆったりとした時間を描いています。そしてさわやかで、遠大な風景を描き出していく。「ヨコハマ買い出し紀行」と共通する良さを持っているのですが、ここではいい意味での女性原理が働いているところが違うところでして、そのためにこの作品は一歩抜き出たものになっていると思います。女らしいんだけどエロくない、そこがいいんです。女の子の最良の部分を集めて作られた作品といえましょうか。
 それから「ふたりなみだ」。ちょっと感情が動くと鼻血が出てしまう男の子とちょっと感情が動くと涙が出てしまう女の子。男の子は女の子の恋を成就させようと手助けするが…というオハナシです。とにかく描かれる感情の動きの細やかなことといったらありません。もちろん鼻血や涙、というわかりやすい表象がなされているのでそう見えるのかもしれません。しかし実際の思いや気持ちの流れは、わかりやすい描写の背後に描かれます。陽動作戦、とでもいうべき方法なのですが、これが上手くはまったときの破壊力は強烈です。抽象化された可愛い絵柄がその破壊力を強化しているのは言うまでもないでしょう。これはもっと短い周期で読みたいよなあ、と切に思います。せめて隔月で…。
 雑誌全体としては、もう少しかつてのステンシルのように「男の子も読める」要素があってもいいかな、と思います。うまくいかなかったわけですが、おそらくジェンダーを越えていく試みが、漫画全体に大きな影響を及ぼして行くでしょうから。そしてここで描かれる作品が女の子だけに読まれている、というのはちょっともったいないように思いますから。ただ斉藤カズサ「南国動物楽園綺譚」、エノロッコ「ベイビートロン」(最高じゃあ)など面白い作品は他にもあります。どこかでたたかれているほどつまらない訳ではないですし、むしろかなり力の入った内容になっていると思います。

いちばん上


2001年5月23日(水)

花右京メイド隊 3 もりしげ  秋田書店  <漫画・単行本> 390円

 サイン本。さらりと描いたグレースがいい感じです。なんちゅうのでしょうか、かつての「学校占領」のときのような意地悪さが現れているように思えるのですね。これってヤフオクで売ったらいくらぐらいになるんでしょうねえ。

ボクの一生はゲゲゲの楽園だ 1 水木しげる 講談社  <漫画・単行本> 1300円

 水木翁の何冊めかの自伝ですが…しょっぱなからやられてしまいましたよ。「水木サンは今年七十九歳になる いつお迎えが来てもおかしくないお年頃となり 自分史すなわち『水木しげる自叙伝』を残すことを思い立った」
ここ!ここですよ。ここでさらっと「お年頃」なんて言葉を使っちゃうところが最高なんです。内容は確かに読んだことのあるエピソードばかりなんですが、基本的な姿勢が相も変わらず人を喰ってて素晴らしいんです。基本的に周囲にあわせてあくせく生きる、という姿勢がなく、人を人とも思ってないことがびしびし伝わってくるものですから、読者はどこか異世界に誘われてしまうわけです。そういえばゲンブン先生の極度の面白さも、この人を人とも思っていない姿勢にあるように思います。

ビジネスジャンプ増刊 BJ魂(ビージャンこん)   集英社  <漫画・雑誌> 267円

 普段はBJは買わないんですが、これは買わねばなりますまいて。なぜなら華倫変とおかざき真里が描いているのですから。華倫変「コギャル危ない放課後」は、AVに出演した女子高生が監督の質問に答えていく、というものなんですが…この返答がいいんですよ。一見普通に受け答えしているんですが、じわじわと読者を異世界に引きずり込んでいきます。キミってなに人?この読後感はKashmirが「変玉」に発表した作品「花日記」と共通しています。絵がいまっぽくなっている分だけ悪夢性も高い、というわけです。それからおかざき真里(おっと、字を間違えないようにしないと)「月とくだもの」。彼女に別れを告げられた男。雨の中で見知らぬ女性から「これがあなたに必要なもの」と一粒の不思議な種をもらう…というスジです。相変わらず流麗な描線ですこと。最近は女性のからだの描き方もさらにエロくなって(男性向けになって?)より訴求力もアップしています。そしてなによりオハナシがいいんですよ。一方で男性にも受けるように描きながら、女性原理をわかりやすく示すのですから。
 …まあこうした作品が載っている一方で、平松伸二「どす恋ジゴロ」ややまさき拓味「優駿たちの蹄跡」(種付け漫画)が載ってたりするところがそれっぽいんですが。次号はいつ出るんでしょう?

ホビージャパン 7月号    ホビージャパン  <立体・雑誌> 743円

 HGUCガンダムの発売を記念してか、特集は一年戦争のMS。ところでドダイとトレーラーが3000円で出るんだそうですね。なんだかMSVの頃…もう出すべきMSがなくなってしまったのでバリエーションを作らざるを得なかった…を思い出します。ですから今求められているのは、黒歴史ガンダムの、それも「80」とか「83」のような形式のガンダムの新作なのだな、と思います。それからもう一つ注目する点は石田敦子さま「ふわふわカタログ」。今回は急展開!ココアちゃんはどうなってしまうのか?目が離せません。

センチャ アールグレイ    ル・パレデテ  <食品> 850円

 新しく紅茶屋さんができていたので。フランス系の紅茶屋さんです。それにしても日本一紅茶専門店が多い吉祥寺に参戦するとは…。葉っぱ屋は「リーフル」「G-Cref」「葉々屋(ようようや)」「カレル・チャペック」「エディアール」。飲ませてくれる店では「ティークリッパー」「多奈加亭」「ナローケーズ」など。過当競争だよなあ、と常々思っているのですから、そこに堂々参戦ですから。勇気を感じます。
 で、この手の葉っぱ屋さんは、「リーフル」みたいに徹底的なこだわりによって専門化を図らないかぎりは、結局みんな同じになってしまうのですね。ニルギリとかウヴァとかヌワラエリヤとかダージリンとか。この店はフランス系らしく、フレーバーティーがかなり充実しているのですが、それでもあんまりかわり映えのないラインナップ。値段もかなり高めですし。がっくりして店員の説明を聞いたのですが…そこで出会ったのがこのお茶。日本の緑茶にベルガモットで香りをつけたというものです。こりゃ吃驚です。木に竹を接いだような香りの出会い。とても日本では考えられない組み合わせに感服し、つい買ってしまった次第です。
 で、味なんですが…正直買わなきゃよかった、という程度のものでして…。まあたまにはこういうゲテモノも悪くはないですな。ははは。

いちばん上


2001年5月22日(火)

となりのののちゃん  いしいひさいち・おがわひろし 東京創元社  <漫画・単行本> 640円

 「となりの山田くん」に対抗して、「となりのののちゃん」というアニメ映画をぶちあげようとした零細アニメプロダクション。それが設定資料として出した…という形式を取った本です。要するに傑作選ですね。藤原先生の項では、藤原先生が登場する作品のうちでもとくに面白いものを集めていますから。また週刊誌などで描かれた、一つの単行本にまとまりにくいタイプの作品も収録しています。一つ一つの作品はやはり面白いのですが…一言でいえば雑多な作品集ですね。好きな人にはいいかもしれません。

ムーミン・コミックス11 魔法のカエルとおとぎの国 トーベ&ラルス・ヤンソン 筑摩書房  <漫画・単行本> 1200円

 今回は「おさびし島のご先祖さま」「魔法のカエルとおとぎの国」「テレビづけのムーミンパパ」の3本立てです。「ムーミン」にテレビ?まずその不可思議な取り合わせがいいじゃないですか。オハナシは家具が壊れてしまったために代わりを買いに出たムーミンパパが、店員の口八丁でテレビを買わされてしまい、この上もなくテレビにどっぱまりする…というものです。明けても暮れてもテレビから離れることができないパパとスノークの女の子。生活のすべてがテレビ視聴を中心に回るようになります。無頼を気取る放浪のビートニク(!)も、テレビの虜になってしまうという。確かに現在は昔ほどテレビの強力な力(皮下注射的、と専門用語では言いますね)はない、と言われますが、それが出現した当時はそりゃ衝撃的だったわけです。「ムーミン」でそれはふさわしくない?そんなことはありません。新聞連載漫画だったこともあって、この作品は最初からかなり社会批評的な側面を持っていたわけです。まあ、それでもスリリングな内容であることには変わりはありませんが。それから「魔法のカエルとおとぎの国」も面白いです。ムーミンが作り出したへんな薬のせいで、童話に描かれたさまざまなキャラクタがいのちを得て、ムーミン谷にあふれ出すというものですから。ここにある「いのちのざわめき」というか原初的なアニミズムにも、ムーミンの魅力があるのだと思います。なんといってもフィンランドですから。

天界の城 佐藤史生 早川書房  <漫画・文庫> 600円

 80年代初頭に発表された作品を集めたものです。安定を手に入れたものの退屈に悩まされる地球圏を描いた「阿呆船」「天界の城」。延命の妙薬アムリタを生産する星に潜入した野心ある男を描いた「羅陵王」。テラフォーミングにコンピュータを使わず、代わりに脳の一部を変質させた人々が住む星を描いた「やどり木」。いずれも実に豊穣なSF的イメージに満ちあふれています。ハヤカワ文庫で出るのも当然といったところでしょうか。注目すべきは「いのち」への視点が見られるところです。子を産む性としての女を描いたり、惑星そのもののいのちの流れを描いたり。70年代のフェミニズムSFとの関連なんでしょうが(ル・グゥインとか)、それをちゃんと自分の方法として身につけているところがいいですね。そしてそれは今でも…もっとも最近の作品「魔術師さがし」でも…変わっていないところに注目したいと思います。

コミックバンチ 創刊第2号   コアミックス/新潮社 <漫画・雑誌> 210円

 今回はこせきこうじ「現在大無職 再就職活動中 山下たろーくん」とにわのまことが登場。残念ながらこれは古い、と言わざるを得ないですね。こせきはかつての連載から一歩も先に進んでいません。山下たろーというキャラクタを使い続けてしまったために、仕方ないことではあるのですが。過去の作品の構造をそのまま使い続けることは、簡単に現在流行のリバイバルの流れに同調するものになってしまいます。昔受けた漫画がある。ならばそれをもう一度やって人気を得よう…という。古い構造を持っていてもいいんです。かつてのキャラクタを使ってもいいんです。ですが内容が現在にリンクした、「いま」を映し出すものじゃないとダメだと思うのですね。かつてのファンのノスタルジアを満足させるだけじゃダメなんですよ。もちろんこの作品は、今後素晴らしくなる可能性を持っているとは思います。オハナシの書ける人ですから。ですが少なくとも第1話を見た限りではちょっと厳しいかと思います。
 それからにわのは、勢いこそあるものの勢いがありすぎて、画面が見づらくなっているのが辛いです。最近の仕事の成果であるエロを上手く取り入れているのはいいんですが、どうも洗練されていないように見えるのですね。
 全体的に危惧していたことが現実になっているのが辛いところです。ただまだわずかに2号でしかありません。「蒼天の拳」「眠狂四郎」「ワイルドリーガー」などの気合いの入った作品もあります。次週は待望の梅川和美の連載も始まります。加えて「2ちゃん」などでの人気も高いようですしね。ちょっと様子を見たいと思います。

それがぼくには楽しかったから リーナス・トーバルズ&デイビッド・ダイヤモンド 小学館プロダクション <一般> 1800円
教養としての<まんが・アニメ> 大塚英志+ササキバラ・ゴウ 講談社現代新書  <一般> 700円
デモクラシーの論じ方 杉田敦   ちくま新書 <一般> 680円
IT革命 西垣通  岩波新書   <一般> 680円

いちばん上


2001年5月21日(月)

Zipper Comic 6+7月号(隔月刊第1号)    祥伝社  <漫画・雑誌> 371円

 この号から隔月刊だそうです。「フィーヤン」の一回り下の年齢層を狙っている、という感じでしょうか。季刊ペースの1号2号には、耐えきれないほどのクサさがありましたが、新装刊のこの号はなかなかいいじゃないですか。漫画以外の点で勝負しようとせず、いい作品で勝負しようとしているのが見受けられるところに好感が持てます。もともとそういうもんだと思いますがね。
 まずは「私のあこがれストーリー」と称して、夢の実現に向かって走る女の子の姿を描いた作品が2本載っています。芸能人になるという夢を実現させた女の子YOPPYが主人公の朔田浩美「Girly Power On!」と、美容師になりたいという思いを実現させようとする高瀬志保「キラ★キラ★」。まああまりにガーリィな内容とガーリィな希望なんで、私にはちょっと分からないところがありますが、「先達はこんな努力をしたんだ/こうやって夢を実現させたんだ」という例を示すのはいい感じですね。真摯な漫画作りの姿勢が見られます。次に吉本蜂矢「女地球人リンコ」。ディスコミュニケーションとは何か?ということを如実に感じさせてくれる内容。最初から最後までひとっつも噛み合わない思いがサイコーです。現在の女の子の姿を活写しているといえましょう。人間ではなく「生命体」という表現がぴったり来ます。なんと次回も登場とのこと。嬉しいですなあ。それから藤原薫「僕らの広大なさびしさ」。失ってはじめて、失ったものの重みを知るというオハナシはそれだけで痛いものですが、ここで失うのは自分のことを他の誰よりも愛してくれる人。しかも藤原はその人をひどく痛い存在として描くものですから…より深い悲しみと痛みが読者を襲うわけです。
 他にも読める作品がいくつもあります。工房的ラブライフが好ましい宇仁田ゆみ「ハナサキキス」、デスな家族に取り囲まれたサバト君が悲惨極まりない三原ミツカズ「HAUNTED HOUSE」。藤末さくら、桜沢エリカ、南Q太はいらねえよな、もっと徹底的に若い作家で固めた方がいいよな、と思いつつも、全体的にはいい感じに現代的にまとめてると思います。
 ところでこの雑誌を女子中学生に読ませたのですが…「え〜?パラキス載ってないの?」だそうで。そりゃ表紙が矢沢なら当然載るものと思うでしょうなあ。そこは滅茶苦茶叩かれるんでしょうなあ。

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