ここまで述べれば、皆さんにも分かっていただけだだろう。このシリーズの恐ろしさが。こんなの一般人は絶対に買わない。そこで問題になってくるのが流通経路と数である。

 最初、このシリーズは、当時はシミュレーションゲーム界の大手だったGDW社が出版していた。最初のシリーズが発売されたのが1973年で、大手メーカーのものだったため結構な売れ行きを示したという。83年には、友好関係にあったホビージャパン社から日本語版も出版されるようになった。私がこのシリーズに接するようになったのもまさにこの頃である。だが、87年頃には、あまりのマニアックさにGDW社はこのシリーズを手放し、制作スタッフらによって作られたGR/D社にシリーズは引き継がれることになる。この段階で日本語版も打ち切られ、制作の進んでいた"Torch"日本語版は結局出ずじまいになってしまった(だから私は"Torch"を持っていないのだ)。

 GR/D社は、以前に増して徹底的にマニアック路線に走った。ゲームの箱に堂々と"Collector Series"と銘打ったのだ(これはGR/D社自身がプレイ不能であることを宣言しているともいえる)。生産規模は小さくなり、本当のマニアしか買わないものになった。アメリカでも比較的入手困難なものになったのである。

 加えてコンピュータゲームの浸透により、ボードゲームの市場自体がどんどん小さくなっていった。この余波を受けて94年にGDW社は倒産している。日本においても、今やシミュレーションボードゲームの類は、出版されることすら無きに等しい状態になっている(わずかにCommand誌が頑張っているようだが)。とにかく日本では、非常に入手困難なものになったのだ。

 現在、日本において輸入のシミュレーションゲームを扱っているところは、神田書泉ブックマートと、渋谷マークの二箇所しかないといってもよい(他の場所を私は知らない)。それでも、"Balkan Front"と、"Winter War"、"For Whom the Bell Tolls"は、比較的簡単に入手することができた。前者二つは売れ残りがあったし、後者はたまたま入荷した日にそこに居合わせることができたからである。苦労したのは"Second Front"であった。どうやらこれは日本に全部で20個も入ってこなかったようなのである。そして、「二度目の入荷は絶対にない」ということになっていた。真相は不明であるが、どうやら生産数そのものが少なかったらしい。私が買いに出た時にはすでに在庫は、予約の入った物が一つあるだけだった。幸い入金がなかったのでキャンセル待ちをし、まんまとそれを手に入れるのに成功したのであるが、「二度目は決してない」といわれていたので、現物が家に届くまでハラハラし通しだった。ものにもよるが、このシリーズを日本で完成させることは至難の業なのである。

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