2001年03月前半

2001/03/02(金) 21:49:51 ヤマナ
タイトル はなればなれに/女性上位時代/アンナ 今日の気分首痛い

映画館で60年代のヨーロッパ映画を一週間に3本観るという、嬉しい機会に恵まれました。浜松も捨てたもんじゃないぜ。メモ程度ですが感想を記しておきます。一応オススメ順。どれもポップな感じでしたよ。

・ジャン=リュック・ゴダール監督「はなればなれに」(1964/フランス)。アンナ・カリーナ主演。
ポエティック犯罪映画。男の子二人と女の子一人のおままごとみたいな窃盗計画が、意外な方向に動き始めて…みたいなお話。演出が軽妙ですかしてていい感じです。ゴダールは割と、すごく好きかすごく眠いかのどちらかなんだけど、この映画は「すごく好き」の方でした。可愛くて楽しくてシニカル。アンナ・カリーナの仏頂面もよかった。かわええ。

・パスカーレ・フェスタ・カンパニーレ監督「女性上位時代」(1968/イタリア)。カトリーヌ・スパーク主演。
お洒落お色気コメディ。突き抜けてバカでした。エロ妄想バリバリのヒロインを筆頭に、バカ以外出てきません。素晴らしい。ファッションもすごく可愛いよー。「バーバレラ」好きのとりこなら絶対楽しめると思う。SFではないけどね。でも心が異次元…。

・ピエール・コラルニック監督「アンナ」(1966/フランス)。アンナ・カリーナ主演。
フレンチポップなミュージカル映画。すれちがいラブストーリー。ヒーローとヒロインが苦しい胸の内を歌で独白しまくり90分。お話はかなり他愛ないのだけど、演出はなぜだかアバンギャルドで、謎シーン続出でした。かなり不思議な気分になれます。

あと、とりこオススメ本、アン・タイラー/中野恵津子訳「ブリージング・レッスン」(1989/文藝春秋)を読みました。落ち込んでるときに読んだせいもあってか、イカ的には胸の痛いお話でした。他人事でない現実が、丸裸のままごろんと放り出されているような感じがあって、オレの弱い心では受けとめきれなかったというか。もちろんそれは、作者の筆力のなせる技ではあるのだけれど。市井の人の日常のちょっとした事件をきっちり拾っていく作風の、そのきっちりさに持って行かれてしまって、エピソードのそれぞれが「ちょっとした事件」とはとても思えない、変に深刻な気分になってしまったのでした。

でも一章一章のオチのつけ方はいいね。微妙に救われます。その「微妙」のさじ加減がすごく上手いと思いました。もうちょっと心の強いときに思い出して、しみじみしたりしそうな感じです。


2001/03/08(木) 14:43:26 とりこ
タイトル お洋服は楽しい/これいただくわ 今日の気分風邪が大流行でち!

アン・タイラーはタイミングが悪かったそうで、残念でした。
この盛下がり(?)はしかし、3月6日発売(予定)の『おやつ』4巻で取返しましょうぜ!!(^_^)

さて、高橋直子『お洋服は楽しい』を図書館で見つけてしまいました。ので借りちゃった。あっという間に読んでしまったよ。表紙のあっさりふんわりしたイラストに惹かれて手に取ったら、キミのご紹介本でした。

MILKのモデルさんはどこよりもグラマーとか書いてあって、イカちゃんちのベッドの上に『装苑』をいっぱい広げて騒いだことなど、ありありと思い出されました。お洋服文化への色々な考察も面白いけど、やはりキミのご指摘の通り、お洋服へのわくわくを思い出させてくれるところが一番の読みどころでした。こんなん書いてる場合じゃねえ、街へ出てお買い物お買い物!!

ポール・ラドニック『これいただくわ』(白水社、1990)
てなわけで、『史上初の買い物小説』と銘打たれたコンナモノを読んでしまったワタクシ。ダメじゃんお金ないのにこんなとこで欲望そそっちゃ。でも面白いよこれ!

「ローブはメインウェイが一番さ。」「なんでメインウェイがそんなにいいんだろ」ジョーは不審がった。「仕立てがきれいなのよ」アイダが言い含めた。「豪勢よね」
ジョーはそれ以上、追及しなかった。一族が経文のように唱えるブランド名の連呼に、ジョーは重きをおいている。遠い昔、執拗なファラオの手先を逃れ、死海の洞窟かどこかを舞台にして、聖なるトレードマークが伝授された、とジョーは考えておきたい。「汝、カーペットはカラスタンよりほかに買うなかれ」

メインウェイは男物の会社だ。ジョーは覚悟を決めた。一人で男の代表を勤めないといけない。母とおばたちはラックに略奪行為をしかけて、腕にどんどんローブをかけていった。着せてやるべき男はいくらでもある。自分の都合がなくてもショッピングできる。折りあらば、常に奉仕の精神を発揮して、忙しい隣人や、介助を喜ぶ病人のために、パック入り牛乳でもダイニングテーブルでも、必要とあらば誰にでも成り代わってショッピング(本文より引用、一部略)


消費者物価指数は最低になっているんですって。でもって、特に衣料品の値下がりが著しいとか。不況がなんだ!今こそお買い物だぜ!(※経済庁、なんかくれ)


2001/03/08(木) 23:03:07 ヤマナ
タイトル 中二階/明日は舞踏会 今日の気分のどが痛い
この前の電話で6日って言っちゃったけど、おおひなたごう「おやつ」4巻は8日発売だそうです。ゴメン。どちらにしろ楽しみだな!

「これいただくわ」は私も読んだよ。おっもしれえよね。ディティールもキャラクターも大暴走だ!

お返しに私はニコルソン・ベイカー/ 岸本佐知子訳「中二階」(1994/白水社)を勧めておくよ。買い物小説ではないのだけれどね。(いや、買い物もするんだけれどね。)モノに対する執着と観察眼と妄想力に「これいただくわ」と合い通じるものがあるかもしれんと思ったのでした。

「中二階」は「これいただくわ」よりはだいぶササヤカというか、脱力な味わいの小説です。話らしい話もないし。とは言え、どうでもいいような、しかしこの小説の世界に置いては重要な、様々なモノに対する注釈が溢れかえって本文を浸食しまくっているのは圧巻だったりもします。「たたえよミシン目を!」とか言って、些末な感じが素晴らしいのです。

鹿島茂「明日は舞踏会」(1997/作品社)読了。19世紀のフランス文学や風俗観察文をテキストに、当時の上流階級の娘さんの生活を浮き上がらせていく試みの本です。修道院やら社交界やらのディティールが平明な文章で書かれていて、華やかで楽しい気分で読めました。楽しいだけではない現実もきっちり書かれているけど、おおまかは夢いっぱいよ。シャンゼリゼ…オペラ座…仮面舞踏会…。「ベルばら」とか読み返したくなりますがな。
当時のファッションプレートも美麗カラーで多数収録されていて、うっとりしたり、途方に暮れたりできます。お洋服ばんざい!(結局ここに戻るのか…)。


2001/03/09(金) 08:56:56 とりこ
タイトル チグリスとユーフラテス/おしまいの日 今日の気分次の流行は花粉症でち!(予測)

世代として例に漏れず、氷室冴子、久美沙織、そして新井素子さまらのコバルト文庫には、ホントウにホントウにお世話になりました(?)。
新婚さんシリーズもTV化しましたし、他のさまざまな方面でも新井さんの魅力は遺憾なく発揮されておられますが、でも私にとって新井さんはやはり第一にSF作家さんであって欲しかったのです。

てなわけで、この度『チグリスとユーフラテス』(新井素子/集英社/1999)で、10年ぶりぐらいに新井さんの新作SFを読んだぜ!という気持ちになれたのは、とってもウレシ懐かしなことでした。
新井さんはスゴイ。どうスゴイかと言って10年前とまったく変わっていらっしゃらない。新井素子のSFワールドはぜんぜん健在だ。油断すると文体が伝染ってしまいそうです。
『誰もいない宙港に、蛍が2匹舞う、蛍の名前はチグリスとユーフラテス』((恒例の「結構長くなってしまった」)後書きより引用)というお話です。これだけで、変わらないなあ、とお思いでしょう(笑)

ついでなんで新井さんのホラー『おしまいの日』(1992、読売新聞社)もご紹介いたしますが、新井さんはこの本の後書きで、しきりに「自分は小説の要約をするのがたいへん下手」と書かれておられます。
そんなことはないと思います。このお話は新井さんのおっしゃる通り、「旦那の帰りが遅い」というお話でした。ホラーだけど流血はなし。その一方妄想スプラッタは満載。救いががあるのに救われないお話です。

ポール・ラドニック作品は、『遊ぶが勝ちよ』(白水社、1991)というのも読みました。なんと言っても表紙装画が岡崎京子さんなので、キミも見つけて読んでるかも…。お話は、表紙カットが岡崎さんなのがぴったり過ぎ(ラストが悲しくて切ないところも…)!

次回予告!恩田陸『月の裏側』、ついに入手いたしやした(日曜日に)うふふ。楽しみ!
この次はきっとご報告いたしましょうとも。
あと、こないだちょこっと書いた広瀬正さんを、もっとご紹介してもいいですか?


2001/03/09(金) 17:17:18 ヤマナ
タイトル ドラゴンファームはいつもにぎやか/三つの小さな王国 今日の気分字数の関係で最後が電報文体に。

コバルト文庫はそりゃあ読んだね。私は氷室冴子大好きっ子じゃったよ。
コバルト出身作家の近作と言えば、久美沙織「ドラゴンファームはいつもにぎやか」(1998/プランニングハウス)はなかなかよかったですよ。5冊あるシリーズの、まだ1作目しか読んでないのだけれど。ドラゴンと人々の日常のふれあいが、とても丁寧に書かれています。ステロタイプでない、生き物としてのドラゴンを描出しようという意気込みが好印象でした。
割と、真っ正面からファンタジーなので(広義の幻想小説というよりは、ジャンル小説としてファンタジーというか)、私よりむしろとりこ向きかも。挿絵も吉野朔実でよろしいです。

スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸訳「三つの小さな王国」(1998/白水社)読了。ミルハウザー、この本も当たりです。闇の中に幻想と現実が滲んでいく感じの中篇集。懐古的な雰囲気を濃厚に漂わせながらも、幻想性と批評性がわかちがたく描かれているあたり、とてもモダンです。たまらん。「展覧会のカタログ」なんてタイトルの、まさしく展覧会のカタログの体裁を取った小説も収録されていたり、お話の構成も凝ってます。

おさめられた3つの小説のうち、特に「J・フランクリン・ペインの小さな王国」が素晴らしかったです。こつこつと一人、手作りのアニメーション漫画を作る男のお話。小説内におそらくミルハウザーのものと思われる漫画論が書かれていてね、かなりぐっときました。以下引用。

「いわゆる写実的な映画に較べれば、アニメーション漫画の方が、映画の虚偽をずっと正直に表現していると言える。なぜなら漫画はみずからの虚構性に歓喜し、ありえないものに酔いしれるジャンルだからだ。ありえないものをみずからの仲間と唱え、不可能なものをその至上の目的として賞揚し、不可能性のなか、現実の否定のなかに、おのれのもっとも深遠な存在理由を見出している。」
もちろん、ここで書かれている漫画というのは私たちの普段読んだり描いたりしているものよりは、ずっとアーティスティックなものなのだけれど(てゆーか、この小説内の漫画論てアニメと漫画の区別が曖昧なんだけど)…でも美しいな鋭いなアリだなと思うのです。このあと漫画好きのみならず、幻想好きには胸を締め付けられるような、さらに素敵な言葉が続くのだけれど、それは読んでのお楽しみ。

広瀬正さんについてはまるで知識なし。紹介乞う。


2001/03/11(日) 03:12:35 とりこ
タイトル コフィン・ダンサー/変身の恐怖 ほか 今日の気分そんなわけで睡眠不足

鹿島茂さんの資料本は面白いよね。この人のに限らず、実際に資料にあたるのってそれはタイヘンな作業じゃろうに、それこそイイトコ取りさせていただいてるわけで、嗚呼ありがたやありがたや。読者の仕事は愉しむことだから。よかったなあオレ。読者で。

さて、久々にミステリで夜を明かしました。ジェフリー・ディーヴァー『コフィン・ダンサー』(文藝春秋、2000年)安楽椅子ならぬ寝台(事故で頚椎骨折し、首から下が不随)探偵モノの第2弾です。

まずね、色々とズルイのよ設定が。手足替りは元モデルの美女警部(※脅迫神経症気味)。探偵自身は寝たきりだけど美形で切れ者で、スピーディーな運びの中でお二人のラブ物語も展開していく仕組みっす(いねーって、そんなヤツら)。読んじゃいますよこりゃ(はめられているワタシ)。

前回はプラトニックなお二人(だって、寝たきりなんだから結ばれようがない)でしたが、今回はキス!AだA(そういや、どこぞの辞書が“A”=接吻、の定義を外すそうで、「大学生にもこの使い方はココ10年ほど見かけない」からだそうだが、じゃあ「はせ子Bまでしか許してない」のはどうなっちゃうんだ(「おやつ」第3巻ネタ)。まあいいや。

前作もなのですが、ミステリとして一番のネックが「オチ」部分にあるんだよ。あーあ。ミステリなのに。でもいいの。ラブで充分楽しめるから。でもイカちゃんへのオススメ度はさほどでもないかも。ゴメン、一人語りだね。

そういやミステリと言えば、キミはパトリシア・ハイスミスはお読みになりまして?犯人は逃げおおせ、善意の人は道を踏み外す、とある意味救いがないですが、犯罪者が自分の罪にびくびくして自滅しそうになる辺りなんか、心理描写のくどくどしさはドストエフスキーっぽく読み応え満載です。
(『変身の恐怖』(ちくま文庫)『プードルの身代金』(創元推理文庫)ほか)

簡単に解決したり、悪い奴が捕まって、安易にジ・エンド!とかならない分、逆に読み応えがあるかも(カタルシスがなくとも娯楽たりうる、とこの人の作品で初めて知ったものです)。



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