2002年5月

2002/05/01(Tue) ・・・とりこ
お知らせ

■お知らせ

既にご存知の方も多いかと思われますが、当サイト「とりイカ」のイカちゃん、こと山名沢湖さんが作品を発表していた「OURs LITE」(少年画報社)公式HPが、6/21発売予定の8月号をもって、休刊になるそうです。
公式発表はまだの様ですが、書いちゃっていいのかな…(ちょとびくびく?)

残念です。
※イカちゃんによるコメントはこちら

先日の「Dino Press」休刊といい、キビシイんだなあ。実感。
せめて2冊づつでも買っておけば良かったかしら…どうせ、500円ちょいの出費が増えるだけだし。あ・もしかして、イカちゃんが載ってない号を買わなかったり、ってのがやっぱ・まずかったのかもっ(おいおい)。
…無力で、スマンのう。>イカちゃん

イカちゃん漫画だけでなく、おがわさとしさんや中前英彦さんの素晴らしい作品を知った雑誌でもありました。次は、いつ掲載になるのかな、ってスゴク楽しみにしていたのに…。

楽しみに読んでいた連載も、勿論、何本もあります。 トホホ。

2002/05/02(Thu) ・・・とりこ
サマセット・モーム「月と六ペンス」/「お菓子と麦酒」
●「月と六ペンス」(1919)阿部知二訳/新潮文庫

序文の1行目から、きっと惹きつけられるかと思います。
(モームの序文ってどれも面白いよ。T・ウィリアムズの序文も若々しくてスキなんですが、更にスキ。)

語り手は、若い駆出しの作家。以前は「コレで30歳? 昔の人って無邪気だなあ」なんて思ってましたが、今読むと、うーん・参った。この、近しさ…。

主人公は画家。ゴーギャンをモデルとしてます。もしうざければ、1-2章目は飛ばしても筋は判ると思う。←反則? 不器用で凡庸なリーマン、と見えた主人公が、突如家庭を棄て、出て行ってしまう。そこから物語は始まります。

作家クン、画家氏に反発したり共感したり。正気を疑うふりしたり、非常識さを糾弾し、見下したり…でも、本当は、羨望を抱いている。画家の、迷いのない、真っ直ぐな熱に対して。

初読は高校の頃でした。何も省みず・ただ自らの芸術を追う、真摯な狂気が大層リアルに感じられてね。画家が実在に思えて仕方なく「ヤツが描いた絵を見たい…」とホンキで思ったよ。 その絵がどんな様か、魔力的な印象すら伴って行間から立ち上がってくるのに驚いたものです。

そんな彼が晩年に得る、微かな安寧。やあね・もう・王・道。そしてラスト。壮絶です。主人公の生き様に相応しく。
あ、イロゴト、もとい女子との絡みもあります。画家がドライなので、当時はムっとした部分もあったけど、今となってはそのリアルさに驚くよ。芸術と言う名のエゴ。の残酷。に、惹かれるココロ(あー…やだやだもー)。

●「お菓子と麦酒」(1930)上田勤訳/新潮文庫

誰それがモデル、とか誹謗中傷で物議を醸した、とか、そんなんどーでもいーのじゃ。大体、ナゼモーム自身がハッキリ「モデル説はただの噂」と書いているのに(序文で)そゆことアオリに書くのかな…。モデルある方が売れるの? いやあね。
…実は、イカちゃんには、コレを一番のおススメとしたい。

「情多くして男惑わす」天真爛漫系「悪女」が主役のお話。で、またしても語り手は作家。冒頭、熟年に達し、ちょっと食えないキャラとなった作家氏が、若き日を回顧する形で本筋へ入って行きます。

私の中では岡崎京子と繋がってるんだけどね。どうかな。
のっけからの、軽妙な洒落っ気。上述の「月と6ペンス」をデミグラスソースとすると、こっちは天つゆ。薄くさらりとしているよ。前者の濃厚さ(青臭さ)は若向けで、こっちはオトナ向きって印象だな。 個人的にはどっちもスキです。どっちも有効だと思う。けど、イカちゃんなら後者だろうなあ。

ラストがまた良くてね。ネタ割れするから言えませんが、ワタシこの女性、とても好きよ。

時代性・社会背景から逃れられてない部分もあるけど、まず「さらっとした筆致で描く」行為そのものが、岡崎をカンジさせるんだと思うの。 あと「是」のメッセージを放ってる様な印象も。どうかな。

「作家」による語り、序文の作品論、等、両作品とも、本が好きで作家に憧れた経験があるヒトは、読めばきっと嬉しくなるんじゃないかな。

2002/05/18(Sat) ・・・とりこ
S-Fマガジン6月号

■「S-Fマガジン 2002年6月号」(早川書房)

◆牧野修「電獄仏法本線毒特急じぐり326号の殺人」…+1

「銀河鉄道」といえば「夜」か「999」、けど牧野氏の手にかかると「毒特急」。たった「毒」がつくだけで、こんなにイヤ〜に…。

じゃあ・試しに。
「毒鳥と毒イカ 毒の毒書交換毒日記」。
イヤだ。そんな日記。

面白かったです。才気で逆撫で。確信犯の仕業、って印象でした。印税長者のN村K太郎もさ、これ見習って、もっと作品に毒を取り入れるといいよね。 (※ムリ。)

◆野尻抱介「素数の呼び声」…+1

書きあぐねておりますと、ご機嫌の父が帰宅。
酔うと能弁になる方で、「これからの情報化社会はパソコンの活用が必須である!」とか・お始めに。
適当に聞き流してると「検索ツールもだ、単に単語を入れるんじゃなくてな、おい知ってるか、例えばだ、単語単語の組合せが重要なんだ!」
ブウ! 
「ほんのちょっとの差でな、隣りの席の人間とまっっ(力み)ったく違う情報を手に入れる、そういうところで、また、差がな。判ってるか? 」「……。」

ポリティカルっていうか、拙父に読ませられるようなのがあると、確かに・もっと・おもろいかも。なんて思いました。
※お話の設定に、このネタがちょっと絡んでるのです。全然それだけじゃないですが。あ・肝心のお話は、博士先生がちょっとラブリーでした。(うふ。)

◆西島大介「ミスターどーなつ」 原作・北野勇作…+0

北野勇作さんの新刊「どーなつ」挿絵ご担当の、西島氏のコミックです。 可愛いヨ! 筋はぼんやり怖いですが。
そう言えば、先月の秋山瑞人「おれはミサイル」も西島さんでした。これも可愛かったです。また違った風に「ぼんやり怖」かったですが…

◆ことのはの海、カタシロノ庭
喜多哲士「星の種」/藤原ヨウコウ,+0

気にするとこじゃないのかも・ですが、ナゼなのでしょう? 
洒落じゃないですよね?? ←まさか。  

◆半村良「赤い酒場を訪れたまえ」…+1

「石の血脈」の原型短篇。伝奇ネタをさわりだけで筋が進んでいきます(勿体無い)。
タイトルへと収束していくさまは見事です。赤くて、怖くて。

2002/05/20(Mon) ・・・とりこ
「極東ロシアのモダニズム」展/SFM6月号(追記)

■「極東ロシアのモダニズム 1918-1928」展

最終日に行って参りました。(於・町田市立国際版画美術館)

ロシアの前衛芸術が、D・ブルリュークとV・パリモフの来日を機に、日本のモダニズムに与えた影響を
「1:ロシア・アヴァンギャルド」
「2:未来派と革命のプロパガンダ」
「3:極東ロシアのモダニズム」
「4:日本の近代美術」 と見ていく構成でした。

絵画だけでなく、雑誌「新レフ(芸術左翼戦線「レフ」の会誌)」等のグラフィカルアート、内戦(赤軍の侵攻)時のアジビラやポスター、新聞の風刺画の切り抜き、他、ナカナカ面白いものを沢山観ました。 中でも、ニクトポリオン・ナウモフによるポスター群、風刺画群は、たいそう面白かったです。
例:「仕事熱心な兵士は勤労者の希望・敵どもの脅威」(ポスター)
=ダメ兵隊(ポーカー中)と良い兵隊(夜なべで縫いもの中)対比図・とか。

来日したブルリューク筆の2本の掛け軸「富岳山水図」「富岳・少女・犬・静物」(なんと、少女=セーラー服女学生。背景は富士)も目を引きました。
個人的なお目当ての竹久夢二、村山知義(「マヴォ」)、木下秀一郎、柳瀬正夢や普門暁、牧野虎雄、等もカッコよかった。東郷青児も、ホントはちょっと苦手なのですが、今回観たのはえらくカッコよかったです。
渡露経験4回の友がつきあってくれました。アリガトウ。心強かったよう。

「S-Fマガジン6月号」 追記

◆喜多哲士「星の種」(ことのはの海、カタシロノ庭/画:藤原ヨウコウ)

拙問に、向井さまより 「馬頭星雲」では? とのメールをいただきました。 (有難うございます(^o^)丿)
「調べたところ、暗黒星雲で(そりゃそうですが)すぐ近くに若い星たちがたくさんあるということ。星を喰らうというのは、星の光を奪って光ることのない暗黒星雲の比喩かな、とか。
根拠はまったくないです(笑)」
ナルホドう! ワタクシも、多分きっとそうだと思います。
性教育にも使える「童話」?(巻末コメント参照) なんつて!(…。)

2002/05/23 ・・・ヤマナ
スパイダーマン/THE RUSSIAN AVANT-GARDE BOOK
サム・ライミ監督「スパイダーマン」

おもしろかったです。目新しい解釈や要素はあまりないんだけど、「スパイダーマン」映画としてものすごく正しい作品なのではないかしら。巨大ロボが出てくる東映版「スパイダーマン」しか見たことのない身で言うのもなんですが。

蜘蛛をシンボルとした、ヒーローとしては異形な感じ、人に理解して貰えない「一筋にーひーとーすーじーにー孤独のおとーこースパイダーマーン」(東映版主題歌:うろおぼえ)な感じ、と、自分の、そしておそらく多くの人がイメージする「スパイダーマン」な感じがとてもよく出ている映画だと思いました。

青春映画としての要素と悲しみヒーロー映画としての要素がうまく融合していると思います。
何と言ってもヘナチョコでー、でも青春でー、突然スゴイ力手に入れちゃってー、思い上がっちゃってー、なところから、陰のあるヒーローになっていく転換点のエピソードが泣けたよ!ベタなんだけどね。でも正しいベタだと思う。

で、その転換点で完全に悲しみヒーローになっちゃうわけじゃなく、まだちゃんと夢やユーモアが残っているあたりも、若者ぽくてよかった。主人公、シャイでヘボでカワイイのよ。
まあ、そんな彼のササヤカなシアワセも悪の手でだんだんと浸食されてしまう(そして、悲しみヒーローとしてのスパイダーマンが完成されていく)わけですが。やっぱ根底に夢あってこそ悲しみや孤独感も深まるって寸法で、その点でもこの主人公像は正しいな、と思うのです。

東映版「スパイダーマン」の影響か、スパイダーマンと言えば壁登り!という印象があったのですが、この映画ではむしろクモの糸ぶらさがりアクションがメインでした。ねばねばバンジージャンプアクションというか。びよんびよーんと視点がめまぐるしくうごめく不安定さがなかなか新鮮でありました。

■THE RUSSIAN AVANT-GARDE BOOK

「極東ロシアのモダニズム」展はかなり羨ましいです。
村山知義や柳瀬正夢の作品も展示してたのねー。日本で開催するロシアモダニズム展としてそれは正しいちゅーかますます羨ましいちゅーか。
東郷青児は甘ったるい感じで私も昔苦手だったんだけど、ハタチすぎてから結構オッケーになりました。古本屋で買った「アサヒグラフ別冊 1977春 美術特集 東郷青児」持ってるよ。この本は薄くて手軽で素敵な絵も多くてオススメです。古本だけど、古本市とかでよく見かけるし結構入手しやすいんじゃないかと思う。

↓はMOMAがやってる(?)ロシアアヴァンギャルドサイト。かっちょいいです。
「THE RUSSIAN AVANT-GARDE BOOK」


2002/05/24 ・・・ヤマナ
じつは、わたくしこういうものです/明治ポテトスナック ジョー&飛雄馬
クラフト・エヴィング商會「じつは、わたくしこういうものです」(2002/平凡社)

「果実勘定士」「警鐘人」「白シャツ工房」…。
世界に一人ずつしかいないかも?な、世にも珍しい職業を持つ方のお話をクラフト・エヴィング商會のお二人がまとめた本です。

「バリトン・カフェ」「地歴測量士」「ひらめきランプ交換人」…。
それぞれの職業の方の肖像写真も堂に入っていて、なるほど、こういう面構えの方がこういう職業につくのだなと納得させられます。

「月光密売人」「時間管理人」「コルク・レスキュー隊」…。
仕事道具もなかなか素敵。ちょっとクラシックな感じの道具を使う方が多いのですね。

「二代目・アイロンマスター」「哲学的白紙商」「三色巻紙配達人」…。
なんてなーんて、ファンタジーを現実に流し込んで徹底的に作り込んだ、いつものクラフト・エヴィング商會の本で、でも扱ってるのはここでは「もの」でなく「ひと」なのですね。ちょっと新機軸。

「チョッキ食堂」行ってみたいな。「シチュー当番」になってみたい。「秒針音楽師」の音楽聴いてみたい。積極的にだまされたくなる本です。いや、だまされてないかも?一人ぐらいはホンモノかも?と、夢見心地になってみたり。

さて、これらの職業が実際どんなお仕事なのかは読んでみてのお楽しみなのでした。

■「明治ポテトスナック 少年マガジンコレクション ジョー&飛雄馬」

近所のスーパーで発見。「ジョー」がレッドペッパー味で「飛雄馬」がソース味でした。「巨人の星」より「あしたのジョー」のが好きなので「ジョー」だけ買いました。

パッケージ表のアオリ文句は「時代が呼んだ熱いスナック」「えぐり込むように喰うべし!!」。

パッケージ裏では白木葉子さんが「あなたが…この辛さとどこまでりっぱに戦い抜くかこのパッケージの裏からしっかり見届けさせてもらうわ!さあ、いいわね、精いっぱい食べるのよ!」と、メッセージを送っています。

実はまだ喰ってない。えぐり込むのか…。がんばろう。


2002/05/29(Wed) ・・・とりこ
「アワーズライト」7月号

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■「アワーズライト」2002年7月号/少年画報社

今号はなんだか賑やかです。実にナイスな読み切りが2本。&山名沢湖作品をご紹介いたします。

◆中前英彦「けむりのかたち」

ぼくたちは 腕時計を しないから
明日は あっというまに 過ぎていく
(※冒頭引用)
近頃、尖ったかたちのセンシティブばかり見てた。「繊細」という言葉には「柔らか」なカタチもある、ちょっと忘れてたよ。
そう思いました。
薄ぐもりの天気(多分)、ぬるくゆるやかな時間。穏やかで、涙が出そう。カタチのない、すぐ空中に溶けていってしまうようなものが確かに捉えてあって、とても、素敵でした。

◆逆柱いみり「カッパマンション」

雑誌の空気が、ココだけ違います。誌面にぽっかり開いた、異世界への窓。

何をもって絵の巧拙とするかって、人それぞれだと思うのですが、さてコレを「絵が巧い」なんて評していいんでしょうか。でも「巧い」です。カッコええ! いっそ、スタイリッシュ。と呼びたい…。
ご自分の醸し出す「ヘン」さ加減に全然頓着してないような。そこがまたカッコエエ…。

干瓢尻(かんぴょうじり)マンション(…)に住む干瓢尻(人名)なんて、一コマ見ただけでどんな奴か判る。この・キャラの立ちっぷり。名前だけでどうですこのインパクト。

◆山名沢湖「右足左足」

このあいだは いくらいい合っても 
笑ってられたのに
今日は 微妙に ゆきちがう
不和ではじまる「山名沢湖・without・フシギ」漫画。
そう、今回は「フシギ」レス。でもその代わり、魔法が有りです(???)。 そもそも、このおハナシにこのタイトルってだけで、もう既に充分「サワコ」だ。と思うワタクシ。